※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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<08話 目覚めた者達 02>

 神様、感謝します。

 

 どうやら、ここは女子寮だったようだ。

 由美と紅菜に案内され。

 角部屋である、俺の部屋の上の階。

 すぐ真上の部屋に向かう道中。

 

「おはようございます」

 

 爽やかに挨拶をする、制服姿の女の子達と、通路ですれ違っていく。

 みんな、由美や紅菜と同じストチルなのだろう。

 ……髪の色がカラフルだ。

 ここで黒髪なのは、俺くらいだろうか。

 黒と言えば、俺の片手には黒い樹脂ケース。

 ガンケースがある。

 何でも昨日、エルーナが俺に渡し忘れ。

 先程、紅菜から渡された物だ。

 俺は一度、玄関から自室に戻って、回転式拳銃をケースに収納。

 そして忘れそうになった、メガネとスマホもポケットに入れて、持ち出した。

 

(何かしら、書類に記入する可能性もあるから、スマホは無いと困りそうだな)

 

 最早、文章も端末入力に慣れた現代人は、スマホが無いと漢字が抜けた。

 ネイキッドな文章を書く、恥ずかしい事態は避けられないだろう。

 出来れば、そうなるのは避けたい。

 

(ネイキッド。裸といえば、この銃も剥き出しじゃないのは一安心だ)

 

 銃を使わない間は、このケースに収納して持ち歩く格好だ。

 今日の夕方にはガンロッカーや弾薬ロッカーも自室に届き。

 それ以以降、使わない時はそこに保管する様に言われた。

 訓練を受けたら、原則として拳銃の類いは護身用での携行が許可され。

 ……それとセットで外出も出来るようだ。

 この世界の日本が銃社会じゃ、それも仕方ないだろうか。

 

「一応、ここの研究所は、私達みたいな学生も多く住んでいますよ♪」

 

 隣の由美が陽気に話し。

 

「学生が多いのは色々と、訓練部隊の再編とかで、市内の女子寮の部屋が足りなくなったので、無人だった、この棟を私達が使い始めたからですね」

 

 少し前を進む紅菜が時折。

 差し込む、陽射しのように振り返りつつ。

 笑顔で経緯を説明してくれた。

 

 中庭横の駐車場には、引越し業者のトラックが何台か駐車。

 作業員はパッド型端末を操作。

 その周囲では荷物を背負った、四足歩行のドローンが荷下ろしの準備を始めている。

 他にも清掃業者の車や白い防護服を着た人。

 白衣を着た、学者も集まっている。

 恐らく……他の空き部屋も俺の部屋と同じ有様。

 人型の白線や造花。

 名古屋市警察と表示された、トラ柄テープが貼ってあるのだろうか。

 

(……俺の部屋の空き部屋も早く……掃除してくれないかな。何も言われてないけどさ)

 

 制服を着た女子学生達とすれ違い。

 由美達と話ながら進んでいくと――――少し傾斜が高い。

 階段の踊り場に到達。

 ……カツカツ。

 ――――ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!?

 

 前を進む紅菜の――美脚と真っ赤な――パンチラが見えた。

 ……ボソボソ。

 

「お姉ちゃん鈍いから」

「……マジ?」

 

 由美が人差し指を唇に当て『ナイショ』と俺にレクチャー。

 そのまま俺達は階段を昇り。

 

(う~ん……やはり……ここにもあるのか)

 

 恐らく踊り場付近で、眼下の駐車場を狙い。

 芋スナをしていたと思われる、狙撃手と観測手の痕跡。

 ……二人分の人型の白線が描かれた場所を歩き。

 補修した弾痕の跡が……ドア周辺の壁に残る部屋。

 目的地に着いた。

 ガチャ。

 

「ただいま~」

「お邪魔します」

 

 部屋の間取りは真上なので、俺の部屋と同じだ。

 だが……。

(くん……くんかくんかくんか……)

 

 間違いない。

 これは女の子特有の香り!

 ……と……コーヒーかな?

 

「おかえり~」

 ガラガラ……バタン。

「ふぁ~おはよう~朝食まだ?」

 

「ちょ! エルーナさん! パンツだけで歩かないでくださいよ! 義明さんを呼ぶように言ったのは、あなたじゃないですか!」

 

 何やら由美達とは違う、制服の上からブチ猫柄のエプロンを付け。

 キッチンに立ち。

 鉄製のフライパンで手際よく。

 コーヒー豆を炒る……緑髪の少女。

 昨晩、回復魔術を施してくれた少女が。

 エルーナを……紫色の大人っぽい下着一枚の……教官を怒っている。

 因みに乳首は――ブロンドヘアーが垂れて拝めず。

 だが、見事な下乳だから眼福である。

 

(やべぇ! 異世界転移マジでやべぇえよ! ラッキースケベ多すぎでしょ!?)

 

「あちゃ~! いやぁあ~ごめん葉菜ちゃん! 着替えてくるわ。義明くんも席に座っていてね♪」

 

 ◇◇◇

 

「お姉ちゃん、今日の夕御飯、私達の当番だよ」

「そうね。肉と魚どっちにしようかな~」

 

 由美と紅菜は両脇のイスに着席。

 今日の夕飯の献立をどうするか。

 向かい合って、相談している。

 

「お待たせ~♪」

 

 髪を整え、シスター服に着替えた。

 エルーナ教官が笑顔で登場。

 俺の向かいの席に座って……口を開いた。

 

「葉菜ちゃん、お客様にサラダ作ってあげて♪」

「……だと思いましたよ。ちょっと待ってくださいね」

 

 そういうと葉菜は、俺を見て一言発すると。

 戸棚からステンレスのボウル。

 一緒に取り出した、透明のパックから黒い粒を……パラパラ……とボウルに入れ。

 少しだけ、ボウルに蛇口から水道水を注ぎ。

 ボウルを片手でお腹付近に抱え。

 俺の横まで歩き……止まった。

 

(何故に調理を止めて横に来るの?)

 

「義明くん、葉菜ちゃんに注目~♪」

「あ、はい」

「じゃあ、スプラウトいきますね」

 

 葉菜は片手をかざし。

 緑色の輝き――回復魔術をボウルに照射。

 次の瞬間――――まるで自然番組の早送りの様に種が発芽。

 ウネウネと伸び。

 僅か数十秒で……ブロッコリーの新芽が出来ていた

 やべえ……昔……テレビ番組に出演していた方。

 

(グラサンのマジシャンを思い出したわ!)

 

 あれ?

 でも、あの人は光を出してなかったから、純粋に手品なのかな?

 

(どっちだぁああああ!)

 

「……やっぱり、向こうの世界の人は、驚かないのですね」

「…………似たような手品を…………テレビで見た事があるからね」

「グラサンのおっさんですね。名前は言わなくていいですよ」

 

(――――――――衝撃が強くてリアクションに困るんだよぉぉおおお!)

 

 その後、俺の脳内の驚きなど知らない少女。

 葉菜は台所に戻り。

 切り分けたトマトや茹でたアスパラや。

 ちぎったレタスや、サラダ用の千切りキャベツを添え。

 先程、目の前で発芽したスプラウトを使い。

 ……手際よくサラダを完成。

 木製ボウルに盛られ、テーブルの中央に置かれた。

 他のメニューは焼きたてのトーストや目玉焼きにソーセージ。

 コーンポタージュのようだ。

 

「それじゃ! いただきます!」

「いただきます!」

「いただきます♪」

「いただきます」

「……い、いただきます」

 

 俺は衝撃の余波が脳内に残ったまま。

 ……朝食を食べ始めた。

 ドレッシングは和風のボトルがあったので、そいつをチョイス。

 シャキ。

(あ――――このサラダ美味しいわ)

 

 ――――十数分後――――

 

「コーヒーどうぞ」

「どうも」

 

 美味しい朝食を食べた後。

 葉菜がコーヒーを淹れてくれた。

 

(…………美味しい…………)

 

 先程、コンロで炒った豆を使っているからだろう。

 挽きたてで香りもいい。

 皆……椅子に座り。

 飲む事に集中している。

 香りと味が生み出す。

 見事な静寂。

 今、この瞬間。

 

(外で騒ぎ出したセミの鳴き声に……銃声や爆発音は……スイカに塩とでも言うべき状態だ)

 

 ごちそうさま。

 皆、飲み終えると一言いい。

 由美と紅菜は自室に戻っていく。

 葉菜は食器を食器洗い乾燥機に放り込んでから。

 由美や紅菜とは別の部屋に戻っていった。

 

(……由美や紅菜に葉菜……この三人は登校しないのかな?)

 

 DKには俺とエルーナ。

 場に残った、コーヒーの香りだけだ。

 

「美味しかったね。義明くん」

「ええ、美味しかったですよ」

「今日は由美と紅菜、葉菜の三人も、君達の訓練補助で行動を共にするからね。そうだ――」

 

(ああ、だから三人は他の学生と違い。登校していないのか)

 

「――葉菜ちゃん! 先に義明くんを訓練場に案内してあげて! 私達は準備があるから、後で合流するわ!」

 

「は~い。今行きますね」

 

 葉菜が返事を返し。

 白衣を羽織った、葉菜が自室から出てきた。

 

「んじゃ、行きますか義明さん」

「よろしく」

 

 ガチャ……バタン……。

 

「よし、二人とも行ったようだ」

 ガラガラ。

「……エルーナさん」

「ん? なんだい由美」

「なんで葉菜姉ちゃんに案内させるの? わたしらの方が、手が空いているよ」

「そっか、由美は……赤ん坊だったから、もうひとりの義明さんを覚えてないよね」

「アハハ! 確かに由美はミリサのお乳に夢中だった頃だね~」

「?」

「やっぱり紅菜は覚えているようだね」

 

「そりゃそうですよ! 空爆の中を! お菓子を食べながら、赤子の由美を抱えて、走ったのは、この私ですからね!」

 

 紅菜とエルーナの二人が合点を得ていく一方。

 困惑気味の由美に気付いた姉。

 紅菜が由美の頭を優しく……撫で。

 話し始めた。

 

「由美……葉菜姉ちゃんはね……もうひとりの義明さんに懐いていたからさ。色々と思うところがあるのよ」

 

 ◇◇◇

 

 ――研究所内 菜園エリア――

 

「へぇ~見事な菜園だ」

「さっき食べたトマトもここで収穫したんですよ。この先が訓練場――」

 

 私は彼と一緒に菜園の小道を歩き。

 訓練場に向かっている。

 菜園には真っ赤なトマト。

 紫色のナス。

 緑色の胡瓜。

 黄色い実をギッシリ詰め込んだ……トウモロコシが実っている。

 

 チラッ……。

 

 昨日、マギサ姉ちゃんが連れて来た男性。

 隣の彼を見た瞬間。

 あの人に似ていると感じた。

 だけど――。

 

(――――もう一人の義明さんだったなんて――――どう反応すればいいのよぉおおおお!)

 

 寝る前に、エルーナさんから説明されたけど。

 不安と浮ついた気持ちが混ざった感じ。

 この感覚は一体なんなのだろう。

 ああ女神様! 地球で頑張る葉菜に御加護をお願いします!

 

「――葉菜さん――」

「はぃいい!」

「あのさ、訓練場は……こっちで大丈夫?」

「あわわ! すみません!」

 

 最悪だ。

 考え事をしながら歩いてしまった。

 目の前は芝生で覆われた草原。

 訓練場とは真逆の方向。

 既に研究所の出口周辺だ。

 

「案内版を見ると、真逆だね」

「……ハイ」

 

 ◇◇◇

 

 俺は葉菜と二人で来た道を戻っていく。

 綺麗に手入れをされた菜園は、周囲の自然とは違うが。

 独特の美しさを醸し出し。

 心に潤いを与えてくれる。

 

 蝉の鳴き声に混じって、響く銃声や爆発音も。

 かわいい美少女と一緒なら。

 車の騒音や街の喧騒と大差がないのではいか。

 そう感じ始めた俺は……葉菜に話しかけた。

 

「葉菜さん」

「え! はひゃぃい!」

 

 かわいい子だ。

 だが、緊張しているようだ。

 よし。

 

「緊張しなくていいよ。それに……ありがとう。散歩をして、だいぶ不安と緊張が和らいだよ」

「……そうですか」

「うん、そうだよ。」

 

 そのまま俺と葉菜は、菜園の小道を抜け。

 砂漠の様なグラウンドを越えて。

 木々に囲まれ、コロシアムの様な造りをした。

 半地下型の円形の訓練場へ到達した。

 

 ――その頃 義明の自室――

 

 義明の部屋には、白い防護服を着た集団が入室。

 何らかの携帯型検査機を手に持ち。

 電子音をピコピコと鳴らしている。

 彼らは髪の毛等のサンプルを採取。

 パイプが曲がったベッドは、既に新品と交換。

 運び出されたベッドは厳重に梱包を施され。

 四本足と作業アームが付いた、2体の作業ドローンの共同作業によって。

 運び出されていく。

 当然……使用済みティッシュも……。

 全てを丁寧にピンセットで採取されている最中だ。

 

 ◇◇◇

 

『真希、なんで春先の銃撃戦で、死者が出た、現場に彼を住まわせるかな~』

『エルーナ。だからこそ、ここを選んだのよ』

『はぁ~学者さんは、人の気持ちとかへの配慮はないのかしら?』

『それは貴方達が配慮する事よ。私は研究者だから』

『あ、そう。で……説明よろしく』

 

 私はこの研究所の所長、本田真希と自室の真下。

 遠近義明の自室を封鎖。

 魔力遮断をした、防護服を着込み。

 調査の立ち会い中だ。

 真希が――ピンセットで――摘んでいるのは、昨晩。

 彼が自慰行為をした残滓だ。

 ……微かに魔力が……湯気の様に見える。

 そのサンプルをガラス容器に詰めながら、真希は話し始めた。

 

『ここは、魔力発生源になりそうなDNAサンプルも、死体清掃業者が清掃しているし、3ヶ月以上無人なら、微弱な魔力反応も消滅して、残っていないから、転移者の魔力反応を調べるには最適な環境なのよ。それに真上の貴方の部屋には、対魔力弾用の結界も全体に張ってあるから、尚更よ』

 

『なるほどね~』

 

 今、思い出したけど。

 向こうの世界で、魔力を使った、実験をしていた連中。

 魔術学園の学者や学生も結界を張っていたや。

 

(研究か……懐かしいな)

 

 私も学生時代は、自由研究をマギサやツバメと共同で行い。

 上級冒険者達に紛れ込み。

 亜空間に生息する、ゴブリンやオーガの強化種を仕留め。

 全身標本を採取していたな。

 

『最も、いきなり深夜アニメを見ながら、ベッドのパイプが曲がるほど、ハードな自慰行為をするのは、転移者の中でも、彼が初めてだけどね……よし。サンプルの反応を調べてみようか。どれどれ――』

 

 そう言うと真希はサンプルの一つ。

 丸まった使用済みティッシュを検査機器に挿入。

 検査機器のモニターは……真っ赤な……反応を表示した。

 

『うひゃぁ~マギちゃんが連れてきた彼、すげぇえわ♪』

『……どんな感じ?』

『エルーナは私と違い、目視で魔力反応を見られるでしょ~逆に魔族である、あんたの見解を聞きたいわよ~』

 

 そりゃそうだ。

 魔力は私達、異世界人。

 魔族の十八番だ。

 私は素直な見解を述べた。

 

『そうね……彼を絶対……敵に回さない方がいいわね』

『でしょうね~魔力反応の簡易数値で、あんたやマギちゃん並の転移者とか、ワクワクしてきたわ~♪』

 

 私は使用済みティッシュから立ち上る魔力。

 魔族並の強さの証。

 青い波長の魔力を見つめ……考え始めていた。

 

 先程、一緒に朝食を食べた男。

 マギサの連れてきた転移者、遠近義明。

 彼の素性や生い立ちは、矢島に見せられたデータで判明している。

 だが、そうなると、私もよく知る彼。

 十数年前に起きた、地球への転移前の戦闘で、消息不明になった者。

 もうひとりの遠近義明は一体……『誰が』……生み出したのだろう。

 

 十数年前、私達と共に戦い。

 消息不明になった男『もうひとりの遠近義明』彼は、情報を整理する限り。

 私達、魔族が使役用の労働力を生み出す、体細胞クローン体と同じく。

 誰かの意思と思惑で生み出され。

 

 この世界で『遠近義明』として、育ったのだろう。

 

 だが、彼を――――生み出し。

 同じ生年月日と氏名を与え、この世界で養父母に育てさせ。

 私達の故郷で、マギサに召喚させる様、何らかのお膳立てを行い。

 仕向けた者の目的は、何なのだろう。

 

 私は…………全身の毛穴が開き…………汗で下着を濡らし。

 心臓の鼓動と言い知れぬ、不安を感じながらも。

 この後、直ぐに自室に戻って、シャワーを浴びようと考えていた。

 

 ――同時刻 訓練場 観客席――

 

「やほぉ! 葉菜ちゃん! 義明くん!」

「アゲハさん、おはよう~」

 

 葉菜に案内された、観客席には、アゲハや他の妖精達が集まり。

 朝食の最中のようだ。

 おそらく、朝食はファーストフードだろうか。

 ナゲットやポテトを抱える様に齧り。

 ストローに吸い付き、シェイクを吸っている。

 

(割りと、俗っぽい連中だな。でもなんか、こうして見ると可愛いな)

 

「お代わりキター!」

 

 しかも飛行ドローンを使い。

 買い出しに行かせていたようだ。

 

(いや。あのピエロのロゴマークとWのロゴがあるから、デリバリーか!?)

 

 ドローンは空いている、座席の上空でパタパタとホバリング。

 プラ製のコンテナを繋いだ、ワイヤーを緩めて徐々に降ろし。

 ドカッ!

 ブツの入った、ダンボールをコンテナから吐き出し。

 

『御利用ぉおありがとうございましたぁあ~♪』

 

 などと……何処かで聞いた事のある、陽気なピエロの声色で挨拶を終え。

 飛行ドローンは素早く、ワイヤーとコンテナを機体に収納して、デリバリーを完了。

 陽気なBGMを響かせ。

 大空へ飛び去っていった。

 

「二人共、こっちにおいで!」

 

 アゲハに呼ばれてしまった。

 俺と葉菜は、他の妖精さん達が空けてくれた、スペースに着席。

 両脇と前後は妖精さん達、周囲は揚げ物の香ばしい匂い。

 ストロベリーな……甘い香りで溢れている。

 

(まるで、祭りの時の屋台の近くみたいだ)

 

「義明くん~肩いいかな」

「どうぞ」

「え!?」

「ん? 葉菜さん?」

「いえ、余りにも珍しいので……アゲハさんが男性の肩に乗りたがるのは」

 

 なんだ?

 周りの妖精達も俺と、右肩に止まったアゲハを見ている。

 余程、珍しいのだろうか?

 

「お~す!」

 

 俺と葉菜が来た、反対側の入り口から。

 男性が数名現れ。

 手を振っている。

 

(あれは、神谷か?)

 

 他の数名も昨日、カウンター席で一緒に避難して、飲んでいた連中だ。

 皆、俺と似たような服装をしている。

 彼らもまた、妖精達が空けたスペース。

 俺達の隣に詰めて、並ぶように座った。

 神谷を含め、5人のようだ。

 

「どうも遠近さん!」

「おはよう。君達もここに来るように言われたの?」

「まぁ、そうですね。俺達はみんな、同じ棟ですよ」

 

 話によると、神谷達は黒服さん達のモーニングコールで起床。

 食堂で朝食を食べた後。

 行き先を告げられ。

 此処まで、歩いてきたようだ。

 

(男子寮があるのね)

 

「――遠近さんは、別の棟ですか? 食堂でも、見かけなかったし」

「そうだね」

 

(流石に、女子寮とは言えないな。ん? そういえば)

 

「あのさ、他の連中はどうなのかな?」

 

 俺は話題を少し逸らしつつ。

 気になった話題を神谷達に振ってみた。

 

「そういえば、見かけないですね」

 

 どうやら神谷達にも、他の転移者の所在は分からないようだ。

 

「葉菜さんや、アゲハさん達は何か知らない?」

 

「いえ、私は治癒魔術を掛けた後は、警備の人に引き継いだので、何も分からないですね」

「私も分かんないな~みんな、なんか知っている?」

 

 アゲハの呼びかけに、大半の妖精が首を振った。

 だが、一人だけ。

 心当たりがあったのだろう。

 ナゲットを抱えたまま。

 陽気に話し始めた。

 

「私の部屋がさ~山道側だけど。深夜だったかな? 私服を着た男性達が~集団でバスに乗って、下山していくのが窓から見えたよ~なんか、市警察のパトカーが先導していたから、それじゃないかな? 隊員の人なら、私服で集団移動なんて先ずないし~」

 

 そう言い終えると、妖精はナゲットを食べ始め。

 隣の神谷達は不安が混ざった。

 表情で話し始めた。

 

「となると、別行動なのか?」

「ですかね」

「人数多いし、有り得なくもないか」

 

「……まさか、反抗的だから……元の世界に送り返すとか」

 

 神谷の隣に座る。

 金髪でポッチャリした、青年が不安げに言葉を漏らした。

 おそらく、神谷と同世代だろうか。

 だが、その不安は俺の隣。

 

「それは無いですね」

 

 俺の左側の席。

 通路側の席に座る、葉菜がキッパリと否定した。

 

「そうそう♪」

「有り得ないね~♪」

「(*´・ω・)(・ω・`*)ネー」

 

 続いて妖精達も否定した。

 流石に、その根拠が気になったので。

 俺も聞いてみた。

 

「どうして?」

 

 俺の疑問に応えたのは、右肩に座る。

 アゲハと、周囲の妖精達だった。

 

「だって、君達一人を転移させるのに必要な魔力量は膨大だよ♪」

 

「(*´・ω・)(・ω・`*)ネー♪ 転移はマギサちゃんの魔力だけじゃ足りないからね~」

 

「電力も使って~魔力生成を無理矢理しているから~転移者さんは、交通費がお高い(・ω・`*)ネ~♪」 

 

 俺や神谷達は無言だ。

 故に気持ちは同じだろう。

 神谷達の視線が俺に向き。

 アイコンタクトに促され。

 俺は口を開いた。

 

「ち、ちなみに……一般家庭の消費電力に換算すると、どの位かな」

 

 その疑問に応えたのは葉菜だった。

 

「電力換算の詳細は分からないですが、エルーナさん達の話からすると……義明さんの世界から転移者一人を転移させるのに、国防軍の主力戦車一台分くらいの金は、掛かっているみたいですよ」

 

 次の瞬間。

 俺達の周囲には、妖精達の咀嚼音。

 揚げ物の香りだけが、強烈に残った。

 




相変わらずの不定期更新ですが、完結を目指して頑張ります。
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