Nightcrawler~夜に堕ちる彼女たちへ~ 作:イツカ・ドコカデ
12.『??日目』誤ち
この世界は、科学という『異能』が存在する。他の世界であれば魔法や呪術など、別の法則が世界を支えている――この科学という異能の最大の特徴は、「個人の資質に左右されず、誰でも再現可能」というものである。
「……異常じゃのう、明らかに」
そう呟いたのは、一人の女だ。鈍く輝く銀のショートカットに、切れ長の瞳。一七〇を優に超える長身。引き締まった体躯でありながら、革ジャンとジーンズというラフないでたちの上からでも女性らしいラインがよく見て取れるプロポーション。
そんな女が、とあるビルの三階にある喫茶店のボックス席から街の様子を見下ろしていた。スクランブル交差点を行き交う人々、この世界の住人を、だ。
――異常、女はこの世界をそう表現した。他の平行世界を支える法則から考えれば、科学は一線を画す特徴があるからだ。
「魔法や呪術、錬金術、超能力、権能、特異能力――本来、世界を支えるモノとは自然と等しくあるべきじゃ。じゃが、科学は違う」
異能である科学最大の特徴、「個人の資質に左右されず、誰でも再現可能」というのは自然のそれとはまったく違う。
例えば火は燃えるものだし、氷は凍るものだ。自然の法則とは、火は火であり、氷は氷。個々の個性、法則は不可逆なものであって代用は決して効かない。
しかし、科学の再現性は違う。個々の個性に左右されない。いわば、火が凍り、氷が燃える事が可能となる。才能も知識も経験も、もちろん必要であるが科学の恐ろしさはそれが絶対でないということだ。
「もしも、ワシらの異能と同等、あるいかそれ以上になった時はこの世界があらゆる異世界で最高位になるやもしれんな」
女は、苦笑する。この世界の科学は未熟だ。だが、科学という異能が進歩すれば進歩するほど、この世界の住人全てが残らず底上げされる――そんな世界や異能は、無数に世界を渡り歩いてもまず目にする事はない。
そう、いつか――それが遠い未来であろうと、この視界に映る全ての老若男女が彼女を超える存在になり得る。それは恐ろしいまでの脅威だ。
「実際、銀の弾丸とかここ数百年の話じゃからな。ワシとかは痛くも痒くもないが、普通の同族なら殺せるからの」
「……物騒な事、考えてない?」
その声に、女は見上げた。そこに立っていた、より具体的に言えば待ち合わせていた相手に屈託なく笑う。
「おう、九条の嬢ちゃん。どのあたりが物騒じゃった?」
「……殺せるあたり」
「いや、事実を口にしただけじゃよ」
九条のぞみは、眼鏡を外して目頭を押さえる。頭の痛い相手、というのが目の前の女に対するのぞみの正直な感想だった。
「……真神の婆様は変わらないわね」
「婆言うない。こんな別嬪捕まえて」
カカっと笑う女――大神に、のぞみは微妙な表情でため息を密かにこぼす。見た目は確かに、二十代も半ばの美人に見える。だが、その姿はのぞみが物心ついた頃から一切変わっていない――いや、もっと言ってしまえば境界防衛局でもっとも長命の存在だ。
そう、五〇〇年の歳月を生きている五月雨でさえ彼女の生きてきた長さには及ばない。
「本当、真神の婆様に声をかけなくちゃいけないのは業腹なんだけどね。そんぐらいには、手が足りないのよ」
「というか、それこそあそこには五月雨がおったじゃろ? 真祖同士がやりあったとはいえ、撃退には成功したじゃろうに……」
「でも、まだ『門』を開けようとした誰かがいるもの。また、ああいうのが起きてからじゃ遅いでしょ?」
本来なら、人混みでする話ではない。しかし、のぞみはテーブルに置かれていたナプキンに素早く指を走らせていた。それは人払い、人の意識を逸らすための魔法であり、へたな結界などよりも簡易的な分、気取られにくい見事なものだった。
――腕は衰えておらん……いや、むしろ上がっておるか。
真神はのぞみの魔法の腕前に、そう笑みを飲み込む。家柄や実力、才能から局長へと召し上げられてしまい、現場から遠ざかったとしてものぞみの本質は魔法使いだ。だからこそ、研鑽を怠っていない……その事に満足するそれは、若者の成長を楽しむ年長者のそれなのだが、真神自身にその自覚はない。
「事務所で話さん理由は……ま、言うまでもないかの。まだワシの事は隠しておきたい訳か」
「もう一人、送るべき人員が決まってない内はね。本当、永田町に住む鵺って面倒なのよ」
退治できればどれほど楽か、という言葉はのぞみは飲み込んだ。相手に物騒と言っておきながら、より物騒な言葉を言うのははばかられたからだ。
ただ、目の前の女相手につい口が滑りそうになるぐらいには心を許しているのだけは事実だ。
「そう言えば、ほのか嬢ちゃんと五月雨がおったのだったな……うん、もう一人もかわいいのだとよいの」
「……わかってる? 戦力として言ってもらうんだからね?」
「クカカ! 硬いこと言うない」
「あの……ひう!?」
真神に言い返そうとしたのぞみが、ビクっと体を跳ねさせる。テーブルの下、真神の靴を脱いだ爪先で、のぞみの脚を撫でたのだ。
「こ、こら……!」
「久しぶりに良かろう? ほれ、魔法で隠匿されておる限り、問題なかろうて」
真神は人の悪い笑みを浮かべ、下を指し示した。
† † †
――人生を誤らない人間はいない。もっと言えば、誤ちを犯さない存在はいない。かつて、世界の原初――全知全能の神と呼ばれる存在でも、いくつかの間違いを犯した。
そう考えれば、人間など間違いが人生のようなものだ。大人になれば多少は取り繕えるものの、未熟な頃にはそれさえ覚束ない……幼い頃を知られている年長者には、特にだ。
「ん、ん……う、ん……ぅ」
テーブルの下で、彼女たちにしか聞こえない淫らな声と音が響く。人払いの魔法があるとはいえ、人の気配が近くにある場所とはいえ、相手の肉棒に口奉仕するのはのぞみも生きた心地はしなかった。
「ん、んう……う」
ジーンズのチャックを口だけで開き、肉棒を露出させ。四つん這いで、咥えこんでいく。口の中に広がる味を懐かしいと思ってしまう自分が、のぞみは恨めしい。
「のぞみが現場から離れてから、すっかりと会う機会が減ったからの。しかし、仕込んでやった舌使いは忘れておらんようじゃなぁ」
テーブルの向こうで、人の悪い笑みを浮かべているのが目に浮かんだ。のぞみの若い頃の誤ちの一つが、この真神という女に情でほだされたことだ。共に命を懸けて戦い、信頼関係を築いていった……その先に誘われて、抗えきれなかった結果が今だ。
「んん、ん……んう……ほのか達には……」
「わかっておるよ。ワシは無理矢理はせんし……つか、五月雨の場合、ワシより明らかに強いしの」
抗議のために口から陰茎を引き抜いたが、真神はどこ吹く風だ。頬を唾液と先走りに濡れた熱いモノで撫でられ、文句を言うより先に男根に浮かぶ血管に舌を這わせてしまう。
真神という強大な存在。それでも出し渋りたかった理由の一つがこれだ。真神には、女性を侍らせたいという願望がある。自分もまんまとその一人となってしまい……悪い気がしないのが、質が悪いのだ。
「ん……出すぞ? ほれ」
口の中に、亀頭をねじ込まれる。のぞみはそれを大人しく受け入れると、ゼリーのように濃厚な精液を、必死に喉を鳴らして飲んでいった。
「はあ、あ……」
「お、飲んだのか? 当然か、服が汚れるからのぉ」
「……わ、わかってて――」
のぞみの言葉が、途中で止まる。真神の手が、握っていた物に気付いたからだ。ちゃらん、と振られたそれはホテルの鍵だ。その意味に気付いたのぞみは――目の前の精液塗れの肉棒に舌を伸ばし、綺麗に舐めて掃除を始めた……。
夕霧市に応援で訪れる異能者アンケート
-
前衛の大人の女性(人外含む)
-
後衛の大人の女性(人外含む)
-
前衛の少女(人外含む)
-
後衛の少女(人外含む)
-
女性or少女に変えられた人外