※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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<08話 目覚めた者達 07>

       ――特別軍事法人NEET第七研究所 屋外訓練場――

 

『ここにいる転移者の皆様! その大半は転移直後の戦闘で、既にご覧になっているとは思いますが! 私が発射したのは魔力で作った魔力矢と言われる、攻撃魔術の一種です。訓練すればこんな芸当も出来ますよ♪ さて由美ちゃん、一般的な魔力矢を撃ってみようか――』

 

 ◇

 

「神谷さん、アレってクレー射撃の標的ですよね」

「だな。それにしてもあの子、上手いな~全部撃ち落としているよ」

「弓って言っても、銃と変わらないだろ」

「速射性能だけでなく、矢に誘導性能とかもありそうですね」

「それじゃ昨日、俺達が食堂でしていたスマホのゲームと一緒――」

 

 隣の神谷達が言うように。

 紅菜はノリノリでステージの床から飛び出してくる物体。

 クレーを魔力矢で静かに撃ち抜き。

 ……残骸を唖然とする転移者達の上。

 グラウンド全体に撒かれる様に射抜き続けた。

 

『皆さん! 今から通常の魔力矢を発射します!』

 

 由美がそう言うと、ステージの下から透明の物体。

 ショーケースがせり上がってきた。

 中にはカラフルな剣や槍に杖。

 そして由美が素早く掴んだ。

 弓の類いが飾ってあった。

 

「おい、こっちを狙ってないか?」

 

 転移者の誰かが呟いた瞬間。

 由美の構えた弓から――赤い光の矢が放たれた。

 

           ――同時刻 市警察東署 周辺上空――

 

 ◇

「対空攻撃! 全機回避!」

 

 やべえ! 撃ってきやがった!

 既に低空を飛んでいた攻撃ヘリ。

 護衛ドローンは撃墜!

 残っているのは俺達。

 3機編成のAC10だけだ!

 

『本部とのデータリンク途絶!』

『隊長! なんですかアノ装甲車!?』

「分からん!」

 

 クソッタレ! データリンクへの妨害だと!?

 電磁パルス効果がある弾頭か!?

 

『反撃の許可を!』

 

 確かにさっさと反撃をしたい。

 だが――アレは州軍の装甲車だ。

 それ以前に装甲車の攻撃目標は『我々の護衛対象』なのか!?

 やはり識別装置は切って――くそ! 

 本格的にこっちを狙いはじめたな!

 ……仕方ない。

 

「全機! 交戦開始! 目標はバイパスを降りた装甲車六両! 全機俺に続け! ワイバーン交戦開始!」

『了解! マッドハッター交戦開始!』

『了解! サラマンダー交戦開始!』

 

 俺達は高層ビルの谷間に向け――急降下。

 ……反撃開始だ。

 

 ◇

 

「クラウゼ。状況は?」

『多数の魔力反応を感知。魔術兵器特有のパターンと一致』

「推定される攻撃目標は?」

 

『第一射で我々の車列を攻撃しない事から別目標と推定。推定される攻撃目標は蘇生したハーフエルフを保護している、市警察施設とハーフエルフ二名』

 

「ありがとう。エルーナとツバメ。準備は大丈夫?」

「いつでも殴り込めるわよ。ツバメは私に随伴して側面援護」

「オッケー! 久しぶりだね! 私達だけで戦うなんて♪」

 

 エルーナとツバメは既に戦闘態勢だ。

 私は久しぶりに戦闘。

 それもクラウゼと一緒に戦う。

 戦場に立つのは十数年ぶりだ。

 

『マギサ。間もなく手前のオフィス街で我々の車列は停車する。そこからは徒歩で市警察東署まで行軍だ。魔力強化は大丈夫か』

「大丈夫よ。クラウゼ、貴方も側面援護をお願いね」

『了解。先に私と護衛が降車する――降車開始』

 

 ウィイイバシュ!

 

 クラウゼが窓から外に向け飛翔。

 車両スレスレの上空で旋回を開始。

 別の車両からは護衛達が銃火器を構え。

 周囲に展開。

 続いて――私達も車外へ飛び出し。

 ビルの谷間を伝い。反響する爆音と銃声。

 緊急車両のサイレンと拡声器から流れる怒号。

 夏と戦場の熱気が……私達を包み始めた。

 

         ――同時刻 中部州北部 ゲリラ支配地域――

 

「ねぇルガス! 湖だよ!」

「ブルナ、今の時期は水量が増えてこうなるんだよ。冬場は一面が雪原だけどな」

「へぇ~それも見たいな」

 

 俺達の部隊で最年少の少女。

 元実験体のブルナがお供の妖精族と一緒にはしゃいでいる。

 それに引き換え。

 他の元実験体の少年少女達。

 ブルナの兄や姉に相当する彼らは大人しい。

 ……今では廃絶された国教の糞共が……人体実験で彼らの自我を潰した結果だろう。

 ブルナは奇跡的に自我を取り戻したが。

 彼らの自我がどうなるかは俺にも分からないし。

 俺が悩んでもしょうがないだろう。

 

 俺達は食事を済ませ。

 雪解け水で水量が増え、湖に近くなった湿地帯に乗り込み。

 乗り換えた大型の水陸両用車。

 オルーシャが運転する。

 クルーザー並みの車体で水上を進んでいる。

 荷台にはバーベキュー用の道具。

 そして、ブルナが興味深く見ていた。ジェットスキーが積んでいる。

 後でブルナを乗せてやるか。

 そんな俺の隣には上官である。

 

「姉御、どうしたんですか?」

 

 鱗が無くなり金髪美女になった。

 色々あって、今では俺の義理の姉でもある。

 ガルーシャがいる。

 

「此処は綺麗だな」

「元はこの国の保護地、帝国北部の避暑地と似たような場所ですからね」

「そうか。なら暫くは満足な休息が取れそうだな」

「流石の姉御も、亜空間の突破は堪えましたか?」

 

「出来れば二度としたくないな。遠征打撃軍の演習に紛れての亜空間入りなど、二度と御免だ。味方の魔力弾に殺されそうになるのは不快だ」

 

「そりゃそうだ。ちょっと失礼、着信だ」

 

(そういえば、この辺は通信圏内か)

 

 俺は姉御に一礼をしてから。

 スマホの着信を見た。

 送信者の表示はこの世界で俺達の協力者。

 反政府ゲリラの司令官。

 

「もしもし。どうしました藤堂一佐」

 

 元はこの国の防衛組織、自衛隊の幹部だった男。

 俺達の世界からの転移者の子孫でもある藤堂一佐からだ。

 

『ルガス、緊急だ。ニュースをチラ見したら直ぐに基地まで来てくれ。その方が速い』

 

 そういうと藤堂一佐は連絡を切った。

 俺はスマホのニュースを確認。

 

『#速報! 市警察東署を武装集団が強襲!#』

 

「糞がぁああああああああ!」

 

 俺にはニュース速報の見出しと。

 よく見知った連中。

 南エルフ軍の残党が映った映像だけで十分だった。

 

「どうしたルガス!」

「すみません姉御! 急用です! オルーシャ! 後は頼んだぞ!」

 

 俺は急いで荷台に向かい。

 ジェットスキーに跨り。

 水面に飛び出し――ずぶ濡れになりながら。

 藤堂一佐の待つ基地へ急行した。

 

         ――約一時間前 市警察東署 留置所の一角――

 ◇

 

『――ご覧下さい! 署の周りは祭りの様な状態です!』

『では一旦スタジオに戻します。ご覧の映像は昨日深夜、ネット上に流出した市警察東署内の映像です。一部、過激な映像がございますので――』

 

「鬼沢~どうするよ。俺達ニュースに出ているぞ」

「しょうがないですよ。松沢さん」

 

 俺と松沢隊長を含め。

 あの死体安置所に居合わせた面々は揃って畳の上。

 バイオハザード対策で隔離中だ。

 防護服を着た署員に囲まれた瞬間。

 次のスケジュール内容が分かりきっていた方。

 バイオハザードのマニュアルを作った方の一人。

 松沢隊長が無理矢理持ち込ませたブツ。

 テレビを視聴中だ。

 

「そりゃそうじゃ、完全に後の祭りじゃからな」

「珍しく誰も死んでないから、この程度の情報流失なら始末書で終わりでしょ」

「龍澤! 不吉な事を言うな!」

「こりゃ失礼」

 

 龍澤の立てたフラグを源さんがへし折り。

 情報流失を起こした張本人。

 女二人と巻き添えの一匹は向かい側の房でゴロゴロしている。

(たく二人共、パンツ丸見え)

 水色のパンツが丸見えの麗華がヒョイと起き上り。

 声を発した。

 

「ねぇ隊長。私達どうなるんですか」

 

「指示があるまで此処で待機だ。のんびりしていろ」

「了解です」

 

 チラ。

 麗華は隣で丸まってピンク色のパンツを見せる……相棒の肩を揺すりながら話しかけた。

 

「若菜、いつまでも落ち込んでいちゃダメよ」

「だって」

「いいじゃない。私達のパンチラや乳首が少しネットに出たくらいで」

「……これじゃ……お嫁に行けない」

「あんた、動画の再生数伸ばしたいって初詣でお祈りしていたけどさ。偶然とはいえ、叶ったじゃない!」

 

 そう、俺達がここにいる原因の発端。

 それは俺の分隊の隊員。

 若菜と麗華が官給品のスマートゴーグルを使い。

 アニメの実況動画をしていたのを忘れ。

 そのまま俺達と合流。

 生き返ったハーフエルフと殴り合い。

 取り押さえるまでの一部始終が動画でネット上に生中継された。

 そういう事だ。

 

「……こんな伸び方、不本意……」

 

 休暇を潰された俺も不本意だよ。

 君達のパンチラでチャラにしとくわ。

 ガチャ。

 

「朝食お持ちしました」

 

 顔を知っている若い警官がダンボールを抱え。

 房の入り口に入ってきた。

 バイオハザードで隔離中と言っても、それは名目上だけだ。

 今入ってきた警官も防護服など着ていない。

 軽装の夏服だ。

 何せ元になっているマニュアルが『対ゾンビ戦用』なのだ。

 そして、そのマニュアルを作った原因。

 松沢隊長が隣にいるのだ。

 俺達が此処にいるのは、お役所の事情という事である。

 

「お、やっと朝飯って――レーションかよ!」

「この渋滞で出前は無理ですよ。売店のサラダも残っていたので、サービスで入っています」

「そこのワンちゃんには、ドッグフードがありますよ」

『ワン!』

 

 腹が減っていると漏らしていた松沢隊長。

 畳の上に置かれたダンボールに見事な匍匐前進で一番乗り。

 我先に物色を開始。

 

「どれどれ」

 ガサガサ。

「お、これはイイな」

「麗華、若菜! エビサラダとサーモンサラダどっちがいい! 先に取っちまうぞ」

 

「すぐ行きます!」

 

 麗華がエビの様に丸くなっている相棒。

 若菜の分のサラダとレーション、マロンのドッグフードを取りに来た。

 俺も朝食を手に取り。

 サーモンサラダを食べ始めた。

 

                 ――数分後――

 

「隊長、そういえば例の二人はどうなったんでしょうね?」

 

 テレビを間近で見たかった麗華も加わり。

 朝食を食べながらの雑談が始まった。

 若菜は朝食を食べるとマロンを抱き枕にして。

 向こう側で寝てしまった。

 

「そうだな。公安が身柄を拘束したいみたいだから――連中の基地に連行だろ」

「連中?」

「NEETだよ。今更だが、俺も何度か妙な連中をNEETの基地に連行したからな」

「妙な連中?」

「魔法使いや騎士みたいな格好をした連中だよ。その時は笹穂耳の連中はいなかったけどな……なぁ鬼沢と龍澤」

 

「なんですか松沢さん」

 

 松沢隊長の問いに龍澤が反応した。

 

「お前らの古巣は『何を相手に』戦っているんだろうな」

 

 俺は向かいの龍澤にアイコンタクトで促され。

 口を開いた。

 

「それが何かは俺には分かりませんが。ただ」

「ただ?」

「分かっているのは、国内最大の民間軍事会社のNEETが隠しきれない程の脅威になっているのは間違いないですよ」

「だろうな。俺達も忙しくなりそうだから、今の内に休んでおくか」

 

 俺達は手早く朝食を済まし。

 会話から生まれた、微かな緊張感を纏い。

 ニュースをBGMにして、久しぶりに感じた感覚。

 戦う前特有の胸騒ぎを抱え……休息を取り始めた。

 

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