※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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<08話 目覚めた者達 05>

     ――九州北部 山間部 九州共和国と日本国の国境付近 無政府地帯――

 

 九州共和国側から逃げ出した者達。

 難民や凶悪犯である、彼らが向かう先はただ一つ。

 

            日本側との国境に挟まれた、無政府地帯だ。

 

 但し、日本列島の中でも、一発の銃弾が黄金並みの価値を持つ。

 世界屈指の危険地帯、紛争地帯である。

 だが裏を返せば、危険は自由とも表裏一体だ。

 それ故、自由を求める者達にとっては、いつの時代も等しく。

 危険は背負うべき、当然の対価なのかもしれない。

 

 そんな空間で、国防軍払い下げの装輪装甲車を乗り回し。

 大小様々な銃弾をばら撒き。

 日本側に都合の悪いゲリラの狩りを行い。

 中隊規模の賞金稼ぎの徒党が寝泊まりを行う。

 束の間の……安全地帯があった。

 

          ――対ゲリラ戦に従事する PMCの野営地――

 

『――続いて全国のニュースです。昨晩未明、名古屋市内の警察署でゾンビとSWAT隊員が乱闘を――』

 

                  ブチッ!

 

 古巣の名称で目覚めた……俺は素早く動き。

 目覚まし代わりに使うテレビ。

 

 広告だらけな、ネットニュースの動画を垂れ流す。

 俺より年上で……戦前生まれであるブランド。

 今では国家が分裂して消滅した、メイドインチャイナ製の古い液晶モニターの電源を切った。

 

 今でも広告だらけの動画、ネットニュースを受信するだけなら、無料の格安端末。

 プリペイドルーターと接続して、垂れ流すだけのモニター類とのコンビ。

 それらはテレビと呼ばれている。

 この古いモニターの隅には色褪せ。

 御札の様になった『地デジ対応』というシールが残り。

 このモニターの本来の用途である、テレビとしての残餌がある。

 昨年の盆の時に帰省した際、祖父母の家の物置で見た粗大ゴミ。

 大型液晶テレビにも貼ってあった、シールと同じだ。

 何故か、妙な親近感を覚えてしまう。

 ピピ!

 どうやら俺の端末。

 野戦ゴーグル型の情報デバイスに着信だ。

 カチ。

 

「はい。小林」

『食堂のテントまで来てくれ。ゲリラの移送先が決まったぞ』

「了解」

 

 ゴソ……カチャカチャ……カチ。

 俺は装備を身に付け。

 個室として使っている、テントの外に出た。

 

 焼かれる様な日光を浴び。

 まとわりつく湿気を感じ。

 暑さから生まれる、嫌気に全ての気力を奪われる。

 その前に――ジャリ――俺はセミや蛍の死骸。

 錆びついた空薬莢が転がる……地面の上を歩き始めた。

 

               ――食堂用テント内――

 

 ◇◇◇

 

「おはよう小林!」

「おはよう……で……連中の移送先は?」

「おう。それがな、捕虜にした『鱗野郎』の管理を他のPMCに外注しようとしたらな――――」

 

 そう、俺は鱗塗れの人型生物『レプティリアン』が出現したと聞き。

 賞金稼ぎの仲間を引き連れ。

 わざわざ、九州共和国との国境付近。

 無政府地帯まで来たのだ。

 

 だが、こいつらは可哀想な『偽物』だ。

 鱗状の薄い……金属版を細かくインプラントした人間だ。

 九州共和国の国教が送り込んできた、狂信者達の玩具だろう。

 

 何せ、言語翻訳のサービスを使っても、全く翻訳が不可能な言語を話す。

 クソみたいなオプション付きだ。

 その上……タフで素早く。

 鱗の防弾性能も強靭な上。

 刃物の扱いに長けた。

 

               こいつらを捕まえるのは大変だった。

 

 ファーストコンタクトは昨日の夕暮れ。

 こいつらが、難民キャンプを襲撃して。

 女子供を殺傷している、クソな瞬間を索敵中に発見。

 

 始めに装甲車で追い回し。

 タイヤと正義感で何人か踏み潰し。

 雑草と一緒に混ぜ合わせて、休耕田の肥料に変え。

 逃げる連中を重機関銃の掃射で射殺。

 命乞いをする……残った数人を鱗状のインプラントの強靭な防弾性能故に、銃弾でタコ殴り。

 集団リンチに近い状態で確保した。

 だが、こんなのが正体じゃ……。

 

(俺がスポンサーの番組『オカルトヘッドライン』でも扱い難いな~)

 

 結局、弾薬と燃料代だけ自費負担の赤字か。

 あ……捕虜の管理も損切りで、外部に委託するから……更に赤字が増えるな。

 どうしよう。番組のスポンサー降りよ――ん?

 

「――おい小林! 聞いているか?」

「お、すまねぇ。しかし、赤字だけど弾代くらいは俺が――」

「――おいおい! 何を言っている真逆だよ! 黒字だよ! 黒字!」

 

「…………は?」

 

 

        ――同時刻 市警察東署 周辺上空 攻撃機機内――

 

 ◇◇◇

 

「こちらワイバーン、消防車の上空を通過。引き続きゴール周辺を旋回、地上の監視を継続する」

 

『本部了解』

 

 俺は今日もお空の上を愛機。

 米軍払い下げのAC10に搭乗してパトロールだ。

 

 直ぐ下の空域には小魚共。

 誰かがECサイトで買った、商品を積んだ無人機。

 宅配ドローンが群れをなしている。

 

 それにしても、今日の任務は気持ちがいい。

 一昨日に新人が、盛大にやらかした案件。

 幸いにも死傷者がいなかった、州立戦災孤児院への誤爆を招いた、市警察からの急な依頼と違い。今回は金が有り余っている、大手の同業者からの依頼だ。

 

 俺の機体のハードポイントにはドローンの同類、似たような部品を使った兵器。

 小型汎用ミサイルを満載したポッドが贅沢にも。

 製造元でもある、依頼者の基地でわざわざ。

 フルパックで搭載済みだ。

 

 だが、全弾を発射して命中させれば。

 低空飛行をする航空機か、戦車を数十両は潰せる。

 この現場には明らかに過剰な武装である。

 

(たくよ。そもそも要人警護で…………此処までする必要が有るか?)

 

 ま、依頼者は特別軍事法人NEETで。

 警護対象は、そこのお偉いさんだそうだ。

 色んな方面から、暗殺される程度の恨み位は買っているのだろう。

 

(俺もプロだ。しっかりと、料金分は守らせてもらうぜ!)

 

              ――市警察東署周辺――

 

 署の周りの歩道。

 そこは野次馬や、報道陣のドローンが集い。

 暴徒対策と熱中症対策をした、機動隊が隊列を組み展開。

 既に周囲のビルや屋上には、SWATの狙撃部隊が待機。

 交差点内では、白バイ隊員が交通マスコットのドローンと一緒に交通整理を行い。

 ……来客をスムーズに誘導する、準備を整えている。

 

 数ブロック先の廃屋や裏通りでは、野次馬に紛れ込もうとしていた勢力。

 過激な思想に……目覚めた者達。

 問題行動のある、自称市民団体の構成員が、市警察の公安要員と応援者である民間人。

 賞金稼ぎ達に次々と身柄を拘束され。

 

 銃火器と爆発物の不法所持で大量検挙。

 今は市郊外のテロリスト収容所へ向けて、ドナドナの集団護送の最中である。

 

 それでも戦いに慣れた市警察は万が一に備え。

 火砲を搭載した、事実上の戦車。

 重機ベースの多脚型警備ドローンを小隊規模で展開。

 

 巨大なカブト虫やクワガタ虫を連想させる、多脚型警備ドローンの鼻先を――デリバリーサービスの飛行ドローンが飛び交い。

 野次馬達に飲料やアイスを運び。

 署の周囲は……独特の雰囲気が出来上がっていた。

 

              ――市警察東署 署長室――

 

 ◇◇◇

 

「――はい。身柄引渡しに関する、諸々の手続きは――」

 

 私は出向先である、市警察本部に出勤直後。

 本社からの緊急通信を受信。

 今は全ての予定を変更。

 此処で対応を行い。

 

「――――全て順調です。矢島社長」

 

 ……社長に報告をしている最中だ。

 社長とは週一で報告を行い。

 それなりに話すが、今は正に火急の要件というべき。

 ……案件だ。

 社長も普段と雰囲気が違う。

 

「――いえ、これも戒厳司令官としての、仕事の内ですので。それと、介入を試みた人権団体の方も『対応』が完了しましたので……ご安心ください」

 

『やはり手際のいい君に、そのポストを与えて正解だったようだ。私も鼻が高いよ』

 

「ありがとうございます」

 

『移送前にマギサさん達が、尋問を行いたいそうだ。君は全面的に協力してくれ。それでは、私は失礼するよ』

 

              ピ……。

 

「待たせて申し訳ない」

「い、いえ! 滅相もございません! 鬼頭司令官!」

「お気になさらず。急ぎの用事ですから、お互いしゃあないですわ~鬼頭さん」

 

 向かいの席に座る、日焼けした小太りの男。

 この警察署の署長に気を使わせてしまったようだ。

 ……チラ。

 逆に笑顔のまま。

 署長の隣に座る、長身でメガネを掛けた。

 スーツ姿の中年男性は、相変わらずマイペースだ。

 

 彼は今回、緊急の案件が起きた場所。

 死体安置所の管理を受託していた、管理会社の人間。

 小規模ながらも、大戦前から事故現場や犯罪現場の特殊清掃をしている、会社の田中社長だ。

 現場から叩き上げた、その道のプロである。

 彼は市警察関連の会合で矢島社長と会う度。

 ゴルフの話で互いに盛り上がっている方だ。

 

 田中社長はハンカチで額の汗を拭うと……意気揚々と話し始めた。

 

「わしも長いこと、この仕事をしていますがね。死体が動いて乱闘なんて初めてですわ!」

「でしょうね。私も驚いていますよ」

「まぁ、あの特殊な方々は……『やはり』言葉が通じないみたいですな」

「……」

「鬼頭さん、流石にオタクらみたいな大手でも、数が多すぎて隠すのはもう無理でしょ?」

「……」

 

「矢島さんや市警察の方々も、九共の改造人間や、生体兵器とか言って、あの特殊な方々の素性を必死に誤魔化していますがね……わしらの業界内じゃ、大戦前から有名ですよ。人じゃない奴らが死体に紛れ込んでいるという『暗黙の了解』はね……ああ、確か署長さんは戦前と大戦中は自衛隊でしたっけ?」

 

「ええ、自分は陸自の普通科でしたね。そういう、裏事情には疎いもので、申し訳ない」

 

「いやいや署長さん~大戦前の警察の上層部でも、この事を知っている者は殆どいませんでしたからな~まぁ、知っていた方々は、もうご存命じゃないのは確実ですわ。何回か葬儀に参列しましたから」

 

「……それは興味深い。我々としても、是非とも御教示を願いたい話題だ」

 

「そうなりますわな~♪」

 

 田中社長は笑顔でそう言うと。

 カバンから電子ペーパーを複数枚取り出し。

 

              応接テーブルの真ん中に並べた。

 

 その内の一枚の電源を入れ。

 エルフかハーフエルフと思われる、死体の映像を表示。

 映像からして、野営地のテント内だろう。

 ……数十近い死体袋に死体が納められ。

 野戦型の化学防護服を着込み、武装したPMC要員達が死体を調べている。

 

「わしの会社の連中が九共との国境付近で処理した『オタクら』以外からの案件ですわ」

 

「……我々以外ですか?」

 

「ええ、ヤケに羽振りがいい、依頼主のPMCが前金だけ払って、綺麗に消えましてね……この映像は、わしらの所に情報が残っていた案件です」

「…………」

「まぁ、前金だけでわしらは全然黒字やから、金銭面ではなんも不満は無いんですがね……どうも……他の同業者も、似たような依頼の案件を処理しているようですわ。しかも――――」

 

 田中社長は別の電子ペーパーの電源を入れ。

 

「――――後始末専門の特殊清掃のわしらが『殺されそう』になってですよ?」

 

 先程の映像の続きだ。

 しかも現場の緊迫した音声付きだ。

 日本語以外の言語。

 英語や中国語などの、聞いた事がある言語とは明らかにニュアンスが違う、怒号を吐き。

 テント内に乱入してくる敵。

 鱗だらけの人型生物と……PMC要員が白兵戦を繰り広げる映像だ。

 

「――ここ見てくださいな!」

 

 田中社長が電子ペーパー内に表示された一時停止の表示に触れ。

 指先を動かし。

 テントの入り口付近に立つ人影をズームした。

 

「ほう……生きていますね。しかも同胞の死に怒っているようだ」

 

「表情からして、そんな感じですわな~わしらも高い言語翻訳ソフトを使って、内々に調べましたがね~やはり未知の言語みたいですわ」

 

 それは入り口付近に立つ怒号の主。

 エルフ達が竜人族を率い。

 テント内に突入してきた……瞬間の映像だった。

 

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