※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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今年最後の投稿です。
読者の皆様、良き年末年始をお過ごしください。


<08話 目覚めた者達 10>

 

 

――市警察東署 記者会見場――

 

……ザワザワ。

 

 突如、記者会見場に現れた二人の男を見て、記者達は困惑していた。

 何故なら彼等の視線の先には昨晩、流出した動画に出ていた張本人が二人。

 パイプ椅子にドカッと腰を掛け。

 何食わぬ顔で……記者会見を始めようとしていたのだから。

 

―― 十数分後 市警察東署周辺の路上 ――

 

 路上をのんびりと進む。

 一両の真っ赤な消防車。

 その中では一人の男が顔を真っ赤に染め。

 ……怒りに震えていた。

 

――走行中の消防車内――

 

 ◇

 

『――それでは少し予定より早いですが、記者会見を始めます』

 

 俺は久しぶりに兄貴の姿を車載モニター越しに見ている。

 スピーカーから流れる兄貴の声は、大戦前に暴力団の銃撃戦に巻き込まれ、殉職してしまった、警察官の親父にそっくりで時々懐かしくなる。

 だが、今は兄貴に対して……怒りしか湧かない。

 

『――昨晩流出した死体安置所内の映像ですが、流出原因は新人警官向けの態勢教材作成に従事していたSWAT隊員のうち一名が、SWAT隊員の規則で禁止されている、通信デバイスの私的利用に起因する誤作動であった事を、先に市民の皆様にお詫び申し上げます。また、防犯カメラの映像を流出させた、通信デバイスの通信傍受機能についてですが、一部報道で指摘されている、不正アクセスとの指摘は該当せず――』

 

 ドカッ!

 

「ふざけるなよ! あの野郎!」

「隊長~怒ると皺が増えますよ~」

 

 俺の隣でハンドルを握るのは、水色の短髪が似合う部下。

 行方不明になった、姪っ子を思い出させる……少女っぽさが残った社会人一年生、社会に出たばかりの女性。

 

「おいおい美奈ちゃん! 何を言っているんだい! SWATの奴らは派手にスラム街を燃やした事は完全にスルーしているんだよ!」 

 

 眼鏡っ子の美奈ちゃんだ。

 

「そんなの平常運転じゃないですか~今更ですよ~」

 

『――鑑識の源です。現在、警察が保護している男女が蘇生した件についてですが、結果だけを見れば、低温状態による仮死状態だったと断定せざるを得ず、また検死時の体液検査で男女の体内からは幾つかの違法薬物の反応もあり、検死解剖がまだだった事など、それらが合わさって、複合的要因で起きたのが、今回の騒動の――』

 

「そりゃそうだけどさ、あの野郎~舐めやがって!」

 

「それはそうと隊長~珍しく市警察のオープンチャンネルに攻撃機が混ざっていますよ~」

 

 ウィイイン……。

 俺は窓を開け、真っ青な上空を見上げた。

 こんなに低空飛行をする、航空機を見るのは久しぶりだ。

 まるで、小魚の様なドローンの群れの上を泳ぐ、大魚のようだ。

 上の連中が魚なら、真っ赤な車体に乗り込んでいる俺達は、水底を這うザリガニといったところか。

 

「ああ~上を優雅に飛んでいる連中か。なんか面白い事でも言っているか?」

 

「はい~速度違反の装甲車をパトカーが追いかけているようです~」

 

「へ! ざまぁああ! 俺達の仕事を増やした報いだぜ!」

 

 カッ――ズズン!

 

「お、もう花火大会の練習か~相変わらず対空射撃みたいだな~今年は軍の高射でも混ざるのか?」

 

「…………噓でしょ…………隊長!」 

「なんだ」

「攻撃です! とばしますよ!」

「へ?」

『緊急車輌が通過します!』

 

突如――美奈がマイク越しに大声を出し。

ハンドルを握る美奈の表情が険しくなった。

美奈は消防車のパトライトを真っ赤に輝かせ。

速度を上げながら――――サイレンを――――激しく鳴らし始めた。

上空を舞うドローンや攻撃機も動きが変わり。

 

『――――何処の部隊だ! 朝っぱらから機関砲を派手に撃っているのは! 寝ぼけて――――』

 

モニター越しに見る兄貴の姿も緊張感が漂い始め。

スピーカーからも爆音と銃声が何度もガンガンと響き。

 

『――――ちくしょう! カチコミだ!』

 

 状況を察した兄貴が叫び。デスクを蹴り倒し――――素早く席から立ち上がり。

 ブチ切れた表情のまま――――ジャキーン!

 自動拳銃のスライドを引いている瞬間で――――中継は途切れ。

 映像がスタジオに切り替わって……俺も確信した。

 間違いない。

 もうすぐ、この街は戦場になる。

 

――同時刻 市警察東署 周辺――

 

『――民間人は地下鉄のホームに走れ! さっさと走れぇえええ!』

 

 悲鳴とサイレンが鳴り響く中。

 逃げ惑う市民と――速度を上げて突進してくる鋼鉄の塊。

 装甲車に向けて、コンクリートのバリケード越しに拡声機で叫ぶ。

 

『そこの装甲車! 止まれ! 止まれぇええ!』

 

自動小銃で武装した警官達と。

 

『クソ! 人が多くすぎて火砲の射線が取れねぇえ――!?』

 

逃げ惑う群衆の流れに包囲された車輌。

火砲を搭載した多脚式重機。

戦車に相当する車両に搭乗した警官だ。

 

 シュパパパァアアン!

 

装甲車の上部ハッチから身を乗り出した襲撃者。

戦闘ヘルメットを被り、州兵に変装したエルフが肩に担いだ筒。

太めの魔杖が閃光を放ち。

 

 ダダダダ!

 

 同じ方向を向いた40ミリ機関砲の砲口が火を噴いた。

 

 チュドォオオン!

 

連射された魔力弾と機関砲による掃射の直撃を受け。

身動きが出来なかった襲撃者の標的。

戦車は火柱を上げて大破。

 

「クソ! 戦車がやられた! 全員撃ちまくれ!」

 

 タタタタ!

 

応戦するのは市警察の警官達。

そして、警察署周辺のビルの屋上に潜む。

精鋭部隊の狙撃手と観測手のペア。

 

タァアン!

 

「ヘッドショット。ターゲットダウン」

 ジャキーン!

「たくよ…………軍用車で殴り込みとかふざける――な――!?」

 

SWATの狙撃チームだが――シュパァアアン!

エルフが射殺寸前に放った魔力弾が――――クネクネと回避軌道を描き。

二人は追尾型魔力弾の直撃を受け。

 

ズドォオオン!

 

ビルの屋上ごと木端微塵に粉砕され。

襲撃者と相撃ち。

 

「屋上のSWATがやられたぞぉおおおお!」 

「誰かぁああ! 対戦車火器を武器庫から持って来い!」

 

タタタタ!

 

そして、群衆の中に紛れ込んでいた。

命知らずな者達。

 

「ちくしょう!」

「なんで装甲車が殴り込んでくるんだよ!」

「対戦車火器なんて持参できるか! ボケがぁああ!」

「クソッタレ! これで逃げたらライセンス剝奪とか冗談じゃないぜ!」

「誰か! グレネードを持っている奴いるかぁああ!?」

「いたら出し惜しみをするんじゃねぇええ! 死ぬぞぉおお!」

 

ハズレを引き。

応戦せざるを得ない。

一部の賞金稼ぎ達だ。

だが、この瞬間。

 

危険度を増していく、戦闘の一部始終をリアルタイムで見ている者達が……高速で空を駆けていた。

 

――高速輸送ヘリ 機内――

 

 ◇

 

『間もなく作戦区域上空。戦闘員は降下準備に入れ』

 

「なぁ、どうも敵はエルフの軍人崩れみたいだぜ」

「わざわざ異世界に落延びてまで、戦うとは業の深い連中ねー」

「それを言ったら私達も同じだけどさ~白昼堂々と殴り込みとは、かなり自暴自棄だね~そりゃ、戦に負けるわけだ」

 

「……」

 

俺達の流派は元々、対人戦闘は厳禁だった。

亜空間での人々の暮らしを脅かす脅威。

魔物を狩り殺して日々の糧を得る。

その事に誇りを抱き、俺達は日々を生きてきた。

だが、狩場だった亜空間の変動に巻き込まれ。

 

俺達は仲良く異世界で遭難。

 

そして、女神の代理人を決める戦い。

救済戦争の参戦者達に救助されたのだ。

流派を問わず、冒険者の不文律である『柔軟であれ』を柔軟に解釈して生き延びる。

柔軟性が遭難した直後の俺達にあったのは幸いだ。

だが……。

 

「レクどうしたの?」

「なんでもないよ、フィオン……」

「人を相手にするのは嫌?」

「そうじゃないさ……今は戦いに集中しよう」

「そうね。みんな、装填の確認!」

 

「問題ないぜ! フィオンちゃん! そういえばエルフの軍人崩れとは酒場で乱闘したな~」

「懐かしいな~戦場で殺し合うのは初めてだから、死体が残る様な加減は難しそう~」

「自暴自棄な連中の自殺を手伝うようで気が引けるけど、仕事だし頑張りますか」

 

 俺やフィオン、仲間達は色々とお喋りだが、着こんでいる戦闘服はお揃いだ。

 頭部を覆う兜から爪先まで、闇夜の様な漆黒一色。

 装束の全体は妖精族の羽で細かく覆われ。

 しかも僅かな魔力消費で、簡単に透明になれる貴重品。

 古代兵器の類いだ。

 こんな有利な条件で戦えるのなら――ブゥウウン――色など関係無い。

 敵を狩り殺すのに不足がないどころか、贅沢な装備だ。

 これも俺達を救助してくれた参戦者達。

 マギサ達からの期待が強い証である。

 

 尚更……期待には最大限の成果で応えたいものだ。

 

 気持ちが高揚してきた俺の耳元には、兜の通信機能で仲間達の声が響き始めた。

 

『全員、通信と光学偽装の確認開始。フィオン大丈夫です』

『モレク、問題ないぜ』

『ルミナ、大丈夫だぜー』

『ティス、大丈夫ですよ』

 

 俺は兜の眼前に表示される、透明な表示板で仲間達の輪郭を確認。

 皆、使い慣れた武器にも妖精族の羽を覆い、光学偽装を施している。

 皆が何時でも戦える状態である事を確認し……俺は口を開いた。

 

「我々は護衛名目で投入されるが、やるべき事は脅威の無力化。要は殺しだが――」

 

 俺を含め皆、手元の映像端末に映る、エルフ達の無差別攻撃。

 魔力弾や魔力矢での攻撃を観ているが、そのまま俺は話し続けた。

 

「――此処まで無分別で、クソな連中に遠慮は無用だ。我々の姿は晒せないが、攻撃は派手に行こう」

 

「全くだ。見ているだけでクソ過ぎて泣けてきますよ」

 

一番年長の戦士で経験豊富な男。

モレクが口を開いた。

どんな表情になっているかは何となく。

呆れたといった感じが漂う、身振り手振りからも想像がつく。

 

「こんな連中と戦うのなら、ゴブリンの群れと素手で殴り合いした方がマシよ」

 

 ゴブリンを殴り殺す、豪快な趣味を持っている女性。

 ルミナが拳をブンブンと振りながら、口を開いた。

 もうそれだけで、やる気満々なのが分かる。

 

「そういえばルミナ知っている? 昨晩、転移者の団体が河川敷で~ゴブリンの群れを素手で殴殺したらしいよ~しかも矢島会長も同行だってさ~今回の転移者達は扱い的に期待されているよね~」

 

情報通の少女。

ティスがルミナの話題に併せて口を開いた。

右手には魔短杖が握られ。

魔短杖の先端部に埋め込まれた、魔力属性を持った複数種の鉱石。

魔鉱石をポンポンと撫でる左手からは程よく。

魔力が注がれている……相変わらず器用な少女だ。

 

「ティスは噂好きね。また整備班の妖精族から情報提供?」

「そうだよ~フィオン、あいつら噂好きだし~連中の情報は雑談程度でも無視できないよ」

「ゴブリンを撲殺か! そいつらとはいい酒が飲めそうだな!」

 

『警告! 間もなく敵の対空射撃の範囲内に突入!』

 

「派手に狩るぞ」

 

 俺がそう言うと皆……無言で武器を移動しやすいように携え。

 

『降下地点まで30,29――――』

 

俺の耳には無骨な人工音声と。

異世界の航空機械が生み出す……作動音だけが響いた。

 




残念ながら多忙につき、本作の年内の完結は出来ませんでした。
読者の皆様、今年もありがとうございました。m(__)m
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