※この作品はR-18です。

女神“混”生   作:米ビーバー

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説明回なので実質初投稿です。 無駄に長くなった……


第1話

 ―――タダより高い物はない。

 

 

 そいつは生まれ変わる前も、生まれ変わった今も変わらない世界の摂理と言える。

そんでその理論に従って生きている連中ってのは基本的に「タダ」の使いどころを知っている。他のどの世界の人々よりも。

 

 

「―――つまり、俺が死んだ理由というのが」

「不肖の弟がしでかしたケラヴノス(雷霆)が原因なのです」

 

 

 土下座から正座に移行した白い女神様が語った内容は、何て言うか色々と理不尽すぎる死亡理由だった。

 オリュンポス神族と他の神族との争いとオリュンポス神族の内輪もめが同時発生。その結果ゼウスの雷霆が次元の壁を越え、別次元の人間にクリティカルヒット。―――それが俺だという話だ。ハッキリ言って笑えねぇ。

 

「―――その……こんなことで償いになるとは言えないでしょうけど……貴方が居なくなった世界での貴方の縁者には十分に“補償”と呼べるモノは行ってきましたので……」

「いやまぁ……それに関しては感謝はしますけども……」

 

 正直なところそういう話じゃねーだろとしか言えない。

 

「まぁそういうわけでな!ユピテルのしでかした罪を贖うため、お前を転生させたのだ!」

 

 えへんとふんぞり返る赤い方の神様。ヴェールからチラチラと覗く金髪と薄っぺらい色々開けた真っ赤なドレスの端々から見える均整の取れた体つきが目に眩しいでやんす―――残念ながらまだ3頭身なお子様状態だが。

 

「おぬしには我らの世界で是非とも活躍してもらわねばと思っていたので今回十分に力を注がせてもらったのだ!力量もギリギリ他の組織に目を付けられぬ程度まで高めた故にな!」

「―――目を付けられない……かなぁ……??」

 

赤い方とは違い、やや自信なさげな白の神様。こう、自分の中で不安が増しているのが理解できる。

 

「えぇと……とりあえずお二人とも、自己紹介とかお願いします」

 

 俺の言葉に居住まいを正して立ち上がり、ローブ状の衣服の上からでもわかるくらいの恵体を誇示するように背筋を伸ばす白の方の神様。同じように胸を張るスレンダーなちびっこ赤神様が続く。

 

「父クロノスと母レアーの娘、竈(かまど)の神ヘスティアーです。コンゴトモヨロシク」

「バビロンの大淫婦、魔人マザーハーロットが高位分霊である!!気軽にまざはろ様と呼ぶが良いぞ!!」

 

 まざはろ様の方はともかくとして、ヘスティアーの名前には聞き覚えがあった。

 

「確か、ギリシャ神話の女神様ですよね?ゼウスのことを弟と言ってたのってそういう事か」

「―――本当に、ニホンの人は不思議ですね。ギリシャ神話や、ローマ神話などにも造詣が深い。博学な方々が多いです」

 

 心底感心したような様子のヘスティアー様。申し訳ない、大体日本のアニメや漫画から得た知識なんです。ヘスティア様とか最近紐神様とか乳神様って呼ばれてます。前世では違う意味でお世話になったことがあります。

 むしろ俺の世代でギリシャ神話に詳しい理由はたいてい「聖闘士●矢」の影響じゃあなかろうか?もしくは「アト●ス作品」。流石に微妙なツラで苦笑いすることしかできない俺である。

 

「そんなお前たち日本人だからこそなのだ。本体(我)が目をかけたのはな」

 

  ロリ体型を更にふんぞらせてどや顔でにやりとした口だけの笑いを見せる赤の神様。

 

「神話に登場する神々の名前に詳しい割に、その神々の出所、逸話、概念、そういったものに頓着をしていない。そんなお前たちだからこそ良いのだ」

 

 ニンマリとロリ顔でしたり笑いするの可愛い(尊い)。そんな赤神様の様子をジト目で見ている白神様。

 

「―――あなたたちのせいで私たちがどれだけ被害を被ったか……」

「こらてらるだめーじ、というやつだ。細かいことを気にするでないぞ、ウェスタ」

「私はヘスティアー!ヘスティアーだから!!」

 

 ギリシャとローマの関連性がまるでわからん……どういうことなの?地中海挟んでお隣ってくらい近かったって記憶くらいしかないんだが。

 

「えぇと……すごく口汚い言い方をするのならば、ですけど……私たちオリュンポス神族の一部は、ローマ神話に浸食されているんです」

「征服と呼べい。ローマは征服により全てを得てきたのであるぞ」

 

 ぷっくりと頬を膨らませるまざはろ様に「どういうこと?」と聞いてみると、さっきよりどや顔でふんぞり返り始める。

 

「ローマの歴史は遠征→征服→勝利である」

「順番おかしくない?」

「黙って聞けぃ!―――ローマの歴史は基本、土地を征服し、そのすべてをローマを通じ、必要な分周囲に振り分けることで成り立っておる。

 

 ―――では、征服した後では何が一番の問題となるか、わかるか?」

 

 まざはろ様の試すような質問に、ちょっとだけ考え込んで、答える。

 

「―――レジスタンス……その土地に昔から住んでた人の抵抗、的な?」

「然り(Esatto)」

 

 まざはろ様は満足そうにこっくり頷いて、「故に」と繋ぐ。

 

「その手の土着意識の根底にあるのは、往々にして『宗教』なのだ」

「あー、はい。そうですね」

 

 身に覚えがありまくる。というか前世では中東とかその辺めっちゃ宗教がテロってたわ。怖いなーとずまりすとこ……とか言ってたわ。

 

「―――で、『宗教』に依って立つ信者どもを大人しくさせるためにはどうしたらよいと思う?」

「えー……宗教の自由化を許可する?」

 

 実際、日本は宗教に関してはすごく寛容な国だと言える。仏教ですら複数の宗派があるのだから。なおそれを聞いたまざはろ様は「はーやれやれ」ってジェスチャーで応えてくれました。どうやら違ったらしい。

 

「―――まぁ、それも間違いではないがな。だが宗教の自由化というのは人間同士の気質やわだかまりに大きく左右される。加えて王権神授性が強い時世の宗教の自由化というのは、王権に大きな悪影響を起こすのだ」

「言っている意味がいまいち飲み込めないのですけど、つまり正解は?」

 

 オーケンシンジュセツとか言われてもよくわからん。日本の天皇制度もそういうものだったらしいけどいまいちピンとこない。降参とばかりに手を上げた俺にふふんとドヤりつつ、まざはろさまは続ける。

 

 

「それはな―――“神話を奪う”ことだ」

 

 

 言っている意味が分からない。

 

「―――えっと、わかりやすく言うと、ニホンの方々で言う所の『七福神』みたいなモノ、でしょうか?」

「あー……」

 

 助け舟を出してくれたヘスティアー様の言葉に一応腑に落ちた感。

 

 七福神というのは宝船にのった7人の神様で、弁財天、福禄寿、毘沙門天、寿老人、布袋、大黒天、恵比寿の7人を指す―――のだが、弁財天は日本人にも馴染みのある神様に改変したものであり、インドではサラスバティと呼ばれる神様である。他の6人にも神話モチーフがあり、大黒天がシヴァ神だったりする。

 

「つまり、新しく身内に抱き込んだ民にわかりやすく神様を改変したとかそういうので?」

「―――いいえ、もっとタチが悪いものです」

 

 小さくかぶりを振るヘスティアー様にニンマリと笑みを崩さないまざはろ様。よくわからんがろくでもない話になりそうな予感しかしない。

 

「―――最初に言ったであろう?ローマは“征服”が基礎であると。

 そこのヘスティアーがウェスタであるように、『神話的に存在が近似している神』を同一のものとして取り込み、「原典は一つであった。むしろローマこそが原典であった」という神話大系を成し得た。それこそが征服(ローマ)である」

 

 

 ―――どうしよう。想像以上にろくでもなかった。

 

 

「これこれ、この程度でドン引きしておってどうする?我が半身であるお主には新たな地にて征服(ローマ)を成し得てもらわねば困るのだからのぅ?」

「いやいやいやいや無理無理無理無理」

 

 ブンブンと首を振って否定する。無茶を言いなさるな神様。こちとら元々は小国日本の小市民ですよ?そんなの無理に決まってるやろ工藤!!

 

「男児として生まれた以上欲望の一つや二つあろう?今世は女児ではあるがその心は征服の気概に燃えておるはずよ。征服(ローマ)は良いぞ!」

 

ガルパンみたいに言われても無理ィ!!

 

「それにほれ、昔の人も言っておったであろう?『彼の地を蹂躙し、その土地の男の前でその男の馬に乗り、その妻と娘を抱く様は最高だ』とな。実にローマである」

「それチンギスハン!ローマじゃない!!」

「よく考えよ。蒙古(モンゴル)とローマは絹の道(シルクロード)でつながって居る。

 

 

―――つまり、蒙古はローマなのだ」

 

 

 

  そう…………なのか、な……?   ※CHARM! → 【魅了無効】!!

 

 

 

「―――いや、違う違う、ローマ違うローマ違う」

 

 

 なんか多分今コトダマ的な何かで説得されそうになった。駄目な奴だコレェ!!

 

 

「口でいかに嫌だ嫌だと言ったところで身体は正直よ……お主の身体は我の半身であるからな。ローマ力に溢れておるぞ」

「ローマ力《ちから》」

 

 

聖戦士みたいな単語出てきたよ……。

 

 

「そのローマ力がお主を真のローマに変えるであろう。しかる後にお主は我の太源であるマザーハーロットに再び拝謁することになる」

「いやぁ……流石にメンタル的にも無理があるかなって」

「そんな人柱のような計画を止めるために、私が割って入ってきたのです」

 

 ぐいぐい来るまざはろ様と俺の間に割って入ったのはヘスティアー様だった。

しかしまざはろ様の3頭身くらいの身長と比べると大人と子供くらいの差があるというのにヘスティアー様の方が押されている。

 

「ほほう……無策で半身の身体に入り込み、零落して地母神ウェスタ(ローマ)となった身分でよく言ったものだ。そんな成りで何ができるというのやら……」

「あ、貴女も高位分霊ならまだ五分五分です!あとはこちらのヒトの子が決めること!!私は諦めませんよ!弟もアポローンも勿論私も!取り込まれたりしませんから!オリュンポスの神々はオリュンポスの神話のものです!!」

 

 口でも微妙に劣勢なヘスティアー様がこっちを見た。あどけなさを残すうら若き女性がやや涙目である。尊い(迫真)

 

「愛と欲の魔人マザーハーロットが分霊《わけみたま》が命ずる。ヒトよローマを為しローマに生きよ。お主の生こそがすなわち、ローマである」

「ヒトの営みの中央に在り、その営みを護る炉と竈の神ヘスティアーが任じます。ヒトよヒトらしくあれ。慎ましくとも潔癖たれ清廉たれ」

 

 

 荘厳な雰囲気を纏い俺に差し出された二種類の手―――

 

 

 ―――だが本質は結局のところ同じである。

ローマとして全てをローマにしようとするまざはろ様と、ローマに飲み込まれた自分とこをローマから引きはがすためにローマの計画を止めようとしてるギリシャ神話の神様。要するに今生は脳内代理戦争状態ということ。

 

 

「―――すいません。保留で」

 

 

俺の言葉にまざはろ様は少し困った顔をした。

 

 

 

 

 

「無理強いはせぬが―――困ったのぅ。

 

 ―――或る程度の指針は先に決めて置かんと、孰れ世界の崩壊とともにお主も滅びるぞ?」

 

 

 

 

 

 

―――待って待って聞いてないんだけど待って()

 

 

 




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