Nightcrawler~夜に堕ちる彼女たちへ~ 作:イツカ・ドコカデ
無限に存在する平行世界。その異世界は全てが繋がり合っている訳ではない。世界と世界の間には壁――あるいは隙間がある。これを貫き、世界を移動する手段こそが『門』だ。
「……まさか、こんな場所があるなんてね」
「……知られていないのは当然」
呆れたような五月雨の言葉に、アルスヴィズもおざなりに答える。白と黒の彼女たちがいるのは、暗い夜に包まれた地下街――世界と世界の隙間に作られた小世界だ。イメージとしてはトンネル、あるいは空洞と考えればいい。別の世界に届かない道、そこにわざわざ仮の世界を作成したものである。
「小さすぎて、見つかってないんだと思うけど……」
もちろん、このような少世界の作成はどんな世界でも禁止されている。通常の『門』と同じく、元の世界の負担になるからだ。限られたリソースでできた世界に、余裕がないというのは異能の世界では常識である。
だが、禁止されていてもこのような小世界を作成する者は後を断たない。理由は明白だ――こんな小世界にしか、居場所がない者ばかりなのだ。
世界を追放された者。犯罪者として追われる者。迫害される者。それらを相手に甘い汁を吸おうとする者。だからこそだいたいの小世界は治安は最悪であり、弱い者は生きていけない弱肉強食の世界が形成されるのが常だ。
「……問題はない。色々な世界から奪って持ち込まれてるだけ……わざわざ、潰されるような派手なことはしない……はず」
「はずって……」
「……小世界の作成者が、うん。信用できないし?」
五月雨とアルスヴィズは、薄汚れた路地を歩いていく。ゴブリンやトロール、人狼、ニンフなど人間ではない知的生命が所狭しと揃った幻想人類の見本市のような通りを、不躾な視線に気を止めず、アルスヴィズはある酒場を見上げた。
「……ここ」
「……いや、何のために連れてこられたのかも聞いてないけど?」
五月雨の言葉に、アルスヴィズは小首を傾げる。
「……そうだった?」
「ええ、そう」
「……吸血鬼なら……んー、サミダレでも気にいると思う」
アルスヴィズは基本的に言葉が足りない。そのことは、五月雨も理解している。理解しているから、説明を求めても無駄だということを悟った。
「……わかった。とりあえず、何なのかだけ確認する」
† † †
酒場の中は、甘い『匂い』と薄暗さに満ちていた。光源と呼べるのはテーブルに置かれた蝋燭の明かりぐらいなもので、通常の人間では自分の手を見るのも困難だろう。
ただ、吸血鬼の真祖である白と黒の少女にとってはよく見える空間だ。一〇人にも満たない女たちが淫らに絡み合う姿が、はっきりと――。
「あら、アルスヴィズ? お久しぶり」
そう言って声をかけてきたのは、一人だけカウンター席に座っていた女だ。いや、正確にはカウンターの上に電流でも流され続けたように痙攣する少女がいたので、今は一人と言うべきか。
「……ん、そう?」
「本物の不老不死だと、時間感覚も狂うんでしょうけど……」
アルスヴィズの言葉に、女が苦笑する。何となく、五月雨はお互いの言いたいことが理解できた。時間の感覚が寿命のある存在と違うのは、不老不死あるあるだ。
「そっちの可愛い子は?」
「……サミダレ。私の」
ぎゅ、と自分の腕に抱きついてくるアルスヴィズを、五月雨としても振りほどくことはしない。その複雑な表情を見て取ったのだろう、女が五月雨に顔を近づけた。
「あ、ふうん」
「――ッ」
近づいただけで、甘い『匂い』が鼻孔をくすぐった。香水などの匂いではない、これは血の『匂い』だ。
そして、五月雨は女が何者なのかすぐに察した。
「……淫魔?」
「御名答。でも、驚いたわ。あなた、吸血鬼というより真祖よね?」
真祖が二人揃っている、その光景に素直に驚く淫魔に、五月雨もため息混じりに視線を逸らし――ふと、気付いた。
「あ」
赤い液体の入った小瓶、それをアルスヴィズが割る。それが何なのか、脳裏に思い浮かべるよりも早く五月雨の視界が真っ白に染まった。
† † †
「簡単に言うと、淫魔の血って吸血鬼を酩酊状態にするお酒みたいなものなのよね。で、淫魔にとっても淫気に染まった吸血鬼の膨大な魔力は極上のごちそうな訳」
ようは持ちつ持たれつ、互いに利益があるってことね、と淫魔が微笑む。だが、五月雨にはその言葉は聞こえても、理解できない。目が霞み、頭が熱を帯びたように意識が朦朧とする。吸血鬼、特に真祖になれば毒はもちろんアルコールも効かない――そういう意味では、五〇〇年生きた五月雨にして初めての泥酔状態だったのかもしれない。
淫魔たちに、軽々と抱きかかえられる。淫魔たちは慣れた手付きで五月雨の服を脱がしていくと、目隠しをしていく。
「はーい、ちょっと待っててね? すぐに終わるから」
目隠しなど、霧になれば問題ない……のだが、今はアルスヴィズの許可がなけれな大変なことになるだけだ。仕方なく大人しくしていると、何かに着替えさせられ再びどこかに運ばれた。
「……あ?」
「ごめんなさいねぇ、真祖にへたに暴れられちゃうとわたしたち一瞬で死んじゃうしね。はーい、お手々を上げて?」
背中に何か冷たい棒が押し付けられると、両手を頭上に持ち上げさせられる。そのまま両手首にカチャリと何かが嵌められ――手を離された。
「ひゃ!?」
ガクン、と足に力が外れず座り込んでしまいそうになる。しかし、がちゃり、と金属音がして途中で止まった。
「はーい、そのままでいてね?」
「あ、ああ、ああああああああああああ!?」
淫魔の細い指が五月雨の股間を撫でると、急激に何かが膨らんでいく感覚に五月雨はのけぞった。目隠しで見えないが、尋常でないことが起きている気がして――。
「「あ……!」」
膨れ上がった何かがどこかにあたった、そう思った瞬間、目隠しの向こうで蕩けた声が自分のそれと重なったのを五月雨は聞き逃さなかった。
「はい、じゃあ目隠しを外しましょうね?」
「ひゃ、あ!?」
カチャリ、と目隠しが外されると、五月雨がビクリとのけぞった。卑猥な黒いベビードールへと着替えさせられた五月雨は、ポールダンス用のポールに両手を頭上に拘束されて繋がれていたのだ。かろうじてM字で足を広げ座らずにすんでいた両足の間、自分の股間から伸びていたのはふたなりの肉棒だった。
――そして、目の前には白という色以外、まったく同じ体勢のアルスヴィズの姿があった。さっきぶつかったのは自分とアルスヴィズの亀頭同士だったのだ。
「……これで、サミダレも……私を、孕ませられるようになった……」
「ちょ……! だめ、うごい、た……ああ、あああああああああああ!?」
アルスヴィズのカウパーがお漏らしのように溢れる鈴口が五月雨の裏筋をなぞった瞬間、黒い真祖の少女はガシャガシャ! と手枷をならしてのけぞった。ただでさえ淫魔の血で酔っているところだ。生やされたばかりの男根から与えられた、初めての快感にたやすく絶頂してしまい、大量の精液をアルスヴィズへとぶちまけた。
「……濃い……すっごい、サミダレのはじめてのせーえき……」
「ああ、や……いわな、いで……え、ああ、ああ!?」
「あ……次は、私……私が、サミダレにいっぱいかける……ぅ」
黒と白の少女が、M字開脚のまま淫らに腰を振るう。見た目は愛らしい幼さの残る少女だが、この腰の動きや表情、仕草は完全に淫蕩な女のソレだ。淫魔でさえ卑猥だと認める、妖しい背徳的な絡みがそこにはあった。
「ほら、二人だけで盛り上がらないでぇ」
「その可愛いお口で、私たちのも咥えて? 真祖サマ」
真祖の膨大な魔力が帯びた淫気に当てられ、淫魔たちもガチガチに固くなったふたなりを突き出していく。五月雨とアルスヴィズは、口元に突き出された肉棒に舌を這わせ喉奥まで一気に飲み込んでいった。
卑猥な水音と、甘い嬌声が薄暗い部屋に響き渡っていく。アルスヴィズは咥えたふたなりに舌を這わせながら、びくんびくんと腰を弾ませると五月雨と同じように大量の精液を射精。五月雨を白濁で穢していく。
「ああん、この子たち、お口お上手……」
「見た目は幼いけど、へたな淫魔よりヤってるでしょうしね」
「んぐっ……んん、んんんんんんんんんんんんんんぅ!?」
「ん、ん……ん、んん……ぅ」
白黒の少女たちが、交互に射精していく。相手を穢す背徳感と、相手に穢される被虐感。それを自分の意志ではなく、淫魔たちに強要される形になっているのだ。
その上で、淫魔たちも熱気に当てられたように肉棒を突き出していく。口が塞がっているなら頬や首筋、腋、胸、脇腹、髪の毛とこすりつけて白濁で欲望を白く塗りつけていった。
「もう、みんなすぐに酔っ払っちゃったじゃない。駄目よぉ、この二人を楽しませてあげないと」
クスクス、と離れてみていた淫魔が微笑み、淫欲の宴に歩み寄った。二人の真祖が蕩けきった目で見上げてくると、二人の頭を撫でながら告げる。
「真祖と遊べる機会なんてそうないもの。とことんサービスしてあげる」
真祖にとって、淫魔とは取るに足らない弱者だ。象が蟻を一匹一匹気にしないのと同じように、その気になれば刹那で消し飛ばされる存在に過ぎない。
それでも、淫魔には淫魔のプライドがある。快楽ならば、真祖に負けることはない――淫魔たちは真祖二人を見た目相応の快楽人形に仕込むために、砂糖にたかる蟻のように手を伸ばしていった……。
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