※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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読者の皆様、お久しぶりです。


<08話 目覚めた者達 (終)>

 

 

 

――市警察東署 地下整備場 車輌出入口ゲート付近――

 

 ◇

 

「敵先頭車輌一両! 指揮車輌推定一両! 計二両の破壊を確認! 残存車輌が散開――!? 敵後方車輌から飛翔体複数……垂直発射だ! APS起動!」

 

ドローンで偵察をしていて正解だった。

確かに龍澤の言う通り、生身で外に出ていたら挽肉になる激しいレベルの砲撃だったが……妙だ。

 

「煙幕弾発射! 戦闘機動開始! 我々は残存車輌の掃討に移る!」

 

それに何処かで見た覚えがある、閃光と発射速度――まさか!?

 

『こちら松沢! 鬼沢! 聞こえるか!』

「こちら鬼沢。これより残存車輌の掃討に移行」

 

『敵は例のエネルギー兵器を使っているぞ! 恐らくモヒカン連中が殺していた連中と同じだ。注意しろ』

 

「鬼沢了解――」

 

 やはり、あの映像の連中……エルフか……となると敵の目的は同胞の奪還か?

 

「――松沢隊長、生き返った二人の拘束状況は? 敵の狙いは二人の可能性が高いです」

『大丈夫だ! 公安の連中が真っ先に地下連絡通路で輸送中だ――待て、おい何だ?』

 

装甲車の戦闘機動の加速を感じる俺のゴーグルには有り得ない事が起きた。

敵の反応を示す三角の車輌マーカーから、人型の赤いマーカーが顕れ、署に向けて有り得ない速度と高度で複数体が対戦車ミサイルの如く、トップアタックの軌道を描いていた。

 

『ちくしょう! ジェットパックでも使っているのか!? 敵が屋上から突入してくるぞ! 人を回して迎撃しろ!』

 

 もう通信どころじゃない。

 

「ガンナー目標θ補足! 主砲発射!」

 

 装甲車にサプライズで搭載した兵器、105ミリ砲をガンナーが発射。

 急激な変化と情報量を与えられた俺の脳天から爪先は、連射される火砲の振動で揺れ、車内には火薬の臭いが漂い出した。

 

「目標θの撃破確認! あの飛翔体は何だ……ガンナーは砲撃を継続!」

「ガンナー了解! 砲撃を継続! 目標θ砲撃を回避! 対戦車ミサイル発射!」

 

 砲声の後にRWSで戦果の観測を行う龍澤と105ミリ砲、対戦車ミサイルを発射するガンナーの報告が車内に響き、ゴーグルに表示された敵車両郡のマーカーが一つ消失した。己という存在が兵器、戦場と一体化していく感覚が車内に充満する……硝煙の様に全身を纏っていく。   

 俺は慣れ親しんだ感覚に身体を預け、予想外の動きをする敵、人型の赤いマーカーを続々と吐き出す、赤い三角のマーカーで表示された敵車両郡をこのまま想定通り潰す事にした。

 

「ドライバー公園に突入! 中央花壇正面左側を走行! 走行間射撃とRWSの弾幕で敵車両群を牽制! 連中を誘い込め!」

「ガンナー了解です!」

「ドライバー了解!」

「龍澤了解!」

 

 ゴーグル内のサブメニューの表示映像で――敵車両が攻撃に釣られ、公園内に突入してくるのを確認。ガンナーの砲撃が何度も轟音を出し、龍澤が操作するRWSからの機銃掃射が弾幕を形成、おびき寄せられた敵車両郡が柵をバキバキとなぎ倒し、芝生を乱暴に耕していく。

 

 敵車両郡の赤いマーカーと、ゴーグルに表示された周囲の防犯カメラに映る敵車両の姿が花壇手前に到達した瞬間。俺はゴーグルに表示されたサブメニュー内のアイコンを操作。

 花壇に仕込まれた爆発ジャッキを起動させた。

 

 バシュコォオオン!

 

 煙が勢い良く吹き出し、花壇の土台が盛り上がって壁に早変わりしていく。

 急に出現した壁に先頭の装甲車が衝突、砂利とポリマー材が詰め込まれた網目状の壁にめり込み強制停止。後続車も慌ててハンドルを切っているが、この場で機動力を削がれた装甲車は、狙いを定めている彼等の良い的だ。

 

「先頭! 敵装甲車の撃破確認!」

 

 壁に衝突した装甲車を何かが複数同時に貫き、装甲車は火柱を上げ爆散していく。

 

「署内から対戦車榴弾の連続発射を確認!」

 

 想定通り、松沢隊長が指揮していた署員や賞金稼ぎが放った対戦車火器による攻撃だ。

 

「はは! 賞金稼ぎの連中もやるな!」

「やっぱり戦争経験者は容赦ないですね~」

「105ミリを連射しているお前も容赦ないよ」

 

 本来は洪水用に使う消防管理の防壁だが、松沢隊長と暴動対策時の図上演習をした時の想定以上の戦果だ。今この瞬間、使える物や人は何でも使わないと敵に殺されるのは、どの戦場や現場でも同じだ。

 

「くそ! 後続車が対戦車榴弾を迎撃!」 

 

 緊張が緩みかけた車内に龍澤の報告が響いた。

 

「後続車から煙幕弾の発射と歩兵の散開を確認! あいつらの火力と攻撃、迎撃精度は異常だぞ! 一体どうなっている!?」

 

 敵車輌もAPSを積んでいるのか……だが、それなら歩兵の垂直発射とかいう戦術は滅茶苦茶だ……いや、例のエネルギー兵器による迎撃だろう。確かに敵の火力量と攻撃精度は異常だが……奴らエルフも銃弾で殺せる血肉を備えた存在だ。

 

「龍澤APSを切れ! 俺はマロンと降車して敵を狩る! ガンナーと龍澤は援護射撃! 此方も煙幕弾を発射! この先の林で後部ハッチ開放! お前達は残存車両を掃討しつつ周囲を警戒!」

 

「龍澤了解! APS停止!」

「ガンナー了解!」

「ドライバー了解!」

「マロン行くぞ」

「ワン!」

 

 ガンナーの砲撃と龍澤の援護射撃が続く中、身体に伝わる加速が止まり、後部ハッチが開放、俺は慣らし終えた狙撃銃を携え、マロンと一緒に煙幕に覆われる……外に飛び出した。後部ハッチを閉めた装甲車が砲撃とRWSの機銃弾で弾幕を張りながら、戦闘起動を開始。

 

 煙幕が漂う中、狙撃銃を中腰で構え、マロンと一緒に装甲車の進行方向とは真逆に位置する、少し傾斜がある林の中の芝生を駆けていく。

 

 ゴーグルには街灯や周囲の建造物の壁に非公式に仕込んだカメラやセンサー類の情報が集まり、敵の位置を丸裸にして表示。最適なルート、移動時の最適な姿勢、最適な狙撃位置を割り出してくれる。

 

カチッ——パシュン!

 

 俺は龍澤達の弾幕と砲撃に足を止められ、装甲車の影に隠れていた敵を一名射殺。だが、敵も馬鹿じゃ無い。直ぐに撃ち返してきた。

 

「やるな!」

 

 俺は太い樹の幹を装った、防弾版と金属塊を仕込んである弾除けを盾にしてしゃがみ、伏せの姿勢を取るマロンに片手の身振りと小声で指示を出した。

 

「マロン、イタズラをするぞ。奴等の背後に回りこんで、合図を待て」

「ク〜ン」

「いい子だ。後で肉をやるから行け!」

 

 そう言ってから物足りなそうなマロンの背中を軽く撫でてやると、マロンは尻尾を振りながら、駆けていった。

 

 俺は敵に向けて射撃を再開。ゴーグルの隅にはマロン視点の映像とマロンの現在地を表示。

 

 パパパシュン! 

 

 牽制射撃を加えながら林の中で移動を繰り返し。

 林を覆う煙幕が晴れ始め、敵が攻撃を強めようと前進を始めた瞬間。

 

「マロン吠えろ」

「ワン! ワン!」

 

 敵の動きが一瞬止まった。だが――――それで十分だ。

 

 パパパシュン!

 

「こちら鬼沢、クリア。くそ!?」

 

 数人の敵を仕留めた直後、目の前の芝生が派手に弾け迫ってくる。

 

「今度は上かよ!」

 

 間違いない、例のエネルギー兵器だ! 狙撃銃のスコープと連動したゴーグルのHUD越しには背中に剣を背負い、先端が光る杖状の物体を地上に向けている連中、エルフ達が一瞬だけ見え――強い閃光を放った。

 

 

 ―――数分前――

 

 ◇

 

「こちらワイバーン! 全員無事か!?」

 

 やべえ! 死ぬかと思った!

 

『サラマンダー異常無し! アノ曳光弾みたいな弾道は何だ!?』

『マッドハッター異常無し! スピードレース用のドローンに推進剤と炸薬でも仕込んでそうだぜ! 大方、自作ミサイルの類いだろ!』

 

 機体に懸架した汎用ミサイル数十発を全自動迎撃モードで迎撃に使わなかったら、確実に撃墜されていたぜ! 市警の装甲車は格納庫ごと全滅――いや違う! 一両だけ戦闘してやがる!

 

「こちらワイバーン! 市警の装甲車が一両だけ生き残っているぞ! これより近接航空支援を開始する! 各機続け――まて、アレは何だ!?」

 

 装甲車から飛翔体だと! 対空ミサイル!? いや飛翔速度が遅いからドローンか? 

 

『こちらサラマンダー! ガンカメラで視認! 人が……飛んでいますよ!』 

『ハハハハハ! 装甲車からベイルアウトかよ! 贅沢な連中だぜ! このまま自首でもしてくれるんですかね!』

 

 マジかよ……飛んでやがる……こいつらは朝からドラッグでも吸っているのか!? だが、ベイルアウトした搭乗員への殺傷行為は戦争犯罪だ……。

 

『ちくしょう! ジェットパックでも使っているのか!? 敵が屋上から突入してくるぞ! 人を回して迎撃しろ!』

 

 市警察の無線から耳を疑う言葉が出たがマジかよ! 

 

『こちら市警察SWATの松沢! 上空を飛行中の攻撃機! そっちにも敵が飛んでいくぞ!』

 

 本当に何人か飛んできやがった! しかもまた撃ってきやがった。曳光弾みたいな軌跡は小型ドローンに推進剤を積んでいるとしても物量が異常だ!

 

「熱源反応多数! 全機回避! また撃ってくるぞ!」

 

『うひょー! ベイルアウトじゃないのかよ!』

『サラマンダー! こいつらジェットパックを背負ったジャンキーだろ! 装甲車で警察署を襲撃してジェットパックで突撃とか! 滅茶苦茶だぜ!』

 

 ジェットパックを背負ったジャンキー……なら躊躇う必要はないか。

 だが、敵の火力を考えれば残りのミサイルは温存した方がいいだろう。

 

「各機に告ぐ! これよりジェットパックジャンキーにアヴェンジャーをフルパックで叩き込む! 攻撃開始!」

『マッドハッター了解!』

『サラマンダー了解!』

 

 俺は僚機を伴いオフィス街へ急降下、機体の横をジャンキー達が撃ちまくる、対空攻撃の軌跡が駆け抜け――オフィスビルへと着弾していく。

 火の玉が後方のビルで弾け、路上の緊急車両の車列にガラス片を被せていくのが、機体の中からでも良く分かる……酷い状況だ!

 

『マッドハッター! ターゲットロックオン! FOX4!』

『サラマンダー! ターゲットロックオン! FOX4!』

 

 僚機がアヴェンジャー30ミリ機関砲を発砲。

 ジャンキー共を機関砲弾で木端微塵のミンチに変え、速やかにチャフとフレアを射出して――加速上昇――上空へブレイクしていく。

 後は公園の林に向け、対地攻撃をしているジャンキー共を俺が……仕留めるだけだ。

 

「ジャンキーども空を舐めんじゃねえ! あの世までベイルアウトしやがれ! ワイバーン!ターゲットロックオン! FOX4!」

 

カチッ! 

 

 ――数十秒前 オフィス街路上――

 

 ◇

 

「あわわわ! エ、エルーナ! ビ、ビルに着弾しているよぉお」

 

 攻撃機が回避した魔力弾がオフィスビルに着弾、辺りにガラス片が降り注いでいく。この有様じゃ、陽気なツバメが怯え気味に驚くのも仕方ないわね。

 

『ツバメ、今日は休日だ。被害は最小限と思われる』

 

 そしてインカム越しに状況を簡潔に述べる、金属球のクラウゼという、冒険者時代の懐かしい組み合わせだ。

 

「たく……あんたらは相変わらず……マギサ~そんな急に運動して大丈夫?」

『問題ないわ』

「そう……ちょちょ! 護衛の攻撃機! 高度が低すぎよ! きゃあああああ!」

 

 ガシャァアアン!

 

『通信を傍受、残存する護衛機は魔力弾発射地点付近へ向け急降下、戦闘中の市警察SWAT部隊への近接航空支援を開始した。簡易魔力障壁緊急展開』

 

 先程よりペースを落とし、小走りで先を進むマギサとクラウゼがパラソル状の簡易魔力障壁を展開、クルクルと回転させ破片の威力を削いで弾いていく。だが、マギサの様子がおかしい……急に足を止め……無言のまま肩が震えている。

 

 ドサッ!

 

 膝から路上に崩れ落ちやがった! たく、あのお嬢様育ちが! まともな朝食も取らず、急に運動をしながら魔力障壁を展開とか平和ボケすぎるぞ!

 

 ガシャシャァアアアン!

 

「「マギサ!」」

 

 ガラス片の砕ける音に混じって、私とツバメの叫びが重なってビル街に響いた。

 

「くそ!」

『魔力弾の数が多い。念の為、魔力障壁の出力を増大させる』

 

 周囲のビルに流れ弾の魔力弾が連続で着弾。大量のガラス片がマギサ達に降り注いでいくが、出力を増大させてドーム状に巨大化したクラウゼの強力な魔力障壁はガラス片を消滅……霧散させていく。

 

『マギサのバイタルに異常。ショック状態により行動不能。救援を要請する。衛星通信に異常――急速な空間異常を検知。モンスターの大量転移だ。エルーナ、私はこの場からの即時撤退を進言する』

 

「了解した! 直ぐ私がマギサを運ぶ――!?」

 

 ズズゥウン!

 

 魔力弾の直撃を受けたビルが崩落している! 下にはマギサが……もう間に合わない!

 

 ――数分前 矢島達の搭乗ヘリ――

 

「新谷くん、こちら側の航空戦力の展開状況はどうなっている」

 

 地上と空が酷い状況なのは此処から見れば明白だが、先ずは変化が激しい空の状態を確認可能な内、降下前に動向は頭の中で把握しておきたい。かなりの数の無人機、有人機が撃墜された筈だ。現場で直ぐ戦える航空戦力は皆無だろう。

 

「残存する護衛機の一部が交戦規定に従い、エルフと交戦中の市警察東署への近接航空支援を開始するようです」

 

 驚いた……エルフ達を相手に異世界の武器を知らない筈の護衛機の一部と市警察が組織的に善戦している。だが、一人でも異世界の武器、魔術兵器を使う連中相手に戦える者が今この瞬間、味方としているのは頼もしい限りだ。

 

「エルフ達の対処は現時点では市警と護衛機に任せるしかないな。我々はマギサ達との合流を優先する。蘇生したエルフの方はどうなっている?」

 

「市警の公安が地下連絡通路で我が社の関連施設へ護送中です」

 

「そうか。なら、エルフの件はどちらも後回しだ。誠は私と降下用意、春菜は機上からの援護射撃用意、新谷さんは春菜の補佐、観測手を頼みます。誠と春菜は分かるな……いっぱい落ちて来るぞ」

 

「うへぇ~またモンスターの駆除かよ」

「折角の青空が台無しよ~流石に新谷さんも肉眼で分かるよね。空のアレ」

「はい……資料で見た事はありますが……実物は初めてです」

 

 春菜が言うように魔力が使えない者、新谷でも薄い霧状の灰色の膜で包まれ、空にポッカリと空いた黒い穴……気味の悪い転移穴は分かるだろう。流石に此処まで派手になると隠蔽工作も難しい。大衆向けの偽装情報を流す事になるだろうが……今はそれを気にするどころじゃない。

 

「会長、これをお使い下さい。」

「そうだった。あの銃は彼に譲ったからな」

「型は同じですが、まだ魔力を帯びていないので射撃時の癖が違う事、装填している実弾の残弾数にご注意ください」

 

 私は予備の回転式拳銃を新谷から渡され、甲冑の右腰にある収納スペースに納めた。

 ここには本来なら、魔力兵器の動力にもなる小型の魔石や小型で使い捨ての魔力兵器などを収納して、甲冑の核である竜核から漏れ出る魔力を収納物に補充するスペースだ。

 

 ここに一定期間放置した拳銃を私が銃爪を引くと、弾薬が無くても魔力弾を撃てる事が判明したのは偶然だったが……彼も私と同じく撃てたのだから、現象が再度、再現できるか否か、今後が興味深い。

 

『警告! 後方上空から高速接近する熱源……微弱な魔力反応あり! 数は一! IFFに応答なし! 熱源加速! マジックチャフ! チャフフレア発射!』

 

 ミサイル防御用のチャフとフレアが発射され窓の外が白く輝いていく。時折、虹色に輝くのはスライムの粉末を使った魔力妨害材、マジックチャフの特徴だが、見て違いが分かるのは魔力を使える者達だけだろう。

 

『熱源左翼側を通過!』

 

「スゲー! 矢島さん! 新型の魔力甲冑じゃないですか!」

 

「誠、落ち着いて。飛行型の新型機は硫黄島で実働試験中の筈よ。それに未塗装の銀色でIFFが無いのなら真希さんのところの実験機じゃない? 研究所の真希さんにも応援要請が出たのかな?」

 

「春菜そうだけどさ! カッコイイな~あの形状の魔力甲冑とか始めてみたよ!」

 

「二人とも盛り上がっているところ悪いが、アレは我々の兵器じゃない」

 

「え?」

 

「我々が保有している飛行型の魔力甲冑は、春に起きた硫黄島での事故から全て飛行中止、甲冑を分解して原因を調査中だ。二人とも後で機密保持誓約書にサインしてもらうぞ」

 

「「えー!」」

 

 ――矢島達の搭乗ヘリ前方――

 

「藤堂! 俺以外にも亜空間に干渉している奴がいるぞ!」

 

 どこの誰か知らないが、亜空間を満たす強力な魔力妨害の影響で光学偽装が壊れちまった! 降下地点もズレまくって敵陣のど真ん中だ。さっき横を通過した輸送ヘリはNEETの要人輸送ヘリか……魔力反応が幾つかあったが、護衛の類いだろう。

 魔力を帯びた微粒子を大量散布する辺り、魔力弾、魔力矢への対策も万全のようだ。

 

『ルガス大丈夫だ。こちらでも状況は把握している。君は想定通り動けばいい。いつも通り手際よく頼むぞ』

 

「相変わらず人使いが荒いぜ!」

 

 エルフの馬鹿達はNEETや市警察――やけに気合の入った戦闘機動で魔力弾を回避している攻撃機が迎撃をしているから放置でいい。なら、俺のすることの優先順位は決まっている!

 

「保護目標の魔力反応を確認! 降下する!」

 

 俺は魔導鎧の背中から生えた翼の翼端に搭載した魔杖を動かし、自動追尾の魔力弾を連射。保護目標を押しつぶしそうな瓦礫を降下しながら破壊。踵を地面に向け、膝を曲げ中腰の姿勢で路上スレスレを滑走――衝撃吸収用の防御魔法を帯びた両腕を拡げ。

 

「保護目標を視認! 確保する!」

 

 戦場のど真ん中でガタガタと震える魔族の女……鍵候補のマギサを抱きかかえ、上空へ再上昇した。

 

 

 ――同時刻 市警察東署 装備課 武器庫――

 

 

「急げ! 急げ! 戦時開放だ! どれでも好きな銃と弾を持っていけ!」

「屋上からも攻めてきたぞ! 屋内戦闘用意!」

 

 警報が鳴り響き、警告灯が真っ赤に輝き回転する室内。そこでは多くの賞金稼ぎが警察官に促され、官給品の自動小銃や弾薬類、対戦車火器を持ち出し、焦り気味に走り去っていく。

 

 そんな少し混乱気味の人混みの中……落ち着いた足取りで、屋内の隅に置かれた『国防軍 実験装備品 SWAT管理』とラベルが貼られ、積み上げられた金属ケースの前で……足を止める者達がいた。

 

 ◇

 

「これで間違いないか? お嬢」

 

「うん! 箱の隙間から魔力が出ているよ! この武器が無いと、あたしたち襲撃者達に殺されちゃうよ!」

 

「たく……簡単な街頭警備の案件が、どうしてこうも簡単に地獄になるかね……中隊長さん」

 

「元中隊長だ。俺のくじ運の悪さを責めるのは、ここを抜け出してからにしてくれ。お嬢、その箱は開けられるか?」

 

「もう空いているよ! そういう反応がさっきあったよ!」

「どれどれ~じゃ、お宝を開けてみますか~」

 

 ……パカン!

 

「ほほ! スリングも標準で付いているのか、これなら持ち運びは楽そうだな。見た目はドローンジャマーと似ているけど……どうですか? 実物を見たことがある元中隊長さんよ?」

 

 少女と男二人の目の前で開いた金属ケースの中身は一見すると、確かに片方の男が言うようにドローンジャマーに似ているだろう。

 だが『Soldier crusher』などと、仰々しい名称がシリアルナンバーと一緒に打刻されているのだから、別の用途に使う装備品なのは明白だ。そして実物を見た事がある元中隊長の男が口を開いた。

 

「……間違いない……富士の演習場でSWATの連中が携行型レールガンという名目で派手に使っていた、実験装備と同じだ。持ち出せるだけ持ち出すぞ」

 

「あいよ。で、これって直ぐ撃てるのか?」

 

「大丈夫っぽいよ! 魔力は充填されているから引き金を引くだけじゃない? 誰でも簡単に使える、使い捨ての魔力兵器と同じだよ!」

 

「なるほどね……エネルギー兵器の実験装備となると、ロックとかは大丈夫か?」

 

 カチッカチャカチャ。

 

「問題なさそうだ。こいつの試し撃ちをしながら安全圏まで離脱するぞ」

「魔力反応とやらは魔女を自称する、お嬢頼みだからな。案内頼むぜ」

 

「あいよ! 野郎ども試し撃ちの準備はいいな~」

 

「「おぉおおおう!」」

 

 魔女を自称する陽気な少女の声に応じるのは、少女達の後方に控える屈強な賞金稼ぎの男達数十名だった。男達は金属ケースを手際よく仕分け、中身を素早く手に取り、出口へ続々と駆けていく。

 元中隊長と男は残った金属ケースの中からSoldier crusherを二丁掴み取り、一丁を背負い。もう一丁を構えると、三人は出口に向けて歩き……人混みに紛れ込んでいった。

 

 

――同時刻 オフィス街 上空――

 

 

『おい! 聞こえるか!』

 

 エルフ達が発射した魔力弾で被弾したビルが崩れていく、オフィス街の上空。そこには二人の男女がいた。

 

『よし……意識もあるし、怪我は無いな。下に降りるぞ』

 

 銀翼を生やした銀色の魔導鎧を装着したルガスと、その両腕で抱きかかえた魔族の女……マギサだ。

 

 ◇

 

「クラウゼ! 今の機体……いや、魔導鎧は何処の所属!?」

 

『該当する機体、魔導甲冑、魔導鎧のデータ無し。だが、行動から我々への敵意は無い様だ。マギサを防御魔術で保護している。こちらに降りてくるようだ。ツバメ、お帰り』

 

「あわわわわ! 何なのアノ魔導鎧!? 妖精の私より瞬間加速が速いよ!?」 

 

 確かに二人の言う通りだ。マギサをお姫様抱っこで抱えているのは、この世界に存在するは筈がない兵器……魔導鎧だ。幸いにも装着者は私達に敵意が無い。そして、飛行魔術の瞬間加速で妖精族を凌駕するという事は……目の前に降り立ったコイツの魔力量、魔術の技量は只者じゃない。

 

『そこのシスター……いや、魔族のお嬢さん大丈夫だ。私に敵意は無いよ。この娘の事を頼む。君のお仲間と鉢合わせすると、色々と面倒な事になるからね。失礼』

 

 私の正体を容易く看破した魔導鎧の主は、お姫様抱っこで抱えたマギサを私に渡すと、屋外で使う飛翔魔術特有の埃も立てず、素早く上空へ飛翔。

そのまま飛び去ってしまった。

 

 飛翔魔術、飛行魔術……私の正体を見抜いたであろう、解析魔術の類は対魔族用の兵器である、魔導鎧に搭載された標準的な魔術だろうが、それらの操作もかなりの腕前だ。隣で飛行が十八番である妖精族のツバメが生唾を吞み込みながら、上空を啞然とした表情で見つめているのだから……相当な手練れだ。

 

『エルーナ、聞こえるか』

 

 インカムに矢島の声が響き、ヘリのローター音が徐々に大きくなっている。我々を回収する為、ヘリが降下するのだろう。

 

「矢島、マギサなら無事よ。すごい奴が出てきたわね」

 

『全くの想定外だ。だが、私達は先を急ぐぞ。そちらに降下するヘリにマギサを預けたら、東署で合流するぞ。道中のモンスター駆除の半分は任せてくれ。残りの駆除は君達に頼む。』

 

「了解。また後で会いましょう。クラウゼ、モンスター駆除のナビをお願い。ツバメは上空からの偵察を」

 

「分かった! 偵察行ってきます!」

 

「クラウゼ、大丈夫?」

 

『……了解したエルーナ……高速輸送ヘリが来たようだ。マギサを運んでくれ』

 

 私はクラウゼの応答に妙な間を感じつつも、ヘリのローターが巻き上げる埃の中、気を失ったマギサを抱え、高速輸送ヘリに小走りで駆けていった。

 

 

――同時刻 市警察東署前 路上――

 

 市警察側の反撃で大破して燃え盛る装甲車内部。乗っていた搭乗員の大半は、SWATの装甲車に搭載した兵器、105ミリ砲から発砲された対戦車榴弾の直撃を受け……即死状態だ。

 

 だが、一人だけ攻撃を受けた瞬間、魔力障壁で全身を覆い、瀕死の重傷を負いながらも無事だった者がいた。彼は久しぶりに戦場で追い詰められ……苦しみと憎悪を糧に思考を駆動させ……意識を取り戻し始めていた。

 

 ◇

 

「はぁ! はぁ!」

 

 成果を急ぎ過ぎた結果が、この有り様か……藤堂は独断専行で失敗した私を絶対に許さないだろう。追撃者……ルガスも転移を使い、既に放っている筈だ……撤退を急がなくては殺されるだけだ。

 

「もう……あそこには戻れないな……仕方ない。ここから逃げる為にも切り札を使うか……」

 

 私は右腕の袖を捲り上げ、装着している魔道具……ウェルテクスを起動させた。先ずは周囲の状況を付近の亜空間に仕込んでおいた、使い捨ての偵察魔術で確認していく。

 

「はは……魔物だらけで地獄絵図じゃないか」

 

ルガスは光学迷彩が壊れたまま、上空から魔物への空爆か……。

 

 輸送ヘリから魔力弾の援護射撃を受け、ゴブリンやオーガの群れを斬りながら路上を駆けていく二人はNEETの実験部隊の連中……光学迷彩が無事な数名は戦い方からして、NEETに保護されている魔物狩りの連中か……敵とはいえ、魔物狩りの連中は戦い方、連携が相変わらず見事だ。

 

 魔力弾の弾幕を両手で平然と作る魔族の女と妖精、浮遊する金属球……いや、機動型古代端末の組み合わせは……何れかの参戦者、マギサの類いだな。

 

 当初の目標だった、蘇生した二人も既に反応が無いが、署内から魔力弾や魔力矢の反応が多いのは、突入部隊が善戦している証左なのだろう。今や彼等、共和主義者の残党は退路無き捨て石だ。このまま有効活用させてもらう。

 

「……切り札をぶち込むのには……悪くない配置だ」

 

 私が呟き満足した瞬間、偵察魔術は役目を終え、時間制限によって消滅した。

 後は次の作業に移るだけだ。私は亜空間に閉じ込めている、切り札を私と入れ替える形で、この場に転移させる事にした。私を覆う魔力障壁に合わせ、徐々に転移魔術が発動し…………青く輝いていく。

 

「フハハハ! せいぜいあがいて見せろ! 圧倒的な暴力を前に絶望しろ糞どもが!」

 

 

 ――約十数分後 市警察東署前 大通り――

 

 

 残っているのは動かない死体と瓦礫、壊れた警察車両や襲撃者達が使用していた、装甲車の残骸……地面に散らばる空薬莢といった……絶望的な雰囲気が所々で燻る炎と黒煙が共に漂う、戦火が過ぎ去った場所。そこに駆け足で集まる数名分の亡霊を思わせる、透明な人影の集団がいた。

 

 だが、彼等は駆けながら黒装束で覆われた姿を顕し、降下する二機の輸送ヘリの着地点の周囲を手順通り、訓練通りに守り始めた。そして……着陸した輸送ヘリからは、この惨状をもたらした力、異世界の魔術を知る者達が降り立った。

 

 ◇

 

「クラウゼ、ここで間違いないのか」

 

『若干の誤差はあるが数分前、強い転移の反応があったのはこの辺りだ。周囲にも短時間だが空間の歪みが観測されている。不特定多数の魔力弾、魔力矢の発射反応も不自然な程に数分前まで、署内から頻繫に発生していた。魔物の転移も原因不明で停止している。これまでに無い事態だ』

 

「周囲に魔物、襲撃者、トラップの反応は?」

 

『皆無だが不測の事態に備え、戦闘態勢を維持してくれ。市警察や賞金稼ぎの生存者が遺体回収や生存者の捜索を開始しそうだったが、市警察本部経由で州兵とNEETの増援部隊到着まで、現状の警戒、防衛体制の維持を命令させた。短時間だが偵察名目で直接、我々の手で転移の痕跡を探せるだろう』

 

 さて、どこから捜索すべきか。

 先ずは魔力の残滓が残っている、エルフ達が乗っていた装甲車の残骸でも調べるか。

 

『矢島~聞こえる!?』

「遅かったな。寄り道か」

 

 全身を怪しげな真紅の魔導甲冑で覆い、警察署の前で刃物を持っている私が気にするのも妙だが、最早人目を気にせず、彼女は飛翔魔術を使っているようだ。

 瞬く間に瓦礫を避けて、器用に跳躍を繰り返す、金髪のシスターが目の前に降り立った。

 時折、綺麗な色白の美脚を覗かせながら、服についた土埃をパッパッと手で払うと、エルーナは口を開いた。

 

「そんなところよ。遠くから魔力弾を丁寧に撃ち込んでいた連中がいたけど、逃げられたわ。多分、元軍人崩れの上級冒険者ね……さっきの魔導鎧の奴も軍人崩れっぽいけど、警戒を強めた方が良さそうかもしれないわ」

 

「転移で逃げられたのか?」

 

 クラウゼは強い転移の反応と言っていたが……。

 

「違うわ。光学迷彩装備で高い機動力の相手だったわ。うちの対魔戦の面子と似た感じの装備、編成だったから、撤退が上手なプロよ。あれじゃ、近接戦闘に持ち込んでも油断できないわね」

 

「そうか。誠、春菜、聞こえるか。準備を整えて外に出て来い」

『『了解~』』

 

 私は機内で休んでいる誠と春菜にそう言うと、エルーナと歩きだした。

 クラウゼとツバメは上空で旋回して、情報収集の最中だ。

 瓦礫や死体を避け……薬莢を踏んで転ばないように注意して少し歩くと……私とエルーナは一両の撃破された、装甲車に辿り着いた。

 血塗れで内臓をぶちまけ……迷彩服を着用した死体が車内に何体か散見されるが、そのいずれもが頭部を見れば明らかに人間では無かった。

 

「……エルフだな。州兵に偽装して警察署を襲撃とか全く意味が分からないぞ」

「それより、今は調べましょう。時間が無いんだからさ」

 

 確かに今は転移の痕跡を含め、調べる事が最優先だ。

 

「見た感じ、指揮車両かな? アンテナ類も多いし……ちょっと矢島、砲塔部のアレ見てよ……信じられないわ」

 

 エルーナが驚きながら指し示した、装甲車の砲塔部には有り得ない物……異世界の兵器が搭載されていた。

 

「……魔杖が砲塔部に搭載されているな。これが魔力弾を連射していた正体だろう……クラウゼ、直ぐに鹵獲用の部隊を編成してくれ」

 

 研究所の真希にお土産が出来た。

 見たところ、魔杖を魔線で繋いでいるようだ。

 実験中の事故が原因で、開発が凍結中の飛行型魔導甲冑の開発再開に、これが役立つ可能性があるといいが。

 

『警告! 強力な転移反応を感知! 直ぐに着地ポイントまで後退してくれ!』

 

 突如、クラウゼが警告を発してきた。

 私とエルーナは飛翔魔術で素早く離脱。

 輸送ヘリの待機する着地ポイントにまで後退を開始した。

 輸送ヘリの外では準備を整え出てきたばかりの誠と春菜。

 対魔術戦部隊が私達の後方――上空に向け――武器を構えていた。

 

 ◇

 

「……何なのよ。あの馬鹿でかい転移穴は!?」

「春菜! 構えて! 攻撃準備! 新谷さんは機内に戻って!」

「はい!」

 

 モンスターとの連戦続きの誠と春菜は武器を構え、即座に戦闘態勢に移った。

 その周囲には二人を見知った者達が集まり、彼等も二人と同じ考えなのだろう。既に武器を構えている。

 

「二人ともいい反応だ! こりゃデカいのが来るぞ! へへへ! しかも通常空間に来るとかよ! ゾクゾクするねぇええ!」

 

「モレク教官! お久しぶりです!」

 

 誠の隣には魔物狩りに使う大剣を構えた筋肉ムキムキマッチョの大男。

 銀色の短髪をしたモレクが立った。

 

「春菜~肩の力を少し抜いて~そそ、それでいいよ~」

「ティスさん!」

「やほ~」

 

 春菜の横には魔短杖でポンポンと肩を叩きながら、上空を睨みつけ……解析魔術で転移穴を分析する、銀髪で短髪色白の少女、ティスが微調整した飛翔魔術で宙に浮き。寄り添った。

 

「再会を喜んでいる場合じゃないわよ! 戦闘用意!」

 

 声を掛けたのは魔物由来の素材で造られた、魔物狩り特有の魔弓を構えた女性。

 

「フィオンさん!」

 

 青い長髪の女性、フィオンが四人の前に陣取り、対空射撃の姿勢を取った。

 

「レク! ルミナ! 何時でも突っ込めるように待機して!」

 

 フィオンは両脇に控える二人、レクとルミナに焦り気味に問いかけた。

 

「フィオン! この場は弓使いの君が俺達の指揮をとれ!」 

 

 右脇に控える銀髪の長髪を纏めた男は、魔物の甲殻類の殻で造った……腰の鞘から双剣を抜き、魔力を込め……上空に向けて双剣を構えた。

 

「レクの言う通りだ! デカいのが相手なら目がいいフィオンが適任だ!」

 

 左脇に控えるルミナは魔獣の皮を何層にも重ね、鍛え上げたナックルを両手に装着。ナックルをボクサーの様に構え、時折、身体をほぐしている。

 そんな男顔負けの筋肉マッチョの彼女の前に飛翔魔術で跳躍を繰り返す二人が現れた。

 

「お、矢島の旦那とエルーナじゃねーか!」

 

 ルミナは目の前に降り立った、二人に手を振った。

 

「いい動きだ。ルミナ」

「矢島の旦那、今度スパーリングに付き合ってくれよ! もうゴブリンは殴り飽きたぜ」

 

「ハハハ! 勘弁してくれよ! 元気な転移者の新人がいっぱい来たから、そいつらを鍛え上げてくれ……ま、それもアレを片付けられたらの話だが…………ハハハハハ! こいつは驚きだぜ! エルーナ見てみろよ! まさか日本で動く実物を見られるとか驚きだぜ! 祖母ちゃんの家にある屛風絵と同じじゃねーか!」

 

 連戦続きで興奮状態の矢島は思わず、転移穴から零れ落ちた存在、瀕死のエルフ隊長が使った切り札の姿に見覚えがあり、童心に還っていた。

 

 先程まで矢島達が調べていた、装甲車を押し潰す程の質量……黒い多脚を生やした巨体。

 それは単純に見れば、多くの日本人なら馬鹿でかいカブトムシに見えた事だろう。

 

 だが、異世界の者達、それも対魔戦闘部隊の面々やエルーナにとって、この多脚の巨体は亜空間に巣くう脅威であり、多くの冒険者にとって一度は倒したい存在。

 暴走した古代兵器の一種だった。

 

「私も現役で稼働しているのを見るのは始めてだけどさ…………確かこっちだと『神蟲』って呼ばれているんだっけ?」

 

「ハハハ、ああ、済まないエルーナ。取り乱してしまって、そうだよ。昔は日本も亜空間と繋がり易くて妖怪や天狗に鬼、要は魔物や異世界人が頻繫に出入りしていたらしいからな。神隠し……転移とかも多かった様だが、中でも神蟲の話はよく覚えていたから、思わず興奮してしまったよ」

 

「そう……それにしてもなんか、みんな動きが手馴れていない?」

 

「エルーナそりゃそうよ~」

 

 口を開いたのは解析魔術で神蟲の解析を続けるティスだった。

 

「だって私達~大きい魔物や魔獣、ああいう大きい古代兵器を専門で駆除していたのよ~アレは、誰かが改造した形跡があるから~魔力障壁の展開が遅いから早期駆除がいいかもね~」

 

「だな! 私の拳で外骨格をボコボコに出来る内に仕留めるのが最善策だ!」

 

「ははは! みんな『女神の斬撃』だったのね! 頼もしい限りだわ!」

 

 亜空間の中で活動をする冒険者達、その中でも魔物狩りは多くの名も無き流派だらけだが、多くの人が畏敬の念を抱き、魔族のエルーナですら一目を置く存在だ。

 その中でも巨体を狩る事を生業にする者達への信頼は人々からいつの時代でも厚く、何時しか人々からこう呼ばれている『女神の斬撃』と……。

 




久しぶりの更新ですが、本作をお読み頂きありがとうございます。

次話09話は現在、修正中です。

読者の皆様、更新は相変わらず不定期ですが、今後もよろしくお願いします。
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