――名古屋市内 市警察東署――
――SWAT第四分隊詰所――
「マロン、お前は……よく食うな」
『ワン!』
俺とマロンは詰所のソファーに座って、龍澤主催の上映会待ちだ。
マロンは龍澤から奪った、お気に入りの枕をソファーに置き。
串から抜いて貰い、トレーの上に移した、串焼きの肉にまっしぐらで……幸せそうだ。
因みに表側の入り口は、非番になったので、SWATの規則に従い。
対爆シャッターを降ろし、ゴム弾を発射する、セントリーガンを置いた。
数年前までは、警告用の案内表示を設置した上で、クレイモア対人地雷を敷設していた。
だが、迷い込んだジャンキーが何人か死亡。
仕事が増えた鑑識、州政府からクレームが殺到。
それ以降、防犯目的でのクレイモア対人地雷の使用は禁止になった。
この罠を考え規則にした、市警察SWAT創設者の市長は『伝統が消えていくのは寂しい』とか、風の噂によると、言っていたらしいが……まぁ過ぎた事はどうでもいい。
そんな俺の視線の先には……。
上映会で使う、大型有機ELディスプレイに市内で起きた。
本日の事件事故のニュースが流れている。
(……市内ではコンビニ強盗が多発か……頑張れ地域課の連中――ん?)
カチャ――コツコツ――裏口から足音が近付いてくる。
(龍澤と……誰だ)
「よう! 鬼沢元気にしとるか! ほれ龍澤」
「ありがと源さん、この機械が残っているの、鑑識だけだから助かったよ」
「いいってことよ!」
「源さん……それに、松沢隊長じゃないですか」
「ああ、そのままでいいよ。俺の隊も非番だから、俺も上映会に混ぜてもらうぜ」
「鬼沢さん、二人にも知らせた方がいいかと思ってさ」
龍澤はそう言うと、源さんから渡された機械。
小型のプリンターっぽい機械をソファー前のテーブルに置き。
自分のデスクに向かった。
白髪頭で少し元気な爺さん、源さんは鑑識の長老。
戦前の県警時代から、鑑識一筋の方だ。
見てきた仏の数と種類が……俺達とは桁が違いすぎる。
最近では戦争を知らない世代。
新人警官に仏……死体を見せて慣れさせる、耐性訓練の教官でもある。
そして、完全武装の状態で入室してきた、短髪のサーファーっぽい中年男性。
松沢隊長はSWAT第一小隊の隊長だ。
戦前と戦中は警視庁の特殊部隊SATにいたとか、色々と噂があるが。
あの市長が市警察創設時、引き抜いてきた人材だから……腕前は確かだ。
松沢隊長が率いる、第一小隊の主任務は、他のSWATや機動隊の教導。
その関係で、第一小隊は州軍や国防軍やPMCとの共同訓練も多い。
よって本来なら、市警察本部はともかくとして、第一小隊の詰所があるここ。
東署内でも、見かける可能性は低い人物だ。
「ようマロン! お前も元気そうだな!」
『くぅ~ん!』
(そういや、松沢さんは……犬好きだったか)
俺はマロンを膝に乗せた、松沢隊長。
白衣のポケットから炭酸飲料の缶を取り出し。
プシュッ――飲む源さんに挟まれ。
「龍澤~! 串焼き残っていたら分けてくれ」
「源さん、ちょっと待ってくれよ」
「源さん、コーラの予備があるなら俺にもくれよ」
「ほらよ!」
……身動きが取れない状態になった。
チン!
「レンチンで悪いすけど、どうぞ」
「ほれ、鬼沢も飲んで食え!」
「あ、どうも」
プシュッ。
「マロン!」
『ワン!』
「この野郎~いい肉食わせて貰っているな! 俺の家なんて女房がケチすぎるからよ~モビアックか魚ばかりだぜ!」
「なんじゃ松沢、お主、昆虫食はお嫌いか」
「流石にサバイバル訓練と家で食い飽きたよ。お、上映会の始まりか」
龍澤がソファーの前面。
モニター横に折り畳み式のパイプ椅子を展開。
リモコンを握って座ると、口を開いた。
「……皆様もご存知かとは思いますが、俺と鬼沢さんの古巣の関連施設。NEETの第七研究所の周囲で、一昨年から続く……『終わりなき山狩り』その原因と思われる、存在の情報をなんと……モヒカン達から入手しましたよ!」
「龍澤、さっさと始めろよ。コーラの炭酸が抜けちまうよ」
「へいへい。まぁ俺の解説より、映像を見た方が早いか」
龍澤はそう言うと、リモコンを操作。
モニターには、モヒカン達がバーベキューをしている光景。
そして射撃訓練の様子。
ゴミを火炎放射器で燃やす……映像が出てきた。
「この映像はPMC『モヒカン旅団』の総務部が、クライアント向けのPV素材用に、今年の六月に撮影したものですが、問題はこの後、NEETから発注された……ええと……脱走隊員の捕獲ミッション中だから……もう少し先だな」
龍澤が早送りのボタンを押したようだ。
モニターに映るのは、素早い動きで野戦装備になったモヒカン達だ。
素早くテクニカル車両の荷台に搭乗。
そのまま……山道に進入していくようだ。