「……んっ」
あれからたっぷり体感で二時間ほどして彼女が目覚めた。
「……あれ、なんであたいここに寝て」
辺りを見渡し俺の姿が目に入り動きを止める。
先程までの悪夢とおぼしき出来事を思い出したのか、あるいは。
「ああっ! はああっ! あああっ、ああっ! あああっ!」
以前の女幽霊を後ろから犯していることに驚いたのか。
恐らくどちらもだろう。
顔色を真っ青にして唇がわなわなと震えている。
彼女が起きるまでの暇潰しに犯していただけなので、起きたならもう終わらせよう。
「ああっ! んんっ、んああっ、あはあっ! あああっ!」
膣内での動きを速めて乱暴に子宮口を突き上げる。
無表情で矯声を荒げる姿は新鮮で、見ているだけでかなりの興奮をそそられた。
膣内が急速に締まりその収縮が治らず、どうやら絶頂しそこから降りれないようだ。
更にピストンを速めて彼女を責め立てる。
「あああっ! あああああっ! はああっ! あああっ――ッは……ッ……ッふ……!」
極限の快感に呼吸が詰まり過呼吸に陥った。
幽霊が過呼吸のまま更に追い立てるとどうなるのだろうか、既に死んでるのだからそこからは死なないのではないか。
とりあえず射精をするために限界まで速度を上げて彼女の中に叩き込む。
「あああっ! あはああっ! ぅあああっ、ああっ! だ、ダメッ、あはあああああああッ!」
なん、だとッ……。
更に締めつけられたあまりの圧迫に堪らず射精。
大量の精子を子宮の一番奥に勢いよく解き放つ。
彼女は大きく体を仰け反らせてようやく長すぎる絶頂から解放されたのか、力なく膝から地面に崩れ落ちた。
未だに目の前に火花が散っており最高の快楽に満足する。
崩れ落ちた女幽霊は既に俺から離れているが、今回はピクリとも動かない。
まさか本当にまた死んだのか。
イク直前にどうしてか喋ったが、あれが最後の言葉だとしたら些か悪いことをしたもんだ。
強烈すぎる刺激に一瞬、生前の名残で声を上げたのだろうか。
よく分からないが、過ぎたことを考えても仕方ない。
分からないのだから考えても無駄なだけだ。
すぐに、別の思考に切り換える。
さて本題の『俺ハーレム化計画(仮)』を実行すべくまずは事情聴取をしなければならない。
白とどす黒いだけ水の色だけの世界で唯一の赤を探す、がどこにもいない。
どこに行ったのだろうか。
遥か上空、既に米粒程度に小さくなっているが良く目を凝らすと確かに赤が見えた。
翔べる、だと。
三途の川の死神は化物か、まあ元々化物なんだが。
それよりも逃げられてしまったようだ。
どうするか。
彼女はどこに向かったのか、仲間を呼んでリンチしに来るのかはたまたこの死後の世界の警察にでも駆け込むのだろうか。あればの話だが。
さて一体どうしたものか。
右も左も分からないこの場所でなにをすればいいのだろう。
一人、彼女が飛んでいった方向を見ながら悩んでいると、すぐ近くで砂利が擦れる音が聴こえた。
顔を向けるとそこには踞るように体を縮こませる女幽霊がいた。
生きてたのか、いや死んでるんだけども。
踞り、ゆっくりと体を起こし立ち上がる。
顔を上げて無表情で感情のない目をこちらに向けてきた。
そのまま、列に並んでいた時のように呼吸もなければ微動だにもしない。
なんなんだ。
この女幽霊の意図が分からず不気味に思って人ひとり分程度しかない距離を後ずさることで離した。
後ずさる、彼女が前に進む。
また後ずさる、再び彼女が前に進む。
一進一退が続き、少しだけ彼女の意図が見え始めたような気がしてきた。
試しに今度は歩み寄ってみる。
彼女は動かなかった。
近づいて頭を撫でるが、反応はない。
手を離して全力で走り去ってみた。
全力で彼女も追いかけてきた。
長い黒髪の全身真っ白な女が無表情で全力疾走してくる様は物凄く怖い。どこのホラーだよ、リングさん家の貞子ちゃんかよっ。
悪態を吐きつつしばらく走っていると、先に音を上げたのは俺だった。
生前の運動不足が祟ったらしい。
やはり運動がセックスだけじゃ鍛えられる筋肉には限界があるのか。
全身運動っぽいのだが、どうやらランニングの体力へは応用できないらしい。
煮るなり焼くなり好きにしろ、そう思い疲れたし観念して立ち止まるとそれに合わせて彼女も立ち止まる。
あの無表情は全く息も汗もでていなかった。
チートめ、内心で呟き目を閉じてこれからの行為に甘んじる。
どうせ痛くないのだから、もうなにも怖くない。
だが首ぱっくんの気配は見せず、一向になにも起こらない。
目を開けるとそこには相変わらず無表情の女幽霊が立ち位置を変えずに佇んでいた。
その姿になにやら既視感を覚える。
――どことなく飼い主について回るペットみたい。
そう思うと僅かに愛着が沸き始めるというものだ。
"女幽霊が飼われたそうに見ている"
そんなテロップが彼女の前に現れても不思議ではないほどにそう見え、どうせ今は一人なのだから飼ってもいいかもしれないと思う。
どちらにしろこちらが手を招こうとも招かざろうともついてきそうな感じだし。
飼ったことはないが、ペットと思えばずっと一緒にいても飽きなさそうだ。
それにこちらが何かしなければ無言、無反応なのだ。
居るのに居ない、まさに幽霊じゃないか。
それならまずはペットというからには名前をつけなくては。
あまり凝った名前にすると忘れそうなため安直でいいだろう。
幽霊だし、レイでいいか。
しかしそれでは没個性的かもしれない。
ならば無表情な幽霊だから霊無、れいむなんてどうだろうか。
いや、良く考えればここにいる魂たち全員が無表情だったな。
めんどくさいし、レイにしよう。
そうだ。ユーレイ。ユー、レイ。
あなたはレイ。
これは覚えやすいぞ。
彼女の名前はレイに決定。
「レイ。お前の名前はレイだ、分かった?」
名前を教えて問いかけるが、無反応。
まあこれくらい黙っててくれた方が一緒にいる分には楽でいいか。
どうせついてくはのだろうし。
レイについてはこれでオッケー。
次はこれからの進退をどうするかだ。
色々とどストライクだった赤毛の巨乳ちゃんはどこかに行ってしまったし、他の幽霊たちは男かブスしかいないためレイを手に入れた今、これ以上ここにいる必要性がなくなった。
唯一ここの地理で分かっているのは、この川を越えたところに閻魔大王がいる建物があるということだけだ。
赤毛の巨乳ちゃんが先程魂を送っていった距離と時間を考えれば、それほど離れた場所にはないだろう。
それか川岸からでも目立つ建物なのではないか。
こちら側の内陸がどうなっているか分からないため、行くのは自ずと三途の川の向こう側となる。
問題はどうやって川を渡るかだ。
赤毛の巨乳ちゃんは飛んで行っていたようだが、こちらは全く翔べる気がしない。
さて、手段はどうしようか。
「レイ、お前飛べる?」
物は試しととりあえずレイに聞いてみる。
相変わらずの無表情で無反応。
しかし彼女の体は確かに宙に浮いていた。
なんだこのペット、できるぞ。
ふよふよと浮いているわけではなく、見えない足場に立っているように不動で浮いていた。
レイの腰に抱きついて地面から足を離してみる。
その瞬間、墜落。
二人もろとも地面に落ちた。
まさかの事態に驚いたが痛みはなく、人の上に落ちたレイも無事らしい。
レイめ、早速飼い主を愚弄しおったな。
一人でしか飛べないくせに浮きやがって。
期待を返しやがれ。
「全く、俺一人くらい抱えて飛べってんだ」
思わず声にだしてしまった。
だが無理なことをいつまでも悔やんでいても仕方がない、別の方法を考えなければ。
別の策を考え始めた俺に、上に乗っていたレイはおもむろに立ち上がり背後に回って脇の下から手を入れて俺の体を抱えあげる。
「おいっ、レイなに」
不意の出来事に思わず話しかけるが途中で止める。
止めざるを得なかった。
俺を抱えたレイが浮いたのだ。
おい、浮けたのかお前。
どっちなんだよ。
俺の言葉で出来るようになったのか。
俺のどこにも令呪なんかないぞ。
だが何を言おうにもレイは反応しないだろう。
まあ飛べるんだしいいか。
そう思い直し体勢をそのままレイに指示する。
「よしレイ、このまま三途の川を渡るんだ」
指示にレイは答えず応えた。
俺を抱えたまま高度を上げる。
十メートルほど上がったところで前に進みだし、川の上空に入った。
頼むから途中で落下だけはしないでくれよ。
慣れない空を飛んでいる感覚にどぎまぎしつつ、ひたすらにそれだけを祈る。
流石に死んでても川に落ちて岸まで泳ぎたくはない。
薄目で過ぎ行く川面を眺めていたが心配は杞憂に終わり、無事対岸へと渡り終えゆっくりと高度を下げて地面に着地した。
俺を降ろしてから離れたレイの頭を撫でてやる。
頑張ったペットは誉めてやらないとな。
反応は示さなかったが、レイの黒髪は見た目通りさらさらで撫でている方が心地よい。
こんなに毛並みがよければ、レイが犬や猫だったならどこぞの血統書付きだったろう。
「さて、と」
レイを一通り撫でて離し、降り立った大地の奥に顔を向ける。
少し離れた場所に大きな建物が立っていた。
遠巻きに見ても巨大で厳かな雰囲気を感じる。
あそこが閻魔大王がいる建物なのだろうか。
周りも見渡してみたが他に建物らしい建物は見つからず、とりあえずそこを目指して歩き始めることにした。