※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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<07話 弦に触れる少女達は唄う 03>

 ――同時刻――

 

 ――特別軍事法人NEET第七研究所 所長室――

 

 ◇

 

「矢島会長、マギちゃんが直接連れて来た転移者が、彼氏だって事。いつから知っていました?」

 

「数年前にあの並行世界を見つけた、初期の調査段階からさ……可能性としては、もう一人の自分が、並行世界にいる可能性も考慮していたが、まさか義明の方が、ドンピシャで存在したのは……意外だったよ……最も自分の家系は、影も形もなかったけどな」

 

 本当に意外だった。

 向こうの日本からマギサが連れて来た彼。

 遠近義明……と俺のよく知る、もう一人の遠近義明。

 今は生死不明で行方不明になったままの、遠近義明の持ち物に残っていたDNAサンプルと、彼のDNAサンプルを比較してみたが、ほぼ同じという結果が出た。

 流石に指紋などは、発生の過程が違うからなのだろう。

 一致はしなかった。

 医学的な結論としては、一卵性双生児と言っても、問題はないそうだ。

 

「……だが本田君、妙だとは思わないか? 歴史の進捗状況や人の移動や出会い。誕生や生死のパターンが、マクロレベルで違う並行世界でだ……ほぼ同じDNAパターンをした人間が、しかも同じ氏名で生年月日まで同じ状態で、誕生して成長。存在している……これは明らかに異常だよ」

 

 念の為、こちらと並行世界の義明の両親と親族、家系も調べてみた。

 並行世界の義明の両親や親族は健在で、DNAサンプルも工作員を使い。

 採取出来たので調べた。その結果、何ら医学上の矛盾。

 経歴上の矛盾も無かった。

 彼はあの世界で生れ、育った両親から生まれた、実子だ。

 

 だが、問題は俺のよく知る……この世界で生れ育った義明の方だ。

 

 両親や親族は全員、第三次世界大戦で死亡か行方不明になっている。

 経歴などについても、戦災で細かい情報の収集は不可能だ。

 当然のことだが、DNAサンプルの採取も不可能だ。

 

 だがその必要は全く無かった。

 

 苗字こそ遠近となっていたが、残っていた写真を見た限り。

 とても親子関係がある、顔つきではなかった。

 案の定、戸籍情報を調べたら、俺のよく知る義明は『養子』となっていたのだ。

 ……故に答えは分かり切っていた。

 

「本田君、どう考えても、我々より先に並行世界で『対人工作』をしている奴がいるよね」

「でしょうね~そう考えるのが、一番合理的ですよ。目的は何でしょうね?」

「それが分かれば、苦労しないよ。さて、私は説明会もあるから……ラウンジの方に行ってくるよ」

「矢島会長、マギちゃんとツバメちゃんは――」

「あの二人は、人前に出られる状態じゃないよ。心の整理が必要さ」

 

 ――同時刻――

 

 ――特別軍事法人NEET第七研究所 医務室――

 

 ◇

 

「……マギサ起きている?」

「起きているわよ……ツバメ」

 

 私は医務室のベッドで寝ている。

 ツバメは妖精族特有の睡眠状態の姿勢。

 宙に浮いて、漂っている感じだ。

 

「ねぇ、マギサ……あの新人君さ……あいつと同じ臭いがしたよ」

 

 妖精族は他種族より嗅覚が鋭い。

 私とは違う見方で、彼を定義分類しているのだろう。

 だが、私の中での彼への定義。

 ……分類はどうなのだろう。

 少なくとも、彼の魔力の帯び方は、私の愛した男。

 遠近義明のそれと、よく似ていたが、その程度の相似性はよくある事だ。

 だが、私が懐かしさと同時に、彼に対して『何かを』期待したのは間違いない。

 

「……思い出して見るとさ……顔つきや目元、鼻筋とかもそっくりだよね」

 

 確かに顔つきもそっくりだ。

 私の携帯端末やタブレット。

 その待ち受け画面は、既に数ヶ月前から、隠し撮りした彼だ。

 部屋には会社の機密費をマネーロンダリングしてから、複数のダミーカンパニーに流し。

 業者に発注した、等身大ポスターを貼っている。

 寝室の壁と天井は彼のポスターと写真で固めた。

 ……これは誰にも話していない。私だけの秘密だ。

 

 この世界の倫理観だと私の行動は、完全に危ない人に分類されるだろう。

 だが、私の故郷の世界では、好きな人や好みの殿方の写真を密かに愛でる。

 それは殿方には到底理解出来ない、乙女の密かな嗜みだ。

 

 その手の乙女や貴婦人向けに特化した、喜劇や文学も数千年前からあるのだ。

 同時に批判も同じ位存在するが……嗜みや芸術とはそういうものだ。

 少なくとも、他人に迷惑を掛けていない以上、問題はない。

 笛ペロをする奴らや下着を盗む、この世界の犯罪者よりは、遥かにマシな筈である。

 

「マギサ……私にもポスター分けてくれないかな」

「だ…………誰から聞いたの…………」

 

「猫達から聞いたよ。ご主人様は男のポスターに夢中になっているニャーと騒いでいたからね……猫とかさ、一部の動物が考えている、概念を鳴き声経由で翻訳出来る、妖精族の秘密……話しちゃったや! 里があった頃なら重罪になるけどね! マギサ、私達……新人君と仲良くなれるといいよね!」

 

 羽の動きを見るに、ツバメは嬉しそうだ。

 彼女も彼には懐いていた。

 ……気持ちは一緒だ。

 

「そうね。だけど、ポスターの件は私達だけの秘密よ」

「……だね。今のうちに寝室も掃除した方がいいよ……」

 

 そのまま私達は何も話さず眠りについた。

 

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