※この作品はR-18です。

恋はきっと雨のち晴れ   作:水瓶トロワ


原作:アズールレーン
タグ:R-18 タシュケント 純愛
媚薬入りチョコを食べたタシュケントとイチャラブエッチするだけのお話です。
某所にも上げている再掲というやつです。

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恋はきっと雨のち晴れ

「……あらら?」

 

 ある日のお昼。

 北方連合所属の艦船、アヴローラは北方連合用の寮のロビーにある待ち合い席で一人、首を傾げていた。

 

「あら、どうしたのアヴローラ?」

 

 そんな彼女の近くを通りかかったのは同じく北方連合所属の艦船、パーミャチ・メルクーリヤだ。

 

 パーミャチ・メルクーリヤはアヴローラと同じく北方連合の古参の一人であり、彼女とはほぼ同期で故にそれなりに古き仲。もはや家族と同じ距離感であると言っても過言ではないだろう。

 彼女の存在に気付いたアヴローラはまるで親しき姉妹が来たかのようにパーミャチ・メルクーリヤに挨拶を交わそうとする。

 

「これはこれはパーミャ……」

「なんで変なとこで止めるのよ……」

 

 だがその名を言いかけたが何かに気付き、彼女は言葉を切った。

 灰色のおさげを揺らす少女は透かさずそれにツッコみを入れる。

 

 彼女も別に笑いを取るために言葉を切ったのではない。

 付き合いが長い彼女を疑うのはいささか気が引けたが、付き合い長いからこそ他の者にはあまり知られていない癖なんか知っている。

 そしてその癖がどうしてもアヴローラがいま首を傾げていた理由と繋がってしまう。

 

 蒼い眼が細く光る。

 

「ごめんなさい、間違えました。クーちゃんでしたね」

「わざわざ言い直さなくったっていいわよ! てか言うんだったらクスクス笑いながら言うな!」

「ふふ、ごめんなさい」

 

 しかしそうだったら口の軽い彼女のことだ。真っ先に話のタネにしてくるだろう。

 そうしてこなかったということは彼女はシロ。

 

 そう思い至ったアヴローラは冗談を言い、己の中の疑惑を振り払った。

 しかしアヴローラがパーミャチ・メルクーリヤのことをよく知っているように、逆も然り。

 アヴローラがなにか良からぬ考えを抱いていたことなどパーミャチ・メルクーリヤからしてみるとお見通しだった。

 

「で、なに困ってたの?」

 

 だがそのことについて特に追求をしたりしない。

 そういう間柄だからこそ付き合いが長いのだ。

 

「あぁ、そうそう。ここに置いてあったチョコ知りませんか?」

 

 出てきた本題は割と謎に満ちたものだった。

 まず包装している箱ではなくチョコを直接指し示しているということ。

 

「チョコ? さぁ知らないわ」

「そうですか。誰か食べてしまったんでしょうか……」

 

 パーミャチ・メルクーリヤは正直に答える。

 その答えを聞き落胆し、肩を落とすアヴローラ。その思い悩む姿はまさに恋で心を痛めている少女の顔。

 

 ビビッときたパーミャチ・メルクーリヤは先程までの真面目な姿はどこへやら。

 一瞬でにやけ面に表情を変える。

 

「それがどうしたの? も・し・か・し・て~、指揮官に渡すつもりだったチョコをここに忘れちゃった〜とかぁ?」

 

 そう、焦る気持ちから見ることが出来ない包装の中身を言ったり、他の人に食べられたと言って落胆しているのだ。

 どうだー、パーミャチ・メルクーリヤ様の名推理! バッチャンの名に懸けて間違えてないはずだ!

 

 しかしアヴローラは首を横に振る。

 その反応にパーミャチ・メルクーリヤは思わず「えっ⁉」と驚愕した言葉を零した。

 

「いえ、あのチョコはミンスクちゃんが「同志指揮官にもっと近付ける方法をひらめいた!」とか言って作った媚薬入りボンボンなんです」

「なんであの子、万年媚薬作ってそうな薬師ポジについてるのよ」

 

 ミンスクとは彼女らと同じく北方連合に籍を置く駆逐艦の娘で、ときたま奇想天外なひらめきで周りを助けたり、迷惑かけたりする子だ。

 ことの発端は彼女だと知り、パーミャチ・メルクーリヤは恥ずかしそうに近くの机に顔を伏せる。

 

「それを危険だと思って彼女から取り上げてここに置いたのですが、お昼を食べに行ってたら無くなってて……」

「いやアンタもアンタでなんでここが安全地帯だと思ったのよ……」

「まぁ気の迷いと言いますか……。しかし開発したミンスクちゃんは夕張ちゃんと一緒にいたの見かけましたし、誰が持って行っちゃったんでしょうか?」

「大丈夫なの、そのコンビ……」

 

 同僚の天然に続き危険要素の膨張。

 流石にツッコミが追い付かないパーミャチ・メルクーリヤは深くため息を吐く。

 

「チャパエフさんや戦艦の方々は盗み食いなんてしないでしょうし……」

「じゃあ駆逐艦の子?」

 

 数秒パーミャチ・メルクーリヤを見つめたあと、アヴローラは素直に頷く。

 

「はい。おそらくタシュケントちゃんかグロズヌイちゃんでしょうね」

「ねぇ、なんでちょっと私を見つめたの?」

 

 タシュケントとグロズヌイ。

 二人ともまた同じく北方連合に所属する駆逐艦だ。

 

 しかし候補に二人をあげたが恐らくクロはタシュケントだろう。二人は口に出さなかったが目を合わせて理解した。

 

「ま、二人を探すのは後回しにしてとりあえず指揮官にこの件を報告しましょ。事後になったらそれはそれで大変なことになりそうだし」

 

 備えあれば患いなし。最終防衛ラインの防壁を強固にすれば向かうとこ敵なしだろう。

 

「そうですね。ミンスクちゃんのメンツもありますのでできれば秘匿にしときたかったのですが状況が状況です。致し方ないでしょう」

「さて善は急げ。さっそく執務室に向かうわよ!」

「あら、手伝ってくれるのですか?」

 

 アヴローラは意外そうに首を傾げる。

 対し、パーミャチ・メルクーリヤは心強い笑みを浮かべながら大きな胸に拳をぶつけた。

 

「乗り掛かった舟だし? それに仲間の不祥事、スルーするわけにはいかないでしょ?」

 

 確かに。アヴローラは自分の問いが愚門だったことを知り、肩をすくめた。

 

「そうですね。それに重桜の方々に気付かれたら血祭りモノですし、人手が増えるのは頼もしい限りです」

「怖いこと言わないでよ……じゃ、行くわよ!」

 

 勢い任せにパーミャチ・メルクーリヤは玄関から飛び出す。

 が、外は雨が降っており、即座にUターンして帰ってきた。

 

「ちょっと! 雨降ってるの⁉」

「はい、私が食堂から帰ろうとした頃には降ってましたよ」

「なんで言ってくれないのよ!」

「逆になんで知らないんですか?」

「さっき起きたからよ!」

「あ、そう言えば」

 

 パーミャチ・メルクーリヤの怒りはそっちのけで何かを思い出したのか。アヴローラは拳を手の平に打った。

 

「何よ」

「食堂で指揮官さん見ました」

「……ナイスな情報よ。じゃあまず執務室じゃなくて食堂に行ってみましょう」

 

 その情報を聞き、パーミャチ・メルクーリヤは怒りを収め責務を優先した。

 そうこれが大人のあるべき姿。決まった……!

 心の中で愉悦に浸るパーミャチ・メルクーリヤ。しかしその雰囲気を壊すようにふと彼女の腹の音が鳴り響いた。

 

「……」

 

 それを聞き満面の笑みを浮かべた同僚は手をパンと鳴らし合わせ、首をかしげる。

 

「そうですね。クーちゃんのお腹もペコペコのようですし」

「それはどうでもいいのよ……よくないけど……」

 

 こうして二人は傘を差して食堂を目指した。

 指揮官を求め……そしてパーミャチ・メルクーリヤの昼食を求め。

 

 結局、どちらの目的も果たせなかったということは先述させてもらう。

 

 × × ×

 

 時は遡ることアヴローラが昼食を摂っているころ。

 

「う~。暑い、暑いわ……」

 

 ことの被害者兼犯人であるタシュケントは一人執務室へ向かっていた。

 

 ただその足取りは彷徨うようにゆったりで呼吸もどこか苦しそうだ。

 そもそも執務室に向かっている理由もこの妙な身体の火照りを抑えるために部屋のクーラーを最低温度にしてもらうように申請するため。

 

「きっとあのチョコが原因よね……あれ食べてから身体が変に熱いわ……」

 

 原因はわかっているけど何が作用しているのかはわからない。

 本当なら明石やヴェスタルと言った工作艦に見せる方が良いのかも知れない。

 ただそうするにしても真っ先に身体の熱だけはどうにかしたかった。

 

「あれ、タシュケント?」

 

 そんな中、ふと目の前から誰かから声がかかる。

 気付いたタシュケントが顔を上げるとそこには十三のバトルスターを持つ、英雄中の英雄であるユニオン所属のクリーブランドがいた。

 

「クリーブランド……ご、ごきげんよう……」

 

 こんな時に彼女と鉢合わせるなんて……。

 タシュケントは唇を噛む。

 

 クリーブランドは非常に面倒見の良い兄貴肌な性格で色んな艦船から好かれている。

 もちろんタシュケントも例外ではない。

 

 しかしいくら面倒見がいいとはいえ、時にはその親切心がアダになる場合がある。今がまさにそうだ。

 まさか盗み食いをして体調が悪くなっただなんて指揮官にだから言えること。

 他の陣営の艦船になんて口が裂けても言えない。

 

「あぁ、こんにちは! いつもと違う制服だからぱっと見気付かなかったよ。こんなとこでどうしたの?」

 

 いつもの調子でクリーブランドはタシュケントに社交辞令を交わす。

 しかし。ぱっと見気付かなかったとは失礼な言い方だ。

 まぁ、今日着ているのは普段の厚手のものではなく、チャパエフやガングートが着ているファーの付いた薄手の正式な制服。

 北方連合本国と違いここは冬以外暖かいため、春のいま、タシュケントはこのタイプを好んで着ていた。ついでに言うと耳がかじかむこともないためクマミミのついた耳当ても外していた。

 

 たかが服装が違うだけで気付かないなんて、いったいどこを基準にして人を見ているのか。

 その失礼な態度に怒鳴り散らしたかったが、話が長くなると感じたタシュケントは包み隠さず目的を話し、早々にこの場を去ることを目指した。

 

「あっそ。同志ちゃんに用事があって執務室に向かってるだけよ」

「同志ちゃん……あぁ、指揮官のことか。指揮官ならさっき食堂にいたよ?」

「えっ……」

 

 まさかのすれ違いに思わず動揺が表情に出る。

 だがたかが食事に出かけているだけだ。待っていればじきに戻る。そんなに驚くことではない。

 

 なのになんでこんなに驚いてしまったのだろうか。

 タシュケントは先程の表情を誤魔化すようにクリーブランドから顔を背けた。

 

「あ、あっそ! じゃあ執務室で待つからいいわよ」

「そっか」

 

 見た目は少し冷静を装っているが精神年齢は歳相応なのだと気付いたクリーブランドは笑う。

 

「でも大丈夫?」

 

 だからか。赤みのかかるその顔を心配そうに覗き込んだ。

 

「へっ!? な、なにが?」

「いや、なんか体調悪そうに見えるんだけど……」

「そ、そんなことないわ。気のせいよ」

 

 なぜ気付かれたのだろうか。

 原因に気付いていないタシュケントはとりあえずクリーブランドから顔を背ける。

 

「そうかな?」

「そうよ!」

 

 相変わらず折れない彼女に流石のクリーブランドも苦笑を漏らす。

 じゃあこちらも強引に実力行使と行きますか。

 

「失礼」

「ヒャッ!?」

 

 悪戯な笑みを浮かべたクリーブランドはタシュケントのおでこに手を付ける。

 完全に不意を打たれたタシュケント。咄嗟に彼女の手を払おうとしたが、いきなり風邪の時のような悪寒を触れられた部分に感じた。

 

「うーん、確かに熱はないみたいだ」

「……カ……」

「ん? わぁ!」

 

 更に顔を赤くしたタシュケントはクリーブランドの手を弾くと執務室の方へ駆けて行った。

 

「クリーブランドのバカ!」

 

 と一言残して。

 

 どんどん遠くなるタシュケントの影。

 クリーブランドは彼女の背を見つめるだけで特に追いかけようとしない。

 

 そして完全に見えなくなったと同時に近くの壁に背をかけ、深いため息を吐く。

 

「ヤボなことしちゃったかな~」

 

 たまにやってしまう悪い癖だ。

 必要とされていないのに勝手に手を出して怒られる。いわゆるありがた迷惑都いう奴なのだろう。

 苦笑を零しながらクリーブランドはぼやく。

 

 まっ、指揮官にあったらタシュケントが執務室で待ってることを伝えようか。

 そう思うとクリーブランドは食堂の方へ走っていた。

 

 × × ×

 

 『空色の巡洋艦』の異名を持つ駆逐艦、タシュケント。彼女はアヴローラたちと同じく北方連合に所属している。

 だが出身は北方連合ではなくサディアであり、もちろんみんな良くしてくれるのだが、どこか孤独感を感じざるを得なかった。

 

 だからか。色んな国々の艦船を指揮する指揮官とはきっとサディアについて話が出来ると期待していた。

 その期待は見事に的中。サディアのことはもちろん、更に彼は他の国の文化を交えて話してくれる。

 そしてその知識は彼女の周りに友人を作ってくれた。

 

 そして、いつのまにか期待は恋に形を変えていた。

 

 

 執務室。

 

 誰もいない。時計の音しか聞こえない部屋でタシュケントは膝を抱えていた。

 身体の火照りは治まる気配がない。ただただ気怠く、触れる部分に悪寒が走る。

 だが風邪と違い、妙に胸の鼓動が早く息苦しくて、緊張に似た高揚感を覚える。

 

 ぴとっと頬をくっつける壁の冷たさが心地よい。

 しかし壁はすぐにぬるくなり、頬にはまた熱がこもる。

 

 その煩わしさもさる事ながら、何故か人肌を強く求めてしまう。

 一人でいるとこに寂しさを感じているということなのか。

 

 たまたまというだけなのに。

 体調が悪いのが手伝ってだろう。込み上げてくる寂しさを抑えることができない。

 

「同志ちゃん、まだかなぁ……」

 

 行き場のない寂しさを埋めて欲しい。

 

 そう思ったタシュケントはふと壁にかけられた時計を見上げた。

 しかし残念ながらここに来てから時間はさほど経っていない。「まだ」という言葉を使うにはいささか短かった。

 失望したタシュケントは胸と膝の間にできた谷に顔を埋める。

 

 チクタク、チクタク。

 相変わらず時計の音だけが鳴り響く。

 それだからか、全ての窓を閉じているというのに雨の音が謙虚に聞こえてきた。

 

「えっ、予報では曇るだけで雨は降らないって言ってたのに……」

 

 音を聞き、驚いたタシュケントは立ち上がり窓の外を覗く。

 どしゃ降りと言うわけではないが、その降水量は決して弱くはなく、もし近くへ出歩くにしても傘は欲しい程度には降っていた。

 

 傘、持って行ってあげようかな……。

 

 雨を見つめ一瞬そう思ったが、いま外に出ては体調を更に悪化させる可能性がある。

 もしそんなことしたら指揮官に怒られてしまうだろう。

 

 タシュケントは寂しく首を横に振り、その考えを捨て、また床にペタンと座った。

 

 そう言えばこの軍港に来て体調を悪くしたのは初めてかもしれない。

 特に無茶をしたわけではないのだが……と言うか、きっとあのチョコが原因なのだが。

 原因はなんにせよ昔なら一人でなんとかしたのに今回は真っ先に指揮官の元へ行ってしまった。

 

 気温だったりなんだかんだ理由をつけていたけれども、もしかしたら寂しかっただけかもしれない。

 さきほどクリーブランドに指揮官が執務室にいないと言われショックを受けたのはきっと寂しさが増幅したからだろう。

 

 雨の音が静寂な部屋に響く。

 その音はさっきより強くなっており、雨の勢いが増したことをタシュケントは理解した。

 

 食堂はこの執務室から案外離れたところにある。室内通路で繋がっていればいいのだが、残念ながら別の建物内だ。

 つまりこの雨を掻い潜ってでもしてこない限り、雨具を買うという手順を踏まないとこちらに来ることは出来ない。

 もっと短絡的に言うならそれなりに時間がかかるということだ。

 

 雨を恨めしく思う。

 もし雨が降らなかったら指揮官は今ごろここに帰って来てたかもしれない。

 もし雨が降らなかったらこの身体の火照りも相対的に盛り上がらなかっただろうに。

 

「ダメ……暑い……」

 

 そのまま床に寝転がるタシュケント。ひんやりとした床が触れる肌の熱を僅かに奪う。

 しかしそれだけでは足りない。上を、上着を脱ごう。

 

 タシュケントは本国で愛用していた服じゃない、北方連合の正式な制服を脱ぎ捨てる。

 その際、さきほども感じた風邪の悪寒に似た感覚が腕を駆け、顔をしかめた。

 

 それでも先ほどと比べ、多少は涼しくなった。タシュケントは満足するように頷く。

 寮を出る前に下を半袖のワイシャツに着替えたのだが正解だったようだ。

 肌の露出面が増え、壁に接する部分が増えたため、幾分か楽になれた。

 

 しかしそれでも僅差でしかなく、「暑い」という感情を拭うには不十分だった。

 だったら。

 

 タシュケントはワイシャツのボタンに指をかける。

 あまりはしたない格好を晒すのは好きではない。その理由は、きっと彼はそういう女性を嫌うという先入観も含んだ考えから来た見栄。

 彼女自身は元々気にしない。というより積極的に脱ぐタイプの性格だった。

 

 どうせまだ帰ってこないのだ。多少自堕落な格好になっても大丈夫だろう。

 本心が零れたタシュケントはボタンを外していく。

 

 ボタンを外すとシャツの中にひんやりとした空気が流れ込んできた。

 下に着ているブラウスは汗で濡れており、求めていた感覚を増幅させる。

 

 気持ちいい……。

 手で風を仰ぎながらやっと満足のいく涼しさを手に入れたタシュケントは笑みを浮かべる。

 

 だがそんな中、そわそわと妙にむずがゆい感覚を覚える箇所が一点。

 汗で透けて見えている、桃色の乳頭部分だ。それに釣られ、身体全体にブラウスが汗でくっついていることに気付く。

 あまり大きくないのでブラジャーをつけていない胸のラインもくっきりとわかる。

 

 数秒手を止め、胸を見つめる。

 しかし、指揮官になら別に見られてもいいや。と、彼女は見栄を捨て至福を選んだ。

 そしてタシュケントは更なる涼しさを求め、胸を下に床に伸びた。

 

 その時である。不意に全身が拒絶するように跳ねた。

 

「……えっ」

 

 なに、今の感覚。

 

 何が起きたのか理解できないタシュケントは身体を起こし全身を見る。

 何も変わってない。身体が熱い以外はいつもの自分だ。

 

 ということはどこかが過敏に反応した?

 タシュケントは恐る恐る両手で頬を触れ、そのまま下に降ろす。

 

「ひャンッ!」

 

 その考えは当たっていた。

 乳頭に、いや乳房に触れた瞬間、全身に電撃が走ったような感覚が襲い掛かった。

 その痺れはすぐにすぐ取れず、大きく身体を痙攣させる。その痺れは身体だけでなく思考の自由も奪ってしまう。

 

 しかしそんな疎かな思考でもあのチョコの正体ぐらいは朧気だが理解できた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ! 誰よ、あんなとこに媚薬入りチョコを置いたバカは……!」

 

 静かな部屋で恨めしく犯人へ非難の言葉を吐くタシュケント。

 だが犯人が誰だろうと、その者に対し文句を言おうと現状は変わらない。

 それどころか乳房へ故意に触れたことによって完全にスイッチが入ってしまったようだ。なんとなく感じていた人肌恋しいという感情は急激に高鳴り、爆発した。

 

 もう人肌だったら自分のでもいい。欲しい、欲しい。この寂しさを紛らわす温もりが欲しい。

 本当にあれが媚薬だったのならこんなとこにいてはダメなのに。指揮官が帰って来る前に工作艦の処へ。

 

 本心と媚薬によって盛られた心が対峙する。

 しかし身体の熱が正常な判断を否定し、寂しさによる疼きは求めてはいけないものを求めてしまう。

 

 ――――同志ちゃんに抱いて欲しい。

 

 一瞬浮かび出た考えを顔を振り、必死に否定する。

 だが思ってしまった時点で時遅く、右手は指揮官を思い、股にあてがわれていた。

 先程の痙攣で漏れた愛液はパンツをぐしょぐしょに濡らし、肌で感じ取らなくても触れるだけでどこにどの器官があるかわかる。まるで他人の身体に触れるように繊細に指を動かし、タシュケントは最も快楽を求めれる場所を探す。

 

 快楽を望む心、拒む心。

 もうなにもかも訳が分からなくなってしまう。

 ただ理解できたのは指揮官と身体を弄りあっている自分を今の自分に投影していると言うこと。

 寂しさを指揮官に押し付けていると言うこと。媚薬で浮き彫りになった報われない本心を慰めているということ。

 

「ッ……ンク。ァ、ウッ! あァ、クゥ……」

 

 布越しにある桃色が零れている恥裂を広げる。

 違う。

 恥裂を挟むようにせりあがっている柔らかな双丘を弾く。

 違う。

 

 じゃあ――――。

 

 タシュケントは残った性感帯に手を伸ばす。

 

「きゃウッ!」

 

 指が肉芽に触れた瞬間、身体が大きく跳ねた。

 ただ触れただけなのに、過敏に反応してしまったことにタシュケントは驚く。

 

 初めて意図して触れる肉芽。

 媚薬の効果があってだろうが、触れるだけでこんなにもキモチイイなんてタシュケントは思いもしてなかった。

 

 もしここを快楽を感じなくなるまで触れたらどうなってしまうのだろう。

 本能は危険な思考だと教えてくれるが、悦楽に微笑むタシュケントの好奇心は本能を振り切り止ろうとしない。

 それどころか更なる試みに手を伸ばそうとしていた。

 

 触れただけであれだけの快楽が襲い掛かってきたのだ。

 摘まんだりしてみたらどうなるのだろうか。

 

 肉芽を触れていた二本の指がゆっくりと開く。そして柔らかく両端に添えると指先に力を入れた。

 

「んんッッッ!!」

 

 こんなの堪えれるはずがない――――!

 瞬間、込み上げてきた快感を歯を食いしばり何とか耐えようとする。

 だが声を抑えれただけで奇跡だろう。脳内に広がる白は視界にも及び、気付けばその場に倒れていた。

 

 これが絶頂……。 

 

 これ以上やったら自分が自分でなくなってしまう。そんな感覚に陥る。

 それなのに笑みを止めることが出来ない。

 

 初めて感じた性の快楽。

 一度感じてしまうともう戻ってこれなくなる、麻薬に似た存在と誰かから聞いたことがある。

 その考えは間違っていないことをタシュケントは身をもって知った。

 

 しかし子供を作るにはこの膣に指揮官のモノを受け入れなければならない。

 いまは媚薬の効果があるが、それはそれで先程とは違う幸福感が襲い掛かるのだろう。

 ただ肉芽をいじっただけでこれなのに絶えることが出来るのか?

 恐怖が微笑として浮かび上がる。

 

 ……だがそんな未来は果たして来るのだろうか?

 

 ふと我に戻り現れた疑問。

 皮肉にもその考えは孤独感を生み、性欲を抑えた。

 

 一人俯くタシュケント。

 そんな中、いきなり目の前の扉が開いた。

 

「え――――」

「タシュケント悪い。急に雨が降って来て……」

 

 いきなり帰ってきた指揮官にタシュケントは思わず呆気を取られる。

 それ以上に執務室で半裸になって、更に床に倒れ込んでいる彼女に指揮官は驚いた。

 

「おい、タシュケント! 大丈夫か、おい! しっかりしろ!」

 

 汗でぐっしょりと濡れた彼女の身体を抱きかかえる指揮官。

 その姿があられの無いものでもそんなものと目もくれず、ただ必死に、そしてひたすらに彼女の名を呼ぶ。

 

「うるさい」

 

 だが媚薬の効果でけだるい以外は至って元気なタシュケントは、いきなりの介抱に驚き目を見開いたが、すぐ素に戻り冷たくそう言い放つ。

 そのいつもと変わらない調子を見て、指揮官は深くため息を吐いた。

 

「……良かった」

 

 そして彼女を強く抱きしめる。

 

 おそらく本気で心配してくれたのだろ。

 だが好意を抱き、更にさきほどまで彼を思って自慰にふけていたタシュケントにはその抱擁はあまりにも気恥ずかしく、とりあえず彼と距離を取りたかった。

 

「あっそ。それより早く放して。苦しいわ」

 

 いつものぶっきらぼうの態度に指揮官は笑みを零す。

 

「あぁ悪かった。クリーブランドから体調が悪そうなタシュケントが執務室で待ってる。って聞いてな」

「そう」

 

 やっぱりあのお人好しか。顔を背け、タシュケントはため息を吐く。

 

 荒い呼吸から急いで帰ってきたと推測する。

 クリーブランドもお人好しだが、この人も十二分にお人好しだ。

 

 まぁお人好しじゃなければ好意を抱いたりしないか。

 ホッと胸を撫で下ろしている彼を横目で見ながら彼女は肩をすくめる。

 

 しかしあまりにもタイミングが悪い。

 原因を告白することはやぶさかではないが、どうやら先の自慰で発情状態になっているようだ。

 考えてはいけない欲求が込み上げてくる。

 

 辛そうに両肩をかかえるタシュケント。

 そんな彼女を見て指揮官はもどかしさを覚える。

 

 何か、何かできることはないか?

 

 そして気付いたのはブラウスが肌に張り付くほどびっしょりとかいた汗。

 脱水症状など気になる点はいくらかあるが、その前にあんな状態でいることに不快感を感じているのではないか、と思った。

 

 それと同時にそのブラウスを持ち上げる二点の存在に気付く。

 いくら発達していないとは言え女性の胸だ。気恥ずかしさを覚えずにいられない。指揮官は咄嗟に彼女から視線を背けた。

 

「汗びっしょりだな。そのままだと風邪になりかねないし、まずは風呂入らないか?」

「え?」

 

 そう言いながら指揮官は廊下を指さす。

 

 この軍港には各々の部屋に配備されているシャワールームと離れにある大浴場の他、指揮官や秘書艦が自室に戻れないときに利用する浴室が存在する。

 もちろん大浴場と違い、そんなに大勢が入ることは出来ないが、二人ぐらいなら入ることは出来るぐらいには大きかった。

 

 もっともこの時、指揮官は焦りに焦ってその状況を想定せずに口を走らせていたのだが。

 

「俺も雨で濡れてるし」

 

 雨で濡れた髪を掻きむしり、笑いながら言う指揮官。

 よく見ると制服も濡れており、雨の中走って帰ってきたということがわかる。

 

 しかしタシュケントはそんなことよりも遠回しに混浴しないか、と誘われたことに耳を疑っていた。

 こっちはドキマギしているのに、なぜそちらはデリカシーの欠けたストレートな言い方が出来るのか。

 

 思い当たるのはもしかするとそういうことを想定していない、ということ。

 そう思い至ったタシュケントはぶっきらぼうに彼に尋ねる。

 

「同志ちゃんも一緒に入るの?」

「うぇ!?」

 

 その問いに指揮官はやっと自分が何を口走っているのか理解し、自分で驚く。

 やっぱり無自覚か。想定内の反応だったが少し期待していたタシュケントは呆れた態度を取らざる負えなかった。

 

「いや、流石に混浴はなぁ。ははははは~」

「じゃあ行かない」

 

 そして改めて口から出た答えを聞き、彼女は秒で拒否した。

 

「そ、そっか」

 

 まぁ誘っておきながら一緒に入れないとかわけわかんないしな。

 でもだからと言って傘があるとはいえ、このまま雨風の降る中を歩かせるのは余計体調を悪くさせる気がする。

 

 それに言い出しっぺは俺だ。責任は取るべきだろう。

 でもでも不純な動機ではないとは言え、混浴と言うのは、混浴と言うのは!

 

 頭を抱えブンブンと振り回す指揮官。

 そんな彼を見兼ねた彼女はぺちんと彼の両頬を叩き掴み、自分の目と目を合わさせる。

 

「タ、タシュケン――――」

 

 いきなりのことに指揮官は驚く。だがそれよりもその後の行動にもっと驚いた。

 チュパ、と水を開く音が時計の音と同じくらい静かに響き、そして突然鳴った雷と同じぐらい指揮官の胸に響いた。

 

「――――」

 

 本当に少しの間だけ重なった唇はゆっくりと離れていく。

 その汗に蒸れた小さな花弁は仄かに暖かく、雨に濡れた彼の唇を温めた。

 その代わりに得た蜜はゆっくりと糸を作る。

 

 糸で出来た橋が小さな音を立て崩落する。

 それはまるで二人の関係の様で、見届けたタシュケントは虚しさを秘めた瞳を静かに閉じた。

 

 もう後戻りはできない。

 それに不祥事とは言え、誘ったのはそちらなのだ。責任をもって後始末を任されるのは至極当然のことだろう。

 

「一緒に入ってくれないとヤダ」

 

 しばらく開いた口が閉じなかった指揮官だったが、タシュケントのだだをこねるような要求で我に返る。

 

「で、でもな、タシュケント!」

「誰かに媚薬を盛られたの。だからずっと身体が熱い」

 

 焦り乱れる思考の中、指揮官は必死にタシュケントを説得しようとする。

 だが突然出てきた言葉にまた沈黙する。

 

「媚薬……!?」

 

 驚くのも無理はないか。そんなもの漫画やドラマのなかだけの存在。そう思っていたに違いない。

 彼女もまたそう思っていた。

 

 だが嘘ではない。

 事実、この胸の高鳴りは自分では抑えきれないほど大きくなっている。これを媚薬のせいではなく何のせいだと言うのか。

 

 もし知っているのなら教えて欲しい。

 この身体に。いつも色んな知識を教えてくれるように優しくとは言わない。暴力的でもいい。

 

 未だ戸惑う指揮官。

 そんな彼の胸にワイシャツを脱いだタシュケントは自身の身体を押し付け、今度は彼女から指揮官に抱き着く。

 

「でも同志ちゃんになら抑えれるでしょ? だから来たの」

「抑えるって……」

 

 指揮官は固唾を飲み込む。

 

「〝抱け〟ってことか?」

 

 タシュケントは頷く。

 だが指揮官は彼女の回答を見て目を閉じ、首を横に振った。

 

「辛いとは思うけど明石のところに行こう。きっとすぐに処置してくれると思う」

 

 両肩に手を添え、考えた対抗策を優しく伝える指揮官。

 しかし対抗策と言えば聞こえはいいが、それは拒絶の言葉。

 

 おそらく初めて指揮官に拒絶された。

 そのショックは計り知れないもので、彼にしがみ付いてないと今にも崩れ落ちてしまいそうになる。

 

 そのしがみ付く柱に否定されたのに女々しくもしがみ付いている現状は馬鹿馬鹿しくて。

 思わず笑いが込み上げてくる。

 

「……あっそ」

 

 彼が悪いわけではない。

 自分が悪いわけではない。

 おそらく悪いのは媚薬を仕込んだやつだ。

 

 でも自分も悪い。

 

 これはこの状況を利用しようとした罰だ。

 もっと手段を踏んで告白したらもっと違う未来があったかもしれない。

 

 だが自分はこの選択を取ったのだ。

 後悔は、ない。

 

「同志ちゃんって自分がたぶらかしたクセにいざ関係を持とうって言ったら否定するサイテー野郎だったんだ。あぁそう。あっそぉ!!」

 

 指揮官から身体を離すとタシュケントは嘲笑しながらそう吐き出す。

 

 安い挑発だ。

 もちろん指揮官も彼女が本心からその言葉を言っていないことぐらい理解していた。

 

 しかし彼女の浮かべている涙は本物なのだろう。

 それほどまでに抱いて欲しい。いや関係を前進させたいのか。

 

 自分は〝指揮官〟という立場がある。

 しかもこの軍港にいる百は超える艦船全ての指揮官だ。一艦船の言うことをおいそれと容易に容認するのはその立場に立つ人間として失格なのだろう。

 

 だから、この回答は間違いなのだろう。

 

 タシュケントは立ち上がり、脱いだ服を回収しに行こうとする。

 今後のことは部屋に帰って考えよう。この母港から去ることはもちろんだが、とりあえず今は一人で泣きたかった。

 

「えっ……?」

 

 指揮官はそんな彼女の手を不意に握った。

 

「なによ、離してよ! 明石のところはちゃんと行くわ。子供扱いしないで!」

 

 何も言ってないのにタシュケントは指揮官の手を振り解こうともがく。

 

 子供扱い、か。確かに最低野郎だ。

 彼女の気持ちに気付かず妹のように接していたのだから。

 

 それに〝たぶらかす〟。

 良い顔して、その場限りの言葉で見繕ってきたことに対する罰だな。

 

 指揮官は心の中で自分に失笑しながらも反省し、そして彼女を受け入れることを決めた。

 こんな自分を求めてくれている彼女を。

 

 彼女の怒声は止まらない。

 しきりに言い立てる言葉はやがてただの罵倒になり、気付けば声は震え、涙どんどん溢れ出してきた。

 

 違う。そんなことを言いたいんじゃない。

 素直になれない、怒りの感情が暴走し思ってもいないことまで口走ってしまった彼女はぷるぷると首を横に振り自己否定する。

 そんな彼女の手を指揮官は強引に引っ張った。

 

「キャ――――」

 

 そして流れるように彼女を抱きしめ、その小さな唇を奪う。

 これを驚くなという方が無理な話だ。ついさっきまで酷い罵倒の言葉を受けたと言うのに、その口付けは非常に優しく、いつもの指揮官を彷彿させるものだった。

 

 離れる唇。彼の顔に怒りの表情はない。

 ただ悲しく目を伏せている。

 

「同志、ちゃん……?」

「ごめん、タシュケント。俺が間違ってた」

「え……」

 

 なにもかも理解できないタシュケントはただすがるように彼の名を言う。

 そんな状態なのに続けて出てきた謝罪の言葉に戸惑わないわけないだろう。

 

 指揮官のタシュケントを抱きしめる力が少し強くなる。

 

「俺、お前のこと妹のように思ってたんだよ。色んな事について聞いてくるし、悪態をつきながらだけどなんでも手伝ってくれる。飯も結構一緒に食べるし、ヒヨコみたいに後ろからついてくる。本当に本当に妹のように思ってた。でもお前は違ったんだな。と言うかそりゃそうだよな。逆に俺のほうが感覚狂ってるよ」

 

 つまりは最初っから恋愛対象に含まれていなかったというわけだ。

 真実を知ってスッキリした部分もあるが、それはそれで悲しいところもあった。

 

 それでもタシュケントは指揮官の気持ちを受けとめ、謝罪を否定する。

 

「そんなことない。数多の艦船の指揮官をやっているんだから、一兵器の気持ちをいちいち汲むなんて無理な話よ」

 

 当たり前と言えば当たり前の話だ。

 ぴちょん。ふとタシュケントの頭に雫が落ちる。

 

「ねぇ、同志ちゃん。ひとつ聞いていい?」

「なんだ?」

「どうして雨の中を傘を差さず、走って帰ってきたの?」

「そりゃ妹が体調悪くしてるんだ。飛んで帰るぐらいするさ」

 

 つまらない質問だった。

 優しく頭を撫でる指揮官から顔を背け、俯く彼女の顔はすぐに真っ赤になった。

 

 たしかにこの軍港には沢山の艦船が在籍している。

 しかし妹のように特別視している存在はタシュケントぐらいだろう。そのことを誇らなければならなかった。

 

 だが彼女が望んだのはその先の関係。

 虚しさが心を染める。

 

「でもな。もうタシュケントを妹として見るのをやめるよ」

「え……?」

 

 それなのに、唐突なこの発言は虚しさに染まったタシュケントの心を不安に塗り替える。

 

 それはもう特別な存在として見ないということか。

 さっきのキスはその詫びとでも言うのか。

 これからもし抱かれたとしてもそれはタシュケントの満足感を埋める胡蝶の夢だというのか。

 

 小さかった孤独感が不安と合わさり大きく膨張していく。

 

 

 ――また、独りぼっちになってしまうのか。

 

 

「これからは妹でもなく、艦船でもなく、一人の女として見る。だからさ、そんな悲しい顔しないでくれよ」

 

 気付けばまた涙を流していた。

 しかしそれが杞憂だと気付いた瞬間、タシュケントは涙に濡れるその眼をキッと鋭く尖らせる。

 

「……あっそ! そんなの勝手にすればいいじゃない! タシュケントは同志ちゃんに対する心は変わらないんだから」

 

 変わらないんだから、驚かすことを言うな。

 安堵と共に怒りが込み上げる。その怒りを籠め、タシュケントは指揮官の胸に拳が打った。

 それを受け、指揮官は謝りながら笑う。

 

 そして気付けばまた口付けを交わしていた。

 今度は先程みたいな軽いものではなく深い、深い口付けを。

 

「んッ、んむ、はぁはぁ、ンクゥ……」

「んちュッ、はみゅ、はあぁ、ちゅぴゅ」

 

 舌と舌が絡む。

 時たま息をするために少し口を離すが、まるで磁力でも働いているかのようにすぐに口を重ねる。

 

 互いの口の中は蕩けきり、もうどちらの体液かわからない。だがまだ二人は相方の唇を求めた。

 そして唇を離すころには指揮官はタシュケントを押し倒し、盛り上がる男性器を彼女の恥裂に押し当てていた。

 さきほどまで自慰をしていたのだろうか。入り口はぐじゅぐじゅになっており、前戯の必要はないようだ。

 

「入れるぞ?」

「……うん」

 

 もう一度だけ軽い口付けを交わし、指揮官はタシュケントの中に沈めていく。

 

「あぐッ、アアッ! 痛ッ、ハァハァ、ンクゥ……」

 

 処女。

 彼女の体格が子供に近いこともあり、キツいことは予想していたが、まさか未開発とは。

 痛みで歪む彼女の顔を見て指揮官は確信する。

 

 まだ半分も入っていないのに、この先大丈夫なのか?

 ――――壊してしまわないか?

 

「同志、ちゃん……?」

 

 動きが止まったことに疑問を持ったタシュケントが声をかけてきた。

 気付けば不安が表情に出ていた事にも気付く。

 

「あ、あぁごめん。辛かったら言ってくれよ?」

「怖い?」

 

 ふと零れた本心を見据えたような言葉が指揮官の心臓を跳ねあがらせる。

 

 そんなわけないだろう。

 と笑って誤魔化したかったが、浮かべる笑みは苦虫を噛みしめているような顔でとてもじゃないが誤魔化せない。

 

 そんな彼の右手にタシュケントの手が絡んだ。

 

「ありがとう。でも大丈夫。タシュケント怖くないよ。だって同志ちゃんと一緒になれるんだもん」

 

 愛らしい笑みを浮かべ俺を安心させようとしているのか。しかし握る手は小刻みに震えている。

 そうだ。恐怖するのは彼女の方。その彼女が〝大丈夫〟と言っているのだ。それを信じてやらなくてどうする。

 

「そうか……」

 

 〝ごめん〟と謝罪の言葉が浮かび上がる。

 釣られてその言葉を発しそうになるが指揮官は首を横に振り掻き消す。

 

「ありがとう」

 

 それを聞きタシュケントは笑顔で首を横に振る。

 そして手を強く握りしめると彼女に体重をかけ、力任せに肉茎を中に沈めた。

 

「んんんああ、あぁぁぁ、あああぁぁッ!」

 

 悲鳴が漏れ表情も苦悶を浮かべている。

 

「大丈夫か!?」

「うんッ。だから、キスを……、キスをして?」

 

 相当痛いのだろう。だから他のことで気を紛らわしたい。

 

 いや、違う。

 確かに痛いだろうがこれは祝福だ。愛する人と全身で共有したい。ということだろう。

 

 気付けば指揮官はタシュケントの唇を奪っていた。貪るように。

 そして同時に腰も動かし本格的に行為を始める。

 

「痛くない?」

 

 ゆっくりと、動きも短くしているが一応彼女に反応を見る。

 これも媚薬の効果か。さきほどは悲鳴を上げていたのに、いまは小刻みながら喘ぎ声をあげていた。

 頷いているのも嘘ではないのだろう。

 

「もっと、動いても、大丈夫……」

 

 そう承諾を受けた彼は動きを大胆にする。

 狭い膣内をまるで穴を掘るように押し進む肉茎。

 最奥の壁を叩いたかと思ったらまた出口に逃げていき、元の形に収縮した部分が虚しさを覚える。

 

 そのぶんまた掘られた時、倍以上の幸福感が広がった。

 じゅぷじゅぷと艶やらしい音を奏でる膣は先程までのぎこちなさはなく、その幼さを感じる身体はいつの間にか大人の身体に変貌していた。

 

 本心としては妹として接してきた彼女の変化に少し寂しさを覚えるが、身体は自身を受け入れるほどの器に成長したことを喜んでいるようだ。

 どうしようもない本心に苦笑する。

 

「アッ、アッ、ンンッ!」

 

 奥を突かれる度、絶頂に似たような白が滲む。

 甘い電撃は身体中の生体電流を操り、彼を求めるよう操作されているようで。

 その感覚に嫌悪感を感じると共に悦に浸っている自分がいる。

 

 好き。

 

 もうそれ以外の言葉が思い浮かばない。

 気怠さを表す言葉も、他人行儀な言葉も、全てが好きに置き換わる。

 

「同志ちゃん! 好きッ、好き! 愛してる!」

「俺も、俺もタシュケントのことが好きだ! 愛してる!」

 

 共鳴するように愛を告白する二人はまるで呼吸するように互いの唇を求めた。

 それはもうキスなどとという生易しいものではなく、肉棒が無い性交と言っても過言ではない。

 

 強く抱き着かれ軋む痛みでさえ快楽になる。

 もうなにが指揮官のもので何がタシュケントのものなのかわからない。

 媚薬は身体の境界線すら曖昧にした。

 

「クッ、あうっ……」

 

 腰が止まらない。

 最初は小さすぎた膣も気付けば彼専用の穴に作り替えられていた。

 

 だからか、襲い掛かってくる快楽はたまらないほど強く、気を抜けばすぐにでも果ててしまいそうなほど気持ちいい。

 

「ごめん、もう出そう……!」

「うんッ、同志ちゃんの、たくしゃん出して!」

 

 だからせめてまだ余裕が残っているうちに告白する。

 その告白をタシュケントは躊躇なく受け止めた。

 

 膨らむ肉茎。

 避妊具をつけていないから抜かないといけないのに、快楽のせいで身体が言うことを聞かない。

 

「うっ、ぐあぁ……!」

「アちゅいの、がァッ! ンンンッ!」

 

 結局、中に注がれてしまった精子。

 徹夜続きだったからか、尿のように射精は続く。

 

 いつまでも終わらない射精に身体を震わせるタシュケント。白液の熱が彼女の最後の理性を溶かす。

 気付けば指揮官に身を揺らされていた。

 

「おい、おいっ! タシュケント!?」

「同志、ちゃん……?」

 

 気を失っていたのか。余韻で定まらない視点は彼を捉えようとする。

 

「意識はあるみたいだな、良かった……」

 

 目を開いた彼女を見て指揮官は胸を撫で下ろす。

 そんな彼に掴まりタシュケントはなんとか体を起こす。

 

「大丈夫か?」

 

 まだふらつく彼女の腰に手を添え、一言声をかける。するとタシュケントは唇を伸ばしてきた。

 

「キス」

 

 指揮官は微笑し、彼女の要求に答える。

 体力が消耗していることもあり、口付けの時間はあまり長くは続かなかった。唇を離すとぐったりと彼の肩に顎を掛ける。

 

「あ……」

 

 その際、窓の外が見えタシュケントは思わず声を漏らした。

 

「ん? あぁ」

 

 予定にない雨が降っていた外は綺麗に晴れていた。

 

「晴れたみたいだな」

 

 その天気はまるで自分たちみたいで、指揮官から見えないことをいいことに、タシュケントはニンマリと満面の笑みを見せた。

 

「ねぇ、同志ちゃん」

「どうした?」

「そのエッチをしてくれたってことは恋人として見てくれるってことよね?」

「あぁ、最初に言ったろ。女として見るって」

 

 女とは彼女という意味だったのか。

 なんとも回りくどい隠喩を使われていたことに思わずムッとする。

 

「あっそ!」

 

 しかし本題はそのあとだった。

 

「じゃあ、その……」

 

 口ごもるタシュケント。指揮官は首を傾げる。

 

「お、お風呂一緒に入ろ?」

 

 あぁ、なるほどそういうことか。

 彼女の意図を理解すると彼はタシュケントをゆっくり地面に降ろす。

 

「あぁ、わかった。いま湯を入れてくるからちょっと待ってて」

「……あっそ。待ってる」

 

 悪態をつきながら顔を背けるタシュケント。

 それが照れ隠しだと気付くと指揮官はクスリと笑い浴室へ向かった。

 

 ただそれは性交で乱れたことについて恥じたわけではないことを彼は知らなかった。

 

「アナタ……いや違う。指揮官ちゃん? なんか他人行儀ね。うぅ……」

 

 結局言えなかった。

 恋人になったのだから呼び名を変えていいか、ということを。

 

 × × ×

 

 一方、来た頃にはすでに本番真っ最中で出るに出れなかったアヴローラとパーミャチ・メルクーリヤの二人は廊下でコソコソと話をしていた。

 

「どうすんのよ、これ」

「う~ん、ウ〇ミン星をドッカ~ン☆ させるだけじゃ済みそうにないですね」

「どこの星よ、それ……」

 

 冗談で場を誤魔化すアヴローラにパーミャチ・メルクーリヤはすかさずツッコミを入れる。

 だがその現実逃避したい気持ちもわからなくはなかった。

 

 しかし現にタシュケントは指揮官と恋人関係になってしまった。

 それを憎まず祝福するのが同僚であり大人のレディがとる行動だろう。

 

「まぁとりあえず二人の門出を祝うと共に本土から数名ボディーガードを呼びましょうか」

「そうね。あとミンスクをしばらく全寮の雑務係にさせましょ」

「賛成です」

 

 その後、大鳳赤城の乱やシリアス事件、ハムマン911など様々な出来事はあったものの、タシュケントは無事指揮官の正妻として迎え入れられ、末永く幸せに暮らしましたとさ。

 

 めでたし、めでたし。

 




この度はお読みいただきありがとうございました。

「ここが良かった」と思った点がございましたら、是非感想の方へご記入頂けたら幸いです。
また「ここはダメだった」という点もご遠慮なく書き込んでください。
次回作への意欲や改善点に繋がります。

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