「―――依頼は達成されました。どうも、ありがとうございました。メディア様」
「いや、私はメディアじゃなくて―――いやまぁもうどうでもいいです」
以前とは違って汐留の傍らにあるバーで、酒ではなくコーヒー待ちをしているおっさん。ガイアの虚無僧さんである。それと向かい合う形で座ってるのは幼女の皮を被った女神。
そう、俺だ()
何か知らんけど俺の存在が“コルキスの皇女メディア”ってことで周知されてるらしい。わけわからんけど、わけわからんけど(大事なことなので二回言いました)
「それで、できれば事件のおおよその顛末について教えていただきたいのです」
デ●マスとかでエントリーシートが入ってるアレくらいの大きさの茶封筒を取り出して俺の方に差し出しつつそんなことをやや小さめの声量で行ってくる虚無僧のおっさんに、神妙に頷く俺。
「まぁ、報酬も貰うことですし、いいですよ」
そう答えテーブルの上のバーに似つかわしくないめっちゃバエる(NOT悪魔)感じの三段積みパンケーキをナイフとフォークで切り分けてぱくりと一口。パンケーキの上に乗っかった生クリームと蜂蜜の味が口いっぱいに広がる。甘ぇ……でも感覚的には“これ最の高!!”って叫んでる内面がある。違和感ェ……
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埠頭のコンクリートの地面に血で描かれた魔法陣。三角形を作るように3つ描かれた魔法陣の底辺に当たる左右の二つにそれぞれ妖気アズミと精霊アクアンズが鎮座し、その時を待っている。図面を描いた当人である俺の肉体は、現在俺ではない人物によって表層を操られている。
地母神ウェスタ――ギリシャでは女神ヘスティアーの名前で親しまれる竈の神で、ゼウスの姉に当たる処女神その人。
「地母神ウェスタの名において、大地に祝福を。山河に豊を、獣に飽を、人に抱を、神に奉を巡れ、巡れ―――
―――巡れ、巡れ、巡れ、巡れ、巡れ――
―――繋げ、繋げ、繋げ、繋げ、繋げ――
―――渡れ、渡れ、渡れ、渡れ、渡れ――
―――紡げ、紡げ、紡げ、紡げ――生まれし命のその恩恵に―――」
朗々と紡がれるその言葉が、途中で遮られる。俺の視界はジャックされてるわけではないのだが、2視点分割表示のように左目と右目で見てる視点が違う感じになり始めた。これクッソ酔うんですが!?どういうことなの!?
「―――ァ―――ぁー……大神たるゼウスとその妻ヘーラー。そしてそれらの母たるレアー、その大母たる大地母神“ガイア”の力によりて、ここに魔性合一を成す」
声質が変化する。唇の片側が声を出させないようにギリギリと唇を噛み締めようとするが、それも届かない。地面に垂らした血液を介してMAGが活性化して光を放ち始めると、脳内でけたたましい叫び声が響き渡る。
『ふざけた真似を―――ティタノマキアを繰り返す気ですかッッ!!ローマァァァァァァ!!!!!!!!』
脳内でエコーをかけたように響き渡って脳をぐわんぐわん揺さぶる叫び声をBGMに、目の前の魔法陣はスパークし、二つの魔法陣の上に乗っているアズミとアクアンズの姿がブレ始めた。
徐々にその姿がモザイクでもかかっているかのようにブレて輪郭が消えていき――やがて限界を越えたところでドロリと“溶けた”。
ドロドロのゲルになったそれが導線を通る電気のように空っぽの魔法陣の方に等速で進んでいく。全く同じ速度で進んだそれは魔法陣の上でぶつかり合い、混ざり合い、溶け合って別の色をしたゲル状の何かになって形を成した。
灰色、或いは黒灰色といった配色のツヤのある光沢をした“骨”。
人体骨格標本図のようなその外観に、重厚な鋼の色を讃えた幅広の長剣と、円形の盾。からっぽの眼孔に目玉の代わりのような光の玉がポゥと点り、それは本物の目玉のようにぎょろりと動いてこちらを視る。
「――我が名は妖鬼、スパルトイ。この名と御身とローマに忠誠を誓います」
「――うむ。許す」
スパルトイの誓いを鷹揚な態度で承認したのは間違いなくまざはろ様だった―――。
*********
「とりあえずまずは紹介から、こちら<妖鬼スパルトイ>です」
ゴトリとテーブルの上に置かれたのは獣の牙のような骨片一つ。
妖鬼スパルトイ。アズミからランクアップ合体で作り出すことができた悪魔で、【斬撃/銃撃半減】の相性を持つ。
――スパルトイを手に入れた経緯は伝えない。
そもそも“どっからきたのかすら説明できないクッソ怪しい女神様”が“原理もうまく説明できない方法で悪魔を合体させてます”“方法は教えられません”。
俺なら即処分するね。誰だってそうする(確信)
「それで、これが切り札でして。物理特化と相性が良かったのが幸運でした」
そういうことになった(事後)
「私を追いかけてきたはずのジャックリッパーが私を見失ったのか、私が範囲外に逃げたからかはわかりません。が、兎に角一般人を狙っていたので上空からそれを探して、汐留駅前の南側でそれを見つけて、上空から急襲したんです」
これは一部本当の話である。
本当のところは結界から外に出てジャック・リパーを探そうとしていたところ、まざはろ様から『あやつなら別のエモノを狙っとるから狩猟の直後を狙えば楽に倒せるであろ』という報告を受けて―――
―――ヘスティアー様がぶちぎれていた(残当)
ただでさえ悪魔合体を途中で邪魔されて半ギレしてた所に「被害者を見捨てろ」というまざはろ様の発言に堪忍袋のテールカット不可避だった。
『―――今すぐあれを討ちなさいッッ!!!』
「了解(ラーサ)!!」
逆らうなどできるだろうか?いや、できるはずがない(反語表現)
かくして俺はスクカジャを連発しつつビルの上を飛び回り、まざはろ様のナビゲートのもと、ジャック・リパーの姿を探し出し、上空から“ダイナミックエントリー!!”したのだった。
マントに関しては、悪魔変身後の俺の姿がフォルトゥナだったのでそれっぽい布を体に巻き付けていただけである。理由?助けに入ったとして、助けられた側が“胴体が操舵輪になってる人間”を見て安心できるか?と考えたらまぁ普通に焦ってビビって半狂乱にもなろう。故にあれは保険みたいなものだったのだと思う。
空に身を躍らせて、自由落下に任せて落ちていく。途中でビルの壁を蹴って落下角度と着地位置を調節。身をひねることで風にはためくマントを体に巻き付ける。そのまま体操選手のように着地に備えているところで
「―――助けて―――」
声が、聞こえた。
「―――“任せよ!!!”」
そして勝手に答えられた。
*********
「―――で、まぁ後は消化試合です。スパルトイを省エネモードから起動させて、ジャック・リパーを押さえてもらって、力でゴリ押ししました」
「何ともまぁ……女神らしくない力圧しですね」
せやろな(達観)
とはいえ、それ以外に方法が無かったんだから仕方ない。
こちとら女神とは名ばかりでハマ(破魔)も使えないロウサイドから外れた存在である。おまけに女神特有の耐久力の低さは据え置き価格である。物理特化の悪霊・外道の類は鬼門というレベルじゃねえのだ。
なので肉盾を用意して全力でゴリ押しした(無心)
物理攻撃半減を持つ妖鬼スパルトイを前に出して飛び込ませ、とりあえず脳内で『その娘は致命傷を負っています!治しなさい』と叫ぶヘスティア様の声に一先ず地面に転がってドクドクと血を流している女性の傷をメディアで塞いだ。
その間にレベル差と相性差でゴリ押ししていたスパルトイ(&地面に半分潜ってこっそりと支援していたコボルト)がジャック・リパーを押さえつけていたので、地面に転がってたジャックリパーの解体用(意味深)ナイフで胸を切り裂いた。
スパルトイ曰く「主が自身で倒さなければMAGを回収する要素が減ります故」なのだとか。初耳だわそれ
ともあれ、ジャック・リパーの退治依頼はこうして無事に終了となったのだ。
「――まぁ、お話はよくわかりました。ありがとうございました」
「いえいえ、こちらもお仕事でしたから」
パンケーキを平らげて、立ち上がってバーを後にする俺に向けられる幾つかの視線。
好奇であったり、興味であったり、好色そうな視線を送ってくるのもいれば、敵意やらなんやらの視線を送ってくるのもいる。バー自体がガイア教団の持ち物だという話なのでそういうことなのだろう。流石ガイア教団、まとまりがない。
『では征くぞ。我らの新居に―――』
脳内で響くのはまざはろ様の声。
まざはろ様が虚無僧さんにおねだりした“報酬”とは、都内の物件だった。
土地ごと空き物件になってるものでいいので1か所報酬としてもらい受けるという話になっており、曰く『将来を見越して拠点を作るべきだからな』という話らしい。
「あのホテルみたいな部屋じゃ駄目だったんですか?」
『なんじゃお前……やっぱり気づいて居らなんだのか』
とりあえず疑問にしてたことを脳内で聞いてみるとめっちゃ呆れた声を出されて微妙に呆れたようなアホを見るようなジト目をされた。尊み()
『あの場所は所謂中立地帯の一部でな。支配して居る家主(悪魔)がおって家賃代わりにMAGを徴収されるようになっておる。なのでお主のように身の丈に合ってないレベルの悪魔がずっと滞在しようと思ったら枯渇して早晩ゼリー化するであろうな』
そういうのマジ早く言って欲しかった。ユーザーフレンドリーさの欠片もねぇ脳内ナビゲートにもはや絶句しかない俺であった。
『ちなみにあのホテルの地下には悪魔合体施設があるから初心者の登竜門となっておるのだ。故にお主もあまり怪しまれないのだ』
「えっ?もしかしてあそこ業魔殿の系列なの?」
天秤のてこ入れ(一段階進みます)
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ギリシャに寄せる
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ローマに寄せる
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どちらでもない