Nightcrawler~夜に堕ちる彼女たちへ~ 作:イツカ・ドコカデ
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「ああ、ひゃう! ああ、あ……あああ、ああ、ああああああああああ!」
石造りの部屋の中に、嬌声が響き渡る。
自分を犯す陵辱者の膝に椅子のように腰を下ろし、淫らに腰を振るのは首輪に鎖で繋がれたメイドだった。あまりにも長く太く硬い肉棒は、メイドの腹に収まりきらない。なのでメイドは腰を浮かしながら、陵辱者の膝に手をついてくねらせながら腰を上下させていた。
その腰の動きや蕩けきった卑猥な表情を見れば、つい数時間前まで処女だった者の声と姿など、誰が信じるだろうか。
「どういう事? シニストラ」
メイドの嬌声に掻き消されない程度の声で、三人の観客の一人がそう言った。円形の部屋に向かい合うように用意された東西南北に位置する四つの豪奢な椅子。メイドを膝の上で可愛がっていたシニストラと呼ばれた女はクスクスと北側へ視線を向けて笑みをこぼし答えた。
「だって、まどろっこしかったんだもの」
「そんなくだらない理由で協定を破ったの?」
他の二人が言わないならば、と北側の席に座っていた少女が言葉を選んでそう問いかける。もう少し切れていたら、裏切り者と罵っていただろう。
しかし、西側の席に座るシニストラはどこ吹く風だ。
「だって、二人しかいないんだもの。もっとあの世界の組織に危機感を与えないと、それこそ取り合いになるじゃない」
「取り合いになるからこそまだ不干渉と、取り決めたばかりでしょう!?」
立ち上がった北側の席の少女は、蒼い瞳を鮮やかな赤へと変えた。ゆるくウェーブした黄金の髪、フランス人形を思わせる整った顔立ち。豪華なドレスに包まれた華奢な体躯も、どこかお姫様のような印象を与える美少女だ。しかし、今はその顔を彩るのは明白な怒りだ――愛らしさは、鳴りを潜めていた。
一瞬即発の空気に、ようやく南側の席に座った女が口を開く。
「あー、そこまでにしとけって。ベネトナシュ」
「言っておくけれど手駒を失っているのはワタシなのよ!」
「わかってる、わかってるって」
南側の女は、見た目だけならこの場でもっとも年長に見える二十代半ばの女だ。燃えるような赤い髪に、褐色の肌。赤いイブニングドレスが包むのは、あまりにも蠱惑的な魅力に溢れている――野性味と芸術的な美しさ、両方を絶妙なバランスで保った美女だった。 赤毛の美女の視線が自分に向かうのを感じて、シニストラは小首を傾げた。
「イフリータも、私を叱責する?」
「まだ結果が出た訳じゃないしなぁ。オレは別に、後からやって来るあの世界の女でもいいしな」
「イフリータ!」
「落ち着けよ、ベネトナシュ。少なくとも、オレもお前も後発に期待するしかないって」
なぁ、とイフリータが視線を向けたのは、未だに沈黙を守る東側の席だ。そこに座っていたのは、長い白髪に赤い瞳、白一色のフリルで飾られたゴスロリ服姿の少女だ。
「……あの子、吸血鬼は私の。同じ真祖、譲らない」
「……ッ」
ぽつりぽつり、と語る白い少女にイフリータはもちろんベネトナシュも言葉を飲み込む。語調は強くない、しかし他の三人を黙らせるだけのモノが白い少女にはあった。
――すなわち、力が。
白い少女が、椅子から立ち上がる。少女にとっては大きすぎる椅子だ、ぴょんと可愛らしい動作で床に降り立つと少女は歩き出した。
「行くのか、アルスヴィズ」
「……ん」
小さく手を振るイフリータに、アルスヴィズと呼ばれた白い少女は純白の冷気になると部屋の中から姿を消した。
部屋から完全に消えた、そう三人が悟るとようやく緊張が解ける。シニストラは、苦笑混じりに言った。
「ま、ああなると思ったもの。私がほのかを手にしてなかったら、アルスヴィズの戦いに巻き込まれたかもしれないわ」
そうなれば命はなかった――言外に語るシニストラは、小さくメイドのほのかに頷いた。ほのかは立ち上がり、ゆっくりとシニストラの肉棒を引き抜くと四つん這いのままベネトナシュとイフリータを見上げた。
「お二人に……ご奉仕、させてくだ、さい……お願い、します」
ほのかの震える甘い声に、ベネトナシュが小さく体を震わせる。それに気付いたほのかは四つん這いでベネトナシュの元へ。長いスカートの中へほのかが潜り込むと、ビクっとベネトナシュが体を弾ませた。
「あー、ベネトナシュは生やしたばっかだもんなー」
「ええ、敏感で可愛いわ。ベネトナシュ」
「う、うるさい! こ、こら! 近づくんじゃな、ああ、あん!?」
ベネトナシュを左右からシニストラとイフリータが挟むように抱きしめる。イフリータの豊かな胸と、シニストラの形のいい胸がベネトナシュを柔らかく包み込んだ。
「あ、あああ、ひう! あ、あああ!? はな、離し、ああ、あああ……あん!」
「お、そんなに気持ちいいのか?」
「あ、ああ!? う、うるひゃい! ひゃ、ああ、ああああ!?」
卑猥な水音が大きくなり、スカートが大きく揺れる度にベネトナシュの体がガクガクと震えていく。その間に、服越しに小さく自己主張するベネトナシュの乳首をさすりながら、シニストラが妖しく囁いた。
「イく時はイくって言わないと駄目よ? ベネトナシュちゃん」
「い、いやだ! ふざけ、ひゃああああああああああああん!?」
密かにスカート越しにシニストラに頭を撫でられると、ほのかが頭を激しく前後させて口奉仕を激しくしていく。ガチガチと歯を鳴らして震えるベネトナシュに、イフリータはしょうがねぇな、と笑いながら言った。
「で? 出ちゃいそうな時はなんて言うんだ? ベネトナシュ」
「……イ、イく……ぅ」
「イくまで、何度もよ?」
「イ、く……イく、イく……イくイくイくっ! イっちゃうよ、イフリータァ、シニストラァッ。イく、イくぅ、あ、ああああああああああああああ!?」
見た目相応の舌っ足らずの嬌声で絶頂するベネトナシュを、イフリータとシニストラは笑みで見下ろす。
イフリータは実にいい笑顔になって、少女の金髪を優しく撫でた。
「かっわいいなぁ。ベネトナシュ。追加が来なかったら、オレお前でいいかも」
「やだぁ! それ、は……ひゃう! シニストラッ、乳首、しごかな、ひゃああ!?」
「一回だけじゃ収まらないでしょう? 何度イってもいいのよ」
「ひゃ、や、あ。ん、はあ、んっ」
ベネトナシュの唇を、イフリータが塞ぐ。たっぷりと唾液をベネトナシュに注ぎながらイフリータが唇を離すと、すぐにシニストラが無理矢理自分の方へ向かせると、唇を奪った。
「は、ひ!? もう、わか、んな……いっ。もっとして、きもちいいの、いいか、ら……ぁ、もっとぉ」
それからしばらく、連続射精に陥って快楽に翻弄される少女の喘ぎ声が円形の部屋に響き続けた……。
† † †
昼下がりの夕霧市、その住宅街の上を黒い霧が通り過ぎていく。もしも空を見上げれば、その霧の動きが明らかにおかしいと気付いただろう。
あまりにも流れが速いのだ。もしも自然現象としてその動きを再現するのならば、どれだけの風速が必要になるだろうか。霧化した五月雨にとって、そんな違和感に対して気を配る余裕もなかった。
――『匂い』が薄れてる。急がないと……。
五月雨自身、わかっている。これは明らかに罠だ。敵――間違いなく、こちらに害意を持つモノがいる。ほのかを助けに向かうこちらを迎え撃つ準備をしていてもおかしくない。
だが、それだとしても飛び込まざるを得ない。少なくとも、ほのかを見捨てるという選択肢は五月雨には無かった。
「――ッ!」
――ゾクリ、と五月雨の体に、悪寒が走る。五月雨は思考を巡らせる、いつ以来だろう? 自身の感覚が『危険』を察知するのは。
不意に黒い霧の動きが変わった。住宅地を大きくそれ、山の方へ飛ぶ。
――確か、このあたりに……。
五月雨は自分の中にある夕霧市の地図と、自分の位置を照らし合わせる。五月雨の目的地は、夕霧自然公園と呼ばれる山を切り開いた時に造られた公園だ。
休日であればさまざまなイベントや家族連れ、アベックなどで賑わう場所だ。しかし、平日は打って変わって人の姿はなくなる――五月雨が、わざわざ『戦場』を選んだのだ。
五月雨は少女の姿を取り戻し、降り立つ。霧の時から速度を落とすどころか、更に加速して五月雨はそのまま公園内を駆け抜ける。音さえ越えた疾走で、木々を抜けて公園の奥へ。平日の車が停まっていない駐車場へとたどり着いて、ようやく小さな体が立ち止まった。。
「……そう。そう来るの」
五月雨が、振り返る。すると、そこに天から振ってきた巨大な氷柱がアスファルトを貫き落下。バキン! と爆発四散すると、そこに真っ白な少女が立っていた。移動を読んでいたのでも、先回りしたのでもない――この白い少女は、五月雨と同等の速度で移動して来たのだ。
五月雨が五〇〇年を超える吸血鬼の真祖としてあった時間でさえ、『危険』を察知した回数は両手の指ほどもない。吸血鬼の真祖を脅かす存在など、そうそういないからだ。だからこそ、五月雨はすぐに白い少女が何者なのか理解した。
「……真祖なの? あなたも」
「うんそう、真祖。あなたも」
五月雨の問いかけに、白い少女がコクリと肯定する。五月雨は、小首を傾げてもう一度問いかけた。
「……敵なの?」
「ううん。でも、敵でもいい」
白い少女の体が、崩れていく。霧ではなく冷気となっていく少女に、五月雨は自身も黒い霧になりながら告げた。
「敵なら倒す」
「駄目。あなたを私のものにする」
噛み合わない、鏡合わせのモノクローム。だが、同時に行なった事は重なった。黒と白が、自身の『全身』を巨大な『腕』に変え繰り出しあった。
激突の衝撃が、周囲を薙ぎ払う。地響きが駐車場のみならず、山全体を揺るがした。白い冷気が千を超える鎖と変わり、黒い霧が千を超える槍を生み出す。
「「――行く」」
そして、鎖と槍が互いを食らい合うように射出された。
† † †
この日、境界防衛局のみならずこ世界に存在する全ての異能組織がこの激突を観測したという。真祖対真祖――あらゆる異世界も含む歴史を振り返り、実に三〇〇年以上振りの凶事であった。
† † †
皆様に楽しんでいただければ、幸いです。