「――ったく、入学早々勉強とかお前青春舐めてんだろ舐めてんだよな? はぁ……お前はもうちょっと欲張れって、こんなにかわいい子多いのにさぁ」
「は、ぁ!? オレといる方が楽しい……って、気持ち悪いこと言うなっての! ……そういうの、もう卒業しちまっただろ? 昔のまま、仲良しこよしじゃいられないんだよ」
「あー、わかった、わかったから、別に友達やめるってわけじゃねぇって。親友で居続けてやるよ……この『
「――しょうがないから、このままじゃ生涯童貞のままでいそうなお前のためにこの椿が女を紹介してや……え? 『
「あ! お前もしかして初っ端からラスボス挑もうとしてやがるな!? や、やめとけやめとけって! 絶対その辺のスライム相手に経験値稼ぎしてた方が良いから! 見たくないんだよ! 恋愛に理想抱きまくった友人が現実という悪魔に蹂躙されていく様はッ!!」
「……え? 昨日、不良に絡まれてたとこを助けてあげた?」
「――ど、どうなってやがんだよーーーーーッ!?!? な、なんで恋愛のれの字すら知らないようなお前がマリィちゃんと一緒に通学してくるんだ!? どんなチート使ったの!? 実は勝ち組だったのモテキ到来なのバカなの死ぬの!?」
「い……いや、何かが嫌ってわけじゃねぇけどよ、神様、こりゃちょっと不公平すぎやしないかね……? ……ああはいはい、不良から助けて惚れられたのね――え!? 暴力団だった!? 知らないうちに一団体潰しちゃった!? なにそれ怖い!? お前いつの間に主人公最強系になっちゃったの!?」
「……バトラーとして日向家に召し抱えられた? ……そうか、寂しくなるな?」
「――お、おいおいもう頭が痛くなってきたぞ……? あの大手企業の社長の令嬢だけじゃ飽き足らず、遠くの国の王女様に、そのお付きの女性騎士様に、今度は巫女様かよ!? どんだけ節操がないんだ……そしてどれだけ善行詰めばそんな桃源郷に到達するんですかねぇ!?」
「ああそうだよ、学校じゃお前めちゃくちゃ有名だぞ? 当たり前だろうが、あんな美人美少女を脇に何人も侍らせて噂にならない方がおかしいだろ……いや、それを今の今まで知らなかったお前の方がオレは怖いよ」
「……まだ、親友として接してくれるのか?」
「――バカ野郎。どうしてマリィちゃんの誕生日を忘れちまってるかなぁ……。あの子は、なんつーか、お前の前じゃ素直になれないみたいだけどな、結構楽しみにしてたらしいんだぜ? お気に入りのバトラーからの贈り物ってやつを」
「それにちらっと聞いたところじゃ……マリィちゃん、家じゃ腫れものみたいな扱いされているみたいだぞ? お前とは誰も使ってない別館で暮らしているから、そういう家族の関係性には疎いのかもしれないが……今はお前だけなんだよ。彼女の傷ついた心を癒せるのはさ」
「礼はいらないよ。……はは、親友、だろ?」
「――泣くなよ! こんなところでお前がへこたれてどうする!? おい、顔を上げろ! なにを終わっちまったみたいな顔をしてやがるんだよ親友!! まだ、まだなにも始まっちゃいないだろうが! 諦めるにはなにもかもが、早すぎんだろ! なぁ、行くぞ!」
「彼女が待ってる! このままじゃ二度と逢えなくなるかもしれないんだ! お前が、お前の意思で止めろ! ――バーカ、お前が泣いてる時、いつも手を引っ張ってやったのはオレだろ? 折れる膝があるなら立ち上がることだってできるだろ? ……ああ、行こうぜ、俺が、間に合わせてやる!」
「…………ああ、本当に、最後だ」
――終わりの季節が、やってきていた。
冬の調べは雪として、世界を一面白銀に染めていく。
空を見上げれば、どんよりとした暗い雲の群れが見えた。風が吹き、雪が少し運ばれ、少しどころじゃない寒気に身体を震わせる。
マンションの壁に背中を預け、ポケットからスマホを取り出し、慣れたように見たのは数日前届いたメッセージ。
『クリスマスは私の家でパーティを開くから。不本意だけどあんたにも招待状としてこれを贈ってやる。来なくてもいいから』
……本当、彼氏以外にはかわいくねぇ女だ――日向マリィ。
毒づきながらも、ぶっちゃけこういう着飾らない性格は嫌いではない。
素をさらけ出して話すことができる人間なんてオレぐらいの年代じゃもう少なくなってるかいないか……まあ社会に出たら叩き直さなきゃいけないだろうけどな。
それは
ただひとり。一生で唯一の親友の姿を思い浮かべる。
「はぁ……」
そしてすぐにかき消す。
オレはただの親友なのだから――と。
……と、いうのもあるが。
大きな理由としては、やはり。
「女の子になったって……絶対信じてくれないよな、これ」
朝起きたら女の子になってたからである。
「……いや、意味わからん」
意味わからん事態に直面していた。
スマホを持つのに両手を使わなきゃいけないし、そもそもこんな瑞々しい肌はしてなかったし。
髪色は銀色だし。目は赤色だし。背はちっちゃいし。
現実逃避という名の幾度となく繰り返されてきた脳内会議はついに第百二十七回目となったし。
パーティの開始時刻よりは当に一時間は過ぎてしまったし。
「悪いこと、したかな」
だから、さっきから何度もマリィからのメッセージを確認するのは、ほんの少し『ごめん』って気持ちがあってからで。
……でも、やっぱり
「…………へへ、女の子に、なっちゃったぞ……?」
オレの今の姿を見たら、どう思うのかな、とか。
思わなくもなかったり、する。
でも空は曇天模様で。
雪は降りしきっていて。
きっと、オレなんかが介在できるほど甘くない関係がそこにあって。
「…………遅いんだよ、神様」
身体の小ささだけが鼓動が早いことの理由じゃない。
幼いというのだけが涙を我慢することの理由じゃない。
頬は上気して手は意味もなく力強く固める――それは十数年という思い出が形成したオレの想いで。
――十数年という猶予を貰っていたのに機会を逸したオレが持つには苦しすぎる宝物で。
「余計、辛くなっちゃうじゃんか」
雪は全部を覆い隠してくれていた。
オレのあいつに対する想いも、悲しみも。
「…………」
……辛いだけなのに、オレは結局一時間、マリィにパーティを欠席する旨を伝えられていない。
素直じゃないだけで根はやさしいあいつのことだ、オレが行くまでパーティを始めない気かもしれない。
だけど、仕方ないだろう?
あり得ないと思ったことが、起きちゃったんだぜ?
「戻ろう」
会ってしまえば、歯止めが効かなくなるから。
オレは後ろ髪を引かれる思いでありながらも、自室へ戻ろうとする。鍵を差して、捻って、ドアを引こうとする。
――そこから先の、今まで何百回と繰り返してきた行為が出来なくなった。
「……ぁ」
エレベーターから降りてくる人影があった。
細身で、黒髪で、少し頼りがいのない、人影。
見間違えるはずもない――
「――親友!」
「う、ぇ、え!? ……あれっ、もしかして俺!? 親友って俺の事?」
「え、あ……えっと」
驚いたように――いや実際に驚いて足を滑らせた親友が、しりもちを突きながらオレと目を合わせる。
もちろん、オレが女の子になったことなんて誰にも言ってないし、親友からすればオレはただの見知らぬ少女だろう。
適当にあいまいな笑みを浮かべながら、逃げるように自室へと入ろうとする。
「あ、ああ! ちょ、ちょっと待って、君! お嬢ちゃん!」
「っ」
「は、ぁ、はぁ……ご、ごめんね、急に呼び止めちゃったりして……」
――お嬢ちゃん。お嬢ちゃん、か……ふーん。
「君、もしかしなくとも椿の知り合い、かな? 俺、ああいや、僕はこの部屋のお兄さんの友達、なんだけど……今いるのかな?」
「…………ごめん」
「え、なにが――っ、ってちょっと待ってって! お願いだから!」
「あっ……」
なんとなく嘘を吐くのも躊躇われて逃げ込もうとするも、途中でポケットからスマホが落ちてしまう。
寒さ対策のように見えなくもないからいいが、今着ている服は普通に大人の男物だったから、仕方ないっちゃ仕方ないのだが。
「――え? それ、椿のスマホ……」
「あ、あわ、わああああああっ!! な、なんでもない! なんでもないからな――ぁ」
慌てて拾おうとして、一回手に収めて、もう一回落とすというドジっ子ムーブをかます。
そして。
指紋認証でロックを解除するタイプのオレのスマホは、何の偶然か簡単に開いてしまい。
「…………」
「…………」
一瞬、時が止まったようだった。
「――それで。ええと……君の話を整理すると……いや整理するもないぐらい単純明快な言葉を噛み砕くまでもなくそのまま理解するのなら……」
そして、部屋の中。
雑多なもので散らかった部屋の中央、テーブルをはさんで座る親友が長い前置きを口にして、
「君が……椿?」
そう、ようやっと理解した。
「…………えぇ」
「そんな微妙な顔をしたいのはオレもだってのに。でも中身は昨日までのオレそのものだし、ほら、何て言ったか、スワンプマンみたいなやつでさ……」
「テセウスの船?」
「そう。……お前は、どう思う? 今のオレの姿は、おかしいか? やっぱり津田椿であるとは思えないか?」
「…………それは」
立ち上がって腕を広げてみる。
もちろん第三者が見たところで津田椿からはかけ離れていると評価するしかないだろう。
それでも親友は言いよどんだ。あるいは、今のオレに津田椿であるなにかを感じ取ってくれているのかもしれない。
うれしかった。
……胸が痛い。
「そういえば、お前はどうしてウチに来たんだ? お前の彼女が待ってるんだろ? クリスマスパーティ、楽しみにしてたじゃないか」
「椿が来なかったから、様子を見に来たんだよ。……本当はスマホで連絡すればよかったんだけど、電池切れちゃっててさ」
「ばーか」
相変わらずどこか抜けたところがあって、それでいておせっかい焼き。
へらへらとにやける親友に、心にもない言葉を投げかける。
「なら、伝えといてくれ。オレはいかないって」
「あ、ああ……わかったよ。それで、えっと」
「この件について他言したらぶっ殺すからな」
「は、はいィ!!」
恐縮した様子の親友はスマホを取り出して(オレの充電器を貸した)、マリィにそれを伝える……かと、思えば。
「……どうした?」
「いや……」
逡巡して、行動に移せていない。
体調が悪いわけでもない。かといってオレを無理矢理パーティに出席させようとしているわけでもない。
オレをしきりに見つめては、聞こえないぐらいのため息をついている。
「なんだ? ――思いっきり美少女になっちまったこのオレにホの字、ってか? だとしたらお前、かなり趣味悪……」
「っ……ば、バカなこと言うなよ。中身はどうせあの椿なんだろ? そんなのに、惚れるかよ……」
「…………」
……なんで、一瞬でも顔を赤くするんだか。
そうやって期待させるのは――
……諦めの悪いオレが悪いってのは、分かってるけどさ。
「あ、じゃ、じゃあ、俺はもう……行くな? かなり遅れちまったから、怒ってないと良いけど」
「ん。そうか……楽しんで来いよな?」
やおら立ち上がった親友を玄関まで案内する。
狭いはずの廊下も長く感じた。寒くなっていく空間が寂しく感じた。
靴を履いて、ドアに手を掛けて、
「……? どう、した?」
開くことは無かった。
「やっ、ぱさ……今日はここで過ごす、ってのはダメかな」
「……は?」
「あ、い、いやその……なんというか、今の椿を放ってはおけない……みたいな、感じで」
いいに決まってる。
すごいうれしいって伝えたい。
「馬鹿野郎」
だから。
だから小突いて、いつも通りの悪戯な笑顔を浮かべて。
「あんなかわいい子こそ、放っておくなよ、主賓?」
オレは、気丈に、彼を送り出す――
…………。
……………………。
「………………………………お、い」
状況を掴むのに、数十秒は要した。
「なに、してるんだ」
声は震えた。
どの感情に起因するかは分からない。
「親、友…………?」
寒い空間で、温かな感覚に包まれる。
「……………………ごめん」
オレは、親友の腕の中にいた。
「ごめん、じゃ、ないだろうが……! お前、お前今何してるか分かって――」
「椿を、抱きしめてる」
「そうじゃねぇだろう!? 今、お前は、日向マリィを裏切ってるんだぞ……ッ!?」
温かい。
好きな香りがする。
あり得ないはずの幸せがそこにある。
でも。
オレはただの親友だから。
ただの、親友だから――
「うん。だから、ごめん」
「……ぁ、ぅ、ぁ」
「……さっきから、そんな寂しそうな顔されて……気にしないわけないよ。俺、椿の親友だから、椿の事は何でも分かってるつもりなんだ」
分かってない。
お前は、分かってない。
オレの一番大事な想いに気付いてない!
だからまだ、オレは幸せな主人公とヒロインの光景を浮かべ、心を抑えようとする。
「――いや、ごめん。これは……嘘だ」
「ぇ……?」
力強く抱きしめられて、耳元で。
「惚れたんだよ……! いいや、惚れてたんだよ、椿には……っ!」
「……あ、ぅぁ、う、嘘、言え……」
「嘘なもんか! こんな、こんな……
脳内はもうめちゃくちゃで。
視界に飛び込む親友の情報だけでパンクしそうになる。
「さ……」
また心にもないことを言う。
「最低だぞ!? お前は一人の女の子に操を立てておきながら、オレに、こんな……ッ!」
「じゃあ振りほどいてくれ!」
「っ……」
「俺を最低な男にしたくなかったら、突き飛ばしてくれ……嫌いだと、言ってくれ……俺は、今回だけで諦める。もうしないから……椿」
親友は、震えていた。
もうすぐ親友ではなくなる。
「こんなことをして……オレが嬉しいとでも……?」
「椿……」
オレの心の抑制なんて、もうとっくに
「嬉しいに、決まってるだろうがぁ……っ!」
涙腺とともに、崩壊してしまっていた。
「――ん、ちゅ、あ、んむっ……ぷはぁ、あ、ぁ、むぅ、うぅ、ん」
いつも見ていたオレの部屋は、いつもとは違う景色に見えた。
非日常だけが降り積もる。外は銀の世界。オレと、
「はぁ、はぁ……つば、き」
「あぁんむ、んむぅぅっ、んちゅ、はふっ、ん」
息継ぎの暇さえ与えない、熱烈なキスの応酬。
溜まりに溜まった親友への情欲はいくら触れても収まらない。
「んんぅっ!?」
「ご、ごめん……触るな? 優しく、するから」
オレは今、だぼだぼの男用の服を脱ぎ棄て、一糸まとわぬ姿となって親友の前に晒されている。
冷えた手が胸に触れ、変な声とともに身体を震わせてしまった。
「ん、は、ぁ、うぅぅ……っ! ばか、恥ずかしい、声出る、から、ぁっ!」
顔はお互いに真っ赤なんだろう、と思う。
電気は消してカーテンも閉じて真っ暗な空間だけど、親友の息遣いが聞こえる。
親友の体温が感じられる。
これが女の子の身体か、なんて感嘆する前になんとなく受け入れられている自分がいた。
それどころじゃない、ってわけか。
「んむぅ、んんっ! は、ぁんっ! ばか、へんなところ、さわるなって、んんぅ!」
「変なところなんてないよ」
寒さか興奮でピンと立った乳首を弄られ、何度も頭の中が真っ白になるような感じがする。
そんなオレを黙らせるようなキスが何回も来る。舌が入ってきて、容赦なく蹂躙してきて、幸せな余韻だけ残していく。
「うまい、んだな」
涙が出てきそうになる。それを見て親友も手を止めてしまった。
申し訳なさそうな、でもこの行為を続けたいと強く思うような瞳を向けてくる。
「……いいんだよ、親友」
「……椿、俺は」
「オレを、最低な女にしてくれよ。お前の全部が欲しいんだ」
最低な行為が。
最高に気持ちいい。
親友は黙ってうなずいて、右手をオレの股間へと持っていく。
「あ、ああ、うんんんっ!? ばかばか、手、つめたいって、ひぅっ!?」
「ご、ごめんっ! え、ええっと……」
しかしどうしても先ほどから快感よりも冷感のほうが先に来てしまうため、微妙な気分だった。
仕方ないな。親友の手を掴み、口元まで運ぶ。
「ん、む」
「っ、あっ……?」
そしてその手指を口に含んだ。
やっぱり冷たい。大きな手だから口に入りきらないけど、頑張ってむしゃぶる。
「んぢゅ、あむ、んちゅるうっ、ふぅ、はぁ、あむぅ、ん」
指の先を、指の腹を、指の付け根を、指の間を。
アイスキャンディーを舐めるみたいに動かしながら手を湿らせて温まらせていく。
「ぷ、はぁ……ほら、もう、大丈夫だから」
「あ、ぁあ……大胆、なんだな?」
「うるさい――ひぁ」
毒を吐くつもりが、秘部の感覚に遮られてしまった。
温かく湿った手は丁度良く快感だけを伝えてくれるから、びっくりして太ももで親友の手を挟んでしまう。
「い、ん、ぁぁあっ、っ――ふわぁあああああっ!? ば、か、そこ、吸うなって……!」
乳首を吸ってきた親友を払いのけようとするけど体格の差でびくともしない。
吸うだけじゃなかった。甘噛みしたり、舌で転がしたり……ぴりぴりとした感覚がじわじわと背中を這い上ってくる。
右手も膣の入り口を軽く触ったり、縦に優しく指を往復させたりと、まったりとした快感が走る。
「ん、はぁ、ああっ、いゃ、んっ♡ これ、クる、かも、ぉっ♡」
無知なわけではなかった。
男の身体で知っていた感覚だった。
親友が一際強く乳首を噛むと――
「んきゅ、~~~~~~~~~~~っ♡」
オレの身体が何度もビクンビクンと跳ねた。
「う、はぁぁぁ……♡ これ、すっご、ぁ……はぁ、はぁ」
脱力していると、口の端からよだれが垂れていくのが分かる。
額には汗がにじんでいるし、視界は涙で滲んでいる。どうしようもなく興奮しているみたいだ。
「幼い身体してるけど……感じやすいんだな。ほら、椿……もう、濡れてる」
「ぁ……」
彼が股から引き抜いた手をすり合わせると、ぬちゃぬちゃとした音が鳴る。
それは、準備完了の合図。
――オレが望んで、そしてしてはいけない、最後の波止場。
そこで、
「っ!」
――プルルルル、とスマホから着信音が鳴った。
オレには親友の選択をどうこうする資格はない。見守ることしかできなかった。
彼は数秒考えたのちに、スマホを手に取る。
「あ、……そっか。あ、はは……」
寂しい。
隠すような笑みも薄っぺらい。
……でも親友はそんなオレの頭を撫でて、
「――ごめん。今日は行けそうにない」
「え……?」
そうとだけ言って通話を切った。
「ん、んむぅ!? んちゅ、は、ぁ、んんんっ! ……ぷはぁ……はぁ、親、友……?」
「最後まで、やるから」
なにか熱いものが、オレの股間にあたる。
それが何か考えるだけで心臓は破裂しそうになるし汗は滝のように出てきて、息は乱れた。
最悪なことをしているって、分かってる。
だけど。
「……幸せ、だよ」
「こう言うのも、なんだけど……初めて、だから、俺は」
「うん……うん」
手を握って、体格の差でキスは出来ないけど。
お互いに慮って。
親友はゆっくりと腰を沈めていく。
「ぅ、ぁ、づっ!? くっ、ぁああああああああっ!」
刻まれていく。
咎が。
彼の証が。
「は、ぁ、痛っ、ぁあ、~~~~~~~~ッ!」
プツン、と。
後戻りできるラインを超えた音がした。
「ぅぁぁあああああああああっ、あああああッ!!」
絶叫して、それでも親友は動きを止めない。
そうしてこつん、と彼のモノが最奥にあたったのをかろうじて感じた。
「は、ぁぁぁ、はぁ、あぁぁぁ……親友……?」
「う、うん……入ったよ。椿を――女に、したよ」
額に滲んでいた汗はいつの間にか脂汗になってしまっている。
きっと、彼のモノは血で汚されているだろう。ベッドのシーツも血が滲んでいるだろう。
ああ。
幸せ、だ。
「親友……? 大丈夫だから、動いても」
「何言ってるんだよ。まだ痛むだろ? 無理するなって……」
「痛いのが、いいんだ」
汚穢に満ちた幸福を享受するこのオレには、痛いぐらいが丁度いいんだ。
親友はゆっくり動くから、と断りを入れて動き出す。引き抜かれるモノに膣が引っ張り出される感じがした。
「あ゛ッ、あああっ、ぅくっ! 好き、好きだ、ぁ、好きなんだよぉぉっ!!」
「俺も、好きだよ、椿……っ!」
引き抜かれては、差し込まれる。
オレが切り開かれていく。
彼の汗が滴り落ちて、オレの汗と混ざり合う。
「ああっ! うぁああああっ! ん、ぐぅぅっ! もっと、もっとぉ!」
獣のように追い求める。
行為以上に意味を求める。
「くぁっ、あっ、はぁっ、んくぅぅっ……っ!」
握られていた手が、オレの胸へと伸びた。
先ほどまでの冷たさはどこへやら、汗ばんで熱い手をしている。
「んっ、あ、ふぅぅぅ、くっ……ひぁ、ぁぁっ、んぅ」
どうにかしてオレを気持ちよくさせようと、胸を揉んだりつまんだりする。
汗ばんだ手と胸がくっついて、そのまま一緒になってしまうんじゃないかとも思えた。
「あっ、んっ、ぅぅぅ……おお、きっ、こんな、おくまで……あぁぁっ!」
ぱん、ぱん、と気付けば肌のぶつかる音が響きだした。
ぐちょぐちょ、と水音まで鳴りだした。暗闇に、親友の荒い息遣いが聞こえる。
「きもち、いい……っ? ん、ぁあぁっ、どう、どう、かなっ、んんっ」
「ああ……狭くて、気持ちいいよ、椿」
彼が名前を呼んでくれる度。
その手が肌に触れる度。
オレは泣きそうなくらい幸せになる。
「うれしい、うれしいよぉっ、ずっと、ずっとこうなりたかった……ん、ぅ!」
「俺だって……こんなことが起こるなんて思ってなかったから、叶わないと思って……」
両想い、だったんだ。
すれ違ってただけだったんだ。
「椿、俺、そろそろ……っ!」
「うん……出して、いい……全部、オレの中に出してくれ……!」
ラストスパートなのか、抽送が早くなり、淫靡な匂いがより濃密に広がる。
もう自分ですら何を言ってるのかわからなくなってくる。愛を叫んでいるのか、謝罪しているのか。
親友の背中が丸まってきた。
腰を深く押し付けるような体勢になっているのだ。
オレに……多分、本気で子供を産ませようとしているんだろう。
「出す、よ……出すよっ、椿っ!」
「うんっ、うんっ! 出して、いっぱい、いっぱい――ッ!!」
最後、大きく突き出された彼のモノがオレの最奥を突き上げて、
「ぅぁぁああああああああああああっ、~~~~~~~~~~っ!!!!」
「――っ、ぁ!」
直接、彼の精を吐き出された。
「あ、ああああっ、うあっ、あっつ、い……めっちゃ、出て……る……っ」
射精は止まるところを知らず、子宮だけじゃ飽き足らずに膣すべてを白く染め上げていく。
入りきらなかった精液が卑猥な音を立てながら膣から出てきて、太ももを伝ってシーツの染みになった。
「あ、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ…………」
お互いに放心状態になる。
少し後に、どちらからともなく口を開いた。
「……もう、戻れないな」
「うん。でも、戻りたくない」
オレたちは最低だ。
殺されても文句は言えない。
「ずっと、一緒だからな」
「ずっと、そばにいるよ」
でも。
だからこそ。
芽吹いた恋なのだ。
だから。
終わる季節に、始めよう。
オレたちだけの――
――最低最悪の