狐月の誓い 作:じゃじゃじゃ
――狐の子と初めて出会ったあの日。
ぼくは確かに、狐の子に自分のを挿れて、それで、腰を動かして、……。
けれど、思いとどまって、射精を、しなかった。
例え大好きな人でも、かわいい女の子でも、狐の子でも、勃起してても、止められそうになくても……。
その時のぼくは何故か沸き起こってくる精液を必死に目をつむって堪えた。
思い出す。ぼくを引き止めたのは……狐の子のすがるような儚い表情だった。
それを見てどうしても射精出来なかった。どんなにしたくても、できなかった。
それは同情とかじゃなくて……ただ、狐の子のことが大好きだったから……。
……自分でもよく分からないけれど、確かにそうだった。
そのことに気が付いて、けれどそれを上手く言葉に表すことができず、狐の子の方を向く。
……すると。
「んん……!」
狐の子はぼくの口に自分の口を合わせてきて。
ぬるぬるとした狐の子の舌が口の中に入ってくる。
「ん、な、なにを……?」
……?
突然の狐の子の行動に困惑する。
「ちゅ、んあ……分か、らんか? 接吻、ん、……じゃ、よ」
お構いなしに狐の子の舌は激しくぼくの舌を蹂躙していく。
お互いの唾液を交わしあって、頭が真っ白になっていく。息もできないぐらいに、激しい。
こんなに接吻が、こんなに気持ちいいだなんて。
おかしく、なっちゃいそうだ……! 気持ちいい、気持ちいい……!
「ん、ちゅく……どう、じゃ? わたしの、ん、ちゅぶ、した、は」
ぼくは目をつむってただ押し迫ってくる快感を感じる。
気が付けば、激しく舌を動かして、狐の子の期待に答えていた。
相手の口の中に舌を入れて、お互いに舐め回す。その内に、下半身に違和感が……。
段々と全身が熱を帯びていって、あそこが同時にそそり立ってきて……。
「ん……ぷはあ」
長い接吻が終わって、狐の子とぼくは口を離して、見つめあう。
「ど、どうして、いきなり……?」
質問に、狐の子はただ可笑しそうに笑って。
「そうは言っても……」
ぼくの手を引いて、岩の上から飛び降りた。
急なことだったので、ぼくは地面に尻餅をついてしまう。
狐の子はすぐに、ぼくのちんぽの、さきっぽをつつ、となぞり。
「うっ……! そこは……!」
「もう、勃っておるじゃないか?」
また、びくん、とちんぽが一段と大きくなる。く、くすぐったい……!
「ふふふ、ここは正直じゃな」
そう言って狐の子はするする、と袴を脱ぎ始め、慌てて目を逸らす。
「おかしな奴じゃな。わたしの裸なんぞ、ずっと見ておったろう?」
「で、でも……!」
恥ずかしながらもちらちらと横目でその様子を見てしまう……。
「……ありがとうな。おぬし」
狐の子は服を脱ぎ終わると、ごろん、とその場にうつぶせに寝っ転がって、言う。
おっぱいも、まんこも何も隠れていなくて……。
「そ、そんな……ぼくは何もしていない」
お礼なんて言われる立場じゃない。
「くふふ、おぬしはほんとに謙虚じゃなあ……」
口元に手を当てて狐の子は笑う。
「わたしはおぬしに何かお礼がしたい。――だがな、悲しいことに今わたしは何も持っていないのじゃ」
狐の子は明るい口調で言うけれど……。
お礼なんていらないと、ぼくは首を横に振る。
「まあそう遠慮するな。じゃから、せめて、」
狐の子は一瞬動きを止める。
「わたしのこの体で、存分に楽しむが好い」
……狐の子の言葉に止まる。
……。
……これで、狐の子とちゃんとした交尾が、できる。
今度は無理やりじゃなくって、狐の子が、していい、って言っている。
それなら拒む理由なんて、無い。
そう思うと気が楽になって、早く気持ちよくなりたくて、ぼくはするすると服を脱ぐ。
その様子を見て狐の子は満足そうに微笑み、ぼくを迎えるように両手を広げた。
「よいぞ、そのまま……」
狐の子の体に上から覆いかぶさる。
顔と顔が息がかかるぐらいに近くなる。
ちんぽはとっくにはちきれんばかりに大きくなって、今にも狐の子の膣内に入るのを待っている。
「じゃあ……」
挿れるよ。
と、言い掛けた。
けれど。その時。
気が付いた。狐の子の体が、震えていることに。
蔵で犯されている時と同じで、目には怯えの色が映っていることに。
目が覚める。現実に引き戻される。
……!
何もできずに、体を起こす。
「……?? どうした? おぬし」
狐の子は目を丸くしてぼくの顔を覗く。
「いいのだぞ? おぬしはわたしの恩人じゃ。ほれ、今度こそ、何も気にせずに、わたしのまんこに入れて、何回も何回も好きなだけ、子種を注いでもよいのだぞ?」
そう言って狐の子はくぱあ、とまんこを指で広げてしっぽを振った。
煽情的なその姿に、ちんぽはまた、びくんと、一段と強く跳ねる。
けれど、動けなかった。本能も、理性も、完全に交尾をしようとしているのに。
狐の子に挿れたい。交尾をしたい。……子種を出したい。
はっきりとそう望んでいるのに……。
……気が付いた。
……狐の子は今、泣きそうな顔をしていて、でも無理に笑っているということに……。
「それとも口で出す方が良いか? おねだりが必要なら、いくらでもするぞ? ちんぽを、この狐にたくさん注いでくれ……! お願いじゃ……! だから、……ほら……!」
狐の子の語気が強くなる。おねだり。それは狐の子があんなに嫌がっていた行為だった。
嫌なのに無理にちんぽをねだらされていた。
「――嫌か? 狐と交尾をするのは」
少し困ったように悲しそうに、狐の子はまんこをいじるのを止めて、伏し目がちにぼくを見る。
「無理せんでもよいぞ。嫌なら、嫌って言ってくれればいい。思えば人間の相手に狐なんて、おかしい話……」
自嘲気味に、声を震わせながら狐の子はそう言った。
「……違うよ。ぼくは君のことが」
首を横に振って否定する。狐の子はきょとんと、不意を突かれたような表情を浮かべる。
「大好き、です……」
それは前に約束した時に、言った言葉。
けれどあの時よりももっと、もっと狐の子が好きで。
大好きになった。……狐の子と、交尾がしたい。
もっと、もっとしたい。そんなこともはっきりと考えている。
「ならば何故挿れぬ? わたしのことを好きにできるというのだぞ? 独り占めできるのだぞ?」
でも……狐の子が耐えて泣きそうになって怖がっているのをもう、見たくなかった。
何よりもそれが嫌だった。
狐の子が、あんなに嫌がっていた、辛そうで、いつも苦しそうにしていた交尾。
あんなことを今、再びするのは、嫌なはずなのに……。
「……おぬしは、おぬしは何も気にせんでいい! これはわたしの勝手なのじゃから! おぬしに、お礼をさせてくれないと気が済まぬのじゃ! 何回入れても構わぬ! 狐のまんこにも、口にも……! 多少の乱暴も平気じゃ! 痛いのには慣れておるから……!」
目に涙を溜めて狐の子が叫ぶ。
痛いのに慣れている。それは違う……。苦しんでいた狐の子の顔を思い出す。
「わたしは淫乱なのだぞ? どうして入れないんじゃ、どうして……!」
狐の子は淫乱なんかじゃない。乱暴だって本当は好きじゃない……。
いつ終わるかもわからない暗闇から、狐の子は解放された。
だけど、狐の子の中でその暗闇はまだ続いていて……。
なのに、今、狐の子は無理をして、誘っている…………?
「のう、どうしておぬしはわたしに挿れないんじゃ? 好きにさせてやると言うとるのに……! わたしじゃ不十分なのか? おぬしを楽しませるために……」
「違うよ……そうじゃない…………」
ぼくの声は震えていた。
「では、何故……!」
たまらなくやるせなくなる。
色んな感情が溢れてきて、泣きそうになりながら、ぎゅっと、狐の子を抱きしめる。
ただ抱きしめる。狐の子はやっぱりあったかかった。
「……?」
戸惑った表情を浮かべて、狐の子がぼくを見た。
「……」
何か言わなきゃいけないのに言葉がすんなりと出てこない。
代わりに出てくるのは、嗚咽の様な、詰まった声。
視界が歪んで、自分が泣いているって気が付いて、情けない、恥ずかしくなってくる……。
「………………」
少しの間、きょとん……とした様子で、瞬きをしていた狐の子は、
「……わた、わたしはっ、……うっ……うわああああ…………!」
ぎゅうう、とぼくの背中に手を回して強く抱きしめ返して、それから堰を切ったみたいに一気に泣き出す。
狐の子の体の震えが伝わってくる……。
感情が、声にならない声に、涙に変わって、静かな山の中に響いていく……。
――――。