Lower ~魔族に支配された世界の反逆者~ 作:瑠璃色砂糖月
書きたいので書きました。グロやエロが混じった感じのやつ……。
すいません。自己満足です。
見てくれる方がいると幸いです。
1話「派遣者とその実力」
魔族と人間の戦争。
魔王を倒すために勇者が選抜され、戦いに身を投じる。
人間は自身の領土を守るため、家族を守るため、友達を守るため、愛しい人を守るため、平和を守るため、安寧を守るため、秩序を守るため。
魔族は全てを支配するため、自身が最強だと謳っているため、全てを見下しているため、族の繁栄を願うため。
彼らは戦った。
魔族には他を凌駕する腕力、魔力、知力、耐久力があった。
人間にはそれが欠けていた。故に、追いつめられた。
奇跡が起こる。
神が慈悲を下さった。
一方的になるのを見かねた神が人間に特別な贈り物をした。
それが聖剣と邪剣。
聖剣は少しでも善なる心があれば誰でも扱える特別な剣。
邪剣は邪剣に認められた者しか扱えない使用者を選ぶ剣。
それにより、人間が勢力を巻き返す……。
筈だった。
遅すぎた、贈り物が。
贈り物が届いたときには、ほとんどの人間の住まう国が魔族の手に堕ちていた。
国中に阿鼻叫喚が巻き起こり、血が、肉片が飛び交う。女は犯され、男は労働力として生かされ、反逆者は首を刎ねられる。
それが続けばいくら神から授けられた力とはいえ、意味が無い。
立ち向かう勇気が無くなるのだ。歯向かう心が折られるのだ。
人間は大人しく家畜として扱われることになるのだと思うしかなかった。
さあ、残すも後少し。
もうすぐ魔族の侵略が終わる。
そんな中、新たに人間が小国を作り上げた。
自由国「フリーダム」。
何故今頃堂々とそんな国を立ち上げるのか。魔族はやはり人間は馬鹿なんだな、と失笑しながらその国に戦力を送る。
小さな国だった。恐らく2~3日もすれば落とせるだろう。それを感じさせる貧相な国。
しかし、予想は覆される。
確かにそこに住まう人間は少数だった。人口も他国の戦士部隊の半分にも満たない。
しかし、その量を質で補っている。
国民全員が精鋭だった。
送り込まれた魔族は全滅だった。
それに対して、その国は全くの無傷。
圧勝。
慌てて魔族が戦力を送り込む。今度は先の十倍にもなる量で、更に強い個体だった。
その全てをその国は完封してみせた。
魔族が呆気に取られている中、自由国の女王は各国に堂々と交渉に向かう。
「我が国に隷属し、対価を支払うというのならば、我が慈悲によって貴様等の国を守ってやろう」
人間はその交渉に是が非でもないと頷いた。
魔族に支配されるのはとてつもない苦痛。それよりも同じ人間に隷属する方がまだマシだった。
女王はすぐに取引に応じた国に戦力を派遣した。
その国の戦士は強い。
何故か?
彼らは邪剣に選ばれし者で構成されていたからだ。凄まじい力を使用者に与える神の加護。それにより多大な恩恵を受けた彼らはそこら辺の魔族程度に負けるはずが無い。
こうして、人間は何とか魔族の支配から逃れた。
しかし、それを黙って見ている魔族ではない。
選りすぐりの強者を集めて、勢力を拡大する国の戦士を妨害する。
それには流石に堪えたのか、戦士は勢力を拡大する勢いが止まってしまう。
未だに魔族の支配下にある国が圧倒的に多い。それでも、人間は希望を感じていた。人間でも諦めずに戦う者が沢山居る。
人間は息を吹き返したのだ。
そして現在、言うならば冷戦状態。
支配から逃れた国を取り戻そうと魔族は策を練っている。
一方で自由国の女王は拡大した勢力下の保護と統制に力を入れていた。
*****
自由国「フリーダム」より西方面にある某国。
そこの王族達は自国の新たな被害に右往左往していた。
この国は自由国に一番近かったため、隷属したのも一番早い所だった。そのため、魔族の被害は小さく、国民のほとんども無事。
しかし現在、新たな被害が出たため、誰かを派遣してくれるように自由国に知らせを送ったのだ。
「……自由国からの使者はまだ来ないのか?」
「先ほど知らせが入りまして、後数分でこの国に着くと……」
「………」
王はそれを聞いて一瞬安堵し、再び心配する。
遅すぎるのだ。
フリーダムからこの国まで最長でも1時間あれば辿り着くのに、それの倍……2時間も経過している。
もしや、何かトラブルでも……。
そう考えてしまうのは、魔族による支配の恐怖がまだ染み着いているからだ。忘れもしない、あの忌むべき出来事。後少し、女王の到着が遅かったら王の娘の純潔がその場で奪われていたのだ。
王は自由国の女王に感謝の念を抱いているが、同時に畏怖していた。
あまりに強すぎる力は、時折味方にさえ恐怖される。
「王っ! フリーダムより派遣された者が到着したようです! 既に城内に着いた模様!」
「お、おお……! そうか、それは良かった…」
王はようやく不安から少しだけ解放された。
魔族侵略から初めて迎え入れる自由国の戦士。粗相でもあればどうなるのか未知数だ。
(無理難題を言わなければ良いが……)
そう思ったと同時に例の派遣者が広間に入ってきた。
男とも女とも取れない美人だった。
白い髪を肩程度にまで伸ばし、瞳は透き通った深い紫色。まるで
服装はシンプルで白シャツに焦げ茶のズボン、ヒールの無いブーツという出で立ち。その上から純白のコートを羽織っている。
思わずその場に居た全員が派遣者に目が釘付けになる。それほどまでにその人は美しい。
派遣者はどうでもいいのか慣れているのか、国王の元まで歩み寄ると、ニィ、と口の端を吊り上げた。鋭く尖った八重歯が見える。
「あんたが今回の
勝ち気な笑み、耳に優しい低音の澄んだ声。
「おれが今回ここに飛ばされた戦士、ロキラ・オブコニカ=ミノルタ」
「よろしくな、脆弱な国王サマ」
皮肉と共に手を差し出す派遣者。その態度と言葉に王は少し不安を抱きながら、握手に応じた。
*****
「あんたが頼みたいことは大体分かるぜ。ゴブリンでも出たんだろ? ……あれだ、あの緑色でずんぐりむっくりな子鬼ちゃん。な?」
「あ、ああ……」
ロキラと名乗った女性はもてなされるがままにソファに座り、高級そうなお菓子を食べていた。甘ったるくパサパサしたクッキーを噛み砕くと、出されたコーヒーで甘さを中和して喉を潤した。甘さと苦みが絶妙でもっと食べたくなる。
王はというと、ロキラの指摘に舌を巻いていた。まだ何も話していないのに、そこまで分かるのか、と。
実際、王はそのゴブリンという化け物に苦戦していた。国を行き来する馬車だけではなく、国民を男女問わず攫っていく魔物。1体のゴブリンを倒すのに自国の騎士が何人も犠牲になるのに、相手は次から次へと湧いてくる。とてもじゃないが、対処しきれない。
「貴国の者はそういったことが分かるのですかな?」
王が聞けばロキラは鼻で嗤った。
「まさか。来る途中に遭遇したからちょいと聞いてみただけだ」
「なっ……!」
「大正解か」
ニタリとお菓子を咥えて笑うロキラ。遅れた事情を知らない全員が、彼女を信じられないような目で見る。
あの化け物と遭遇して無事でいられるのが不思議だったのだ。まだ年若そうに見える目の前の派遣者が。
見た目に似合わぬ実力の持ち主。それを感じて王は生唾を飲み込んだ。
それを見てロキラはケラリと嗤う。
「で? おれに何やってほしい? こっちも仕事だからな。ある程度の要望には応じるぜ。……勿論、対価も頂くがな」
そう、派遣者は派遣されただけ。そこからは国が彼らと交渉しなければならない。あまり無茶な報酬を支払うのは避けたいが、だからといって報酬をケチると相手が納得せずこちらの身が危ない。
「……そう、だな。この城の宝部屋にある金銀財宝の半分でどうだ?」
「え、そんなにくれんの?」
ロキラは目を丸くする。直後、ニンマリと笑うとソファの背もたれにもたれかかる。
「そんなに期待してくれるんなら、頑張らねぇといけねぇなぁ」
くひひ、と笑うロキラに王は少しだけ心配が消えた。
*****
2頭身程度の子鬼で集団行動が主な魔物である。肌は緑色、目は金色で耳が尖っている。人語は話せないが、学べば人語を喋り理解できるほど知性が高く、仲間同士の連携が取れている。
彼らは魔族でも強欲が有名で、
つまり、ロキラからすればこれほど儲ける依頼は無いのだ。
財宝については王は何も言わなかった。ゴブリンが持っている財宝は全てロキラの手に渡る。
(馬鹿だねぇ……多少は知識を持っておくべきだぜ)
ロキラは心の中で愚鈍な王族達を
(ゴブリンももう少し泳がしてりゃ繁殖期が終わったのになぁ……。ほんと、馬鹿だよなぁ)
ゴブリンは年に数回、繁殖期がある。その時にはゴブリンは他種族の雌雄を攫い、子を孕ませたり無理矢理子種を奪ったりする。ゴブリンの雌雄は共に高い繁殖力を持ち、またすぐに子が産まれるため短期間に沢山増えるのだ。
(普段だったらゴブリン1匹金貨10枚でやってるからラッキーだぜ。めっちゃ儲けた)
この女、中々にゲスかった。
「あの……」
「あん?」
心が色々と満たされているロキラに声がかかる。ロキラの目の前に座る男の騎士だった。
現在、彼女は馬車に乗っており、ゴブリンがよく襲ってくる所まで向かっている途中だった。
ロキラの目の前に居る騎士はロキラの護衛として付けられたらしい。正直な話、ロキラからすればただの足手纏いにしかならないのだが、いざとなったら肉壁に使えるからいいか、という企みから同行を了承した。死んでも自己責任である。
窓の外を眺めるロキラは騎士にとって絵画か何かに見えただろう。内心を知られない限り、だが。
紫の瞳が騎士を見据える。
「っ……」
「……なんだよ」
面倒そうに促すロキラ。
「ロ、ロキラ様はフリーダムの自由戦士……なんですよね?」
「それ以外の何に見える? そうじゃなきゃおれがここに来る理由がねぇ」
「あの……どうして、そんなに強いんですか?」
「継続的努力と瀕死寸前の訓練量?」
「………」
ロキラは真剣そうな騎士の問いかけにおちゃらけるように答える。どこか騎士を小馬鹿にしているような印象も見受けられた。
「……
「
「……質問を変えます。いつもどのような訓練を?」
「毎日24時間死ぬ寸前の訓練をしてるぜ」
「っ……ですから!」
「やってるよ。24時間を10分程度にまで圧縮して参加者全員で殺し合いをしてるぜ」
「………は?」
流石に言葉の理解ができなかった。
それを感じ取ってロキラは面倒くさそうにため息交じりで説明を始める。
「神の加護である『聖剣シリーズ』と『邪剣シリーズ』の存在は知ってるな?」
神の慈悲により人間に与えられた最高位の加護。
善意があれば誰でも扱える『聖剣』。
使用者を選ぶが圧倒的な力を発する『邪剣』。
「え、あ……はい」
「で、だ……特に邪剣にはとてつもない力を発揮できる物が多いんだ。使用者をかなり厳選するからなぁ」
そう、邪剣シリーズは聖剣と比べてかなりの力を持っている。
例えば、聖剣と邪剣の基本的な能力の1つ、人に与える身体能力で持ってさえも。
聖剣を持つ者の身体能力は最高でも通常の約100倍に対して、邪剣は最低でも数千倍、相性が良ければ数万倍にもなる。
そして、聖剣、邪剣の最大の特徴である特殊能力───スキルと呼ばれるものがある。
それもやはり、聖剣よりも邪剣の方が圧倒的に強い。天と地ほどの差がある。
「その邪剣の
「ま、まさか……」
「勿論、時間の流れを戻すと24時間分の疲労がどっと来るんだけどな……。ま、そこは慣れだ、慣れ」
「っ……」
恐るべし、自由戦士。
ただの訓練だとしても、それは一般量を軽く凌駕している。
「ん……、無駄話している間に着いたな」
ロキラが外を見やれば、
じめじめとした湿気を多く含む空気が馬車内に入れば、嫌に
ロキラは馬車からさっさと降りれば、護衛として駆り出されたあの騎士も慌てて降りた。騎士が降りた時には、ロキラの眼前にゴブリンが数体現れていた。思わず騎士が硬直する。
「グギ、グギギギギ……!」
ゴブリンの潰れた顔が更に醜く歪む。自らのこのことやってきた獲物を嘲笑い、見下しているのだ。
「ぐっ……」
騎士はあまりにも弱い。ゴブリンの1匹に大怪我をさせれば良い方だろう。
一方でロキラは───
「さぁて……」
───相手を瞬殺するだけの力を持つ。
「……は?」
騎士が間抜けな声を漏らす。目の前で何が起こったのか分からなかったのだ。瞬きをした瞬間、ゴブリン達の頭が弾け散っていた。脳漿、脳味噌が宙に散らばり、湿った土にべちゃべちゃと落ちる。
ロキラの手中には銃が収まっていた。
長い銀の銃身の部分には黒で曲がりくねった蔓のような紋様が描かれ、筒の下にはたたみ込まれた片刃の刃。
───
銃口から少しの硝煙を上げるそれをくるくると回しながら、ロキラは心底楽しそうに呟いた。
「ボーナスステージ、スタート」
*****
ゴブリンの巣は大体崖などの下に穴を掘って作られることが多い。その中で繁殖をして、金銀財宝を貯め込む習性がある。
ゴブリンの巣の大広間にて。
そこでは繁殖を目的とした乱交パーティーが行われていた。
あちらこちらでゴブリンが攫ってきた人間を犯している。
ゴブリンの雄はいきり立った自慢のモノを女の胎内に突き挿れ、腰を夢中で振っていた。
ゴブリンの雌は媚薬で無理矢理人間のモノを勃たせて騎乗位で子種を欲しがっていた。
人間からすれば地獄、ゴブリンからすれば天国のような場所である。
その場で土や泥で固められた天井を虚ろに見つめる女が1人。
そばかすがある女だった。
痛んだ茶色の髪、焦げ茶色の瞳には絶望しか映っていない。何ヶ月もここで犯され、服装はボロボロ。元は活気ある性格だったのであろうが、今では見る影もない。
彼女───サマラは今犯されていない。
理由は膨れ上がった腹を見れば分かるだろう。ゴブリンの子供を授かっていた。サマラはこれで3度目の妊娠である。
1度目は自ら舌を切って死のうとしたが、
2度目は嫌だ、助けてと泣き叫んだ。
今回、3度目で希望は無いと全てを諦めた。
もはや涙も出ない。陣痛が来ても身動ぎ1つ起こせない。そんな体力も無いし、気力も無い。
「ご、ぶ…お″っ……ほぉお″…、……っ、…ぇ、げ……!」
サマラのすぐ隣では上の口に怒張した緑色のモノを咥えさせられ、乱暴に扱われる女がいる。下半身を別のゴブリンが蹂躙、種付けプレスをされていた。ガクガクと体を震わせるその女は恐らく新しく攫われた女なのだろう。膣内から溢れる液体には白濁だけではなく赤色も混じっている。
ずるりと女の蜜壺から赤と白に塗れた肉棒が引き抜かれると、待ってましたとばかりに別のゴブリンがムスコを挿入する。
腹が膨れるまで
「………」
サマラは相変わらず天井を見つめていた。
「グギ、ギ……ッ!」
虚ろな彼女の前に現れたのは、木で作られた容器を持つゴブリン。
中には最低限の栄養が入った流動食。母体となる雌は子供を産ませるだけの体力を必要とする。そのために最低限の食事はさせられているのだ。
「………」
ゴブリンは木で作られた
「……こほっ、げほっ」
生きたいわけではなく、生かされる。
人間としてではなく、子を孕む肉袋として。
早く死にたい。でも、死なせてくれない。
サマラは絶望していた。
大広間の入り口から物音が。
何かが弾ける音と、何かが土にばらまかれる音。
そして、銃の破裂音。
それが何度も何度も繰り返される。
不審に思ったゴブリン達が、何匹か入り口から出て行こうとする。
その直後、ゴブリンの頭が弾け飛んだ。遅れて銃声が
「おーおー、相変わらずお盛んなことで」
入ってきたのは中性的な美人。
幻想的な美。
白い容姿の中に在る紫色の瞳はまるで宝石のよう。乳白色の肌は押せばどこまでも沈みそうで……色素が薄めの薄桃色の唇は潤っていて思わず吸いつきたくなる。
美人は容姿に似つかわぬ邪悪な笑みを浮かべて、銀の長銃身を構えた。
「おれも混ぜろ」
純白のコートが靡けば、火器が火を噴く。
サマラには銃火器を扱う救世主が神のように見えた。
*****
十数分前───。
森の中を鼻歌交じりに闊歩しているのはロキラ。その後ろから数人の護衛が追っていく。
時々ゴブリンが襲ってくるが、その全てを脳に銃弾を1発ずつぶち込むことで避ける彼女。神速の早撃ちに護衛達はただただ目を見張るばかりである。
「ゴブリンの巣はどこだろうな」
「ゴブリンの……巣、ですか?」
「おう。多分そこに金銀財宝並びに攫われた国民共が生け捕りにされてる」
「い…け、どり? またどうしてそんなことを……?」
「あれ、言ってなかったっけぇ? ゴブリンが他種族を攫うのは繁殖するためだって」
「は…繁殖……」
「ま、早い話が子作りだ」
淡々と言うロキラに護衛組が全員息を飲む。ロキラは鼻で嗤った。
「男はゴブリンと交尾して子種を搾り取られ、女もやっぱりゴブリンとセックスして子供を孕まされる。おれらからすりゃあ、ありきたりな話だ。酒の
本当にありきたりなのだろう。言葉に激情がこもっていない。むしろ、おどけているような口調だった。護衛達はあまりの酷さに魔物への嫌悪と憎悪が入り混じっているのに。
そして、同じ人間がそんな酷いことをされているのに、情が全く感じられないロキラに若干の嫌悪が生まれる。
それもいつものことなのだろう。あからさまに感じる侮蔑の視線を無視して、鼻歌交じりにどんどん先へと進む。
「あっと、これは言ってなかったな」
ロキラはふと立ち止まると、振り返る。彼女に着いてきていた護衛が揃って立ち止まった。
「帰りたいやつは帰っていいぞ。ゴブリンに殺されそうになってもおれは助けねぇし」
「っな……!?」
それに目を剥く護衛達。ロキラはそれを見て肩をすくめた。口元には小馬鹿にしたような笑みが浮かんでいる。
「だって、そうだろ? なんでわざわざ肉壁同然の足手纏いの命を助けてやらなきゃならないんだ? おまえらはおれを守るためにこの場所に来てるわけだ。なら、別におれが守る必要なくね?」
「ぐっ……!」
正論を言うロキラに全員が押し黙る。反論の声すら出なかった。
「そら、帰った帰った。おれを守り切れねぇタマ無し共はとっとと馬車まで戻ってママのお胸に頭を埋めておねんねしてろ」
「~~っ!!!」
あまりの暴言に怒りに飲まれかかる全員。明らかに相手を煽る言葉。ロキラは元々進もうとしていた道に体を向けるとそのまま歩き始めた。無防備な背中を見せられるほど、彼女は護衛達を重要視していなかった。何故なら、いつでも殺せるのだから。
その背中を見て、護衛達は次々とロキラの進む道と真逆の道……つまり、元来た道を歩き出した。
1人、2人、3人……。5人目まで護衛達はその場から立ち去る。
残りの1人……ロキラに質問を投げかけていたあの男である。
彼だけはその場から動かない。
遠くなっていく仲間の背中とロキラの背中。それを見比べて……彼はロキラの背を小走りで追っていった。
「……おい。あいつ、戦士のやつを追いかけてるぞ」
「は? ……まじかよ」
「真面目なやつだなぁ、死ぬかもしれないって話なのに」
「わざわざ命を無駄にするのか……馬鹿なやつ」
口々に男の悪口を言う護衛達。彼らは唯一ロキラを追っていった男を引き留める訳でもなく、さっさと馬車へと向かっていた。
*****
「ま、待ってください!」
「あん? ……お、頭が良いやつが1人」
「え?」
「いんや、こっちの話だ。で、おまえはなんでおれを追ってきたんだ? おれ、守らねぇよ?」
改めて突き放すように言われて、何も言えなくなる騎士。しかし、言葉を絞り出した。
「そ、それでも……あなたを護衛するようにと命を下されましたから……。護衛対象を放っておくなんて、出来ません」
それが騎士としての最低限の流儀。たとえ死んでも守り抜かなければならないのだ。
「……ふぅん」
死すら覚悟している彼に、ロキラはどうでもいいような返事。直後、にっこりと笑みを深めた。
「まあ、いいや。おまえは見込みありそうだからな」
「……はい?」
「安心しろよ。おれの傍に居れば大抵の身の安全は保障できるぜ」
「え……。で、でも、さっきは守らないって……」
「守らねぇよ? おれに寄ってくる馬鹿がいるから自分の安全を優先してんだ。おまえは偶然にもその恩恵を受けることができているだぁけ♪」
「え、じゃあ……」
さっきの騎士達も呼んできた方が……。
そう思った騎士だが、ロキラがさっさと先に進むため、戻ろうにも戻れない。
彼らは馬車まで無事に辿り着くことが出来ているのだろうか。騎士は不安と心配が入り混じったものを抱いたが、なんとか掻き消して彼女の後を追った。
*****
鼻歌交じりにゴブリンの頭の中身をぶちまけるロキラ。
寸分違わず眉間を撃ち抜く腕前もさながら、速射も技量も理解が出来ないほどに極まっている。
まず、速射。
弾丸が同時に数弾撒き散らされる。
次に、技量。
1度に大量に現れたゴブリン達に対して、ロキラが引いたトリガーの回数は1度だけ。腕に薙ぐように1度だけ弾を吐き出させる。発射された弾はなんと進行方向を変えて曲がっていく。そして、横並びのゴブリン達の頸に次々と食い込んでいった。
───曲射。
数十メートル先から弓を持ったゴブリンがロキラに向かって弓を引き絞っていた。矢先が鋭利な石で出来た木矢。向こうからは見えてもいないし、何より森の中で木が邪魔。いくら弾道を変えられてもゴブリンまでは到達できないはず。しかし、ロキラは平然と1発だけトリガーを引く。吐き出された弾は木に当たると跳ね返り、方向転換。それを数度繰り返して見事ゴブリンの目玉に命中して脳味噌へと食い込む。
───跳弾。
周囲を包囲するようにゴブリン達が一斉に襲いかかる。全方位攻撃。空中から、地上から、遠距離から。あらゆる方向からのゴブリン達の攻撃に、ロキラはただ嗤う。適当にばらまかれた弾は宙を曲がり、地面や木に当たって跳ねる。最終的には全てのゴブリンに命中して辺りを真っ赤に変える。
曲射と跳弾の応用、そして空間把握と数秒先を計算で未来予知。それにより出来る人並み外れた芸当。
そして、更に驚くべきはそんな使用者の技量を最大限に引き出す銃の性能である。
弾速。もはや音を置き去りにしている。銃声が数秒遅れて聞こえてくるのだ。音速を超えた弾丸速度は神速の域。
本人の技量も銃の性能も桁違い。
負けるはずがない。
騎士もただただ着いていくだけ。まるで散歩するようなスピードで、彼らはどんどん先へと突き進む。
ゴブリンの巣が見えた。
次回の投稿は未定です。