「龍澤、ポップコーンあるか?」
「いえ『えびせん』ならストックがありますね。とってきますわ」
「わしの分も頼むぞ~」
『ワォ~ン!』
「マロンはドッグフードな」
『クゥ~ン』
俺達はモヒカン型パワードスーツの開発映像を数分程……視聴している。
流石にみんな口元が寂しくなってきたようで、龍澤は要請を受け。
詰所の給湯室に尻尾を振るマロンと一緒に向かい。
ガンナーの好物である、海老煎餅とマロンのカリカリを取りに行く。
「……モヒカンがモヒカンを創るね」
開発映像を観る俺は……思わず声を漏らした。
それがトリガーになったのだろう。
俺は水分が欲しくなり、コーラを少しずつ。
……口の中に注いでいく。
どうやら、モヒカン型パワードスーツを開発し。
運用する為にPMC『モヒカン旅団』を創業したのは、白衣を着た。
『ハハハ!』
笑顔と笑い声がナイスな。
筋肉マッチョのモヒカン達のようだ。
こいつら――いや、モヒカン型パワードスーツのスペック情報を見ると。
頭部と上半身を覆う基本ユニットの防弾性能は、自動小銃のフルオート射撃に耐え。
頭部はNBCガスマスク、戦場情報を表示するHMDとしても機能するようで……。
本当ならデザインはともかく。
中々、魅力的だ。
「コレいいな……俺の隊でも試験導入してみるか……いや先ずは第六小隊だな――」
早速、深夜の通販番組が大好きな男。
松沢隊長が動いた。
「もしもし俺だ。お前たち昨日の実弾演習で、火炎放射器を運用していたよな。あ? 昨晩の演習の後……消防隊に殺されそうになっただぁああああああ――」
しかも飲食も出来る様に、頸部は自然な形で『ヒャッハーな』動作が可能。
尚、電源にアルコールや炭酸飲料で発電をする、自社開発の発電ユニットを搭載しているので、定期的なエネルギー補給。
「――ふざけやがってぇえええ! この後、俺が消防に抗議してくるから、お前達は動くな! ああそうだ! これまで通り派手に燃やせぇえええ!」
隣の人と同じく……バーベキューを推奨している。
尚、下半身の方はホームセンターでも売っている、市販のパワードスーツや防弾パンツの改造型を、予算の関係で使っているようだ。
そして、最後に前世紀末に流行った、世紀末覇者の漫画や筋肉への思いを、白衣のモヒカンが熱く語って……開発映像は終了した。
ガリガリ……。
周囲には松沢隊長の膝の上に戻ったマロンが。
松沢隊長の手のひらに載った、カリカリを食べる。
マロンの咀嚼音が響いている。
「で、龍澤や~ここからが見せ場かの?」
「ええ、じゃあ、映像を戻しますね。次の映像を見たらもうすぐ、源さんから借りた機械の出番ですよ~」
そういうと龍澤がリモコンを操作。
するとモニターには、俺達の見慣れた光景。
銃撃戦……いや、一斉射撃の映像が映り。
ズダダダダダァアン!
スピーカーは大音量で銃声を奏で始め。
ウーハーもズンズンと揺れ始めた。
テクニカル車両の荷台に据え付けた二連機銃。
12,7ミリ機銃を構えるピンクのモヒカンが射撃を開始。
荷台から飛び降り――泥を浴びるモヒカン達が軽機関銃の銃爪を絞った。
スタタタァアン!
それに続くのは姿勢を低くしたまま。
周囲に散開した。
モヒカン達のライフル射撃だ。
攻撃目標は斜面を駆け下り。
山道の前方と後方から。
モヒカン達を挟撃する形で現れた集団だ。
それに攻撃目標側は、曳光弾を多用しているのだろうか。
攻撃集団の銃撃は――弾道が丸見えだ。
それに威力もやけに高い。
梅雨で湿った地面が――ボカスカと泥柱を巻き上げている。
(あの曳光弾……やけにカラフルだな? それに銃弾が飛び込むと、発光帯電するのはプラズマ型の防御装置か?)
どうやら、曳光弾が好きなモヒカンの攻撃目標が使う防御手段は、米軍が第三次世界大戦中に実用化に成功し、今では各国の軍に輸出されまくっている装置。
プラズマを発生させて、周囲の空気をクッション代わりに使い。
爆発や砲弾の破片や銃弾などの脅威を防ぐ、防御装置の類いだろうか。
(だが、最低でも車両搭載が前提の装置の筈だ。歩兵レベルでの運用、実用化成功の話は……聞いた事もない)
そして――樹上から降下してきた――素早く動く小柄な人影。
それも全身にドーランを塗った様な肌。
刺々しいデザインの短剣で武装をした。
……少年兵サイズの敵とモヒカン達の白兵戦……いや。
違うこれは――!?
「止めてくれ龍澤!」
突如、松沢隊長が叫んだ。
だがそれも仕方ないだろう。
俺と源さんも映像を見て……叫びそうになったのだから。
「源さんと鬼沢、それに龍澤……お前達はモヒカンを襲撃している連中が『何に』見える」
「確認するまでもないが、これも人間じゃないの~」
確かに源さんの言う通りだ。
今、モニターの静止画像に映っているのは、モヒカン達と白兵戦をする異形。
俺には化物、モンスターの類……ファンタジー作品でお馴染みのゴブリンにしか見えない。
「じ、自分には……ゴブリンにしか見えません」
「まぁ、そうなりますよね。松沢隊長、続き流してもいいですか」
「ああ、流してくれ。それと源さん……みんなにもこの後、署の別棟の方で『アレ』を見せたい。大丈夫か?」
「この後か~別棟の方なら最近は、NEETとは別会社が小規模ながら、管理をしておるから、何体かアレは残っておるどころか、増えておるわい!」
何やら源さんと松沢隊長は、何かを知っているようだ。
そして龍澤も昨年まで、NEETに勤務していたから……知っているのだろう。
俺が状況を頭の中で整理していると、映像は進み。
途中でカットされたのだろうか。
山道に並べた。
泥と血潮に塗れた……敵を死体袋に収めていく。
……場面に変わった。
小柄なゴブリンっぽい……見た事もない、小動物の死骸。
そして、見た事もない迷彩柄っぽいローブを被っていた、遺体が数十体。
頭部の残っている遺体には、人間と良く似た体と笹穂状の耳をした若い男女の亡骸。
大戦前に読んだ、ラノベに出てきた……エルフっぽい顔付きの遺体が……何体か転がっている。
胸部には甲冑の様な装備を着込んでいたようだ。
だが、残念ながら馬鹿でかい……銃創が空いている。
恐らく即死だろう。
「おいおい! このモヒカン達強すぎだろ!」
「ほぉ~コイツら、この敵の殺し方をよく知っておるようじゃ~」
「……」
何かを知っていそうな、松沢隊長と源さんも驚いている。
因みに俺は口を開いたまま。
パクパクと驚いている。
そして、龍澤が俺に話し始めた。
「鬼沢さんが丁度、NEET辞めた頃から、国境周辺でコイツらと似たような連中が、ちょこちょこと、出はじめましてね。残った俺は大変でしたよ~まぁ此処まで増えたら、NEETも隠蔽工作が難しいだろうな……マジでやばくなる前に情報共有はしたほうがいいでしょ? そういう事ですよ」
そういうと龍澤は尻のポケットから、最近は見なくなった小物。
折りたたみ財布を取り出し。
中から一万円札を出して、テーブルの上に置き一言。
「さて、源さんから借りた紙幣判別機の出番ですよ」