撮影中に千世子ちゃんと仲良くなりすぎた景ちゃんのお話。
※「百合ですアイランド」より改題
――たとえそれが、自分の部屋に戻ったらなぜか一糸まとわぬ姿でベッドのシーツの上に可愛らしい寝息をたてながら落ち……寝ていたとしても。
片手を添えた股間から潮を吹いたようにシーツを濡らして、満足げな顔で全裸の美少女が寝ていたとしても。景が袖を通したあとに部屋に置いていた服に顔を埋めて鼻をひくつかせながら匂いを嗅いでいたとしても。
美しいものは美しいのだから、仕方がない。すこし信念が揺らいだが。いやたぶんまだ大丈夫。
「私はどこで寝ればいいのかしら……」
この部屋はシングル、いやベッドの大きさからしてダブルかもしれないが、決してツインではなかった。ベッドは一つしか無い。
景が今日の睡眠場所に困っても、
そもそも、なぜこんなことになっているのか――。
役者として身を立てようと思い立ったのは、自分にでも演技というものは出来るのではないかと思いついたからだった。人前で演じた経験はないけれども、映画を見ていたように想像すれば、どんな自分にでもなれる気がした。
一応、その思いつきは間違ってなかったと言っていいだろう。
スターズのオーディションには落ち、
シチューのウェブCMでは繊細な表情の美少女ということでそこそこ話題になり、エキストラはつとまらず、デスアイランドのオーディションで合格し、撮影前の顔合わせでは百城千世子になぜか興味を持たれて仲良くなった。
「私、実は天使じゃないから。ぷかぷか浮いたりは出来ないよ?」
困惑しながら笑った百城千世子は、控えめに言っても天使だった。その後に自分を見つめる澄んだ瞳に、景は魅入られてしまったのだ。
――天使を相手にするなら、自分が女性でもいいのではないかしら。
そんなことを、思ってしまうくらいには。
景が際限なく現実逃避をして回想をしても、目の前の天使の裸体は消えたりしなかった。
映画の撮影中に泊まっているホテルでこんな状況になった原因は、語りだしたら一晩はゆうに費やしてしまいそうな複雑な事情……とかはあまりなく。
撮影期間が始まってからホテルですごす時間で、すこし千世子と仲良くなりすぎたのが大きい。
そして映画の撮影が始まってからしばらくたち、千世子が若い身体に内包する熱を持て余してしまっていただけであった。
千世子は出会ってしまった。
スターズの俳優としてそれが正しいのかどうかはわからないが、商業ベースでは唾棄すべきものであるとしても、芸術ベースとして見れば複雑な悔しさとともにあこがれの対象として一目置かざるを得ない。なにしろ、荒削りながらも
加えて、やや景のスキンシップが過剰だったかもしれない。相変わらず人との距離感を測るのが苦手だった。好きになればべったりして恥じらいもしない。
「……抱きしめて耳元で囁いてもいい?」
「うん、もう抱きしめて囁いてるね」
「……頭撫でてもいい?」
「うん、もう撫でてるね」
距離を詰めすぎて、抱きしめて耳元で囁いたり、頭を撫でてしまったこともあった。仮面のようにいつもの表情を壊してはいなかったが、天使の所作にはわずかに照れが混ざっていた気がする。
あえて理由を足せば、千世子の求めるだけの虫成分が足りなかったのがいけないのかもしれない。
禁断症状のようなものである。虫愛の代償として性愛を求めたのだ。そんなものが世間一般の虫マニアにあるのかどうかは知らないが。
飼っている虫とは映画の撮影中ずっと離れ離れ。自然あふれる島なのに、映画のスタッフは千世子が森に入って虫を探すことを許してはくれなかった。当たり前だが。映画のカットで千世子の顔に虫刺されがあったら、舞台的にリアルではあるが興ざめするだろう。
重ねて、千世子はこれまで抱いたことのない、不思議な情動をこの歳にして初めて感じてしまったのだ。
はじめは同年代の少女が自分に不可能なほどの完成度で演技を行うことについての羨望のようなものと思ってはいた。だが次第に、それはかたちを変え、千世子の中で不思議な方向に熟成されていく。
そう、景への身を焦がすような恋情である。
世間一般的には主に異性に向けて存在することが多いそれは、しかし
だが、無いものとされれば無くなるというわけではない。当たり前のことである。
現代日本では、一応LGBTは自然な営みの範囲内で受け入れるべきものとして認知はされている。だが決して一般的ではない。一般的に受け入れられているのは、女子高生や女子中学生の少女二人が仲良く手をつないだり冗談ぽく挨拶的に軽くべろちゅーを交わすところあたりまでだろうか。舌入れはNG。
景はまごうことなき女子高生だし、千世子も同い年なのでそれとみなしても良いと思われる。千世子が高校生活を送っているのかどうかを、景は知らなかったが。
あまり問題はなさそうだった。ある程度節度を持っている範囲内ならば。
「千世子ちゃん、セーラー服もブレザーも似合わなさそうよね……」
景がよくわからない想像でダメ出しをしていること以外は。デスアイランドの映画内で着ているのはブレザー系の制服なのだが。夏服だし気温の関係上、上着を着ることは殆どないからいいのだろうか。
美しいものは、人を惹きつける。
というか、
いやこの際、裸かどうかはあまり関係がない。たとえ天使のように美しく清らかな同性のアイドルが全裸だろうがパレオなしのビキニだろうがメイド服だろうが、
「顔が写るとまずいから、背中側からお尻を撮ったら
目の前にあるのは、出どころが怪しくてもその造形だけでお金を取れそうなお尻だった。せっかくあるものは有効に活用したほうがいいだろう。
すこし現実逃避気味の景ではある。このあとどんな展開をしても、面倒事になる予感しかなかった。もういっそ台風が10連くらいで来て映画の撮影が全部潰れて家に帰ったら楽に済むんじゃないだろうか。
景はスマホのカメラアプリを起動して、天使の裸のフレーム内での構図を試行錯誤してはいたが、流石に本当にシャッターボタンは押していない。脳内保存にとどめておいた。
「ん……」
そして、美の女神が目を覚ます。
「あれ……ここは……?」
何事もなかったような雰囲気を醸し出しつつ、天使が景を見てにぱっと笑った。可愛い。
その股間の女性器が濡れておらず、気怠げな事後の雰囲気を醸し出していなければもっと無垢で可愛かっただろう。
どこか満足していて、どこか足りない感じ。なにかを求めていて、なにかに満たされていない感じ。
絵画を見るように、あるいは映画でも見ているように、景は動けずにいた。
すうっと、予備動作もなく裸の千世子が動いていた。シーツがぱさりと音をたてる。気がつけば目前、まつげの長い美しい顔がせまっていた。
「んうっ……!?」
唇を奪われる。漏れた吐息が顔にあたった。きゅっと頭を抱え込まれる。
すぐに熱を持った舌が口中に侵入してくる。にゅるりと唇の内側を舐め取ってから、ぐにぐにと押し付けるように刺激してくる。景の頭の奥で花火がはじけた。思考がぼやけてぬるま湯の中に溶けていく。
天使とのキスは、天に昇るほどに気持ちが良かった。
いつの間にか、上下とも服がはだけられていた。下着があらわになってしまっている。千世子ちゃんの裸の身体が密着して、ぬくもりを感じさせてくれる。生き物のように両手の指が身体の上を這い回っていく。ぞくぞくとして気持ちがいい。
服がすべて身体からすべり落ちる。ブラもショーツも脱がされた。身を隠すものがなくなってしまった裸を、千世子ちゃんの瞳の前ですべてさらしてしまっている。
「これは、お芝居じゃないよね」
誰も触ったことのない箇所に、千世子ちゃんの指が触れた。くちゅ、と水気を帯びた音を立ててしまったのが恥ずかしい。ぬるぬると愛液を塗りつけるようにしてから、皮の上からクリを刺激されて、腰が思わず跳ねる。
くりくりと、こねまわすように親指が押し付けられると、じんと腰の下から痺れたような快感が湧き上がってくる。
天使いや千世子ちゃんと、性の悦びを感じるようなことを、している。それが、脳髄をかき回すような、悶えんばかりの快楽を呼んだ。じっとりと、身体の奥が濡れたのが分かる。
「ふあっ……」
親指をそこに当てたまま、人差し指が侵入してくる。しばらく様子を見るように入口付近の感触を確かめながら、次は中指も。次第に激しくなっていく。液体がシーツの上に飛び散っていく。
気づけば相手の股間を景もまさぐっていた。いつものように。でもそこにいきり立った怒張はなく、根元に濡れた割れ目。自分と同じ持ち物。ぬるりと指先が触れた。
「っ……!!」
押し殺すようなうめき声。天使の身体がビクンと跳ねた。
攻められているのならば、攻め返さなければ。あまり気遣いもせず、乱暴に、景は千世子ちゃんの膣へと指を差し挿れた。
頭がぼうっとする。ちかちかと星が散った。乱暴にしても、優しくされても、お互いに相手のことは気遣っていた。互いを理解し、してほしいことを交換しあう。ときにはじっくり、そしてときには急かすように。
肌の見えるところに跡をつけるわけにはいかない。役者の二人には、完全に我を忘れて愛欲に溺れることは許されていない。目指すのは、どこかコントロールされた熱狂のもとでの耽溺。
指で口で、オンナが感じるところを選び取りながら、すこしずつ高めていく。ふもとから山頂を目指すように、じっくりと二人で昇っていく。
一度昇ってしまえば、むしろ後は容易く。下りることなく、ふわふわと漂っていればいい。まだ踏みしめていないところを、確かめるように。
そのあとは何度も何度も、相手を思いきり抱きしめながら達した。最後に両手をつなぎながら目を合わせたことは覚えている。
気がつくと朝だった。身体がだるい。この気だるさには覚えがあった。嫌というほど。
シーツもけっこう大変なことになっていた。
千世子ちゃんは裸で隣に寝ていた。さすがに体力も限界なのか、ぐったりしている。今日の撮影は大丈夫だろうか。静かな寝息なので、調子が悪いということはなさそうだが。
裸の身体を寄せて、ぬくもりをわけあう。閉じられたまぶたを見ながら頭をそっと撫でると、ふわふわの髪が指の間を抜けて落ちていく。
身を寄せ合う全裸の美少女たち。この情景を切り取るならば、まるで絵画のように美しく見えることだろう。
人と交わっても、やっぱり天使は天使のままだった。
その日から千世子ちゃんと景は、
最後までお読みいただきありがとうございました。
少ないながらもPVは定期的にいただいているこの作品ですが、少しでも気に入っていただけたら評価をいただけると嬉しいです。評価ゼロはつらたん。
なお作者はライト百合読者でかつ初百合作品なので、「これちょっと違うんじゃない?」的なご指摘もあれば是非。
※ NL作品ですが「JCの夜凪景は役者より先に女になった」もよければどうぞ