「前回の更新は、4年前です」
「―――それは流石に嘘だよ……まだ1年くらいのはずだよ?
だってまほルート終わらせるまで更新止めて集中しようって決めただけなんだよ?」
「―――ですが、事実です」
「そうか……作者の遅筆は酷いね」
ええ、マジすいません(土下座)
《一先ず・前書き》
※ 今回のお話において、ちょっとアレな表現が出てきます。お食事中とかに見ないようにお願いします(万が一の場合も責任を負いかねます)
第11話
血の滴る肉が焼けている。目の前の鉄板の上で―――
ジュゥゥゥ……と音を立てながら香ばしい匂いを振りまいて焼けているそれを90度回転した世界で眺めながら、片手を伸ばす。盆の上に載せられた葡萄をひと房、一粒をちぎるではなくそのまま摘まみ上げて口元に運ぶ。ぷちりと音を立てて葡萄を口に入れて咀嚼すれば、甘味が舌を口内を刺激していく。
そんなこんなを尻目に肉が焼き上がり、シャンと白刃が閃けば肉の塊は一口サイズに刻まれて鉄板の上で踊った。一口サイズのそれを手にしたフォークで刺して口元に運ぶ。悪魔の肉体は焼けたばかりの肉の温度程度では火傷もしない。遠慮なく放り込んで咀嚼すれば肉の旨味がじゅわっと口を蹂躙していく。
『ほれ、そろそろ満腹じゃろ?疾くせよ』
美味い料理を堪能して幸せに浸っているところに耳元に響くのは、俺にとって死刑宣告に等しいものだった。このまま優雅に食事を終えていいじゃないかと思う反面、これを始めた経緯を考えて―――俺は
―――寝転んだ態勢のままグッと背筋と手を伸ばして盆の上に残っていた【鳥の羽】を掴んだ。
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―――餓鬼。
幽鬼、または外道に属する悪魔。食べても食べても決してなくならない「飢え」に苛まれ続ける。その上手にしたものはすべて燃えて灰になると言われる。
―――ゥォェェェ―――
遥か天の方角から遠く響く小さな音とともに、ビチャビチャと独特の酸の混じった刺激臭を放つものが落下してきた。びちゃりと地面に落ちたそれはたやすく飛び散って周辺に悪臭刺激臭を立ち込めさせる。
ずるり と、何かが身を乗り出した。
ぼとり と、何かが落っこちた。
空中に開いた“穴”から産み落とされるようにして滑り落ちた《それ》は、落ち窪んだ眼孔の奥に光を宿して地を舐めるような動きでよろよろと立ち上がり、地面にべっとりと張り付く汚物のようなそれに向けてズルズルと体を引きずって進み
「クフヒヒヒヒヒヒヒヒィィィィィィィーーーーーッ!!」
―――歓喜の声を上げた。
きゅぼっ
「クフヒヒヒィヒヒヒイィィィーーーーーーー!!!?」 ※Weak!!
―――そしてそのままさっきより1オクターブ高い汚い高音の悲鳴を上げながら、総身を包む黒い炎に焼かれて焼失した。
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「んォ……ヴ―――ォ゛ッ゛……」
『よしよし、良い調子だぞ』
脳内でケラケラと上機嫌な笑い声とともにまざはろ様の声が響く。が、それに応える余裕は全くなかった。
今俺は―――手に持った鳥の羽で喉の奥をつっついて全力で嘔吐して、腹の中のものを全部吐き出して終えた直後だった―――。
《なぜなにローマさん》
ローマの貴族の食事事情として、ローマ式食事方法 というものがある。これは
1:満腹になるまで食う
2:喉の奥の方を鳥の羽の根元部分を突っ込んで突っつく
3:刺激で腹に入れたものを嘔吐して全部吐き出す
4:再び満腹になるまで食う ※2~4を満足するまでエンドレス
というもの。「美味を心行くまで味わいたい」「けれど満腹になってしまったらもうそれ以上食べられない」という葛藤を
「せや!腹の中のもの全部吐いたらまた食えるやんけ!」というコントのネタみたいな発想でクリアした食事法である。
「食べ物は大切に食べなさい」「箸をつけた以上最後まできちんと食べ切りなさい」を信条とする日本人メンタルとは相容れないこの食事法を強要されている理由はただひとつ……!!
「あの……まざはろ様……?これで本当に「楽してレベリング」が可能なんですか……?」
そんな風に脳内のまざはろ様に疑問を呈する俺。そう、今回のこの顛末になった理由はすべて「悪魔と戦う度胸がないので可能な限り楽してズルして強くなりたい」という俺の願いによるものである。結果として“俺は戦わなくて済む”という条件をクリアしているが、“無理に食べ続けた上、全力で吐き続ける”という苦行を強いられている。
するとまざはろ様は「ふふん」と鼻を鳴らし、説明を始める。
『汝が吐いた汚物は撒き餌よ。餓鬼を呼び寄せる、な』
そして始まるまざはろ様の“よくわかる餓鬼教室”
なんでも一口に「餓鬼」と言っても種類があるらしい。
主にメガテンにおける“外道ガキ”や“幽鬼ガキ”の類は【無財餓鬼】という最底辺の餓鬼。これに対して【有財餓鬼】という餓鬼が存在し、その【有財餓鬼】も【少財餓鬼】と【多財餓鬼】に別れるのだとか。
これ以外にも宗教によっては「生前に犯した罪の種類によって20以上の種類に分岐して様々な名前で呼ばれる餓鬼が存在する」のだとか。ううむ、奥が深いな餓鬼道。
『このうち、我らが狙っている餓鬼は【少財餓鬼】である。こやつは少し特徴的での、「不浄な物」しか口にできぬ餓鬼なのだ』
つまりは血や膿、人が吐しゃしたもの、はたまた糞便や死体などを食べる餓鬼、らしい。
――ということは、だ。
俺がこうして床に吐き落としたゲ●を目当てに、階下のエリアにガキが湧き出してくる→その餓鬼がゲロもろとも【不浄を浄化し焼き払う三昧火】で焼き尽くされる→経験値となる。というシステムという事になる。
なんだろう……これとよく似たもの知ってる気がする。
「……にしてもまざはろ様?私のレベル、まったく上がる様子がないんですけど……?」
結構な回数吐いてるし、結構な回数下の方で悲鳴が上がっているし、酸っぱい独特な臭いが燃えた時の臭いで貰いゲ●しそうな勢いだというのに、なんか強くなった気が全くしない。不思議に思ったので尋ねたところ……
『当然の帰結であろ。そもそも汝の魂の器が高すぎるのだ』
フンと鼻を鳴らして胸を張り、まざはろ様はそう言った。
ドラクエなどのRPGでもそうだが、レベルというのは上がれば上がるほど、次のレベルに至る経験値は高くなるものらしい。その上でこの世界、所謂【魂の位階(レベル)】というものは相手の強さに比例してしまうものなのだという。
ガキのレベルは精々が10にも満たない。いいとこ4~5が精々。対して俺のレベルは現状18。ここまでレベルの差が開いていると、最低保証分以外の経験は手に入らないのだとか。
『なぁに。餓鬼は成仏せぬ故餓鬼道に舞い戻り、再び湧いてくる無限仕様ぞ。数日間もぶっ通しで続ければ望み通りになるであろ』
「―――なんだってこんな嫌がらせの様な事を……?」
思わずそんな風にまざはろ様に疑問を返していた。当然の感覚ではある。最初から言ってくれればここまで無駄なことをせずに済んだかもしれないのに……という内心の憤懣が止まらなかった。
が、そんな考えはまざはろ様の言葉で霧散していた。
『決まっておろう。《汝がそれを望んだから》に過ぎん。
【悪魔と戦う事のない方法で】【可能な限り安全に経験を積んでレベル上げをしたい】
この条件に合致するものとしてこれ以上的確な作戦はあるまい?汝はただ寝転んで美食を堪能し、それをローマ式で吐き出して、その
あ、はい。俺がリクエストしましたよね。それ俺のリク内容でしたね。
「地霊相手の雑魚狩りはともかく、戦うとかは基本無理ゲーすぎるのでなるべく戦わないように」
「できれば安全マージンをとって、できることなら無傷のままレベリングできたらなー」
「多少のシブい経験稼ぎになろうと安全には勝てないとおもうんで」
みたいなこと言ったね俺ェ!!ままならねぇな畜生!!
確かに安全ではある。直接戦うこともないし、敵は勝手にやって来て、勝手に焼き殺されるわけだから相手に認識されないまま経験だけ手に入る。
―――でもそれはそれとして無理だなと思ったので俺はしめやかにまざはろ様に(脳内イメージで)土下座していた。
「すみませんでした。どうか、どうかこの通りなのでコレはなかったことに……」
『なんじゃ?つまらぬのぅ……』
ぶーぶーと唇を尖らせるまざはろ様。
だが俺は気づいていた。もごもごとブツブツ呟いているように見せて“このまま続けて行けばいずれ【怠惰】と【暴食】に能うたであろうに”とか呟いていたのを。知らず知らずのうちに七つの大罪に片足突っ込みかけていたらしい。
そういえばまざはろ様―――マザーハーロットの別名は【バビロンの大淫婦】
転じて【大バビロン】であり、何故かイシュタルと関連があるとされる場合があるんだったか。であればイシュタル転じてアシュトレト……即ちアスタロトになる。
七つの大罪に「憂鬱」が含まれていた頃の憂鬱担当が確かアスタロトだったはずだ。要するに異聞と同じ属性に意地でも堕とそうという意図があったという事。
『―――これでわかったでしょう?ローマはこういうことをするのです』
『そこぉ!!ローマに対するヘイトを水増ししようとするでない!!』
それまで黙っていたヘスティア様が耳元に囁くように語りかけて来るのを、耳をつんざくような怒号で塗り替えるまざはろ様。脳内で二柱大戦が勃発しようとしていた矢先に―――
『オン!!ご主人!!侵入者!!侵入者!!』
尻尾をブンブンと振りたくりながら地面からヌッ!と現れるコボルト。俺自身が土下座体勢から上体を起こしたポーズだったため、股の下からコボルドの顔がヌッ!してきて一瞬ビクリと身がすくんだんだが―――股の間から顔を覗かせたまま太腿に顔の両側を挟まれながら鼻先を下腹部に突っ込んでフンスフンスし始めたクソ犬にスンッと一瞬で冷静に戻り、全体重をかけた肘を脳天に落して立ち上がる。
「ギャン!!」とわんこみたいな悲鳴を上げたコボルドはそのままゆっくり全身を地面から浮上させ、俺の前に跪く。
「ご主人!!侵入者!!」
「それはさっき聞いた。どんな連中だ?数とか、一般人なのかとか」
俺は努めて冷静を装ってコボルドに質問した。内心では割とドッキドキである。
このハウスは“ガイア教団の一勢力の人からもらった物件”である。なのでガイア教団は少なくともナワバリとして周知させているはずだ。そうなると、わざわざ踏み込んで来る勢力は限られてくる。
脳内で思考を回転させている俺の予想を後押しするように、コボルドは答えた。
「オン!!メシア!メシア!!マチガイナイ!」
想像通りの答えに若干頭を抱えるも、脳内で口論を始めようとしていた二人から声がかかった。
『ちょうど良いではないか。あのレベル上げは気に入らんのだろう?』
『……そうですね。相手がメシアンならば……』
え?何この二人意気投合してんの?さっきまで口論勃発5秒前カウントダウンだったよね?なんで?
『メシアンはローマではないのでノーカン。天使に汚染されておるのでヒトとしてもノーカンである』
『人の営みを守護する竈の神としては聊か語弊になりかねませんが……概ね同意見です』
「……えぇ……?」
脳内で白い畜生が「わけがわからないよ。きみたちはいつもそうだ」って言っている幻想が増殖して鬱陶しいくらいなんだが……!?
『守護天使を連れたメシアンは汝にとっては同格かやや格下クラスに過ぎん。ガキを相手にするより実入りはオイシイぞ』
『メシア教の使徒は放置しておくと布教という名の洗脳で数を増やして行くので、見つけ次第根滅させておかないと周囲がメシアに染まりかねません』
「ゴキブリか何かなんですかメシア教会……?」
いずれにせよ放置もできないのでどうにか対応してお帰り頂くしかないと、気持ちを落ち着けながら階下に降りる階段に向かうと、そこには人化した着物姿のキヨヒメが、白ハチマキと襷掛け姿で薙刀を携えてスタンバイしていた。
「お供します」という事もなく斜め後ろに3歩下がってゆっくりと付いてくるキヨヒメと、キヨヒメの影に潜むように沈み込みながら進むコボルドを引き連れて、俺は侵入者を撃退するために階下に降りて行ったのだった。
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「―――1階部分が丸ごとギミックとは……」
「しかも面倒極まりないギミックでしたね…‥」
カソックに身を包んだ聖職者然とした青年が2人、ダンジョンの二階部分で周囲を見回していた。その傍らには目元を覆い隠した姿の天使―――《エンジェル》が佇み、周囲を睥睨している。
『薄汚い混沌の気配がします。主の使徒として使命を果たすのです』
「はい!天使様!!」
首から下げた聖印を手に握りしめて、熱に浮かされたように天使を見上げる青年二人の様子は病的な様子ではあったが、その様子を満足そうに天使は見下ろして微笑んでいた―――。
侵入者をどうしたいですか?
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鏖…撫で斬りである(まざはろ様案)
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再教育しましょう(ヘスティア様案)
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身ぐるみ剥いで叩き出す(妥協案)
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穏便に話し合おう