※この作品はR-18です。

魔女の天下取り   作:hidenyan

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<05話 ファーストコンタクト>

 俺はオークの様なナース、看護師に起こされた。

 急いでスマホにモバイルバッテリーを差し込み。

 

 部屋にある……シャワールームで体を洗い。

 

 用意された服。

 下着類や靴下、ファストファッションっぽい服とジーンズを着用。

 そして何故か防弾チョッキも着せられた。

 

 靴は兵隊さんが履く感じのミリタリーな靴だ。

 半長靴じゃないから、履きやすいので助かる。

 

「外でマギサ様がお待ちです。御案内します」

 

 俺は迎えに来た、護衛の黒服に案内され。

 マギサが待つ場所に向かった。

 初めて外の光景が見え……俺は思わず声を漏らした。

 

「ここって飛行場?」

 

 廊下の窓からは離陸する、戦闘機や輸送機が見える。

 どれも、俺の世界では見た事もない形状……ステルス機の類いだ。

 

「いえ、基地の中です」

 

 護衛の説明によると、ここは民間軍事会社の敷地内だそうだ。

 確かマギサは、民間軍事会社の幹部だと名乗っていた。

 ここは近未来の並行世界らしいが、名刺を渡す風習は廃れたのだろうか?

 或いはPMCにそんな業界慣習はないのだろう。

 などと思いつつ。

 俺はマギサが待つ……黒塗りのリムジンに乗り込んだ。

 前後は機関銃を積んだ、車両に護衛され。

 上空には――ホバリングをする、警備用のドローンだろうか。

 そんな飛行物体が編隊を組んで――車両の上空で飛行をしている。

 

「おはよう。ぐっすり眠れたかしら」

「凄い防音設備だ。外に飛行場があるのに、さっきまで気づかなかったよ」

「……あの施設はそういう場所だから……ところで朝食はまだよね」

「ええ」

「当然だけど、こちらで用意させてもらうわ。私も同席させてもらうけどね。それと私を呼ぶ時は、公私共にマギサでいいわよ」

 

 その後、俺達は基地を離れ。

 高速道路の様な、高架式の車道に入っていった。

 車窓から外を眺めていると――廃墟がやけに多い。

 廃墟が緑に覆われているのは、日本の植生故だろう。

 ポツポツと煙が上がっているのは……人が居るのだろうか。

 

(人が住んでいるのなら、スラム街か?)

 

 そして所々に壁で囲われた、高級そうな住宅街が見える。

 高級そうな住宅街にはドローンが行き交い。

 道路の上空にも、ドローンの飛行経路が何層かに分かれ。

 存在するのが伺える。

 まるで、空飛ぶクルマが行き交う。

 ……未来都市を見ているような感じだ。

 外の光景を見る俺に……マギサが声をかけてきた。

 

「これでもだいぶ、復興が進んだ方なのよ」

「確か、第三次世界大戦があったのか」

「ええ……丁度、私がこっちに来た年には終結したから……十数年前ね」

「見たところ、俺の世界より露骨に貧富の格差どころか、安全にも格差がありそうだ」

「部分的には正解よ。ただもう少し、この世界を見たほうがいいわよ」

「確かに……俺はまだこの世界の事や、知らない事の方が多すぎる」

 

 そのまま、俺達は廃墟群を抜け。

 摩天楼だらけの都市部へ向かっていく。

 案内表示を見ると『名古屋市』とあったので、ここも名古屋なのだろう。

 見慣れた地名を見てからは……微かに安堵感も覚えた。

 だが……やはり俺の意思で、望んで此処にいるわけではない。

 

 異世界転移なんて、ラノベやウェブ小説。

 どっかのオカルト掲示板の中だけだと思っていた。

 

 だが、意外と慌てたりしないのは、俺の中での準備。

 例の振り込み失踪事件を知っていたからこそ……心構えが出来ていたのだろう。

 

 ◇◇◇

 

「少し遅いけど、朝食にしましょう」

 

 俺とマギサは何故か。

 ピエロのマスコットでお馴染みのファストフード店に入店。

 店の外や内部を護衛に囲まれながら……貸し切り状態で朝食の最中だ。

 

(つうかこっちにも……あるのかよ)

 

 最も俺の世界じゃ例のピエロは、動画素材として幅広く扱われ。

 企業活動を監視する、海外の市民団体に活動自粛を要請されたりしていたが。

 ……こっちでは普通に元気なようだ。

 

(しかも……何人かいるのかよ)

 

「気にしないで、ここは10時からの営業だから、一般客に迷惑はかけてないわ……後、一時間位はゆっくりできるわよ」

「分かった」

 

 俺は微かに安心すると、朝食に手をつけた。

 先ずは和風ドレッシングのキューブを掴み。

 卵を割る感覚でサラダに垂らし。

 見慣れないエビっぽいシーフードが入った、サラダをフォークで食べた。

 

(味はエビっぽいな……でもやけに大きいな? ロブスターか?)

 

 俺はサラダの中のシーフードな食材に微かな既視感を覚えつつ。

 熱々のチーズバーガーを食べる。

 ……肉汁と溶けたチーズが旨い。

 そして揚げたてポテトのLサイズを食べ。

 Lサイズのコーラを飲みほし……食後のコーヒーを飲み。

 腹を満たし……心を落ち着け。

 マギサがハンバーガーを食べ終え……コーヒーを飲み始め。

 ……互いに一息付いたタイミングで俺は話しかけた。

 

「ご馳走様。久しぶりに食べたが悪くない……人と一緒に食べる朝食は美味しいよ」

「……あなたなら、うちの子達と仲良く出来そうだわ」

「うちの子?」

 マギサは笑顔で俺を見ているようだ。

「そう、うちの子達……今は参戦者……私の陣営の仲間として、自分の意思で参加した子供達よ」

「子供達、つまりそれは少年兵かな?」

 

 俺は戦う子供達という、言葉が持つイメージに嫌悪感を覚えた。

 出来るだけマイルドな口調で、今のうちに懸念を疑問として、マギサに問いかけた。

 こういう懸念は早く潰すのが、先がどうなるかは分からないが。

 信頼関係を作っていく過程では肝要だ。

 

「どうやら誤解をさせてしまったみたいね。参戦者になったのは皆、十五歳以上の子よ。こちらじゃ、戦時国際法や慣例、人権意識、成人の定義も違うの……そこは気をつけてね」

「……なるほど」

「だけど、その優しい心は忘れないで……」

 

 ◇

 

 ――約三時間前――

 

 ――名古屋市近郊の軍事区画――

 

 廃墟に囲まれた名古屋市。

 その近郊には行政機関から警察業務、軍事業務を受注する企業。

 民間軍事会社(PMC)の関連施設が集まる区画が幾つかあった。

 その中でも特に大きな区画を丸ごと一社で使用する、民間軍事会社の施設。

 滑走路を備えた、基地と呼ぶに相応しい施設へ……ひとりの男が空路で到着していた。

 ◇

 ステルス性を備えた有人、無人の大小様々な航空機が駐機する滑走路脇。

 近くの車道を走る……対爆、対狙撃対策が施されたリムジン車内。

 後部座席には黒いスーツを着込み、メガネをかけた中年男性。

 メガネと連絡用のインカムを装着した女性、若い女性秘書が乗車。

 中年男性は髪を短く刈り込んでいるが、所々白髪が混ざっている。

 だが、筋肉質な体格と……整った顔立ち。

 何より、見る者に好印象を与える顔。

 メガネの下に隠れた、力強さと優しさを備えた目元が……男に実年齢の五十代を思わせない……若々しさを漂わせていた。

 走行中のリムジンの車窓からは、基地内にずらりと立ち並んだ防爆格納庫が並び。

 その中では、自社製の最新鋭ステルス無人戦闘機が翼を休め。

 作業用ドローンの手によって――ミサイルやガンポッドなどの――爆装を施されていく。

 そんな自分の庭を眺めている、中年男性の耳元には女性秘書の報告が響く。

 

 ◇

 

「会長、昨日マギサ様が転移施設付近に転移陣を介さず、緊急転移で帰還した件ですが、マギサ様が直々に出迎えた転移者は、イレギュラー転移を起こし、市警察のSWAT部隊を救助名目で転移先に展開、救助を完了しています」

 

「……他の転移者はどうなっている?」

 

 女性秘書は中年男性、自分の雇用主である会長に用件を淡々と伝えていく。

 

「他の転移者は予定通り全て、環境体験型訓練施設の転移陣へ転移。チュートリアルを終えた順にメディカルチェックを受け、合同説明会までの間、外部との情報遮断をした、施設内の宿舎で順次、待機させています」

 

「そうか……マギサとその転移者は、朝食ついでに私が出迎えよう」

 会長と呼ばれた男はそう言うと、装着したメガネ型デバイスを通話モードに切り替え。

「おはようマギサ。昨日は大変だったようだな」

 

 マギサに通話モードで目覚ましコール。

 

『……ん……ああ、矢島…………おはよう』

 

 名前を呼ばれた男、矢島はもうひとりの魔女(マギサ)である、小さな妖精族の少女と自分達が抱えている問題を思い出し……話を続けた。

 

「それより、君が直接連れてきた転移者だが、またツバメの相棒。パイロット候補なのかな?」

 

『しょうがないでしょ……こっちの人間じゃ、魔力上昇の速度が黒鉄を動かすのに全然足りないのよ……それに……何人も連れてくるのは疲れるわよ……今からシャワー浴びるから……』

 

「それは失礼した、ところで朝食を一緒に取らないか? 場所は子供たちがよく使っている店だ」

 

 ――そして現在――

 

 ◇

 

 俺はお手洗いに来ている。

 流石にトイレは俺の世界と大差がない感じだ。

 

「これじゃ、本当に並行世界に来たのか疑わしくなるな――?」

 

 俺が用を済ませ。

 手を洗い終えた直後。

 ……あり得ない事が起きた。

 俺のスマホの表示は明らかに圏外。

 

 だがブルブルと震え……マナーモードで着信しているのだ。

 

 ……かけてきた相手は明らかに文字化けして……正体不明な相手だ。

 しかもメールが同時に着信して、件名が『声を出さずに聞け!』……となっている。

 俺は心臓の鼓動をバクバクと感じたまま。

 その着信を――ピッ――取ってみた。

 

『――絶対二声ヲ出スナ。其処カラ動クナ。其処ハ監視カメラガ無イカラ安全ダ。オ前ノ名前ハ――』

 

 聞こえてきたのは可愛いボカロと違い。

 明らかに、身代金でも要求しそうな合成音声。

 

『――デ間違イナイナ。ソウナラ歯ヲカチカチト鳴ラセ』

 

 俺は氏名を呼ばれ――ガチガチ――と思わず歯を鳴らした。

 というより、ビビッて……鳴らしてしまった!

 心臓の鼓動。

 歯の当たる音が絶妙な加減でシェイク。

 俺の体と心に供給され。

 合成音声の主は話を続けた。

 

『イイ子ダ。コノ後、オ前ハ、マギサ、魔族ノ女、魔女ト契約ヲ結ブカ否カ選択スル。ソウダナ? ソウナラ、Yesト小声デ言エ』

「イエス! 高――もごっ!」

 

 俺は思わず某美容外科のCMで有名な言葉を口にしそうになった。

 だが、何とか口を片手で押さえた。

 

『イイ子ダ。生キ残リタイナラ、契約ヲシロ。契約ヲシナカッタ奴ハ皆、マギサノ敵二殺サレタ――』

 

「マジかよぉお!?」

 

(ヤバイ! 叫んでしまった!) 

 

『――叫ブナ馬鹿モノ! ソノ魔女ハ今ノ所ハ安全ダ。ソレト、私ガ送金シタ暗号資産ハ、オマエノ物ダ。好キニ使エ――』

 

(………………コイツはもしかして一昨日、掲示板で見た電波な奴か!?)

 

『――但シマギサ達二ハ悟ラレルナ。マタ時期ガクレバ連絡スル。私ノ今ノ力デハオ前ヲ救エナイノダ。次カラハ、ソノ端末ノ、ブルードロップモ使エル様二シテクレ。生キ残リタイナラコノ着信履歴トメールハ直グニ消セ――』

 

 送信者はそう言い残し、一方的に通話を切った。

 俺は急いでスマホを操作して履歴を消し――軽く顔に水道水を掛け。

 そのまま……数秒の間を置き……外に出た。

 

「どうしたの?」

「……顔を洗おうとしたら、派手に失敗したわ」

「まぁこれでも使って」

 マギサはそう言うと店員が持ってきた……熱いおしぼりを渡してきた。

「すまない――それとそちらは誰?」

 

 俺はドキドキしたまま。

 新たに増えた人々。

 マギサの隣に座る知り合いと思われる――面々に申し訳ないと思いつつ。

 俺は素早く――熱いおしぼりで顔を拭き。

 顔と手に熱を感じながら、お手洗いの横にある返却コーナーの隅で湯気が昇る……おしぼりを置き……自分の席に戻った。

 するとマギサが口を開いた。

 

「紹介するわね。こちらのナイスミドルは矢島とその秘書の新谷さん」

「どうも初めまして矢島です。一応、マギサの上司になるかな。これでも異世界帰りの経営者です」

「初めまして秘書の新谷です。それと会長、外では異世界関連の言動は謹んでください」

「おいおい! ここは我社の警備で固めているから問題ないだろ。それに世間に広まっている都市伝説的にも、私は異世界帰りだから問題無いと思うが?」

「それもそうですが、転移者の方が混乱される可能性も……」

 

 なんか賑やかな人達だな。

 俺はロングヘアーを纏めた如何にも、秘書といった感じがする。

 メガネ美女の新谷さんからの視線を受け……話し始めた。

 

「お気遣いありがとうございます。自分も少しは、マギサから……大まかな事情は説明されましたが、何せ……初めての経験なのでどうか、まだ戸惑っている部分もありますが、よろしくお願いします」

 

 俺は軽く頭を下げ……顔を上げた。

 ナイスミドルな矢島さんが、優しい眼差しで俺を見ながら話し始めた。

 

「なるほど……マギサ、君が直接迎えに行くわけだ。マギサ、確か転移者の名前はまだ知らなかったな」

 

「ええ、流石に100人近くも、連れてきた契約者がみんな逃走したら……初めと違い……故郷の験担ぎ抜きでも、契約前に名前を覚える気は失せたわ。まぁ、その原因を作った張本人は今頃、研究所でまだ寝ているのでしょうけど……」

 

 確かに名乗った覚えは無い。

 というか、必要性が無かったというべきか。

 だが、連れてきた人様の名前を覚えない。

 その気持ちをサラッと愚痴を交え。

 言葉にするのは酷いと感じたが――故郷の験担ぎ?

 

「……気分を悪くさせたわね……ごめんなさい。私の故郷には魔女が、参戦者を迎える際の験担ぎと、その元になった、諺があるのよ。それが――」

「――『女神との接吻まで名は聞くな』だったかな。正解かマギサ?」

「正解。誰に聞いたのよ?」

「向こうの酒場で飲んでいた時さ……酔っ払ったミリサとツバメに絡まれ、聞かされたよ」

「……それは大変だったわね。そう言えばツバメで思い出したけど、うちの子達が遅いわね」

 

(ミリサとツバメ? この感じだとこの二人は酒癖が悪い感じか?)

 

「ああ、それなら先に研究所の方に送迎しといたよ。単位は大丈夫みたいだから、今日は学校を休ませた……昨晩は後始末で、大変だっただろうしな。さて、我々も移動しようか」

 

 矢島さんがそう言うと、俺達は席を立ち。

 店の外に出る感じになった。

 俺が店の外に出る寸前――矢島さんから話しかけられた。

 

「そうだ。転移者くん、君が仲間になるなら後で、いいものを進呈しよう」

 

 その後、俺とマギサは矢島さんの護衛の車列とは別ルートを通り。

 研究所とやらに向かっていくようだ。

 途中、名古屋市警察SWATと車体にペイントされた、装甲車が車列の前後を固め。

 パトライトを真っ赤に輝かせ。

 サイレンを唸らせ始めた。

 ……俺はこれから向かう場所で決断をしなくてはいけない。

 だが――果たして――何を信じるべきなのだろうか?

 先程の不審な電話を疑うべきか? 信じるべきか?

 マギサ達を信じるべきなのか? 疑うべきか?

 俺が悩んでいるのを察したのだろう。

 マギサは先程と違い……無口だ。

 俺の中で生まれた感情。

 不安と悩みは混ざって漂い。

 姿が見えない霧に判断力という視界を塞がれ。

 俺は先が見えない事や……決断を下せない自分に対して……歯痒さを噛み締めていた。

 




お読み頂きありがとうございます。
06話の投稿は02月13日16時36分になりますm(_ _)m
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