オリュンポスの双子、アデーレとマカリオスの近親相姦えっち小説になります。
勢いで搔いたものですので設定の齟齬など一部あるかもしれませんがご了承ください。
――――その日、天が吠えた
天球に瞬く星々は突如として動き出し、見えざる手によって引かれた線に導かれるように夜空に巨大な陣を描き出した。
そしてそこから降り注いだ光は主神の御座であるオリュンピア=ドドーナを貫いたのである。
空より落ち来る流星はまさしく天を裂くような轟音をオリュンポス中に響かせた。
それはオリュンポスに住む人々にとってはまさに青天の霹靂だったと言えるだろう。
一万数千年に渡って実在する神々が人を統べる星間都市山脈、十二神の恩寵も深きこのオリュンポスにあってそのような天変地異などは起こりえないのだから。
……それこそ、大神の怒りでもない限り。
十二神が二つの陣営に分かれ、壮絶な争いを繰り広げた
当時の事を思い出した人々は各街の分神殿に駆け込み、神々への祈りを捧げた。
その御心が安らかでありますようにと、そのお怒りを鎮め給えるようにと。
ただ、実のところ全ての人々がそうした事態にあって神殿へと駆けこんだわけではない。
空を仰ぎ見ながら直接路上で祈る人もいたし、或いは自室で拝む者もいた。
それでも多くに共通するのは皆、何らかの形で神へと祈りを捧げていたことである。
しかし。
しかしながら。
何事にも『例外』というものはつきものだった。
******
――――星間都市山脈オリュンポス
――――星間都市東部、地下
――――地下機構帯、
オリュンポスには一般の人々が立ち入ることのない、場合によっては知る人も少ない地下機構帯というものが存在する。
戦争の折、全ての権能をゼウスがバックアップとして接収する前に形勢不利を悟ったハデスは自ら機能を停止させた。
故にこの地下機構帯は今でも大神の監視の目と耳が届かない暗黒の世界とされているのである。
ごく普通の人々にとっては凡そ関わりのない話だろう。
それは大神に見放された領域。ゼウスに
主の恩寵の届かない暗がりなど、想像するだに恐ろしい。
しかし、それでも。
この暗闇こそが必要なものたちもごくわずかながら存在するのだ。
地下機構帯に幾つか存在する移動型基地。
主であるハデス神も絶えて久しい地下だが――――今、此処に二人の人影があった。
「……静かね」
「
「そうね……」
「……」
年齢を外観から推測するのであれば十代半ばか後半頃に見える。……オリュンポスの人間に実の年齢を尋ねるのは意味がないので、あくまで見た目はそう見えるということだが。
亜麻色の髪と燐光めいた黄緑色の瞳。それが二人に共通しているとなれば血のつながりがあることがわかるだろう。
二人は双子の姉弟。名をアデーレとマカリオスと言った。
彼らは元々星間都市東部に暮らしていたが、今日オリュンポスを襲った天変地異に際してこの地下機構帯に逃げ込んできたのである。
彼らは神に祈る、という選択肢を取ろうとは思わなかった。
代わりに神の目の届かぬ地下に降りてきた、
何を隠そう、二人はこの都市山脈を支配し続ける神に逆らうことを決めた人間なのだから。
故にこそ窮地に会って彼らは他の人間のように主神の慈悲を請い願うというような真似はできなかった。
……しかしながら神に逆らうことを決めた者達も今やこの二人だけだ。
破神同盟。かつてそう名乗った人々は既に粛清の憂き目にあっている。
それも当然の事だっただろう。
オリュンポスは永遠の都だ。
病に苦しむことなく、傷に倦むことなく。
死に怯えることなく、故に別れを惜しむこともない。
――――完成された、理想の世界なのだから。
これを壊そうとするものは石を投げられて当然なのかもしれない。
だが、
それでも。
(俺は姉さんと明日が見たい)
マカリオスは隣に座る姉の肩をそっと抱き寄せていた。
細く華奢な体。ずっと隣で支え続けてきた小さな肩。
……一万年変わらない。成長の止まった少女の体。
オリュンポスは人間の生老病死を克服したが、それ故に変化というものがない。
昨日と変わらない今日。今日と変わらない明日。繰り返される永遠の今日。
それは神が人に与えた安寧の揺り篭であったが、見ようによっては監獄も同然だった。
無間の停滞を強いられる逃げ場のない檻。一度その閉塞感に気付いてしまった以上、それからの平穏の日々は発狂しそうなほどの退屈に満ち満ちていた。
故に例え全ての人々と神々を敵に回すことになったとしても――――アデーレとマカリオスは『明日』に対する飢餓のような希望を捨てることができないのである。
「姉さん……震えてる?」
「そう、かしら?夜だもの……少し冷えてるのかしら」
「隠さなくていいよ……。怖いんだろ」
「……」
マカリオスは自分が触れている姉の肩が少し震えているのを感じた。
それはアデーレ自身が言うように寒さからきているものではないだろう。オリュンポス人の体は早々寒さにやられることもない。
だから彼女が震えているのは
……無理もないだろう。
先ほど都市山脈に降り注いだ流星群、その轟音は大神ゼウスが振るう
かつてあれほどの激しさをもって主神の稲妻が走ったのは第四の
二人の両親が亡くなったのも、その戦の折だった。
「わかるよ、俺も」
「そうね。マカリオスの胸、すごくドキドキしてるみたい」
「あぁ……」
もう長く連れ添った双子だ。寄り添えば隠し事はできない。
マカリオスは自分もまた姉と同じように恐れを抱いているのを正直に告白した。
今もまた、胸の奥で心臓が重苦しく脈を打っている。鼓動の響きがうるさくて、肋骨が痛むほどだ。
「……マカリオス」
「姉さん……」
双子はどちらからともなく、一層密に身を寄せ合った。
彼らは他のオリュンポスの市民とは違う。既に神に背くことを決めた二人には、もう祈るべき神はいないのだから。
……だから、互いにより強く寄り添った。今や互いだけが、お互いにとっての救いになるしかないのだから。
「ん……」
アデーレがマカリオスの胸元に顔を寄せる。
弟は何を言うことも無く姉を受け入れて、優しく抱きとめた。
無人、無音の地下に幽かな衣擦れの音だけがする。
その静けさは二人の心臓の音さえも浮き彫りにするかのようだった。
(姉さん……)
仄暗い照明の下でも、マカリオスには姉の姿がはっきりとわかる。
健常な肉体を維持し続ける特性だとか、密着しているからだとか、そういう理屈のような物ではなくて……姉弟として。
一万年を超える歳月を共に過ごしてきた双子の姉。自身の片割れ、半身とも言うべき存在をこうして腕に抱くとき、彼はいつも不思議な感慨に囚われる。
まるでパズルのピースが
こうやってお互いに重なり合うのが本来のあるべき姿であるような。
「……」
彼は無言で姉の手を握った。
胸に顔を寄せるアデーレは何も言わず、全てわかっていると言わんばかりに握り返してきた。
指と指を絡ませ合って、ぎゅっ、と握り合う。
大きくて骨ばった少年の手と、小さくてすらりとした少女の掌と指は対照的な
掌で分け合う互いの体温、その感触が酷く心地よい。
胸に疼くように蟠る恐怖と緊張が解けていくようだった。
「姉さん……」
「マカリオス……」
弟の手が姉の髪を
するり、と指の中を通る滑らかな手触りは細やかな砂を思わせる。
長く美しい、亜麻色の髪。アデーレが歩き、動くたびに翻るそれを目の端で追うのはマカリオスのささやかな楽しみだった。
一万年の月日を経ても、それだけはいつも色褪せることのない彼の喜びだった。
姉の頭と髪を撫でながら、すぅ、と息を吸い込めば芳しい香りが彼の肺腑を満たす。
花畑の中にいるような甘く、優しく、胸が安らぐ――――それでいて、心が逸るような。
その鼓動の痛みが何処か重苦しいものではなく、疼くようなこそばゆさに変わっていくのがわかる。
「マカリオス」
アデーレの声が彼の耳を擽った。
吐息の中で消え入りそうな、さざめきのような小さな声。
それでいて耳朶に触れる息はそれとわかるほどに熱く湿っている。
腕の中の姉を見下ろしたマカリオスは、彼女の眼が自分を見上げているのに気付く。
自身と揃いの燐のような瞳、長い睫毛に飾られた瞼が切なげに震えていた。言い出せない言葉をそれでも訴えるように。
言葉の代わりに彼女の指先が自身の頬に触れるのを感じる。
姉の指先はどこか
……これはアデーレの指が冷えているのではない。
――マカリオス自身の頬が、熱いのだ。
「姉さん」
意識すればじとり、とした暑さを感じた。
皮膚に露が下りるように湿り気を帯びるのを感じる。
内からの体温が汗ばむような熱になって――――それでも双子は互いに離れるような気持にはなれなかった。
むしろ、濡れた肌を触れ合わせるように一層お互いの身を寄せ合った。
さながら互いの肌を溶け合わせるように。
「ぁ……」
微かに漏れ出るアデーレの吐息は、たなびく湯気のように熱く濡れていた。
大粒の星のような瞳が「もっと触れ合いたい」と訴えている。
すっと通った
そして唇は庭園に咲く花のよう。
瑞々しい桃色に、朝露のような艶。
吐息に混じる甘い香りは蜜を思わせる。
「っ……」
マカリオスはいつの間にかそれに自らの唇を押し当てていた。
キスをしたいだとか、そういった衝動とはまた違った口付けだった。
そこにあるものにもっと触れたい、自身の片割れであるところのものともっと一つになりたい――――そんな思いが先走った結果、唇で触れるに至っただけの事。
「ん……」
ちゅ、と唇が触れあって離れた音が無音の部屋にいやに大きく響く。
ほんのわずかに吸い付かれて赤みを増したアデーレの唇はまた一層の艶を増して見えた。
白い肌の上に浮かぶ一輪の赤い花のようだ。
そしてその花が綻ぶように形を変えて、「もっと」と音もなく訴えた。
「んっ、ん……っ♡」
それから双子はどちらからともなく唇を重ね合った。
口先が触れ合う音は小鳥が囀るように可愛らしいモノでありながら、何処か艶めかしい。
水が跳ねるような音が時折混じり合うのは、互いの口の端から漏れ出た唾液の音だろうか。
まるで雛鳥が貪欲に餌を貪り合うように、姉弟は互いの唇と口元に何度も何度も熱く口先を添え合った。
――――二人がこうやって情を交わし合うのはこれが初めての事ではない。
一万年の長い人生。健康な若い少年少女の体でそれだけの年月を男女が過ごしてしまった以上、
……だが、今までに行為に及んだことの全てが
例えば今日のように、いつかの辛く悲しい記憶を思い出してしまった時。
或いは今日のように、祈るべき神も無く地下の暗がりへと逃げ込んだ時。
お互いの姿が、声が、感触が、香りが、熱が――――お互いにとっての救いになってきたのは紛れもない事実なのだから。
「姉さん……っ」
「……マカリオス……」
姉弟はただ互いの事を呼び合いながら、抱き合い、触れ合い、身を重ね合った。
唇の先で唇に触れ、指と指を絡めて深く握り合って、肌と肌とを一ミリでも多くと。
お互いの体に纏った衣服。布一枚の断絶が煩わしくて、まるで剥ぎ取るように互いの服を脱がせ合う。
少し汗ばんだ二人の服が脇に放り出される。どうせ元からベッドルームなのだ。構うことは無い。
一糸纏わぬ姿になったアデーレを見て、マカリオスは改めて見惚れた。
亜麻色の長い髪は暗がりの中にあって際立って甘く香ばしく、染み一つなく白く滑らかな肌は微かに赤らんで艶めかしい。
ほんのりとそれでいて確かに膨らむ瑞々しい乳房と、美しい曲線を描き出すくびれと腰骨のライン。
少女の青さと女性の艶やかさの境目。花咲き始めた美しさ――――その状態で留め置かれた、停滞の証。
「姉さん、綺麗だ。……女神アフロディーテよりも」
「もう、マカリオスったら……。言いすぎよ……」
「良いんだ、本当の事だから。オレにとっては神なんかよりずっと……姉さんの方がずっと価値があるんだ……」
マカリオスは本心からそう言い切った。
きっと今この瞬間、美と愛の女神を視界に入れても同じことを言えるだろう。
姉がこれから先、花開く可能性を奪った者達を湛える言葉に持ち合わせは無かった。
(……でも、こうやって一晩。こうやって抱くときは……)
――――こうやって抱くときは、姉もまた一人の『女』だった。
艶めかしく喘ぐ姿は、想像するしかない大人になった最愛の人の姿を幻視させてくれる。
その事がマカリオスにとっては一時の救いだった。
「あっ……♡ マカリ、オス……っ」
痛いほどに強く抱きしめられ、ベッドの上に押し倒され、アデーレは艶のある声を上げた。
……弟がそう思っているように、彼女もまた自分を抱く彼の姿に在り得ざる明日を見ていた。
いつもは何処か幼さを感じさせる大きな黄緑の瞳にぎらつく火のような熱さを感じる。
汗ばんだ肌と確かに触れられる筋肉と、自分を抱きしめる腕の逞しさ。
いつもずっと、片時も離れないで傍にいる弟が――――紛れもない『男』なのだと改めて解るひと時。
「きて……♡」
アデーレは自分の声が酷く濡れているのを感じた。吐息が熱く、甘い。
マカリオスの顔を見ていると胸の奥が焦げるように熱くて切なかった。
もうほんの少しでも互いの体が離れていることに耐えられない。
肌が唇が、心が魂が、自分の半身を求めて寂寥感に泣いている。
マカリオスは無言のままに姉の上に覆いかぶさった。
汗に濡れた肌と肌が吸い付くように絡み合う。
ぎゅぅっ、と抱きしめ合って重なり合うだけの事がどんな愛撫よりも心地よい。
目を閉じたまま、ひたすらにお互いの体を抱き合いながらまさぐり合う。
アデーレの体は細く柔らかく花のようで、マカリオスの体は細く逞しく樹のようだった。
自分の体にない特徴を、異性の体の証を確かめ合うように二人は手と指と唇で触れ合う。
それは遠く母の胎に置き去りにしてきたものを求めるような睦み合いだった。
生まれたままの姿、否、生まれる前の姿。何よりも分かち難かったはずの命が二つの体に生まれたことを悼むような。
「――――っ、あっ……姉さん……っ」
「んく……っ♡♡」
その挿入は恐ろしく滑らかなものだった。
子犬が巣穴に潜り込むようにするり、とそこに挿入り込むのが当然であるかのような自然さだった。
痛みもなく違和感もなく、ただ抱き合うことの延長戦にあった当然のことのようにマカリオスの雄はアデーレの中に呑まれていた。
既にしっとりと濡れて湿っていたそこは欠けた自分の半身を歓迎するようだった。
そうあることが定められていたかのようにぴたり、と弟の剛直は姉の秘部に納められる。
――――深く深く、繋がり合う。一つになる。
この上ない一体感の前では、血を分けた双子であるという禁忌さえも何処か遠い。
今この場、この瞬間にあってはただ二人が一つになっているという事実だけが全てだった。
「ふ、うっ、ぁ……っ」
「はぁ、ぁ……ぁっ♡」
二人は同時に熱い息を吐いた。
繋がり合ったお互いの秘部、そこから伝わり合う熱と――――確かに湧き出す快感を味わうように。
熱湯に使っているような気分だった。触れる部分から伝わるものがじわじわと、皮膚と粘膜の下へと滲むように染み込んでくる。
アデーレの
ぬるり、と纏わりつくような粘液と粘膜の重なりと連なり。
無数の舌が巻き付き、纏わりついて締め付けてくるような、そんな脳ではうまく処理しきれない感覚。
雄の性欲を否応なく昂らせる激しい快感――――そうであるはずなのに、同時に胸の奥からつかえが取れるような心安らぐような心地よさ。
その喜びに後押しされるように、マカリオスは姉の体を強く抱きしめた。
男である自身にすれば折れてしまうのではないかと一瞬不安になるほどの華奢で小さな体。
だが、抱きしめ返してくる姉の体はそのような考えは杞憂に過ぎないと改めて思わせてくれる。
甘い香りのする首筋に顔を埋め、唇で何度も触れれば自身が入り込んでいる
その感触がじぃん、と腰の奥が痺れるほどに快かった。
「っ、はぁっ♡ ぁっ……マカリオス……っ♡♡」
アデーレは弟の剛直が自分の中でぐっと大きく硬くなっていくのを感じていた。
自分の指よりもずっと長く太い、男の性の象徴。それが自分自身のお腹の中に
今もこうして中でその逞しさを増しているというのに痛みの一つも感じない。
こうやって彼と一つになるたびに彼女は自身の肉体の神秘に思いを馳せずにはいられなかった。
驚きもあるが、同時に納得もある。
自分たちはこうして重なり合うのが正しい在り方なのだという奇妙な確信。
そうでなければ、こうも自然な形で交わることなどできはしないだろう。
そうでなければ、こんなにも力強いモノに体を割開かれて――――心地よく感じるはずもないだろう。
「あっ――――♡♡」
くちゅり、とお腹の奥の方から響く、粘っこい音が聞こえた。
微かな身じろぎをしただけで体の芯から解きほぐされるような感触がする。
思わずアデーレは喉を反らして、切なく甲高い声を上げた。
木漏れ日の森に伸びやかな囀りを響かせる鳥のような声だった。
下腹の奥から、熟した果実を開いたときのような蜜が溢れ出てくる。
股座が濡れている。濡れている部分が弟の肉幹と擦れ合う、にゅるにゅるとした感触がどうしようもなく心地よい。
「姉、さん……っ」
マカリオスは眉根に皺を寄せた。苦しみからではなく官能に。
ともすれば吐精してしまいそうになるのを、強く意識を保って堪えた。
ぐぐっ、と陰嚢が持ち上がり、竿が膨張するのが自分でもわかる。
それでもそのままに精を放ってしまわないのは、もう少しでも、ほんの少しでも長くこの交わりの時間を長く続けたいからだ。姉の中に入ったままでいたいからだ。
彼は快感に打ち震える性器だけでなくそれ以外の所にも意識を向けた。
目の前に横たわり自分を受け止め、或いは自分を求める半身の存在をもっと確かめたかった。
潤んだ目と目を合わせ、
花蜜よりも芳しい香りを吸い込み、
唇と舌で互いの味を確かめ、
囁くような声で互いの名を呼び合い、
肌と肌とを重ね合わせて体温を分け合った。
「姉さん」
「マカリオス」
姉弟は指を絡ませ合うように握り合い、ただただ相手の事を呼び合った。
無駄な言葉はない、余計な言葉はいらない。それだけで伝わるものがある。
――――どれだけ相手の事を思っているのか。どれだけ相手を大切にしているのか。
――――どれだけ相手の事を愛しているのか。どれだけ相手を求めてやまないのか。
それは肉欲よりも、性欲よりも、情欲よりも、ずっと根源的な欲望だったのかもしれない。
ただ一人でいることが耐えられない。ただ相手に触れたい、一つになりたいという……飢餓感にも似た、血を分けた半身へ向ける願いにも似た気持ち。
静寂に支配された、神の目も届かぬ――――神に見放された地下の暗がりで、姉と弟が肌を重ね合う秘めやかな音が響いている。
互いの体液を混ぜ合い、塗り合い、絡ませ合うぬちゅり、くちゅり、と粘ついた水音。
はぁ、はぁ、とどちらのモノとも知れぬ動物のような荒い息と名前を呼び合う、掠れたような囁き声。
マカリオスは亀頭の先端を姉の最奥にぴたりと押し当てたまま、ゆっくりとそこを捏ねるように腰を動かし続けていた。
例え己の肉棒を扱くためとはいえ、腰を引いて姉の体から離れるその一瞬が耐え難いと言うように。
そしてそれはアデーレも同じ気持ちだった。ゆらりゆらりと揺り篭のように揺れながら弟の腰遣いを受け止める下半身の律動は、片時もブレることは無かった。
激しく肉と粘膜を擦り合わせる快楽よりも――――溶け合うように一つになるこの一体感をずっとずっと味わっていたかった。
「……くっ、ぅ……!!」
「ぁ……っ♡♡」
だが、それにもやがて限界は訪れる。
果たしてどれだけの時間、交わり続けていたのか定かではないが、マカリオスは己の情欲が頂点に達したことを理解した。
それは弱い弱い燻火に焙られていた湯がついに決壊した瞬間のような射精だった。
どぶり、と煮詰めに煮詰めた白濁がいよいよもって堰を切る感覚。
一旦始まったからにはあとは止まらなかった。睾丸から前立腺を経て尿道口まで、びゅるるる……っ!と迸る精液は煮凝りのような濃度だった。
体の奥深くから生命力の精髄とも言うべきものを、釣り針で引っ掛けられて引きずり出されるような壮絶な解放感に身を委ねる。
ガクガクと腰が震えて抜けるような気さえした。
「はぁっ、ぁっ……!姉さん……っ!!」
「んふ、っぁ♡♡ マカリオス……、マカリオスっ♡♡」
腰砕けになりそうな射精快楽に耐えるようにマカリオスがきつく姉を抱きしめ、彼女もそれに応えるように抱きしめ返した。
お腹の奥で果てる欲棒、自身の中に注がれる温かな精、腕の中で身を震わせる弟。
その全てがアデーレにとっては愛おしくてたまらなかった。
胸の奥が陽だまりになったような暖かさに満たされて、それでいて切なくなるほどに甘酸っぱくなる。
そしてその感覚のどちらもが例えようもなく今の幸せを彼女の心に刻み付けてくる。
「愛してるわ……マカリオス……♡♡」
「オレも……オレもだ姉さん。愛してる」
荒い息、汗ばんだ肌。
より一層熱気が籠ることなど一顧だにせず、彼らはひしとお互いの体を抱きしめた。
愛してる、愛している、と何度もお互いの気持ちを口に出して、その気持ちを確かめ合う。
――――ここは
――――楽園たるオリュンポスの輝きに背き、大神に弓引くことを決めた者達の最後の砦。
神の祝福なき暗がりで、双子はただただ強くお互いの体を抱きしめた。
それだけが彼等が此処に在る
神無き明日を夢見る、二人の希望だった。
明けて翌日。
星間都市山脈オリュンポスに大神ゼウスよりの言が布告された。
山脈の向こうに一夜にして現れたこの世界の礎となるという巨大な白い柱――――空想樹マゼラン。
そして同じくして現れ、その神をも超える力を見せつけて大神と盟を結ぶに至った一人の人間――――キリシュタリア・ヴォーダイム。
そしていずれこの世界を否定するべく現れるだろう、
その布告の全てを咀嚼するには市民にとってもあまりにも突拍子もない話の数々ではあった。
だが、一部の者たちはいち早くそれがもたらすものの予兆を感じていた。
これよりオリュンポスに動乱の日々が来る。
昨日とは違う今日、今日とは違う明日。
――――その兆しが、やってきた。