なので次回ヤンデレになってもらいます。
「では、マスター」
「当麻で結構だよ、セイバー」
「ならば当麻。私は今から、荒唐無稽な事をお話致します。その全ては、真実でありますので、その・・・・・・」
家の一室。
カーテンを閉めきった、少々暗い畳部屋で、向かい合う僕とセイバー。
「大丈夫。君や、ドラゴン、化け物・・・・・・いろいろ見てきた僕だ。ここは、有り得ない、なんて言葉は忘れる事にするから」
「・・・・・・ありがとうございます。当麻がそう言ってくれて良かったです」
僕は胡座で、セイバーは鎧と太刀を外し、スクール水着のようなラバースーツと内股がくり抜かれた袴を穿いただけの軽装で正座している。
正直、ピッチリとしたラバースーツにクッキリと浮かび上がる堪らない曲線美を描く体つきに視線が吸い寄せられそうになるけれど、無尽蔵に沸き上がる獣欲をぐっと堪えて今は話に集中する。
「それで、どうなっているんだい、この世界は。ワイバーンが空を舞う空なんて初めて見たが」
「原因は、とある一柱の女神です。名前は今は伏せますが、その女神が、惚れた人間に出会いに地上に降りた。その際に、この世界が女神が降り立った影響でこの世に神話の世界と同等の魔力と圧倒的な神秘が溢れ出し、怪物が跳梁跋扈する世界へと変貌してしまったのです」
「・・・・・・女神が降り立った、ただそれだけでそうなるのか? 世界がまるでラグナロク状態なんだが、女神一柱で、そうなるものか?」
「なるのです。この程度で済んで良かった。
「そんなにかい?」
「そんなに、です」
思わず、聞き返してしまう。何度も。
そして、ぞっとする。女神の存在に。
愛の為に世界を滅ぼしにかかるような、そんな愛情の深さに。
「女神も、世界に降りればめちゃくちゃになることは承知の上だったのだろうか」
「いえ、そこまでは解りかねますが・・・・・・例え解っていたとしても、止まることは無いでしょう。最早かの女神にとって、愛する者以外どうでも良いものでしかないでしょうから」
女神の愛情、その異常さに愕然とする。
世界一つを、愛する人一人と天秤に載せ、それでもなお愛する人を取るその身勝手さ。意思を持った災害。そうとしか言い表せない、まるで魔王の所業だ。
閑話休題。
話が進まないため、今はそれは置いておくとしよう。
「女神が降り立った影響で世界に神秘が溢れた。だから、化け物が出て来た。これは、解った。無理矢理理解した。じゃあ次だ。
君は、何なんだ?」
僕がそう聞くと、間髪入れずにセイバーは返す。
「英霊。私達は、そう言われています」
「・・・・・・過去の、英雄達の魂もしくは霊。そんなところか。達って事は、君以外にも?」
「はい。姿、形、出典は様々ですが、皆が皆して自分の好きなマスター・・・・・・自分がこの世に表出するための依り白を選んで、この世に現れています」
「なんで、この世に英霊が現れたのか? それが、不思議でならないな。僕には、過去の英雄が現代の人間を守る理由が思い浮かばない」
僕が言いきったその言葉。それに対して、セイバーは「普通はそう思われるでしょう」と納得した様子を見せたが、「ですが」と反論してきた。
「ですが、中には居るのですよ。そういった、酔狂な族が。理由など、それこそ千差万別。私のように一目惚れなんて信じがたい理由で現代に現れる者も、ましてや、ずっと前から愛していた、なんて素っ頓狂な理由で現れる者もいるのです」
___元々は、人類という種族を保護すべく起動した、星の、そして人類史の防衛本能が英霊なんですけれど、ね。
そんな言葉で繋ぎながら、僕に真っすぐな視線を向けて話すセイバー。
僕にはそれがどうしても、信じてほしい、自分という存在を、信じてほしいという何とも言えないくらい痛々しい懇願に思えてしまう。
「解った。君が、そう言うのならそうなんだろう。解った。有り得ない、なんて思考を棄てると言ったのは僕だからね。君の言うことを先ずは鵜呑みにしようじゃないか」
結局は、その懇願に折れた。全く。こっちも僕好み過ぎて一目惚れしかけたからな。信じてやろう。まったく。
ああもう、だからそんな嬉しそうな顔はやめてくれ。長身ドスケベボディの美人の笑顔は僕に効くからっ!
「嬉しい・・・・・・」
「感激しているところ悪いが続きを宜しく」
「・・・・・・んんっ、英霊には、それぞれクラス、と呼ばれるものがあります。その英霊が、剣に纏わる逸話を持つならばセイバー。駿足を生かした槍兵として名を馳せたのならばランサー、といった具合に」
「じゃあ、例えば日本国ではとても有名な、織田信長が英霊としてもし現れたら?」
「火縄銃を持ったアーチャー、若しくはへし切り長谷部を腰に吊ったセイバー、といった所でしょうか。一応、バーサーカーとしての適性も有りそうですが・・・・・・」
「なるほど。君のクラス名であるセイバーの他にもまだ種類がある訳だ」
「そうなります」
さて。
ここまで来れば、ついさっき彼女が言い渋った「真名」というのも、ある程度予想はつく。
「ならば、真名っていうのが、その英雄本来の名前なんだね?」
「ええ、一部の例外を除いて」
英霊本来の名前。
ならば、外で言い渋った訳も解る。なにせ、過去の英雄なのだから、死因だって丸裸なのだ。ジークフリートや、アキレスが良い例だ。
「じゃあ、今。君の真名を僕に預けてはくれないだろうか。決して、君以外に言い触らす事は無いと誓おう」
「いえいえ、そんな誓いなど無くとも。妻が夫に名乗るのは当たり前の事ですから」
「・・・・・・ま、まだ結婚はしていないがね」
妻だとか夫だとか・・・・・・そういう言葉を言うときに幸せそうな顔をするのを本当にやめてほしい。こっちがべた惚れしそうになってしまう。
「では、改めて名乗りを上げましょう」
そう言うと、彼女は僕の近くににじり寄り、三つ指をついて頭を下げる。
「英霊セイバー。真名、桃太郎。一目惚れした貴方の元に押しかけた身ではありますが、どうか、
そう言い終わり、一息置くと、続けて彼女は言葉を紡ぐ。
「これから、この桃を宜しくお願い申しあげます」
名乗り、というより嫁入り前の挨拶みたいだ、と思ってしまった僕は全く悪くない。
加筆しました。