新子憧にとって春風陽葵は幼馴染であり、初恋の人だ。
同性だからと秘めた想いを抱いてきたが、一度として表には出さなかった。
だが、夢で陽葵が遠くに行ってしまうのを見てしまい、憧は暴走してしまう。
「ごめん……あたし、もう我慢出来ない」
普段は勝ち気ながらも優しげな色を宿している瞳が興奮と緊張、後ろめたさが混じって揺れているのを直視する。
親友の部屋に遊びに来ていたのに、気がついたらベッドに押し倒されていた。ふわりといつも隣で香っている柑橘系の匂いが鼻を掠める。ピンチだというのに、何故か変な事ばかりに意識が向かってしまう。
私の上に覆い被さっているのは親友の新子憧。幼稚園の頃からの仲であり、小中高と進学しても縁は変わらなかった。
同い年ながらに一番に彼女はお洒落をするようになったのを今でも覚えている。周りはまだ異性を気にもしない年齢で囲まれていたと言うのに、憧だけがお洒落を始め、周りが感化されるように色気づいた。かく言う私もその一人で、専ら憧の玩具にされる形でお洒落を覚えた。
左右に髪を留め、ツーサイドアップにしている髪は手入れは欠かさず、枝毛の一つもない憧。彼女はこうなる前からスリスリとマーキングをする猫や犬のように私に頭を擦り付けてくる事が多かった。おかげで人の頭を撫でる腕はなかなかなモノになったと思う。
「えっと……憧?」
いつまでも現実逃避をしているのではなく、取り敢えず声を掛ける。
ふーっ、ふーっと発情期の動物のように呼吸をし、ギラギラとしてきた瞳に私が困惑した表情で映り込んでいる。
「ごめん、ひな。あたし、あんたと親友って関係じゃあ満足出来ないの。おかしいのは自覚してる。だってあたしたち、女の子だもんね。だから、ごめん」
そう、憧も私と同性である女の子なのだ。
春風
それが私の親から付けて貰った名前だ。幼稚園の頃は周りの友人たちもひなと愛称で呼んでいたが、今では憧だけがその名で呼んでくれる。
憧と同じように私は髪の毛を伸ばしており、毎日の手入れが大変だ。本当はバッサリと切り、短くしたいのだが、他ならぬ親友の憧によって止められている。
憧と比較すれば私の方が発育しており、この年の女の子にしては胸は大きい部類だろう。歩く度に揺れたり、異性の視線を集めたりと好ましい要素は一切ないが。
「いや、どうしてこんな事を?」
「今日の夢でひなが何処か遠くに行っちゃう夢を見たの。それが怖くて、嫌でこうして自分のモノにしようとしてるの。お願いだから、嫌わないで。あんたに嫌われたら私、生きてけないから」
「……」
想像以上に憧が私に向けていた想いが重い。
何をするにしても一緒で、彼女と居ると私も笑顔でいれた。こんな目にあっても尚、私は憧を嫌うことは出来ない。
もはや彼女は親友の枠を越え、我が半身に近いのだ。ただ、憧と私たちの意識の違いは其処だけだ。
掛け替えのない親友と思っている私と、同性で向けてはいけない想いを抱いてしまった憧。
「んんっ♡ ぅん……んっ……っはぁ……キス……されちゃった」
「あはは……ひなの唇、柔らかい。一回じゃ満足できない。もっと……んっ♡」
いきなり唇を奪われ、そのまま何度も啄まれる。
知識として知っている大人のキスまでは発展しないが、押し当てるだけの優しいモノから、段々と卑猥な方向へと変化していく。ちゅっ♡ ちゅっ♡ と聞いた事のないリップ音が鳴り、少し恥ずかしい。
憧は私の唇を柔らかいと評したが、私からすれば憧の方が柔らかい。ぷにぷにと弾力があり、同性の親友とのキスの認識だというのに嵌まってしまいそうだ。
「れろ……れろれろっ……んっ♡ ちゅっ……ちゅっ♡ んっ♡……はぁ……♡」
遂には大人のキスもしてしまい、彼女の瞳に映る私は情けない顔をしてしまっている。
元気で活発な憧とは違い、私はどちらかと言えばインドア派な人間だ。異性であれば間違いなく力の差で負けると考えるまでもないのだが、同性の憧にすら負けると流石に心に来るものがある。
脳まで響く水音が恥ずかしく、イヤイヤと駄々を捏ねる子供このように頭を振って憧から逃れようとするも、直ぐに捕らえられる。
憧が唇を離した時には、私たちの間に唾液で出来た透明な橋が掛かっていた。
「はぁ……はぁ……ひな、気持ち良かった? ……って聞くまでもないわね。すっごくエッチな顔をしてるもの」
「やぁ……見ないで♡ 恥ずかしいよぉ……♡」
自分の口から出る言葉は甘く、初めて耳にするような声色だ。脳だけでなく、身体までもがキスで蕩け、抵抗の意思すら無くしてしまいそうになる。
「ひな、好き。あたし、ひなが好きなの」
蕩けている私の耳に届く憧の告白。キスでの興奮と、告白という緊張感で憧の顔は林檎のように真っ赤に染まっている。
初めて目にする憧の表情に、私の頭の中は真っ白になり、ボーッと惚けたように見つめてしまう。
「こんなのいけない感情だってのは分かってるの。でも、無理なのよ。ひなと離れるなんてあたしには無理。夢で見ただけでこんな気持ちになっちゃうんだから……」
憧の悲鳴にも似た告白はすんなりと私の心へと届いていく。
同性へ恋をするという禁忌。種としての役割である、繁栄を果たせず、ただただ堕落するだけの生産性のない気持ち。
私が否定をすれば憧は消えてしまいそうなほど儚く見える。いつもはあんなにも存在感がある憧だけに不思議な光景だ。
無言のままいる私に憧は何を思うのだろうか。拒絶されたとかだろうか。
私は憧をどう思っているのだろうか。少なくとも親友としては想っているのは間違いない。少し暗い部分がある私の手を引き、明るい方へ連れて行ってくれる憧。喜怒哀楽が激しく、見ているとそれだけで楽しい。
「憧……後悔はしないの?」
「告白しない方があたしには後悔よ。諦めたらそれこそ消えてしまうもの……。キスまでしちゃっといてアレだけど、少し冷静になれた。嫌ならハッキリと言って。もう……顔を出さないから」
「……」
それっきり憧は黙り込んでしまう。返答への猶予は無く、この場で返答せねばいけない。
「私にとって憧は太陽なんだ。いつも明るく、私を楽しい所へ連れて行ってくれる太陽。人間は太陽がなければ生きていけない。私も憧がいなくなったら、生きられない。だから……その……憧のようにまだ恋かまでは分からないけど、前向きな方向って返事じゃあダメかな」
「……ううん。その言葉だけでも、すっごく嬉しい!! 絶対に嫌われると思ってた。こんな気持ちをぶつけられたら嫌われるだろうって……でも、良かったぁ……」
私の返事に本当に心から安堵したのか、私の頬に熱い雫がポタポタと憧から降ってくる。
元気でいつも笑顔な憧には涙は相応しくないと思い、指を伸ばし涙を拭う。
そんな私の動作に嬉しく思ったのか、もう片方の手を取ると頬に当て、そのままスリスリとされる。
この日、歪ながらも私と憧は恋人に違い関係になった。
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憧から告白を受けてから数日が経った。その間に私が分かったのは、憧は結構嫉妬深いということだ。
私と憧の通う阿知賀女子学院はその名前の通り、女子校だ。生徒だけでなく、務める教師の大部分も女性であり僅かにいる男性教師はそうとう肩身の狭い思いをしているだろう。
たまたま男性教師を手伝い、その場を憧に目撃されていた。手伝いを終え、教室へと帰ろうとした私を
一度として憧は言葉を発さず、問い詰めるような真似はしなかった。ただ代わりに次の授業を休み、その間中ずっとキスされていた。唇がふやけ、口元をベタベタに唾液で汚し、トロトロに蕩けてしまった私を見て、憧が妖しく笑っていたのが強く記憶に残っている。
「ねぇ、ひな。今日の夜、お邪魔していいかな」
私の両親は共働きだ。研究者だからか、研究所に泊まる事も少なくなく、昔は憧の家にお世話になっていた。
お世話になりっぱなしは嫌だと思い、自分の女子力を磨くのも兼ねて家事や炊事洗濯を勉強し、今では結構な腕を持っていると自負している。
そして今日、うちに誰もいない事を知った憧は不安が半分、期待が半分と言った表情で私に声を掛けてきた。声は少し震えており、彼女が私に何を望んでいるかなんて一目で分かってしまった。
「……いいよ。私も……憧となら……」
恥ずかしくて声が小さくなる。それでも聞き取れたのか憧は嬉しそうに何度も頷いていた。
今日のお風呂は念入りに身体を洗わないと。なんて私は考えながら、弁当をパクついた。
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「ひな……とても綺麗……♡」
憧の手によって裸に剥かれた私は、使い慣れたベッドの上で仰向けになっている。
普段はブラによって締め付けられ、自由になれない乳房も呼吸の度に揺れている。
「ひなの身体、柔らかいね」
憧の手が大事な所には触れず、腹部や腕といった部分に触れる。それだけで私の身体は嬉しくなり、つい甘い吐息が漏れてしまう。
ただの親友ではなく、隣を歩く相手として憧を見るようにして来たせいか、今では憧が傍にいるだけで胸がドキドキと高鳴り、嬉しくなる。
これが恋なのだろうか。
あまり物欲はなく、物に固執しない私はまだ、彼女に対して嫉妬を覚えた事がない。憧からは何度も嫉妬を覚えたと情熱的なキスをされたが、私からはまだしたことがない。
「ねぇ、ひな。本当に、あたしとしてもいいの?」
「……うん。憧なら良い……ううん、憧だから良いの」
紛れもなくこれは私の本心だ。
貞操観念は普通な私だが、幼い頃から時を共にしてきた憧であればハジメテを一緒に経験したいと思える。
物欲だけでなく、三大欲求の一つである性欲すらも薄い私だが、たまに自慰だってするのだ。男の子の股間を見た事もなければ、上半身すら見た事がない。中学は共学だったが、常に憧と一緒にいたからだろうか。
なので、私が自慰の時に妄想するのは何故か想像上の異性なのだが、股間にあるべきモノがない。棒とは聞いた事があるが、鉄パイプみたいなものではないだろう。
「あむっ……んっ……ちゅっ♡ はむっ……ちゅっ……んっ……」
「あっ♡ 憧が私のおっぱいに……んんっ♡ 何かビリビリってするっ♡」
やわやわと乳房を揉まれ、先端の蕾を吸われる。
赤子が母親から母乳を吸う時のような優しい吸い方。私を気遣った吸い方に嬉しくなってしまう。
指で触れることはあっても、粘膜で弄られるのは初めてで、優しい触り方でも喘いでしまう。はしたないと思いつつも、声が止まってくれない。
熱い憧の口の中に乳輪ごと乳首が吸われ、そのまま舌で舐られる。乳房が大きいからか、相応に乳輪も大きく、私のコンプレックスではないが、ちょっとなと思うポイントに、憧の舌が乳輪のラインに沿うように這っている。
ヌメヌメと唾液をたっぷりと付けた舌によって乳輪がコーティングされ、彼女が口を離せば憧の唾液によってテカった乳輪とご対面するだろう。
まだ本丸である乳首に舌がやってくることはなく、ムズムズとしたもどかしさばかりが募る。私から触ってとお強請りするのを待っているのか、吸いながらも上目遣いで憧の瞳は私を見つめている。
「ちゅぅぅぅ……ん、れろ……れぇぇぇ……ちゅぅぅぅぅ♡」
「んっ♡ くっ♡ はぁ♡……うぅ……憧、意地悪しないで触ってよ」
「ちゅぅぅぅぅ……っはぁ♡ ひなはドコを触って欲しいの?♡ 教えてくれないと分からないわよ♡」
いつも私を揶揄う時のような小悪魔のような顔で私を覗き込む。
乳房は解放されたが、代わりに指が唾液で濡れた乳輪をなぞり、変わらず私の性感ともどかしさが溜まっていく。触られてもいないのに乳首は痛いほどに勃起し、私でも初めて目にするぐらいだ。
「……う、うぅ……乳首、乳首を触って欲しいのっ♡ 憧、私の乳首触ってよぉ♡」
自分でも分かるぐらいに媚びた声。
快楽で蕩けさせられた雌が出す声が私の口から飛び出した。その言葉を聞いた憧は興奮で少し鼻息を荒くしながらも、動かす指は優しく可能な限り私を労ったものだ。
同性だからか、どれぐらいの力を込めて触れば良いのか熟知しており、初めてだというのに今の私は淫らにも乱れているだろう。
「あ――――っ♡♡♡」
乳首に指が触れた瞬間、今までよりも一つ高い声が漏れた。
ビリッとした電流が全身に走り、雷に打たれたかのようにジンジンと響く。その熱は股間へと集まっていき、自慰をあまりしないからか、口を閉じている秘所からコプリと透明な体液を吐き出させた。
お漏らしをした時のような不快感と同時に、憧にもっと触れて欲しいという欲求が湧き上がってくる。抑えようと歯を食いしばるが、憧の愛撫によって甲高い声を出しながら、私ははしたなくおねだりをする。
「憧、もっと、もっと触ってぇ♡ 憧の指が良いのっ♡ 気持ち良くて、ビリビリってするのっ♡」
自分でも何を口にしているのか分からない。脊髄反射で喋っているかのようだ。
ふわふわと身体が飛んでいきそうになり、私の上に覆い被さっている憧の身体にしがみつく。下半身に熱が集まり過ぎて、壊れてしまいそうだ。
「憧、怖い、怖いよぉ♡ ビリビリってして、ふわふわってしてるのっ♡ いや、もうヤダ♡ やめて……イく、イくイくイく……イっちゃう……~~~っっっ♡♡♡」
私が何度も止めるように懇願しても憧の愛撫は止まらず、乳首を根元から牛の搾乳のように触られ、溜まった熱が爆発したかのように身体がベッドの上で跳ねる。
バチバチバチーっと頭の中で何度も激しく火花が散っていく。必死になってしがみついていた全身から力が抜け、ブリッジのようにしならせた身体がぽふんとベッドに落ちる。背中から感じるベッドのスプリングが、私がまだこの世にいる事を教えてくれる。
目の前が真っ白になり、虚ろに世界を見つめ、唯一憧だけが瞳に映る。
私の絶頂を見て興奮し、恋人のようでまだ明言していない関係の私を絶頂させたという嬉しさが滲み出た表情。
初めて目にする憧の表情に胸がまた高鳴った気がした。
憧ちゃん、申し訳ない。
書くネタが無いと困っていたら、ならガールズラブを書けばよいとなって書きました。相手を誰にするかと困っていた所、百合で有名な咲-saki-を使うしかないなと。
のどっちでも良かったけど、私は憧ちゃんが一番好きなので選ばれました。申し訳ない。
そしてしずよ、もっと申し訳ない。キャラどころか存在が消えましたね。憧ちゃんと接点を持たせるには幼馴染枠が一番楽なんですよね。阿知賀に来たのも幼馴染が集まってるし、夢を叶える為だった筈だし。原作手放しちゃってるんですよねぇ……。
初めてのガールズラブものなので、よければ感想をくださると嬉しいです。
多分、続かない。