ある日の夕刻、訓練場の隅っこのほうで僕は見てしまいました。
同級生の……破廉恥な場面を……。
「イングリット、ちゃ-んと約束は守ってもらうからな」
シルヴァンとイングリットが向かい合って立っていました。今日は殿下や騎士団のみなさんは遠征していたので、僕たちは修道院で留守番中だったのです。訓練場を使う者は誰もいませんでした。
「なによシルヴァン、こんなところへ呼び出して。さてはまた槍の稽古かしら。相手になってあげるわ」
「おっと、とぼけたって無駄だ。『先生が天帝の剣を持ってくるのを忘れるかどうか賭けよう』って約束、忘れたわけじゃないだろう?」
いったい何してるんですか二人で……! それに何ですかその賭けの内容は……。
「はあ……ええ、たしかにしたわシルヴァン。忘れてませんとも。前の戦いで、先生は珍しく天帝の剣を忘れてこられた。だから賭けは私の負け」
「俺が勝ったら……イングリット、お前、何でもするっていったよな」
あの真面目なイングリットが賭け事なんかするはずがないですし、ましてや、そんな約束なんて……。
「したわ、シルヴァン」
イングリットは、しかし堂々といい放ちました。
「素行をあらためる代わりに、殿下に女性を口説く真似事をさせようとしたじゃない。だったら私もあなたに素行を直してほしいと思って、くだらない賭け事に付き合った」
「そして、その賭け事にお前は負けた」
シルヴァンはそういうと、イングリットに詰め寄りました。
「……屈辱だわ。あなたなんかに少しでも何かで負けるとは」
「高潔な騎士を目指してんなら、交わした約束はちゃんと守らないとな、イングリット」
そういうとシルヴァンはおもむろにズボンを下ろし、破裂の槍を差し出しました。
「うっ……ちょっとシルヴァン!? あなた自分が何してるか分かってるの!?」
「わかってるさ。でも、止められねえんだ。お前のこと、ずっと、気にかけてたんだぜ……」
「ふざけるのもいいかげんにしなさいシルヴァン。どうして私があなたのシモの世話までしないといけないの? 幼馴染だからってしていいことと悪いことがあるわ!」
まったく、イングリットのいう通りです。いきなりあんな、たくましいものを差し向けるだなんて……。
「イングリット」
シルヴァンはいいます。
「お前にしか頼めねえことなんだ」
「シルヴァン…………あなた、どうかしてる……」
泣きそうになったイングリットに、シルヴァンがいいました。
「……おととい、沼地の魔獣と戦っただろう」
「……?」
涙で目を赤くしたイングリットに、シルヴァンが語りかけています。
「そんとき、実は毒にやられちまったみたいで……ほら」
僕はそのとき、シルヴァンの破裂の槍の根元が黒く変色しているのに気づきました。イングリットも指の隙間から確認したらしく、
「ど、どうしたの、それ……?」
「いっただろう? 沼で転んだとき、うっかり魔獣の毒に触れちまって。きょうまで我慢してたらこんなことに……」
「ばか! どうしてもっと早く医務室にいかなかったの!? マヌエラ先生、きょうは遠征でいらっしゃらないじゃないの……!」
しかし、あんな箇所にまわった毒は、どう取り除けばいいのでしょうか……。
「単刀直入にいう。イングリット、抜いてくれ」
「えっ……」
「お前じゃないとだめなんだ。さあ早く! さもないと毒が全身に回っちまいそうで……」
「ど、どうすればいいのよ……」
イングリットがいうと、シルヴァンは手を取って破裂の槍を持たせました。
「ここをこう持つ。あとは必死にしごくだけだ」
「しごく……」
「そう、しごく。あんまり強く握んなよ。やさしく握ってゆっくり早くしごくんだ」
「……どうしろっていうのよ……」
僕は、いったい何を見せられているのでしょうか。
しばらくするとシルヴァンの破裂の槍はかなり太くたくましくなり、限界がきたようです。
「で、出るぞ、イングリット……顔、離した方がいいぞ……」
「……?」
何をやらされているのか全然理解していない様子でしたが、イングリットはいわれた通り一所懸命にしごき続け、そして……。
「いっ、いくっ……!」
シルヴァンは腰を震わせると同時に、床に向けて白きものを放ちました。
「なっ……何ですかこれは……!?」
「ふぅ……いっただろ、これが毒、だ。これからも抜いてもらわねえといけないかもな」
「…………ねえ、シルヴァン。いまのこれ、あなた一人でもできたんじゃないかしら」
さすがイングリット。性の知識はまだまだみたいですけど、気づいたようですね。
「えっとそれは……あ、いっけねえ、きょう夕食当番だった! じゃあな、イングリット!」
「あっこら、待ちなさいシルヴァン! ……もう、ここの掃除どうするのよ……」
それからイングリットはシルヴァンが出した白きものを掃除していました。僕は羨ましいと思う反面、イングリットの人一倍の苦労を垣間見た気持ちになりました……。