僕が高校生に入学して幾月か経った頃、僕に新たな妹ができた。
というのも、僕の父親が再婚したのだ。物心ついた頃から男手一つだったのが、遂に覚悟を決めたらしい。
新たな妹と言うのは、その再婚相手の連れ子さん。僕の二つ下の、ショートカットが似合うクールでちょっと変わった子だった。新たな家族として迎える気でいたものだから、初顔合わせの時に真顔で「これからよろしくお願いします」と頭を下げられた時は戸惑ってしまった。
「ここが今日から君の部屋だよ」
僕が新しい部屋に案内している時も、彼女は真顔を崩さなかった。すんとした顔で部屋をキョロキョロと見回し、ぽすんとベッドに腰掛ける。会話も独り言もなし。思わず「嫌われちゃってるのかな」なんて首を傾げながら心中で呟く程気まずさを僕は感じた。
しかしそれも束の間のこと。義妹はそんな僕の懸念をすぱっと払ってしまった。
「ありがとう、彰兄さん」
無表情を崩し、ふわりと微笑みながら紡がれた言葉。それに僕の心臓が少し大きくとくんと脈打つと同時に、形容しがたい感動を生み出した。
「うん。困ったことがあったら何でも言ってね、椿」
その日から僕たちは兄妹になった。血の繋がりのない、あくまで形式上というか、見た目と気持ちだけの兄妹に。
それが、超えてはいけない境界線を踏み越してしまうなんて、当時の_____少なくとも僕には実感できていなかった。
*
「す、好きですっ。付き合ってくださいっ!」
それを聞いた時、僕の中に湧き上がってきたのは少しの驚きと大きな困惑だった。
僕が通う高校の裏庭に呼び出された僕は、こうして同級生の女の子から告白を受けていた。別にその人と面識がなかったわけではない。何ならクラスも同じなので何かあれば言葉を交わす程度の関係だった。
多分、告白されたのが僕じゃなかったら多少なりとも喜ぶし、嬉しいと思うだろう。ただ僕は、繰り返すようになるが驚きと困惑しか感じなかった。
だから、僕は一言だけ謝ってから言った。
「君のことは、友達としてしか見れない」
「っ…」
僕の返答に言葉を詰まらせた彼女は、「ごめんなさい」とか細い声で残し、そそくさと裏庭から出て行った。それに罪悪感を感じつつ、僕も裏庭を出る。
「に、兄さんっ」
「えっ」
出口のところで、椿とばったり遭遇した。高校受験を経て僕と同じ高校に入学した椿とは、校内で会うことも珍しくはなかった。むしろ椿から会いにくることが多かったくらいだ。
しかし妹とは言え、あの現場を見られたのはちょっと恥ずかしいし気まずい。僕は恐る恐る口を開いた。
「今の…見てた?」
「…うん」
「あー…」
どう説明しよう。クラスメイトの女の子を振ったって結構アレな事じゃないか。軽蔑とかされたらどうしよ。いやでも椿はそんな性格してないだろう。なんて脳内談義を繰り広げていれば、椿が先に口火を切っていた。
「あの、先、帰ってるね」
これまた椿も気まずそうに踵を返し、駆け足で出て行った。気を使わせてしまっただろうか。あとで少し説明しなければ。スマホを取り出して時計を見てみれば帰る予定の時間を少し過ぎてしまっていた。今日は僕も椿も部活がなかったとは言え、遅くなりすぎるのはよくない。
さあ帰るかと荷物を取りに戻ろうとした時、ふとしたことが引っかかった。椿の様子が、少しおかしかった気がする。気まずそうな雰囲気の他にも、どこか焦ってるというか、不安そうに見えたと言うか。
その時はまあ気のせいか、もしも何かあれば直接聞いてみようとあまり気に留めなかった。
ただこの時僕はちょっと失念気味だったかもしれない。
*
数日後、学校からの帰りに父さんからメッセージが届いた。
曰く、今日は帰れないらしい。と言うのも仕事が忙しくなってしまったそうだ。確かに父さんは多忙を極める職業に就いているから珍しいことではない。しかし明日は休日であるから、そこは救いかなと思う。
そういえば母さんもしばらく仕事で外泊してるんだった。だとすれば今日は椿と二人きりか。椿と二人で日を跨ぐのは初めてかもしれない。
とりあえず椿にその旨を連絡し、帰路を急ぐ。恐らく帰るのは僕の方が先だ。ならお風呂も沸かしておかなきゃいけないし、夕飯も用意しなければいけない。材料は冷蔵庫にあるもので足りるだろう。買い物は必要なさそうだ。
早歩きで足をしゃかしゃか働かせていれば、家にはすぐに着いた。学校から僕の家までは歩いて通える程の距離しか空いてない。改めて考えてみると便利だな、と思う。
カバンから取り出した鍵で玄関のドアを開け、そのままリビングまで向かい照明をつける。鍵が閉まっていた辺りやはり僕が帰るのが先だったらしい。
とりあえずお風呂の準備を済ませてから夕飯の準備に取り掛かることにする。色々進めているうちに椿も帰ってきたようだ、玄関から声がする。
「ただいま」
「おかえり、椿」
ちょうど食卓に夕飯を並べているところに現れる椿。一瞬だけ目が合うが、すぐに椿から逸らされてしまった。そのことに内心、肩を少し竦めてしまう。
最近の椿はいつもこうだ。僕があの子に告白されてから、だろうか。どこか僕のことを避けているように見えるのだ。学校でも、家でも余所余所しく接される。
やはりあの場面を見られたのは余程響くらしい。今日辺り少し話をしてみようか。
「ご飯はもうできてるよ。それともお風呂先にする?」
「…先にご飯食べるよ。ありがとう、兄さん」
それだけ言い残して、椿は二階の自室に向かっていった。恐らく荷物を置きに行ったのだろう。
食事の準備を済ませ、食卓に座って待っていると間もなく椿が階段を降りてくる。服はどうやら制服から着替えたようで、ラフな部屋着になっていた。
「いただきます」
「…いただきます」
二人で夕飯を食べ始める。今日の献立は白米に味噌汁、主菜に野菜炒めを、副菜にほうれん草のおひたしを作った。料理は結構慣れている方だからマズイということはないが、それでも椿には敵わない。何を作っても美味しいのだ、椿の料理は。
「そう言えば、つば_____」
「兄さんって好きな人とかいるの?」
ある程度食べ進めたところで、あの事を聞き出そうと口を開けば、椿に遮られた。かなり突拍子のない問いだったから、僕は少し驚いた。
「いない、けど。何で?」
「…この前、告白されてたでしょ」
理由を問うてみれば、やはりあれが原因だった。しかしどうして僕がされた側なのに僕のことを聞くのだろうか。単純に気になったから聞いただけかもしれない。
「あー、あれか…」
「結構モテたりするの?兄さんって」
「そんなまさか…いや、でもどうだろう」
正直、そういうのはあまり僕にはわからない。詳しくない、と言った方が良いのかもしれない。異性を好きになるとか、何だかピンと来ないのだ。友人にこの事を吐露したら「お前人生楽しいか?」と呆れ気味に言われたのは記憶に新しい。
「そういうの、あんまり僕わからないから」
それを聞いて椿が揺れる。同時に表情も少し驚いたようなものに変わり、食事の手が止まった。
だがそれも一瞬のことで、「そう」と返事し食事に戻った。それ以来何の会話もなく、食事は進んだ。広がる沈黙の中に、僕は独特の気まずさを感じた。
静かな食事はさして珍しいことではない。増してや椿と二人きりの食事など、あまり会話がないことの方が多い。椿は口数が少ないから、余程僕がお喋りでない限りはほとんど会話がないのだ。
だが、どうしてだろう。静かなことなんて、珍しくもないのに。どうしてこんなに居心地が悪いんだろう。
「ごちそうさま」
気付けば椿は既に食事を済ませ、自分の食器を流し台に運んでいた。その後特に変わった様子もなく、「お風呂先に貰うね」とだけ僕に声をかけ、風呂場がある方に消えていった。
*
あれから僕も食事を終え、入浴まで済ませて残すは就寝のみとなった。時刻は夜の九時過ぎ、僕は一階のリビングで一休みしていた。椿は一足先に自室に戻ったようで、リビングにはいなかった。
何をするわけでもなくテレビを点けてニュースを流し見る。特段これと言ったものもなく、取り留めのない内容のものばかりだ。すぐに別のチャンネルに切り替えれば、バラエティ番組が画面に映る。
テレビからは司会者や出演者の笑い声が聞こえるが、いかんせん内容が入ってこない。というのも、食事中に交わした椿との会話をひたすらに振り返っていたものだから。
あの時の椿は、今思い返せば何か思い詰めたような感じがあった。僕の最後の一言に対しても椿は大して追求しなかったが、反応を見る辺りどうにも何かありそうな気がしてならなかった。
もっと早く気付くべきだったな、とため息とともに後悔する。ただでさえ最近の椿は悩み事を抱えていそうだと言うのに、もっと早く話を聞くべきだった。
いやそれとも、まさか、僕のあの一言が椿を余計に_____
「ダメだ」
考えれば考えるほどネガティブな方向に引っ張られる。とにかく行動しよう。椿に少しだけでも話を聞いてみよう。今の時間なら椿もまだ起きているはず。僕はテレビのスイッチを切り、電気を消してから二階に向かった。
椿の部屋は僕の部屋の隣だ。そのドアの前に立って数回ノックする。
「椿、起きてる?」
呼びかけてみるが返事はなし。少し耳を澄ませてみるが、やはり何も聞こえなかった。もう寝てしまったのだろうか。部活で疲れているだろうし、まさか叩き起こすわけにもいかないので仕方なく自分の部屋に向かう。
軽く勉強してから寝ようかな、と思いつつ自室のドアを開ける。
「んっ、あっ、にいさん、にいさ_____へっ?」
「_____え?」
思考が止まる。間抜けな声が喉から漏れ出たが、それさえも自覚できないほどの驚きに襲われた。
「っ、ごめん!」
だがそれは到底視界に収めて良いものではないと察知すると、僕は謝罪とともに急いで目を背けた。
椿が、僕のベッドの上で耽っていたのだ。自慰に。椿もしばし放心していたが、正気に戻ったのかはだけた部屋着を腕で隠す。
沈黙が訪れる。お互い動くことなく、ただ静かな時間が流れていく。それはほんの一瞬だったかもしれないが、当事者である僕からしたらとんでもなく長い時間に感じられた。
それに耐えきれず、口を開いたのは僕だった。
「ごめん、椿。えっと、その、すぐ出て行くから_____」
「兄さん」
全て言い切る前に、椿に遮られた。気付けば椿は既に部屋着を整えベッドから立ち上がり、僕の立つ場所に近付いていた。
「…ごめんなさい、こんな、はしたないこと」
「いいんだ。気にしてないから。こっちこそ_____」
「兄さんっ、私、私っ…」
「_____椿?」
「私っ、兄さんが告白されてたの見て、兄さんが誰かのモノになっちゃうんじゃないかって焦っちゃって、そのまま気持ちの整理が付かなくて、それで、それで」
椿は本当に心の整理がついていないのか、パニックを起こした子どものような様子でいた。その目には涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな、悲しそうな顔をしていた。
僕のせいで、ここまで追い詰めちゃったんだ。
「私、寂しくて、でも兄さんとどう話せばいいか、急にわかんなくなっちゃって…」
「…ごめん、椿。ごめんね」
涙声で尚も感情を吐き出し続ける椿を、僕は思わず抱き寄せる。女の子を抱き寄せるなんて初めての経験だったが、そんなこと考えていられなかった。それに応えるように、椿も僕の胸に顔を埋める。
「僕はどこにも行かない。ずっと椿のそばにいる。勝手にいなくなるなんて、そんなことしないから」
「…兄さんのばか。口だけなら何だって言える」
ぐさり、と椿の言葉が胸に刺さる。確かにその通りだ。我ながら何て薄っぺらいことを、なんて思っていると「だから」と椿が続けた。
「証明して。どこにも行かないって。ずっと私のそばにいるって」
ぎゅっ、と服を掴む力を強め、か細い声で囁かれる。
「抱いて、ください。私のこと」
熱い吐息とともに吐き出されたその言葉に、僕は心臓が高鳴るのを感じながら頷いた。
*
「んっ、ちゅ、んむ…はぁっ、んんっ」
ベッドの上で椿と何度も唇を重ねる。その度に椿の僕を抱く力が強くなっていき、僕もまた心拍を加速させていった。
「椿、重くない?」
「だいじょぶ、だから、にいさんっ」
今僕は椿を押し倒す形で僕の部屋のベッドにいる。僕の心配なんかを他所に、椿は積極的に僕の唇を奪いに来た。初めはただのキスだったのが段々エスカレートし、舌まで僕の口内にねじ込んでくる。
Tシャツの上から、少し控えめな椿の胸に手を乗せる。少し驚いたような反応を椿は見せたが、やがてすんなりと受け入れたようだった。
顔を赤く染める椿にどきりとしながらも、恐る恐る乳房を弄ぶ。すぐに物足りなくなり、直接触りたい、と次なる欲が湧いてきた。
それを見透かしたように、椿は囁いた。
「服越しじゃ、ものたりないでしょ。ほら…」
一度僕を退けると、椿は上半身だけベッドから起こし自分からTシャツの裾を上げる。そのままつけていたブラジャーも慣れた手つきで外すと、「はい」と恥ずかしげに両手を広げた。
ごくり、と思わず固唾を飲む。それを見た椿はクス、と笑った。上気した顔で浮かべる微笑みは、何とも言い難いものだった。
「遠慮しないで。今は兄妹とか、考えないで」
「っ…、わかった」
椿の胸に手を重ねる。少しくすぐったかったのかぴく、と体を震わせる椿。やがてやわらかい乳房の上で手を動かし始めると、それに従って椿の口から熱い吐息がまた漏れ始めた。
「んっ…ふっ…」
ベッドに座って対面した状態で、椿の胸を弄り回す。時折乳首に指を立ててみれば、より一層強く体を震わせた。その姿にある種の嗜虐心をかき立てられた僕は手の勢いを強くする。
「っ、待ってにいさん」
ぐい、と片腕を引っ張られる。その先は椿の股の間だった。椿の表情を見ればひどく切なそうで、僕の手に物足りないと言わんばかりにぐいと股間を押し付けてくる。
「むねだけじゃ、やだ…」
ならば、とぐいと椿に身を寄せ、ショートパンツと下着越しに椿の秘部を撫でる。
「んうっ」
ぴくっ、と椿の体が脈打つ。椿のあそこは既にショートパンツ越しでもわかるくらい湿っていた。期待、していたんだろうか。それとも自慰をしていた時の名残りか。
「はっ…んんっ…」
「…脱がせるよ」
「…ん。はずかしい、けど」
こくんと頷き、恥ずかしそうに腰を浮かせる椿。ショートパンツと下着に手をかけ、ゆっくりと脱がす。やはりそれに感じることがあるのか、椿はふいと顔を逸らしていた。
やはりと言うか、椿のあそこは大洪水だった。下着と接していた部分は粘っこいものが下着との間糸を引き、秘部の表面も潤滑油のようなものでぐちょぐちょだった。初めて見る女性器。薄い桃色のそれは、奇妙な高鳴りを僕に与えた。
「すごい、濡れてる」
「ばか、言わないで…」
「…ごめん」
か細い声で抗議され、思わず謝ってしまう。確かに少し気遣いが足りなかったか、と反省。椿の顔を見れば少し恥ずかしそうではあったが、それでも怒っているようではなさそうだった。
つ、と指を這わせれば粘液が纏わりついてくる。触られた感覚が伝わったのか、椿もぴくんと反応を示した。それを見た僕は優しく、椿の秘部を撫で始める。
「んっ…ふっ、んぁ…」
快感に体を震わせながら、甘い声を溢す椿。指を動かせば動かすほどとろとろと愛液が溢れ出てくる。独特の熱さを持つそれはあまりにも溢れ過ぎたのか、僕のベッドに染みを作りつつあった。
しばらく秘部を弄っていると、指が一本ギリギリ入りそうな穴を見つけた。恐らく、男性器を挿れるところだ。
「指、挿れるよ」
「んっ…ぅあ…!」
十分に濡れていたらしい椿の膣は、僕の指をすんなりと受け入れた。膣内は愛液で溢れ、火傷してしまうような熱さで包まれていた。
きゅう、と僕の指を締めるように躍動し、ぞくりと僕に変な快感を覚えさせた。
「はあっ…あぅっ、ん、あっ…!」
指を膣内でゆっくりと動かし始める。ぐちゅぐちゅといやらしい音を響かせながら、僕は椿の内側を刺激する。
「や、まって、にいさ、あ、はっあ…!」
「大丈夫?ちゃんと気持ち、いい?」
「ん、うん、だいじょぶ…ぅあ、はっ、あぁっ」
さっきよりもずっと蕩けた顔で乱れる椿。涙目になりながらも快楽に身を任せる椿にどくん、と僕の心臓が跳ねる。何て可愛らしくて、愛らしい表情。もっと乱れた、淫らな椿が見たくなる。普段ならこんな感情、欠片も浮かばないのに。
「可愛い、椿」
「えっ、あっ_____!?」
僕が無意識にそう囁いた時、椿の膣が一層キツくぎゅうっと締まる。思わず指の動きを止めてしまったが、それでも尚椿は何かから感じていたらしく、息を乱していた。
それを見た僕は、椿の耳元でもう一度可愛い、と囁く。
「やっ、あっ、まって、にいさっ…!」
「ダメ、待たない。椿が可愛いのが悪い」
「あっ、はっ、やだっ、いわない、でぇ…!」
僕の予想通り、椿はどんどん乱れていく。もちろん囁いている間も指は止めない。
「あっ、ほんとにまって、おかしくなるっ…やっ、はぁっ、あっ_____!」
瞬間、びくんっと椿の腰が浮く。膣内も今までで一番キツく締まり、細かく痙攣していた。足もピンと伸び、腕は自身の体を強く抱き、強い快楽の波に身を捩らせている。
「もしかして…イった?」
「っ、だって、にいさんてかげんしないから…」
息遣いを荒くし、涙目でこちらを睨みつけてくる椿。どうやら達してしまったらしい。我ながら中々最低なことをしたなぁ、なんてほんの少し戻った僕の理性が僕自身をちくちく突き刺す。
「こんどは私が…んっ、あれ…?」
力が抜けてベッドに横たわっていた椿だったが、いざ体を起こそうとしても動けない。さっきから手に力を入れ何度試しても起き上がれない。その内恥ずかしそうに腕で顔を覆い隠し、こちらから逸らしてしまった。
「どうしたの?何処か痛む?」
「……し…け……」
「えっ?」
「こしぬけたかも…」
「腰、抜けた…?」
恥ずかしそうなか細い声で予想外のことが告げられ、思わず耳に入った言葉を繰り返す。腰が、抜けた?まさかイった時に?
「動けそう?」
「たぶん、無理。力入んない…から」
ぞく、と変な感覚が湧き上がる。行為もひと段落し、戻りかけていた僕の理性が全て塗り潰される。脈拍はどんどん加速し、息も勝手に荒くなっていく。明らかに僕に異変が起きている、だというのに椿は羞恥にやられているのか気付かない。
ダメ。これ以上は戻れなくなる。
最後の理性の一欠片が消えて無くなる寸前、そんなことを叫んだ。だが僕の心を制止させることは叶わず、僕はベッドに体を預ける椿に覆いかぶさる。
「にいさ…んっ!?」
怪訝そうな顔で僕のことを見上げる椿。その表情すら今は愛おしく、僕は椿の口に僕の唇を押し当てた。
「んっ…はぁっ、んちゅ、んんっ…!」
椿の口の中に舌を挿入し、蹂躙する。流石の椿も驚いたのか肩に手を押し当ててきたが、逆にこちらの手で押さえつける。これで椿は動けない。しばらくは動かないでいて欲しい。
「ぷはっ…にいさん?どうしたの…んっ」
唇を離し、今度は椿の首元にキスを落とす。くすぐったさに身を震わせる椿の様子がたまらなく可愛らしくて、僕は行為を激しくさせていった。首元から鎖骨、胸、お腹と順番に貪っていく。
「や、まって…いま、びんかんだから…んんっ!」
「ダメ、待たない」
腰が抜けるほどイった後であるからか、ちょっとした体へのキスでも身を捩る椿。それにロクな感想も持てず、ただ椿を乱したい、椿が欲しいという一心で求め続けた。
「あっ、まっ、イクっ…んあっ!」
またイった。さっきよりは断然軽いが、それでも椿も段々と溶けつつある。ちらと顔を一瞥してみれば、また顔を上気させ蕩けた表情を浮かべていた。その顔をしばらく目に焼きつけ、それから覆い被さる形で椿を抱きしめた。椿もそれに応えるように、上手く力が入らないらしい両腕で抱き返してくる。僕の部屋着越しに椿の体温が伝わってくる。快楽に苛まれ続けたせいかじっとりと汗もかいており、それが部屋着に染み込んで独特の触感を僕の肌に伝達する。
「はーっ…はーっ…んむっ、ちゅ…んはぁ…」
唇を重ね、また互いの唾液を交換しあう。粘膜どうしが触れ合うたびに脳が痺れ、ただでさえトんでいた思考が煩悩に全て埋め尽くされた。その感覚が僕も椿もクセになり、口内を貪り合った。やがて酸素が薄くなり、呼吸が本格的に苦しくなってくると唇を離す。その後にはどちらのものかわからない、唾液が糸を細く引いていた。
「はっ…はーっ…にいさん、そろそろ…」
我慢できなくなってしまったのか、椿は顔を赤らめながら何かを求めてくる。その何かを僕は大体の検討を付けていたが、惚けてみることにした。情事が初めてで自信がない、というのもあったが、何より椿の口からハッキリと聞きたいというのもあった。
「何が欲しいの、椿。ちゃんと言ってくれないとわからない」
「焦らさないで…にいさんのいじわる…」
「ダメ。言って。ハッキリと」
ちゃんと椿が言葉にして言ってくれるまで、僕は何もしない。その方が可愛い椿を見れるから。可愛らしくて、愛しい椿の顔を見れるから。今だって切なそうにして、物欲しそうに、涙を浮かべた目で訴えるようにこちらを見ている。そんな顔をするからいけないんだ。
「っ、にいさんのおちんちん…私のおまんこに、ください…」
「ん、よく言えたね」
椿のおねだりを聞けたところでテントを形作っていたズボンと下着を下ろし、男根を露出する。今までにないほど、痛みすら感じるくらいにそそり立つそれを、椿の秘部に擦り付ける。
「どこに挿れて欲しいか教えて」
「ここっ、ここに挿れてっ…はやくっ…」
「挿れられて、どんな風にして欲しい?」
「っぁぁぁぁ…!」
椿が自分の秘部をくぱ、と開く。そこからはねだるように愛液がとろとろと溢れ、まるで誘い込むようにぱくぱくと動いている。それでもまだ挿れずに亀頭を押し当てて焦らすものだから、切なさを抑え込むように椿は身を捩らせる。その様子がまた愛らしくてこっちまでおかしくなりそうだ。
「答えて、椿」
「っ…めちゃくちゃにしてくださいっ。私が溶けてなくなるくらいにっ、何もわからなくなるくらいにっ、にいさんのおちんちんでめちゃくちゃにしてくださっ_____」
最後までおねだりを言い切る前に、一気に腰を押し込む。それと同時に椿が声にならない喘ぎとともにびくんっ、と体を逸らし膣内の僕の性器をぎゅうっと締め付ける。
「っ、あつくて、キツ…!」
「はっ、や、あっ、まって、イったばかり…あんっ!」
初めて性器で感じる膣内の熱さと感触に、思わず腰が抜けそうになる。だが僕も我慢していたのは事実、抑えていた欲に従い、間髪入れず椿の膣内を突き続けた。その度に椿の膣内に性器がしごかれ、僕にも快感をもたらした。
「はげ、しっ、あっ、あ、こんなのっ、ほんとに、ばかになるっ…!」
「はっ、はーっ、僕も、かなり、キツい…!」
粘膜が擦れ、腰を打ちつける度にいやらしい音が響く。お互い、もうロクな会話もできないらしい。それくらいに頭の中が快楽で覆い尽くされ、支配されてしまっているのだから。
「にいさ、すき、すきっ、きす、ちょうだいっ」
「うんっ、僕も好きだ椿っ」
邪魔になってきた上着も脱ぎ、再び椿の上に被さり、腰を動かしながら唇を重ねる。息も荒くなりまともにキスすらできないが、それでも僕らは互いの全てを求めた。唾液も、肌の感触も、伝う汗も、体温も、匂いも、快感も。求めすぎて、溶けて混ざり合ってしまうくらいにお互いを欲した。
本当はもっと繋がっていたかったが、僕も椿も初めて尽くしの行為。押し寄せる快楽に抗い続けられるわけもなく、限界が近くなる。
「くっ、椿、そろそろイく…!」
「っ!ちょうだいっ、にいさんのせーえき、私のなかにぜんぶっ!」
「わかった!膣内に出すよ!受け取れっ…!」
僕の男根の中を精液が上ってくるのがわかる。それを搾り取るように椿の膣内は躍動し、逃すまいと更に強く締め付けてくる。
「椿っ、出る、っ…!」
「私も、イっ…くはぁっ!」
互いに絶頂を迎える。僕の精液が椿の膣内に吐き出され、満たしていく。最高の快楽に視界がチカチカ明滅し、全てを出し切った僕らは繋がったまま、ぐったりとベッドに体を預けた。
お互いの吐息がかかるくらいの距離でしばらか無言で見つめ合い、僕らはまた唇を重ね合わせた。
*
「おはよう、彰。随分と眠そうだな。夜更かしでもしてたか?」
翌朝、目を擦りながらリビングに降りてみれば、椅子に座って新聞を読む父さんの姿があった。
「あれ、もう帰ってたの?」
「もうお昼近くよ。寝坊なんて珍しいわね彰」
そしてこちらも帰って来ていたらしい母さんが、台所から出てくる。ぼーっとした頭のまま時計を見てみれば、確かにもう少しで時針が十一時を示そうとしている。
昨日の夜は何時に寝たかすらわからない。少なくともマトモに寝てないのは確かだし、行為の疲れも相まって倦怠感が酷いことになっていた。今日はもう極力動きたくないかもしれない。
リビングを見回して、そう言えばと僕は口を開いた。
「椿、は?」
「まだ降りてきてないな。もしかしてまだ寝てるのか?」
「二人揃って寝坊助さんなんてね。今日は大雨かしら」
どうやらまだ起きてきていないらしい。一頻り行為に及んだ後、僕らはそれぞれの部屋で寝たから今椿が何をしているかはわからない。まさか腰を抜かしたまま起きれないなんてことは、いや、流石にそれはないだろう。
くあ、と起きて何度目かわからない欠伸をしていると、リビングのドアが開く。そこには僕と同じように眠そうな様子の椿の姿があった。薄々予想していたとは言え、実際に目にしては両親も流石に驚いたようだった。
「おはよう…」
「おはよう、椿。あなたも夜更かし?」
「ん…」
「勉強か?熱心なのも構わないが、程々にしておけよ」
「んー…」
声にならない返事をしつつ、ふらふらとリビングに入ってくる椿。そして僕と同じように欠伸をしつつ、僕にも声をかけてきた。
「おはよう、兄さん」
「…ん、おはよ」
こんな風に朝の挨拶を交わしたのは少し久しぶりだ。昨日までは挨拶こそあっても、何処か余所余所しいぎくしゃくしたものだった。だけど今ではそれも無くなり、ちゃんと距離の近いものに戻っている。
その事にちょっとした喜びを噛みしめていると、椿から「顔洗いに行こ」と部屋着の端をくいと引っ張られた。
それに首肯しつつ、揃ってリビングを出ていく僕らを見送りながら父さんは言った。
「やっぱり彰と椿は仲が良いな」
「ええ、本当に。まだ一緒になって一年くらいしか経ってないし、年頃なのに不思議ねぇ」
「きっと、相性が良かったんだろうな。お互い物静かだし、真面目だし」
「うん、きっとそうね」
父さんと母さんはあんなことを言ってるが、多分僕らの関係は仲が良い程度では片付かないと思う。
あんなに求め合ってしまったら、ただの兄妹には戻れないだろう。
洗面台まで向かう途中、ひっそりと寄り添ってくる椿に苦笑しながら、僕もそれを受け入れるのだった。
感想、評価などいただけると幸いです。
続きは気分次第で書きます。
お読みいただきありがとうございました。