――市警察東署周辺 バイパス道路――
警察車両が真っ赤にパトライトを輝かせ。
サイレンを鳴らし――――頻繁に往きかう――――高架のバイパス道路。
市警察東署に近い事から、署内では滑走路などと呼ばれる道路だ。
そんな路上で堂々と車列を組み。
市内に向けて進む……数両編成の装輪装甲車の車列があった。
車体には中部州軍の部隊表記がペイントされた、州軍の戦闘車輌だ。
州内では一般人にも、治安維持活動等で見慣れた車両である。
だが――その砲塔が実際に――旋回し。
走行中の警察車両を照準に捉え――ダダダ!
40ミリ機関砲が火を噴き。
『こ、こちら地域課05! しゅ、州軍から攻撃を受けている! 繰り返す!? やべ! 対戦車ミサ――』
シュパァアン!
ボオォオオン!
砲塔側面に搭載した誘導兵器。
対戦車ミサイルが発射され。
街中で……次々と警察車両を容赦なく。
破壊しながら疾走する姿は誰も見た事が無かった。
――同時刻 市警察東署 署長室――
「なんや! なんや! これは何事ですか!?」
◇
「署長、状況を確認したい」
「承知しました!」
突如、聞こえた機関砲の発砲音と爆音。
それと同時に窓側の装甲板が自動起動。
どうやら――ガガガァアン!
……ここが機関砲弾でノックをされる程に。
派手な襲撃を受けているのは間違いない。
署長はデスク上の端末を握り。
「――――そんな馬鹿な事があるか! 州軍の装甲車が攻撃してきただと!?」
真っ先に署長が叫んだ内容。
青ざめた表情から大体。
外の状況は察する事が出来た。
故に私がすべき事は簡単だ
カチャ――ピピ。
「私だ。州軍と思しき武装勢力の攻撃を受けている。周囲に作戦中の州軍部隊は確認出来るか?」
『了解。確認します』
本来なら私が出勤している場所。
市警察本部の戒厳指令室。
そこに控えているスタッフ。
我社の通信員に専用端末で通信を行い。
『鬼頭司令官。現在、市警察東署周辺で作戦行動中の州軍部隊は皆無――』
市警察以外の情報源からも状況を確認。
『――偵察衛星、ドローンの画像解析が出ました。その装甲車は春先の暴動で盗難された州軍の装甲車と確認。武装勢力は州軍に偽装したゲリラの類いと判断します。本社の情報部から緊急入電――』
「署長、戒厳指令室とは通信が取れた。我々は電波妨害を受けていないようだ」
「幸いそのようです! 既に応援もこちらに急行中です!」
確かに襲撃者達が電波妨害を平然と行う。
州北部を根城にする、反政府ゲリラで無いのは幸いだ。
だが――。
『――市警察東署周辺に未確認の魔力反応多数! パターンからして魔術兵器です!』
襲撃者は反政府ゲリラより、もっと厄介な敵。
『魔力反応の座標は装甲車と一致!』
魔術兵器を扱う敵。
異世界人の武装勢力が我々の相手のようだ。
――同時刻 装甲車内部――
◇
「官憲の車輌を破壊! 鹵獲した誘導兵器の残弾はゼロ!」
「隊長、間もなく目的地です! 群衆は――」
「――障害は現地兵器の掃射で排除! 突破口を作れ!」
「了解!」
「総員、装填を確認!」
「ハッ!」
装甲車内に搭乗する、襲撃者達。
身につけている衣服は皆、州軍の軍服だ。
中にはハッチから身を乗り出し。
ガチャ――――異世界の小型兵器である魔杖を――――上空に向けて構え。
シュパパパァアアン!
……ボボォン!
「航空脅威を撃墜! 迎撃を継続!」
魔術兵器での対空攻撃を手馴れた動作で平然と行っている。
……彼らが持つ魔術兵器。それは対魔物戦ではなく。
軍事力との交戦を前提とした軍用装備。
全長を短くした魔杖や魔弓に魔剣――中には魔杖を切り詰め。
カービン銃の銃身下部に装着。グレネードランチャーの様にした者達もいる。
「諸君、我々の目的は蘇生した裏切り者である、ハーフエルフの奪還。もしくは『完全な殺害』である! 展開地では官憲の激しい抵抗が想定されるが容赦するな!」
「ハッ!」
返事を返した者達の戦意に併せ。
彼らの笹穂耳がピクっと立った。
襲撃者達の正体は戦いに慣れた……エルフ達だった。
――同時刻 特別軍事法人NEET第七研究所 屋外訓練場――
◇
「……義明さんよ。これからどうなると思う?」
「昨晩に続いて、ロクな事にはならないだろうね」
俺達が訓練場の観客席から離れようとした直後。
上空には先程の宅配ドローンと違い。
ボコボコになった観光バスを吊り下げた、大型輸送ヘリが到着。
観光バスと中に搭乗していた方々。
何やら興奮気味の転移者達を訓練場のど真ん中に降ろし。
何処かに飛び去っていった。
今は転移者達と機動隊の様な装備をした、警備部隊が睨み合っている。
当然だが、睨み合っている転移者達から向けられる、俺達への視線は厳しい。
尚、葉菜や紅菜、由美の三人は進行の準備があるようで。
観客席にいるのは妖精族達と。
俺と神谷。他のメンバー数名。
葉菜達と入れ替わりで俺達の周囲を囲む。
黒服の護衛達だけだ。
(一体、何が始まるのか……とりあえず)
……俺の肩に座る御方に聞いてみるか。
「アゲハさん」
「なんだい?」
「…………彼らは何で傷だらけで泥だらけなのかな」
「会話からするにゴブリン退治の後みたいだね~」
「なるほどね」
先程、ナゲットを抱えていた妖精が話した。
目撃談との辻褄も合いそうだ。
ん? またヘリか?
『転移者達に告ぐ。今から朝食だ。各自、今から設営されるテントの下に向かいなさい』
警備部隊が拡声器でその様に伝えると、山陰から一機の大型ドローンが接近。
グランドの端に着地して変形。
機体の両側面に翼の如くテントを展開。
機体内からはグレー色の小包がボトボトと溢れ出た。
――十数分後――
「――なぁ。バスを片隅に移動させたのは分かるけどさ」
「あのステージは何ですかね」
神谷達の言う通りだ。
警備部隊の隊員がバスを運転してグランドの片隅に移動させ。
その後、再び別の大型ドローンが到着。
今度はバスが着地した場所でステージに自動変形しているのだ。
どことなくだが、ワームと化した更新データを運営が配布した結果。
俺の愛機。エイリアンなゲーミングPCが破壊される前日まで。
プレイしていた、ファンタシーでオンラインなネトゲの歌姫キャラが唄うステージ。
そんな印象を勝手に感じてしまう…………俺にとってはご縁がある。
懐かしい…………デザインだ。
しかし、その周囲を何故か。
……警備部隊が守りを固めている。
「アゲハさん達は何かご存知ですか?」
「( ´艸`)秘密だよ~♪」
「(*´・ω・)(・ω・`*)ネー 葉菜ちゃん達の頑張りは見てからのお楽しみだよね~」
どういう事だ?
葉菜達の頑張りって――!?
ポポポォオン!
突如ステージから煙が噴出。
無数に伸びて動く――――様々な色合いのレーザー光線。
そして俺達がさっきまで聞いていた。
少女達の声が陽気なBGMに載せ――――大音量で響いた。
『皆さん! 異世界にようこそぉおおおおおおお!』
ステージの土台から水着姿の葉菜達が飛び出した。
葉菜や紅菜と由美達の3人は髪の色に合わせた水着。
ビキニをチョイスしている。
(さっきのスケスケは下着じゃなくてビキニか!)
『わ、わ、私は司会進行の葉菜です! 転移者のみ、み、皆さんよろしく。♥。・゚♡゚・。♥。・゚♡゚・。♥。』
紅菜や由美はノリノリで転移者達に愛想をアピール。
……何やら二人は手馴れた感じだ。
それに釣られ。
「ウェエエイイ!」
連戦続きの転移者達も叫びを上げ。
中には服を脱ぎ始め。
片手でブンブンと振り回す者達もいる。
何せ異世界転移にモンスターとの戦闘。
脳内麻薬が出過ぎる、ハードでロックな初体験の後だ。
これに美少女のビキニ姿と大音量の音楽を流せば。
当然の結果だろう。
そして、何やら一人だけ慣れていないであろう少女。
葉菜は顔を真っ赤にしながらも。
ピョンピョン飛び跳ね。
胸元を揺らし。
笑顔で――ゴブリン化寸前とでも言うべき。
男達に手を振っている。
『さて、皆さん! ゴブリン退治お疲れ様です!』
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
代わって話し始めたのは紅菜だ。
『私も一昨日、退治しましたよ! ゴブリンの群れを――こんな感じでね』
ダン! 紅菜がウィンクをしてから――――美脚を動かし。
ステージの床を強く華麗に踏んだ。
床からは赤く細長い筒が飛び出し。
バシッ! 片手でキャッチ。
同時に観客とでも言うべき。グラウンドの転移者達の真上数メートル上空に向け。
オレンジ色の物体がステージの側面から扇状に射出。
シュパパパパン!
赤い光線がオレンジ色の物体。
全てを撃ち抜き……パラパラ……と転移者達の頭上に残骸を撒いていた。