※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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<03話 異形と戦う者達>

 ――日没後――

 

 ――名古屋市郊外廃墟群 数百メートル上空――

 

 ――人員輸送ドローン機内――

 

 私は機体機首に搭載した、複合センサーが捉えた、暗視映像を視ている。

 地上は経年劣化、砲爆撃で割れた路面に廃墟群。

 点在する赤外線反応は、浮浪者達が星空の下。

 ……焚火をしているのだろう。

 偶に見かける、複数の発砲反応は、スラム街に巣食う犯罪者達の喧嘩だ。

 

 既に目的地周辺には、市警察のSWAT部隊が複数展開。

 スラム街の住民が、私達の戦いの目撃者や、巻き添えにならないよう。

 SWATが『実弾演習』を装い、普段通りに動いている。

 これでスラム街の住民達は誰であれ、阿鼻叫喚の状態で、我先に逃げ出す。

 既にSWATはスラム街で、ドローンターゲットに容赦なく、実弾を撃ち込み。

 閃光弾や催涙ガス、火炎放射器まで使い始めている。

 

 誰だって射的の的や、消し炭にはなりたくないものだ。

 

 とはいえ、そのやり方はともかく。

 避難誘導としては完璧に近い。

 それに念の為だろうか。

 避難先になる公園、その周囲には、市警察の機動隊や巡回警備を受注するPMCは勿論。

 ボランティアの医師、レスキュー隊、市民団体の炊き出しやマスメディア。

 不特定多数の動画投稿者や、投稿者が遠隔操作する、生放送を行う関連ドローンなども集い。

 それなりに万全を期しているのだろう。

 

 ……後、人権団体のデモ隊が、実弾演習への抗議活動をしているのも、自然な流れだ。

 

 これらの私が入手する、人員輸送ドローンに搭載したカメラやセンサー類からの情報。

 データリンクで手に入る、リアルタイムの周辺情報は貴重だ。

 私の役目は任務達成に必要な、新鮮な情報を収集して分析。

 状況に応じた戦術を組み立て、脅威を排除。 

 仲間を率いて、今夜の内に任務を達成する事だ。

 ……そんな忙しい私の耳元。

 そこにはチームメイトである、彼女の楽しそうな声が……骨伝導スピーカーから響いた。

 

「ねぇねえ下を見て春菜! SWATの演習が始まったみたいだよ!」

 

 私の名前を呼ぶのは、真っ赤なパワードスーツを着た、女豹を思わせる。

 シルエットの仲間。

 彼女は窓際にへばりつき。

 地上を目視で監視中だ。

 私は彼女の名を思い浮かべ。

 口を開いた。 

 

「紅菜、はしゃがないの……私達の任務は何でしょうか」

「え? マギ姉ちゃんが転移に失敗したから、その後始末! 連中の『排除』です!」

「ぷっ!」

 

 その時、私の隣で感情を抑え。

 吹き出す声を微かに漏らした……もうひとりのチームメイト。

 刀を抱えた仲間、オレンジ色のパワードスーツを着た。

 彼が口を開いた。

 

「春菜、因みに今回お迎えに行った男で、マギ姉ちゃんの何番目だろうね……」

「誠、いくらなんでもそれは言い過ぎよ。今は脅威の排除に集中よ……みんな降下準備開始」

 

 私は緩みそうになった思考を切り替え。

 呼吸を整えると、静かに口を開いた。

 

「こちら春菜、高度を上げてください。これより目標地点への降下準備を開始します」

 

 私はマニュアル通りに指示を出し。

 自身もシートの下に収納された降下装置。

 市街地への精密降下にも対応した、スマートパラシュートを取り出して装着していく。

 

『こちら機長、了解した。上昇する』

 

 機長を名乗る音声の主は、このドローンに搭載された人工知能。

 因みに音声は、私の趣味で渋いおっさん声だ。

 

「ちょ! もうそんな時間なの!?」

 

 紅菜は手をあたふたさせ、準備を開始している。

 だが、あたふたしながらも、パワードスーツの点検を行い。

 スマートパラシュートを装着する様は、ぱらぱらと踊っているかのようだ。

 

「紅菜。こんな機会でも無いと『連中を倒す』経験を僕達が積めないよ」

 

 誠はパワードスーツの点検を素早く終え。

 武器である刃が収まった、ハイテク感が漂う鞘を背中のマウント部にセッテイング。

 左右の太腿に装着した、ホルスターに収まっている銃。

 自動拳銃のスライドを引き。

 初弾を薬室に装填してホルスターに戻していく。

 

 そして、私も誠や紅菜と同型色違いになる、ピンク色のパワードスーツの点検を開始。

 私は自分の武装である、誠と同じく、ハイテクな感じが漂う武器。

 銀色の穂先以外全体がピンク色をした、短槍の点検も素早く終え。

 短槍を伸縮させ。

 ハイテクな鞘に納め。

 腰にセッテイングすると……誠に声をかけた。

 

「誠、最近は転移者関係以外でも、連中の発生事例が多いけど、どう思う?」

 

「そうだね。僕達の権限じゃ転移関係の情報は少ないから、モンスター(連中)の発生事例と、転移との明確な相関関係は分からないけど、今は戦うだけさ」

 

『こちら機長、後部ハッチの開放準備に入る。各員降下準備』

「そうね」

 

 私は誠との会話で、微かな不安を振り払い。

 膝元で抱える、私の髪と同じ色をしたピンク色のヘルメット。

 パワードスーツ用のフルフェイス型のヘルメットへ視線を移し。

 両手で抱え上げて装着。

 誠も膝元に置いた、オレンジ色のパワードスーツ用のヘルメットを装着。

 

『後部ハッチ開放開始10秒前、9、8、7、――』

 

 数秒後、戦闘準備が整った、私達三人に……夜風が吹き付けた。

 

 ◇

 

 火の粉が夜空へ舞い上がり、銃声や叫び声。

 緊急車両のサイレンが響く中。

 廃墟群の中でも、一番大きい建造物。

 正午頃、転移者が転移した、ショッピングモールの屋上。

 そこを目指して今度は、背中に装着した装置からスラスターを吹かし、赤い人影。

 真っ赤なパワードスーツを着た少女が、屋上のど真ん中にスマートパラシュートで着地。

 

 少女はスマートパラシュートを素早く畳み。

 隠蔽して屋上に放置。

 ……少女は無線を聞きつつ。

 大穴の様な吹き抜けが見渡せる、屋上の端へ向けて走り始めた。

 

『こちら春菜、モール内部にゴブリンとリザードマンを数百体規模で確認。外に出る前にケリをつけるわよ。紅菜は魔力矢でゴブリンへの攻撃を開始。誠は死角のリザードマンを掃討』

 

「紅菜了解」

『誠了解、春菜、俺が切り損ねた奴は頼む』

『誠。今度照り焼きバーガー奢ってよね。モビアック以外の肉で』

『オッケー』

「こちら紅菜、適当に始めちゃうよ」

『こちら春菜、いいわよ』

『紅菜、派手な花火を頼むぜ』

「了解!」

 

 紅菜はウキウキしつつ――腰から筒を取り出して掲げ。

 カシャ! 筒の両端はカーブを描いて伸び。

 ブゥン! 赤い光の霧が両端から伸びて光の弦を生み出し。

 紅菜は手馴れた動きで、真紅の弓を作り出して構え。

 赤い光の矢。

 魔力矢を何本も下に向けて――バシュシュシュン!

 素早く撃ち始めた。

 魔力矢の向かう先。

 階下では閃光が輝き。

 爆発音や振動が激しく轟き。

 新たに生まれた、火の粉が夜空へ舞い上がる中。

 この世界の人々の常識では、猛禽類を思わせる音色。

 魔弓と半魔族の少女が奏でる……攻撃魔術の詠唱音が夜空へ響き始めた。

 

「こちら紅菜、攻撃開始!」

『誠了解、紅菜はそのまま雑魚を潰してくれ』

「紅菜了解」

『こちら春菜了解、私は誠の援護をする』

 

 ◇

 

 ――廃墟郡ショッピングモール内部――

 

 紅菜の放つ援護射撃の魔力矢。

 宛らグレネード弾の空爆に匹敵する猛攻は、ゴブリン達を次々と爆殺していく。

 その一方、刀を握る誠。

 彼は鱗の装甲で守られた敵。

 刃で武装した敵と何度も刃を交えていた。

 

「クソッタレ!」

 

 その敵は余裕で、誠の斬撃を刀身で受け止め。

 片刃の刃を――誠目掛けて振り回す。

 数十体規模の異形の姿。

 だが、子供ぐらいの体をしたゴブリンとは違い。

 体格も段違いに大きい。

 身長2メートル弱はあるだろう。

 筋骨隆々とした体躯。

 全身は緑色の鱗に覆われ。

 人間的な知性は感じさせない、冷たい眼差し。

 爬虫類っぽい……特徴的な姿。

 モンスターの中でも斬撃に強いと、誠は何度か戦った経験から学んでいた敵だ。

 

「まさか、武装したリザードマンが団体で……登場とか……今回の転移者達は、どれだけやばい――んだよ!」

 

 誠は後方にバックステップ。

 リザードマンの繰り出す、重い斬撃を回避していく。

 手馴れた動きで、斬撃の間合いから逃れた誠。

 彼は中段で刀を構え直し。

 切っ先の狙いを定め。

 向かってくる……敵を見据える。

 誠の視線と切っ先の狙う先には――早足で間合いを詰め。

 上段から斬りかかってきた、一番手前のリザードマンが一体。

 一瞬だけ映った。

 ザシュ! 

 誠の斬撃で素早く切り捨てられ。

 リザードマンの腹部から飛び散る――真っ赤なブラスト。

 飛び出す臓物をバックにして――誠はリザードマンの間を駆けていく。

 誠が駆けた軌跡には、鱗を砕く斬撃音。

 飛び散る火花。

 真っ赤なブラストが刻まれていく。

 

「グギャァアアア!」

 

 誠は十体近い、リザードマンを無傷で斬殺。

 だが、誠の目の前には、弾痕だらけのコンクリートの壁が立ちはだかった。

 

「ギシャァア!」

 

 リザードマンが誠目掛けて殺到。

 だが、誠は刀を背中に背負った鞘に戻すと――口を開いた。

 

「春菜! 吹きとばせ!」

 

 誠はそう言い放つと――数十メートルは垂直に跳躍。

 彼の視線の先には階下のリザードマンに向けて――槍の穂先を向ける仲間。

 春菜が映った。

 

『春菜了解!』

 

 春菜が握り締めた槍の穂先の空間が歪み。

 歪みの中から、火球が数発飛び出し。

 リザードマンの群れに着弾。

 閃光が走り――爆風と熱風がリザードマンを喰らっていく。

 誠は体を宙で捻り、向かいのテラスに滑り込み――滑走しながら着地。

 向かいのテラスでは春菜が、片腕を掲げ勝ち誇っている。

 

「春菜、ファイヤーボールの数が増えたな」

『当然よ! マギサ姉ちゃんに合宿で鍛えられたから!」

 

 人知れず、暗闇に包まれた廃墟で異形。

 モンスターを相手に戦う、三人の戦いは始まった。

 

 ――同時刻――名古屋市郊外 軍事区画――

 

 ――民間軍事会社医療施設 VIP専用ルーム――

 

 ◇◇◇

 

(――――眩しい!)

 

「……」

「瞳孔は大丈夫そうだな」

 

 眩しさで目が覚めた……俺の目の前。

 そこにはライトを持った男……白衣を着た初老の医者がいる。

 その後ろには――女子高生?

 

「それでは、私はこれで失礼します。少し記憶の混濁があるかも知れませんが、何かあったらナースコールを」

 

 そう言うと医者は、女子高生に会釈をして退室。

 ……扉は自動ドアのようだ。

 ドアの外には黒い人影……銃を持った黒服が何人かいる。

 

「無事で良かったわ……」

 

 部屋に残った女子高生が何やら、俺の安否に安堵しているようだ。

 女子高生と思ったのは、それっぽい服装をしているからである。

 パッと見た感じ。

 ロングの黒髪をしたモデル体型の美少女だ。

 なんだろう……笑顔が素直に可愛い。

 

「改めて自己紹介をします。転移者さん……私はマギサ……貴方に仲間になって欲しいと考える、魔女の一人です。以後よろしくお願いします」

 




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次話の投稿は02月12日20時43分になります。
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