アネットが攻撃をためらっていたらば防げたかもしれない。

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もし、アネットがごろつきを攻撃し、しかも相手が一人ではなかったとしたら……

「さ、メーチェ。きょうこそは寄り道しないで真面目に買い出しだよー!」

 街に二人で出てきていたアネットとメルセデス。前回はあれも買いたい、これも買いたいで遅くなっていたが、今日こそは手早く買い物したいところだった。

「私はいつも通り、ゆっくりのんびりさせてもらおうかしら~」

 あいかわらずメルセデスはのほほんとしていっている。

「えっ~、ずるいー! じゃああたしもー!」

 アネットがそう叫んだとき、ごろつきがどこからともなく現れた。

「よお、姉ちゃんたち。ずいぶんと楽しそうじゃないか」

「……アン、あなたのお知り合い?」

「そ、そんなわけないじゃない……何の用ですか。あたしたち急いでるので」

「待ちな。その金、俺たち平民から搾り取ったもんだろ? 返せや、なあ!」

 ごろつきがすごむ。アネットはメルセデスに目配せした。

「下がってて、メーチェ。……あたし、あなたより強いと思います。試してみますか。痛いですよ?」

 風系魔法シェイバーを持ってきていたアネットは、いつでも発動できるよう身構えた。

「ほう。やれるもんならやってみろや、姉ちゃん」

「あっ、むこうに騎士様が――」

 メルセデスが言い終わる前に、アネットはごろつきを攻撃した。

「はあっ!」

「ぐぉはあっっ!!??」

 必殺が出て、ごろつきは思いのほか吹き飛んでいく。

「さ、メーチェ。いまのうちに……」

 逃げようとしたアネットだったが、背後から強い衝撃を受け倒れてしまう。

「アン!」

「おいおいおいおい。よくもやってくれたなあ、姉ちゃんたち」

 見ると、そこにはダークメイジを連れた十数人ものごろつきたちの姿が……。

「ひっでえやつだぜまったく。いきなり魔法で俺たちの仲間を吹き飛ばすとはねえ」

 ドーラΔを受け倒れていたアネットを抱き起し、メルセデスはいった。

「……待ってちょうだい。たしかに、さっきのはアンが悪かったわ」

「メーチェ……? 何いってるの!? あたしはメーチェを守ろうとして……!!」

「アン。それでも、先に攻撃したのはあなたの方でしょう? ちゃんと謝りなさい?」

「そ、そんな……」

 言い合う二人をごろつきたちが取り囲んだ。

「なにぐちぐちいってんだお前ら」

「きっちり落とし前つけてもらわねえとなあ」

「メーチェ……」

「大丈夫よ、アン。きっと、女神さまが守ってくださるから……」

 そういうメルセデスの手は小刻みに震えていた。

 

 

「おら入れ!」

 街はずれにあるぼろ小屋に連れ込まれたアネットとメルセデスは、干し草の上に投げ捨てられる。

「へっへっへ。さあてどうしてやろうか……」

 ごろつきたちが舌なめずりするなか、先ほどのダークメイジがいった。

「実は試してみたい魔法があってな」

「どんなやつだ」

 ダークメイジが耳打ちすると、ごろつきはにやりと笑う。

「そいつはいい」

「な、何するんですか? やめてください!」

「アン!」

 アネットは腕を引き掴まれるとダークメイジの前に立たされ、闇魔法を受けた。

「きゃああああっっっ!!!???」

「アン!!!」

 メルセデスが出したことのない悲鳴を上げた。

「……さ、これでいい。いま、どんな気分だ。いってみろ」

 ダークメイジに促されると、アネットはいった。

「……メーチェが、憎い……メーチェが、悪い……」

 その顔は何かにとりつかれたようになっている。

「ア、アン……しっかりしてちょうだい……私はここよ……?」

「死ねえっっ!!!」

 シェイバーの風魔法がメルセデスに放たれ、まともにそれを受けたメルセデスは着ていた服をびりびりに破かれてしまう。

「うひょー! いい眺めだ!」

「やれ! もっとだ!」

「アン! 目を覚まして!!」

 胸と大事なところをかばいながら、メルセデスは叫ぶ。

 だが、もう彼女の声は届かない。

「メーチェが悪いんだよ……いっつもいっつもあたしの邪魔をして……!」

 それから幾度かシェイバーが放たれ、気づいたときには使用限度に達していた。

 乱れた干し草の上に全裸のメルセデスが倒れていて、その身には幾筋もの風の赤い切り傷ができている。

「よくやった」

「さてと……それじゃあいただくとするか……」

 ごろつきたちがメルセデスの体を好き放題にしていく。アネットはその様子を黙って見ていたが、やがて闇魔法の効果が切れ、我に返った。

「……え、あたしどうして……?」

「やーっと気づいたのか、おせえよ姉ちゃん」

 さんざんメルセデスの体をむさぼったごろつきたちは、アネットを振り返っていった。

「見ろよこの体の傷。これ全部姉ちゃんがつけたんだぜ」

「う、うそよ!! そ、そんな……メーチェ……!!」

「ひっでえお友達もいたもんだ。さてと」

 ごろつきたちはアネットを取り囲む。

「次は、お前の番だ」

「お友達と同じようにしてやるよ」

「い、いや……メーチェェェェェッッッッッ!!!!!」

 その後、騎士団が二人を発見したとき、ぼろ小屋の干し草の上でアネットとメルセデスは二人とも素っ裸で、そしてひどい目に遭わされた跡が生々しく残っていたという。修道院まで運ばれる道すがら、アネットはしきりにメルセデスに、「ごめんね……ごめんね……」とつぶやいていた。


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