「ほれよ、鬼沢」
「どうも」
俺がコーラを飲み干したのを察したのだろう。
源さんがコーラを分けてくれた。
そして残りのコーラもテーブルに置き。
龍澤の分は片手投げで――バシッ! プシュッ!
「サンキュー源さん――ゴキュ!」
龍澤も左手でナイスキャッチ。
喉を潤していく。
「なぁ龍澤よ~」
「なんですか松沢さん?」
「今更だけど……なんで、こんなモヒカンっぽい体格と顔付きの輩が……ドンピシャで集まっているのよ? おかしくないか」
それはギルド内部や、その周囲の巡回をした時。
俺も思っていた事だ。
確かに映画の撮影でもないのに。
……如何にもそれっぽい連中ばかりなのだ。
「その件の原因になるのですが、どうもPMC『モヒカン旅団』はベンチャー企業の出資で、最近出来たようで、先にそちらの経緯を説明しますわ――ちょっと、止めますね」
そう言うと龍澤はリモコンを操作。
画面にはテクニカル車両の荷台に搭乗したまま。
山道を進む集団。
頭部に……シダ類や草花の造花を盛り付け。
顔に戦場でのお化粧。
ドーランを塗って、満面の笑みになった。
野戦装備のモヒカン達が……静止画像で映っている。
モヒカン旅団の装備を見た限り。
銃火器の類いは国防軍や州軍が放出した、国産の銃火器だ。
それらにドットサイトやフラッシュライトを装着。
各個人用に使いやすくした、改造型なのは珍しくない。
ハンドガン以外のサイドアームに選んでいる、艶消しをしたマチェットのよう短刀は、草木の多い、山中なので違和感はないが……暴徒制圧用の軍用警棒も選んでいるのが珍しい。
だが、脱走隊員を捉えるのが目的なら。
非殺傷兵器の類いも必要だろう。
「なぁ鬼沢、あのモヒカン連中の頭見て、なんか思い出さないか」
いきなり松沢隊長に話題を振られた。
だが、全く何も思い出せないので、答えは一つだ。
「いえ、自分は何も心当たりがないですね」
「小林だよ。賞金稼ぎに転職した『パトカー壊しの小林』、あいつがあんな感じの草花を頭に乗っけた、女子中学生の出てくる、戦前のアニメを詰所や男子寮で、よく視ていたんだよ……花の盛り方がクリソツだぜ……俺の娘も好きだったな」
「確かに小林はアニメが好きでしたね」
何と無くだが、言われてみれば草はともかく。
見た覚えがある、花の盛り方だ。
松沢隊長の言葉がきっかけになって、俺の記憶には頭部に花を盛った、アニメキャラの女子中学生達が、超能力で市街戦をするアニメ。
大戦前の平和な時代に流行った、アニメを夢中になって観ていた男達。
静かに視聴する奴。
泣く奴。
喜ぶ奴。
盛り上がったシーンで叫ぶ奴。
語り合う奴。
今は亡き……殉職していった仲間。
SWAT隊員や警官の姿が蘇ってきた。
確かに小林が高い金を払って入手した、当時の円盤を使い。
小林が男子寮で、上映会を今の龍澤みたいにしていた。
「ハハハ! 花の盛り方! そこは盲点だったな! 松沢隊長のお子さんいい趣味していますね。でも、そのアニメは大戦前のだけど、最近の若い子でも――」
「娘は大戦前にコミックバザールにいったまま、行方不明だよ……生きていたら龍澤と同い年だな……済まない。話を進めてくれ」
「失礼しました。ではこちらの映像を――」
確か松沢隊長には、大戦前にも妻子がいたが、行方不明になった。
その話を知る人間は少ない。
偶々聞いた俺も、わざわざ人に話す様な話題でもないので、龍澤には話してなかったが。
こうなるのも仕方ないか。
だが、コミックバザール。
今も毎年、年二回は行われるイベント。
同人誌即売会で行方不明という事は、あの有名な事件の被害者なのだろう。
参加サークルのブースごと、その関係者が大勢の人の前で消失した事件。
数多くの物証と映像、証言があるにも関わらず。
公式にはテロリストによる、爆破テロになっている『コミバ参加サークルブース消滅事件』という無慈悲な行方不明事件の……。
俺の思考に大戦前の思い出が溢れそうになった瞬間。
源さんの陽気な声が響いた。
「ほぉ~やはり、あのモヒカンはパワードスーツだったか!」
「おいおいマジかよ!」
画面の映像は切り替わって、モヒカン型パワードスーツの開発映像が流れ始めた。