霧雨魔理沙SIDE OUT
断末魔のような叫び声を上げた魔女っ子は全身から力が抜け、二人が合体している部位辺りからは粘液とは違う液体の感触が訪れる。
つまりあれだ、力が抜けて漏れたというやつ。
事切れた人形のようなその姿はかつてレイが並んでいた列の幽霊たちと重なり、彼女の生気が失われたように見える。
「あっ、んっ、あぁっ、あっ」
動きに合わせて出ている声には感情は無く、体が反射的に上げている声だと容易に認識できた。
きつかった膣は弛緩し挿入が楽でこれはこれで良いが、生憎と人形を抱くのは趣味じゃない。
腰を打ち込む毎に無抵抗に魔力を奪われる感覚を味わう。そう命令する。
「--ッ、アアアアッ!」
途端に上がる声。
意識を灯さなかった瞳は理性が戻り、彼女はまだ精神が壊れていない事を確認できた。
「アアアアッ、クァァァッ! やっ、やめっ、ああああっ! し、死ぬッ……!」
必死に上げた声は恐怖を孕んでおり、快楽を我慢しつつも発した言葉はか細く最初の男勝りな彼女の印象はすっかり影を潜めてしまっていた。
腰を振りそれに合わせて上がる彼女の嬌声をバックに、目の前の魔女っ子について考える。
勝気だった目はすっかりと目尻垂れ、か弱い少女の姿にしか見えない。
そこから察するに彼女が魔力を失ったのは本当っぽい。
このまま普通の少女として犯し抜くのも一興だが、せっかくの魔女っ子だ、どうせなら調教したい。
魔力がもし彼女に戻せるならこれから俺の矛にでもなってもらおう。
どうせ感覚のない体だが順風満帆に暮らすには多少の障害を蹴散らせる力が必要になりそうな世界だし。
死後の世界もどうやら力が全てみたいな風潮があると俺サイドでは認識している。
威力は如何ほどかは分からないが彼女の閃光レーザーは少なくとも目晦ましには十分活用できる。
それにそろそろ土地勘が欲しく、原住民の味方を探そうかと考えていたところだ丁度いい。
「アアアッ、だめっ、壊れ、るッ! アアッ、アッ、アアアアッ!」
先ほどまで初物だったはずの彼女だが限界以上の快楽を受け続けてか、この短時間で体が快感を覚えてしまったようだ。
言葉では否定し逃げようとするが、動けないとはいえ体は俺から逃れようとどこかに力を入れようとする様子はない。
心と体が完全に別の動きをしていた。
これは僥倖と彼女を攻める事にする。
「名前は?」
「ああっ、くっ、あっ……だッ、れが言う、アアアッ!」
話しかけた俺に何とか表情を作って睨みつけてきた彼女の初心そうに剥き出てきたクリトリスを最奥への挿入と同時に軽く擦った。
陸に打ち上げられた魚のように大きく体を跳ねて快楽を享受する彼女に、快楽が治まらないよう連続して同じ攻めを続ける。
「アアアッ! ひいいいっ、あはああッ…………さ……魔理沙!」
霧雨魔理沙ッ、怒鳴るように叫び首を左右に思い切り振った。
襲い掛かる快感には勝てなかったようで、首を振りながらその視線は俺へと寄せられている。
言ったから止めてくれ、そう捉えるには容易だった。
クリトリスから手を離し彼女の腰へと置き、反対の手で頭を撫でる。
「霧雨魔理沙ね。良く言えました」
頭を撫でながら念じる。
「ああっ、ふぁああっ!? あぁっ……」
途端に変わる彼女の声色。
魔理沙に念じたのはそれまで無抵抗に感じさせていた快楽を、彼女自身が一番心地よく感じる所へと快感の度合いを変えさせたのだ。
それ故、魔理沙は今、彼女自身が最も気持ちよく感じる快楽をその体に受けている。
それだけではない。
「--なっ!?」
彼女の驚いた声。
どうやら成功したようだ。
「ああっ、んっ、あああっ……んっ、くっ……」
自分が一番気持ちよく感じる刺激に身を委ねそうになるのを必死で堪えながら、困惑が混じった表情で俺を見上げてきた。
彼女の無言の質問に笑みを作りながら答える。
「魔理沙が正直に答えたからね、ご褒美だよ」
「んっ、ふぁ……」
頭を撫でると可愛らしく甘い声を漏らした。
魔理沙が驚いたのも無理は無いだろう。
何故なら今、彼女の体内には失われたはずの魔力が宿っているのだから。
戻ったのは恐らく広大な砂漠に対して小さじ一杯ほどの魔力。
雀の涙とも呼べないほどの量だが、案の定彼女にははっきりと認識できたようだ。
彼女の瞳にはかつての生気が宿り、快楽で上気はしていたがどこか青白かった肌は血色を取り戻していた。
魔力が戻る。
どうやら彼女にはそれが一番の鍵だったらしい。
不意に彼女の目の色が変わる。
先程までの恐怖は抜け、勝気なその瞳は僅かに敵意を含む。
「んっ……んんっ、あっ……ああっ」
必死に声を抑えるその力は先程までは無く、彼女にとって相当な光となったかが伺えた。
何か企んでいる。
だが。
「ああっ、んぁっ……んんっ……えっ!? あっ! ああっ、だめっ、そんなッ、あああっ! イヤッ、アァアアアアッ!」
何かに縋る様な、祈る様な声を上げて悲鳴とともに絶頂。
腰を浮かせていた魔理沙の体が再び糸が切れたように崩れ落ちた。
二度目の魔力消滅。
狂うまでに抗えない快楽の奔流。
感情を映さずただ俺の姿を映すその瞳は「何故」とだけが唯一伺えた。
彼女に笑みを浮かべたまま話しかける。
「悪いことをしようとしたんだから、お仕置きするのは当たり前でしょ?」
その言葉に感情を灯さない目が大きく見開かれた。
そんな彼女に更なる追い打ち。
「もちろん、良い事をしたら」
「ーーぁ」
魔力を戻す。
「そして悪い事をしたら」
「ーーッ!?」
魔力を無くす。
気づけば彼女の体は小刻みに震えており、瞳には唯一絶望が浮かんでいた。
彼女は気づいたのだろう。
魔女っ子としての殺生の与奪は俺が気分一つで変えられる事を。
だから魔理沙、出来るだけ優しい声色で話しかけて頭を撫でる。
今更気づいたが魔理沙に対して割と饒舌になってる我が口調。
映姫の様に純幼女ではないがまだあどけなさの残るその容姿に俺の中の紳士が幼女判定を下したんだろう。
「さて魔理沙。君は俺と仲良しの良い子になるか」
先程よりも多くの魔力を戻す。
「敵対する悪い子になるか、どっちがいい?」
「アァッアアアアァアッ!」
それを一気に奪った。
体はお互いに繋がったままだが俺への攻撃以外の行動を自由にさせていた魔理沙は目を見開き両手で頭を抱えながら思い切り仰け反った。
絶叫は恐怖に狂わないための無意識な行動か、これまでの咆哮で既に喉がやられている彼女の絶叫は見ているこちらまでもを絶望させかねない悲惨さを感じさせる。
だが、そんな状況でさえ彼女の体は変えられていた。
魔力が根刮ぎ奪われた瞬間、絶叫と同時に魔理沙の体は大きく震え、絶叫と共に彼女の秘部から大量の液体が溢れ出した。
先程の様に漏らした訳ではない。
彼女は、暴力的な快楽は受けているが、それ以上に魔力を奪われるという感覚に被虐的な快感を得てしまったのだ。
魔力を奪うと同時に絶頂。
キャパシティオーバーな刺激に彼女の体は開発されてしまったようだ。
ドンマイとだけ心の中で告げる。
恐らく先天的にMの気があったに違いない。
それがたまたま今開花しただけで。
魔理沙に意識を向ける。
見開いた目を忙しなく左右に動かし大きく息を荒げる様は、彼女が如何に追い詰められているのか手に取るように理解出来た。
なんとなく、腰を軽く動かす。
「んっ……んあっ、あっ……」
艶かしい声が魔理沙から出る。
しかしそれは先程までの耐えた末に漏れてしまった声とは違った。
動きを止めて彼女を見る。
苦い表情が俺を捉えていた。
「……わかった……良い子に、なる……」
歯を食いしばり涙を流しながらも俺から目を逸らさずに告げた彼女の姿はとても美しかった。
霧雨魔理沙SIDE
あの後、何故か行為を止めて私の中に入っていた物を抜いた。
今、彼は先程まで居なかったがいつの間にか一緒に居た幽霊の様な雰囲気の女とリビングが散らかっていると言ってせっかく家の中に戻した本たちを外に放り出された。
その際、脱ぎっぱなしになっていた下着を女が慌てる私に無表情で投げつけてきたことだけは解せなかったとここに記しておく。
男は爆笑しており、私に投げつけた女はどこか恨みがましそうな雰囲気を醸しながら男を凝視していたが。
勝手に物を捨てられたリビングで男女は寛いでおり、私はキッチンで料理を作っている。
一人になれた空間でようやく物事を冷静に思い返せた。
本心では無いといえ、あの時彼と口約束ではあるが誓約をし、頭を撫でられながら魔力を戻された。
あの男はやばい。
奪う程度の能力。
そういった類の物を有しているのではないのか。
彼の存在は幻想郷の均衡を崩す。
確信にも似た思いがずっと頭から離れない。
だがあの男を始末する案が無い。
幻想郷では基本的に殺しは禁止とされてはいるが、霊夢には悪いがあの男にはそれは当てはめない方がいい。
寧ろ当てはめて幻想郷にのさばらせている方が悪いと断言出来る。
始末したいが、やはり案は出ない。
今作っている料理に毒を盛ろうか。
生憎と致死性を持つ毒キノコはこの場に大量にある。
だがそれでもあの男は死なない。
何故かあの男が死ぬイメージが湧かないのだ。
どうすることも出来ない、それが男に対する印象。
そして私自身もあの男には恐怖し、殺せるとしても殺すのを躊躇している。
何故か。
私が彼に誓約させられた贄は魔力。
今は僅かにだが魔力が体内に宿っている、戻されている。
私の魔法使いとしての全てがあの男に言わば人質とされている。
例えあの男を殺せる手段があったとする、それで彼が死ぬ間際に私の魔力を全て奪ったら。
先の絶望を思い出し体が震える。
「あっ」
キノコを煮ていた鍋が軽く揺れた。
思わず声を出す。
危ない危ない、料理の途中だったぜ。
思考を中断し味見をする。
うん、上手い。
魔法の森のキノコシチューの出来上がりだぜ。
中々の出来に内心で料理名を付けながら皿に料理を寄せていく。
私と、あの男女ので三つ。
盆に乗せて彼らが待つリビングへと向かう。
キッチンから出ようとした瞬間。
「んっ、ああっ! はあぁっ……ああッ!」
「レイ、声抑えろって……って言っても無駄か」
姿を見せる前に足を止めた私を褒めたい。
女の嬌声、肌と肌がぶつかり合う音でリビングにて行われている行為が見ずとも認識出来た。
女の場所が先程まで自分だったのだから。
というか人の家で何をしてんだ。
寧ろ足を止める必要が無かったに違いない。
私の家、私が家主だ。
私の言葉が絶対。何故私が遠慮しなければならないのか。
よし、行こう。
「ああっ! んあっ、はあっ! ああっ!」
しかしどうしてか足が進まない。
聴きたくないのに聞こえてくる女の艶声に先程の自分が脳裏に映り出る。
組み敷かれ抵抗出来ない体を問答無用に突かれ、その度に訪れる最大の快感。
気持ち悪い、感じたく無いと思う事すら考えさせない溺れる様な甘い快楽。
そして訪れる、魔力を奪われる強烈な刺激。
「ッ!?」
気づけば、乾燥してもいない唇を手持ち無沙汰の様に舌で舐めていた。
両手は料理を乗せた盆で塞がっており、もし片手でも空いていたなら。
出てきそうになった思考を頭を振ることで忘却の彼方へと追いやり、意識を現実に戻す。
見れば両脚は無意識に小さくこすり合わせており、そんな自分の行動に顔が熱くなるのを感じた。
絶対に顔が真っ赤だ。
この顔で出て行けばあの男には付け入られる、そう思いリビングに入るのは顔の熱が冷めてからにしようと決めた。
料理も冷めるがあいつらの自業自得だと内心で怒鳴りつけ、盆を置こうと後ろへと振り返る。
「魔理沙」
「ッひゃい!?」
その時、不意に頬に何かが触れた感触に驚き素っ頓狂な声を上げてしまった。
その瞬間、全身が燃えた様に熱を帯びる。
耳元で囁かれた声は聞き覚えがあり、先ほどまで恨んでいた者の声。
その声が何故か無性に心地よく感じた。
そんな自分に混乱し皿に体が熱くなる。
反応が遅ればせながら慌てて振り返った。
そこにはリビングにいたはずの男の姿。
その後ろには女の姿。
「なぁ、ッ!」
二人は生まれたままの姿であり振り返ってしまった視線は無意識に大きく肥大化したそれへと向かい、慌てて顔を逸らした。
「どッ、どどどうしたんだ! リビングでま、待ってるんじゃなかったのか!? ほ、ほらっ、今から料理を運ぶところだったんだぜッ!」
見るも無残にどもってしまったが、それを隠すために顔は背けたまま両手に持った盆を突き出して男に見せる。
なんて臨機応変、我ながら良いアドリブだぜ。
心の中で自画自賛をしていると、聞こえてきた音。
がちゃん。
そんな音が聞こえた。
不思議に思い、音がした方へと目を向ける。
その瞬間から少しばかり思考が停止した。
その光景を認識出来なかった。
私と男の距離は文字通り目と鼻の先ほど。
そんな超至近距離で腕を思い切り伸ばしたらどうなるのか。
魔法の森のキノコシチューが彼の全身にまみれていた。
聖人君子であろうがブチ切れそうなその光景。
盆が喉を突き皿が顔面に衝突、そこから飛び出した出来たてほやほや熱冷め止まぬシチュー達が一斉に対象の全身を真っ白に染める。
黒髪も某閻魔を彷彿とさせる緑基調の着物までも。
誰もが時が止まった様に静止した空間で思考がようやく我に返り、同時に先ほどまで熱かった顔が一気に冷めるのを自覚した。
聖人君子であろうがブチ切れそうなことをされたのだ。
私から。
そこから導かれる結論は簡単。
彼の逆鱗に触れる。
それが何を意味するのか。
魔力を奪われる、嫌だが果たしてそれだけで済むのだろうか。
命を奪われる……。
体が勝手に震え出し、かちかちと奥歯がうるさい。
「……あ……あ、の……そ……ごめ、な……」
とにかく謝ろう、そう思い慌てて口を開くが上手く口が回らない。
謝罪の言葉さえ言えなかった。
何も出来ない、自分の身すら護れない、どうしようもなく不甲斐ない自分に泣きたくなる。
同時に伝う頬の感触、気づけば泣いていた。
泣いてたってどうしようもない、分かっているのに無駄に涙ばかりが流れ続ける。
何も出来ず何をしていいのか分からず、意味もなく手を宙で動かすばかり。
どうしようもなく俯くことしか出来ない。
俯く視界の端で彼の手が動いた。
終わった。
その思いで思考が闇に包まれる。
脳裏に浮かぶのは今までの景色。
矢継ぎ早に流れているはずの思い出はやけに鮮明に記憶を思い起こさせる。
霊夢と意味もなく一日中ごろごろしていた日常。
彼女と向かい悪を懲らしめた異変。
アリスと彼女の家で飲んだ紅茶の味、魔法使いの真価を魅せられた人形劇。
パチュリーとの弾幕ごっこという名の挨拶、そして持病の喘息が発症していない事に安堵しつつ死ぬまで借りていく本たち。
時にはフランや美鈴、小悪魔や咲夜が参戦し大乱闘にも発展した懐かしい日々。
……あれ、私の家に誰かが来た記憶がほとんど無いのは気のせいだろうか。
色々な景色、人物、出来事が次々と過ぎる。
友人知人の家にお邪魔してるところ、魔法の森でキノコ狩りをしてるところ。
魔法の森に住んだところ。
魔法使いになるためにお世話になった魅魔様のこと。
人里に父親と住んでいた幼いころ。
嫌だったはずの思い出も今では妙に心地よく感じた。
次の瞬間、全てが終わってしまうからだろうか。
ごめんな霊夢、入れると言ってたお賽銭は結局入れられなかったぜ。
なぁアリス、お前にも沢山の友達が出来たんだ、初めて会った頃みたくあんまり引きこもるんじゃ無いぞ。
やったなパチュリー、私の予想では後数十年は借りてるとこだったがどうやらすぐ返せるぜ。ただ引き取りには来てもらう事になるけどな。
走馬灯、遺言の様な物をゆっくりと考えられ、寧ろ死ぬ事に恐怖が無いのかと自身に問いかけたいほどやけに心が落ち着いていた。
恐怖はある、死にたくない気持ちも勿論ある。
だがそれ以上に抗えない死への確定にどいうしようもないと諦めが心を占めていた。
悪いな、皆。私の分まで生きてることを楽しんでくれ。
誰にも届かないはずの言葉を内心で叫び苦笑。
あー、もう死ぬのか。
目を瞑る。
やがてその時は来た。
「…………ふぇ?」
変な声が私から出た。
痛みは無い、意識はある、体もある、命が奪われてない。
あるのは頭に乗せられた暖かい感触だけ。
恐る恐る目を開ける。
真っ先に見えたのは自宅の床と男の足。
ゆっくりと顔を上げる。
緑が基調の茸まみれの服。
更に上げれば、優しそうな笑みを浮かべた男の顔。
彼の片腕が私へと伸び、それが頭に置かれていることにやっと気づいた。
同時に感じた。
魔力がまた戻されている。
それも全快の三分の一程度にまで。
声を出そうとするが、口が動きを忘れた様に全く動かない。
何で、その気持ちを目だけで伝えることしか出来ない。
そんな私の心境が顔にでも出ていたのか、彼は一瞬きょとんとしたがすぐに笑みを浮かべた。
「悪い事をしたのが分かって、ちゃんと謝ろうとしたでしょ?」
だから良い子良い子、そう言って手を置かれた頭を撫でられる。
それが酷く心地よい。
訳が解らなかった。
料理を思い切り相手にぶち撒けるという悪い事をしたのに、何で許される。褒められる。
幼い子供じゃないんだからそもそも行為自体の分別が出来ない時点でアウトだろう。
私を幼子として扱っているのか、それともただの馬鹿じゃないのか。
ただ、今はそれよりも。
「……こ、のぉ……バカぁ、っ……!」
突発的にそんな言葉が飛び出し、力が入らなくなった体は床にへたり込んだ。
死の恐怖が去ったことをようやく自覚出来たのか全身が酷い寒気に襲われ、大きく震える体を両手で抱える。
「……死ぬかと思ったんだぞ」
涙声のまま言う。
「もうダメだって。走馬灯で皆に謝ったりお礼を言ったりまでしたんだぜ……」
言わなければ気が済まなかった。
「私の分まで生きてくれって叫んだんだ」
「そっか」
男はその一言だけを告げて頭を撫でてくる。
「魔理沙は俺と仲良しの良い子だろ? だったらちょっとの失敗くらい大目に見るさ」
言われた言葉に内心が大きくざわめいた。
こんな男。
お前のせいで私は犯され魔力を失い、従わされ、死の直前まで追い詰められた。
そんな最低な、幻想郷にとって害悪になるであろう男なんだ。
そんな男、なのに。
見守る褒める叱る、父親よりも父親らしく。
私から目を離さず興味を持って接してくれる、兄的存在よりも兄らしく。
私の体に興味を持ちこんな気持ちにさせる、今まで会った事がある男たちよりも男らしく。
犯罪者、それは分かっているのに反応してしまった。
正直に言う、胸が大きく高鳴った。
父性か兄妹か異性か分からないが、確実にそれらを意味する男として彼を思ってしまった。
不本意だ、悔しい。
けれども心象が、彼に対しての拒絶を和らげる。
好き、ではない。絶対に。
だけど胸の奥で震えるこのドキドキは、嫌いになれそうになかった。
「ごめんな、魔理沙。せっかく作ってくれたのに台無しにしちゃって」
頭を撫でながら謝ってくる彼に無言で横に首を振る。
流れた涙は生への実感だけじゃない様な気がしたのは、私の気のせいだろうか。