目が覚めると、目の前に巨大な影が見えた。
何やら話し声が聞こえるが、寝起きだからかうまく聞き取れない。
柔らかい何かが頭の下に敷かれていて、気持ちが良い。どのくらいかと言われると返答に困る。だが、この上なく気持ちいいという事実だけはこの僕にだけ解っている。
目の前の影のようなモノに手を伸ばす。触ると、癖になる柔らかさがあった。ふにゅふにゅと、低反発枕のように手に合わせて形を変える感覚が心地好くて、つい夢中になって揉んでしまう。
「あんっ」
「へ?」
その時、聞いた覚えのある声が聞こえた。最近よく聞いていた声だ。床の間でも聞いた。
もしや___そう考えるうちに、誰かの手に優しく揉んでいる手を退かされて、だんだんと僕の目の前の影が顔に近づいて来る。
「おはようございます、当麻。つい先程までお互いに壊れるまで交わっていたというのに・・・・・・まだ、足りませんでしたか?」
胸だった。それは、桃が普段着として着ている着物に包まれた、豊満な胸であった。そして、僕は膝枕をされていた! 衝撃の事実だ。僕の味気ない薄っぺらな人生の中でも、ここ数日は得に濃い。その中でも尚、輝く事実として、僕は膝枕をされていた。凄く衝撃的だ。
どんな通販の低反発枕でさえ、この膝枕には敵うまい。
胸と、太ももに挟まれてとても幸せな二つのふわっふわの柔らかいモノに包まれる。甘ったるい匂いがして、息を吸い込む度に癖になる。依存症になりそうなレベル。
「オイオイお前らアタシ等の前で盛ってんじゃねーよ気恥ずかしいだろうが馬鹿ども」
「俺としても気まずいことこの上ないから勘弁してくれ」
・・・・・・ゴメン。まり姉さん、黄金のセイバー。でもこれ、スッゴくふわっふわで病み付きになるんだよ。太股と胸で挟まれて天国なんだよ。
「おい、馬鹿義理息子のセイバーさんよ、そのまま心中許可す___」
「ごめんなさい」
流石に命が無くなるのは勘弁なので直ぐに天国から脱出して土下座する。僕の命はどうやらまり姉さんから桃に安値で売られたようだ。心中、の声が聞こえた瞬間、僕は、すぅ、っと桃の目から光がかき消えた事が解った。
ああ、これは下手にいらないことしたら桃に殺される。深すぎる愛情の一部を垣間見て、そう思った。
正座をして机に向かえば、その向かい側に青筋を浮かべたまり姉さんと、苦笑した褐色肌の少年・・・・・・黄金のセイバーが座っている。
「おう、目は覚めたか寝坊介。極上の女と一晩中交わり続けて、朝もヌッチョリと抱き合った感想はどうだ? ええ?」
「最高だったよ」
「テメェ反省無しかよ・・・・・・まぁ良いわ。おい馬鹿義理息子、アタシが昨日言った事覚えてるか。今日やることだ」
「確か、引っ越す・・・・・・んだよね。この家ごと」
僕が、昨日まり姉さんから言われた素っ頓狂な事を思い出しながらいうと、まり姉さんはニィ、と口を吊り上げて笑いながら言った。
「おぉよ。さっき連絡が来てな。もう引っ越しの準備が出来てんだと」
「「「いや、誰から!?」」」
全員総出でツッコミを入れる。
そういえば、引っ越し業者その他諸々一切合切聞いていない! 嘘っぱちだと思っていたが本当にやる気なのかこの女は!?
「ありゃ、言ってなかったっけか。アタシの妹が英霊のマスターになったんだと。確か、ライダーだっけか?」
「妹がいるというのがまず初耳な上に英霊のマスターだっていうのも初耳だよ!?」
このヒトとんでもない事をサラっと言うなぁ!?
隣の桃でさえも余りの説明不足っぷりに頭が少々ついていっていないぞ!
ほら、冷や汗流している!
「まぁ、良いだろ。アイツが出来るって言ったんだ。安心して引っ越し終わるまでまったりしてようぜ」
そう言いながら、まり姉さんはスマホを取り出す。何気に最新機種である。
「おい、マヤ、準備出来たぞ」
そして、通話開始。またもや僕ら三人はおいてけぼりである。
僕は黄金のセイバーに近付くと、声をかける。
「君のマスターだろ。何か知らないか」
「なぁんにも。そもそも自分の事すら理解できていない英霊だぜ俺」
「わぁい何にもわからないや」
まり姉さんは物事を強引に推し進めるから困る・・・・・・もう少し相談というのをだな・・・・・・
「引っ越し始まるってよ」
電話が終わったまり姉さんが、僕らに向かって言う。
「後でまり姉さんは報告、連絡、相談についてしっかり僕と勉強しようか」
「解せぬ」
自覚無しか。これは矯正に時間がかかりそうだ。
そう、考えた瞬間。
一瞬、何が起きたのかは解らなかった。
理解しようとしても、出来なかった。
「
「
立ち上がり、臨戦体制を取る。
セイバーは部屋着の、萌黄色の着物のまま太刀を手に持って、僕を守るように立っていた。
周囲の景観は、まるで見たことない森林へといつの間にか移り変わっている。見たこともない形の広葉樹林が広がる自然の森。蝶や小動物がそこらじゅうでチョロチョロと動き回る、まず今までいた日本の中なのかどうかも怪しい。
「セイバー、僕等以外は何処にいるかわかるかい」
「いえ、瞬き一つの間に、私とマスター、二人っきりの状態でございました。・・・・・・恐らくは、強力な魔術師による結界でしょう」
「結界? こんな、自然に満ちあふれた場所が、かい」
「ええ、神代の魔力を一カ所から感じます。神話かそれに準ずる、神に関連する逸話に登場するような、さぞ高名な英霊か、若しくは怪物か・・・・・・少なくとも、そういった者の仕業に違いはないでしょう」
着物姿のまま、すらり、と剣をとる
長さ約一メートル半はあるだろう大太刀が、蒼い燐光を放つ。
「マスター。少々激しく行きますね」
「ああ、派手にぶちかまそう」
その瞬間、まとまりの無かった光がいきなり一点に収束し、光り輝く。
「宝具でこの結界を断ち切ります。マスターは現実世界へと脱出後、速やかにまり様とご連絡を」
「ああ、りょうか___」
___ちょっと、ボクの船を壊されるのは困るな。
___い、と。声を言い切る前に、声が、聞こえた。
有り得ないくらい、威圧感のある声。
この声の主こそ、人類の頂点であると思わせる程の、カリスマに満ちあふれた、そんな声が聞こえた。
「まったく、船を壊す前にまず壊していいか所有者たるボクに聞くべきじゃあないのかい? 許可は出さないけれど」
そこには、『人』がいた。
桃が、女として完成した者ならば、目の前の者は人として、完全に、完璧な容姿と肉体を持っていた。
男にも、女にも、そのどちらでもないように見える、そんな、人間が今目の前にいた。
「いきなり壊しにかかろうとするなんて本当にせっかちだなぁ・・・・・・」
その人は、三日月が如く唇をつり上げて、僕らに言う。
「マスター。注意してください。この者が、ここの起点です」
「そう、その通り。ここはボクの宝具の中。ゴメンね? いきなり連れて来ちゃって。でも、引っ越しの準備が出来たーなんて言う君等の代表者が、ボクは悪いと思うな!」
「・・・・・・は?」
まり姉さんの素っ頓狂な一言から始まり、あまりの急展開が続くからか、どうやら脳みそが追いつかないらしい。現実が僕を置いて成層圏の彼方まで全力疾走している。
「・・・・・・と、いうことは、貴方様がまり様の妹君の英霊ということで宜しいですね?」
流石は英霊と言ったところか。桃は急展開に冷静なまま、確認するかのように、目の前の英霊に対して問いを投げかける。
それに対して、目の前の英霊___クラスは、まり姉さんが言っていたとおりならライダー___は、にや、と笑いながら大仰な態度で肯定の意を示した。
「ああ! そうだとも! ボクこそが、現界して直ぐに返上したが今回はグランドライダーとして、この世に現れた英霊!」
くるり、と一回ターンをしながら、決めポーズと共に顔面偏差値最高のどや顔をかましつつ、英霊、ライダーは名乗り上げる。
「___原初の人類、ノアとはボクの事さっ!」
威風堂々。ばぁん、という効果音が聞こえてきそうな程にコミカルな自己紹介と共に、旧約聖書の救世主は胸を張った。
黄金のセイバーが最近空気。
・・・・・・じ、次回活躍か登場するので。ご安心下さい。
fgo画像検索をしていた際に、孫悟空衣装のぐだ子を拝見致しまして。
めっっっちゃ可愛いと思ったので思わず書きそうになりました。お話。