「もう無理疲れた……」
朝8時に出社して本来の定時を完全スルーして退社したのは夜の10時過ぎ。そこから家に着くまでに30分かかって玄関をくぐったのは10時30分過ぎ。取引先が今になって契約内容の見直しとか言い出してそれがらみテンパった後輩のフォローや関係各所への連絡根回し……。
今日こそは定時で帰れるとおもってコンビニよって新作のあれを買おうとか、スーパーよって買い出ししようとか思ってたけどそんな気力も全部そがれて帰宅一択。買い物なんて無理。
靴を脱いで廊下を抜けた先のリビングにあるソファに倒れこむ。残業代はきちっと出る分給料もそれなりに出るけど、使い時はこういったのを買うくらいしかない。
スーツがしわになるとか夕飯の準備とかやることはあるけど今はそんなの考えたくない……はぁ、仕事辞めようかな。
「寝るの?」
「んー」
「服脱ぐ?」
「んー……ん?」
ソファでそのまま寝落ちしかけていたら知らない声がしたからそっちを向いてみれば、知らない女の人がいた。誰、この人。
アメジストのような目を片方隠す長さの薄紫の髪、陶磁器のような肌にソファ横に座り込んでいてもわかる小柄な体。そして何より目立つのは背中に生えてる羽。服装も派手だけど羽が目立ってる。何それコスプレ?
「じゃあ脱がすねー」
「ぇぁ……服どこ」
柏手をうつようにぽん、と手を打つと私の着ていた服が消えた。下着ごと。
え、待って。仕事着なんだけどあれ。
「死んじゃうくらい気持ちいいのと死んだほうがマシくらい気持ちいいのと、中毒になるくらい気持ちいい奴のどれがいい?」
「ねえ待って。不法侵入したあげく服どっか消してよくわかんないこと言うのやめて」
「ぅん? 私サキュバスだからセックスしかできないんだけど……ほら」
そう言いながら見せられたのはスマホの画面。今日の昼休憩の時に流れてきて適当に答えたウェブアンケートが表示されてるけど……?
「サキュバス派遣アンケートに回答あったから来たんだよ? あと私レヴィっていうの」
あれってそんなアンケートだったのね。どうりで変な質問が多いと思った。
「それで、セックスする?」
「んーあー……」
「なんか今したら途中で寝ちゃいそうだね? すごい疲れてそうだし」
「残業明けだし明日も仕事あるから……」
明日さえ乗り気れば休みだけどね……明日も残業かなぁ……。
「そっかー。じゃあお風呂で軽いのだけしちゃおっか」
「ん?」
ソファから抱き起されてお風呂場まで連れていかれたんだけど、メイクとか取ってない。
シャワーで体を洗われつつも眠たいしどうにでもなれな頭とこれどういう状況? って頭がせめぎあってるけど、洗ってきてる手が顔に触れてメイクを落とすような手つきをしてきたあたりで考えるのをやめた。
メイクもなんか落としてくれてるし体や髪も洗ってくれてるし。
「ん、これで洗い終わったかな。あとは軽くイッて終わりかな」
「んっ」
洗い場に横にされて上にのってきたレヴィは体を密着させてくるとキスをしてきた。ただただ気持ちいいだけのキス。性欲がわいてくるとかもっととかそういう感情はわいてこない、気持ちよくてリラックスできるそんなキス。
密着して触れてる体も柔らかくて気持ちいい。充足感が満たされていってる感じがする。
「次はこっち」
「ふぁっん、ぅ」
密着していた体を離して私の両足を開かせてその間に顔を寄せたレヴィはクリに吸い付いてきた。
「ぅんっ、ぁあ」
「ん、ちゅぁふ、ぁ」
甘く吸い付いてきたレヴィは舌で飴を転がすようにクリに触れては軽く吸い上げたり緩急つけながら責めてきてる。
「こんなに濡れてるし指いれちゃおうか」
「ゅ、び? っぁ、ぁあっ」
秘部をなぞるように触れてきたレヴィの指はゆっくりとナカに入ってきて、膣壁を擦るように動き始めた。一気に攻めるような動きじゃなくてゆっくりと感度を上げていくような動きで指を動かしてくるレヴィは動きはそのままに、今度は胸に吸い付いてきた。
レヴィの口内の熱を感じつつ、咥えられて甘噛みされたりしてる乳首からも刺激を与えられて体の火照りも感度もどんどん上がっていってる。
「そ、れだ、めッふ、ぁああっ」
「ぁ、ふんぅ、ちゅ、ぁ」
「ぁ、ふぁあぃ、っちゃ、ぁあっッ」
「イってる表情も声もかわいい。ねえ、もっとしていい?」
「ぃ、いいわけ、ないでしょ……」
残念、といいながらナカから指を抜いたレヴィはシャワーでお互いの体を軽く洗うとお風呂場から出てさっき服を消したときみたいに手をたたくと体中の水気が消えて髪もきれいに乾いてた。
流れとはいえシたあとなのに虚脱感よりも充足感に満ちてるし、鉛のように重かった体もどこか軽い。
「夕ご飯まだなんでしょ?」
「うん」
「適当に作るから座っててー」
「うん?」
ぱんぱん、と手をならせばタオル地で出来たパジャマを着させられてる私と裸エプロンとかいうおかしな格好をしてるレヴィ。
すごい柔らかくて手触りのいいパジャマなのはいいけど私こんなの持ってないし、レヴィがどこからか出したってことだよね? 胸元広げてみてみればこれまた私が持ってないかわいいブラが。なんだろうこの至れり尽くせりな感じ。
レヴィはその格好のままキッチンに行って冷蔵庫をあさって何かを作り出した。え、ご飯まで作ってくれるの?
至れり尽くせりな上に疲労感はなくなってるし体もすこぶる軽い。近年なかったレベルで最高のコンディション。レヴィの料理光景をぼんやりと眺めてリラックスしてる。
そうしているとおいしそうなにおいが漂ってきてレヴィが皿に盛りつけて持ってきたのはチャーハンと卵スープ。うん、待ってた時間と内容が比例してないけどもう気にしない。不思議パワーで解決してるってことで流しちゃおう。
「さ、どうぞ」
「いただきます……、おいしい」
パラパラじゃなくてしっとり系のチャーハンはたいして入ってなかった冷蔵庫のあまりもので作ったとは思えないクオリティ。卵スープもすごいおいしい……。
食べる手を止めることなくもくもくと食べ進めて食べ終わったころにふと顔を上げれば、ニヤニヤとした顔で私を見てるレヴィと目が合った。
「夢中で食べれくれてありがとう、そんなにおいしかった?」
「……おいしかった」
なんだか気恥ずかしくなってそっぽを向きながら答えちゃったけどレヴィはニヤニヤしたまま空になった食器をシンクにもっていってカチャカチャと洗ってる。
疲労感で落ちるように寝ている毎日と違って、体をほぐされてお腹も膨れて気持ちのいいまま眠気がきてる。
このまま寝てしまえば爽快な寝起きを迎えられそうな予感すらするけど、どこかこのまま寝てしまうのはもったいないと思ってしまっている所もある。
んー、アンケートに答えた結果レヴィはうちに来てるわけだけど対価とかはどうなってるんだろ? サキュバスとかだし精気とかかな。それ以外が対価だった場合寝ちゃうのはまずいし。
「ん、洗い物終了。そろそろ寝る?」
「代金とかは?」
「ああそれね。えーとね、ほら」
ソファでうとうとしていたら洗い物を終えたレヴィが戻ってきたから代金とかの話を聞いてみると、スマホを取り出してアンケート画面の下のほうにスクロールしていって見せてきた画面には、
「えっと……永久分割払い???」
「うん、一回契約したら精気を分割で払ってもらう感じ」
「永久っていうのは?」
「文字通り保険とかでよくある終身支払い」
おー、予想外も予想外な支払い内容。永久支払いかー……。
「それとこれが契約の指輪ね。呼ぶときはこれつかったら大丈夫だから」
「またレヴィがくるの?」
「来たりこなかったりかなあ。手空きの子が来る感じだから」
「そっか」
「ずっと私の方がよかった?」
「なっちがッ」
「暇なときはなるべく来るから我慢してね」
からかうようなセリフを吐いたレヴィは私を軽々と抱き上げると寝室のベッドまで運ぶと、
「おやすみ、次は一緒に気持ちよくなろうね」
寝かしつけるように耳元でささやかれて言い返す間もなく夢に落ちた。
*** *** ***
「……朝」
疲労感が残って気だるくて動きたくない、なんてことはなく快活ですっきりとした目覚め。とりあえず制服に着替えようと寝間着を脱いで衣装ラックを見れば、昨日レヴィが不思議パワーで消し去ったスーツがクリーニングから帰ってきたかのように綺麗になってかかってた。スーツに着替えて化粧台の前に座ってメイクをすればいつも以上にメイクのノリがいい。
メイクもばっちり決まって朝食の用意をしようと冷蔵庫を開けたらチンして食べてと書かれた紙が貼られた皿が入ってた。多すぎず少なすぎず、朝食べる分にはちょうどいい量。
チャーハンに続いてレヴィの作ったおいしい朝食を堪能して出勤時間が迫ってきたので荷物を手に家を出る。
鍵をかける右手には昨日もらった指輪。
呼べば手空きの子が来るとはいってたけど、もしレヴィがきたら今度は一緒に。