ゲノムライダーAlice ~正義のヒロインは絶対に悪の組織のレズ幹部の執拗なとろあま百合えっち攻撃に屈して繁殖奴隷になんかなったりしない!~ 作:伊土 讃阿
オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル
タグ:R-18 ガールズラブ おねろり ファンタジー レズレイプ 変身ヒロイン 悪堕ち 苗床 奴隷 出産
- ride
・〔馬・馬車などに〕乗る
・〔困難などを〕切り抜ける、処理する
・〔
・〔魔女の巣を〕制圧する
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・〔馬・馬車などの〕乗り手
・〔文書などの〕付記事項
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/ゲノムライダーAlice
~正義のヒロインは絶対に悪の組織のレズ幹部の執拗なとろあま百合えっち攻撃に屈して繁殖奴隷になんかなったりしない!~
vsセイレーン編
時を遡ること四五三六時間三二分一五秒――。"リフレクション"。
蜂蜜をまぶしたシャーロットの指先が、アリスのはちきれそうに充血した陰核をそっと撫でまわしました。
「んひゃぅんっ! あっ! んーっ、んっ!」
アリスは唇をきゅっときつくむすんで、真っ赤にしたあどけない顔をぶんぶん振り、懸命に耐えています。
「んぅーっ! んっ! んんんっ! んんぅ~~!」
ぴんと尖って、ピンク色で、つるつるした小豆みたいなかわいらしいアリスのいとけないクリトリス。その根元で、くるくると輪を描くようになぞられたり――。
「んっふぅぅぅんっ! んにゅぅっ! んんーっ! んぅぅぅ~~っ!」
二本の指で、両側からふわっ、ふわって摘まみあげるみたいに、くすぐられたり――。
「んっきゅぅうっ! んみゅぅうっ! んいぃぃぃぃっ!」
陰核の先っぽに指を乗せられて、くにゅってちょっぴり押しつけられて、蜜のねばねばでくっついたクリトリスを引っ張られ気味に指を離されるのを、とんとんとんとん一定のリズムで続けられたり――。
「んんはぁぁああっ! あーっ! あっ! あっ! ああぁっ!」
アリスはがんばってます。快楽の蕾を花開かせていく優しい指使いに負けないように、ほんとうにがんばっているんです。
でも……もう……、だめそうです……。
「んあーっ! らめらめらめらめぇっ! おまめっ、ばくはつしちゃうのぉっ! おっこちちゃうっ! とんでっちゃうぅっ! 狂っちゃうぅぅっ!」
セイレーンのたおやかな指であそこをくちゃくちゃいじられるたびに全身をびくびく痙攣させて、肩や腰、髪をやさしく撫でられるたびにぶるぶる身震いして童顔をとろけさせるアリス。
ああ、困ったわ……きっとものすごく気持ちいいんだわ……。
クリトリスをこねくりまわす指を休めないまま、シャーロットがアリスの頭の上の兎耳に唇を寄せて、あまぁく耳打ちしました。
「うふふ♥ いいのよー、落っこちちゃっても♥ 飛んでっちゃっても♥ ――狂っちゃっても♥ そのまま気持ちいいのに身を任せて? 全身のちからを抜いて、イッちゃいましょう?♥ はじめてでこんなにとろとろにされちゃったんだから、きっとものすごくものすごく、気持ちいいわよー?♥ 病みつきになって、ずぶずぶにはまりこんで、一生忘れられない、しあわせ初アクメ、できるわよー?♥」
超聴力で増幅されたぞくぞく声が、確実にアリスから理性を削ぎ落としていくのが見えるようです。必死に言い返す声も、とても頼りがいがありません。
「や、らぁあっ……! そんなのっ、らめっ……! らめれすっ……! きもちよくなんかっ、なってないれすっ……! アリスはっ、きもちよくなんか、ならないれすぅ……!」
「えー♥ 気持ちよくされちゃったんだから、気持ちよくなっちゃっても、しかたないわよー♥ つらい責任とか、ぜぇんぶ投げ出して、おねえさんに負けちゃいましょう?♥ ぜったいに勝てっこない快楽に流されて♥ 支配されて♥ 言うこと聞かされて♥ わけわかんなくされちゃって♥ かわいいあかちゃん♥ いっぱい産まされちゃいましょう?♥ いっしょに子孫、増やしましょう?♥」
「うぅぅゅぅっ……! やらやらっ、そんなの、ぜったいやらぁ――んわぁぁあんっ! おまめころころらめぇぇえっ……! とれちゃうとれちゃうとれちゃうぅぅっ……!」
ふんわり押しつぶされたまま、指の腹で転がすみたいにクリトリスを弄ばれて、アリスが泣き叫びました。
「ねぇ、そんな悲しいこと言わないで? おねえさんのお嫁さんになってくれたら、とっても優しくしてあげるわ? たくさんたくさん、かわいがってあげる♥ 毎日毎日お日さまが見てる時間からとろとろの快楽漬けにして♥ 毎晩毎晩、気絶するぐらい、幸せに狂わせてあげる♥ そして毎朝、おねえさんの胸のなかで目覚めて、いちゃいちゃして、甘やかされて……またぐずぐずにただれたえっち三昧の一日を過ごすの♥ あなたのかわいいここをずぅーっと、甘ぁーく犯されまくるの♥」
「きゅぅぅうんっ~~……♥」
あまい、あまーい、甘すぎる、"
ああ、終わったわ……。
わたしは絶望に飲みこまれました。こんなに追い詰められて、もはや耐え忍べる見込みはありません。ぴょんぴょこ外はね気味のふわふわ金髪を振り乱し、青りんご色のおっきな目には涙を溜めて、全身汗みずくで、あそこは汗以外のお汁でもどろどろになっていて、かくかく腰砕け状態。
だれが見ても、もうすぐはしたなくエクスタシーを極めてしまう寸前です。
嵐に見舞われたかのようにもみくちゃにされた喫茶店のなか、唯一無事なテーブルの上で必死に腰を振って、光の刃が飛びだした"
それでも――そこまで追い込まれても、アリスは、こう宣言しました。
「――アリスはっ……! アリスは、正義の味方……! ライダーだもんっ……! あなたなんかに、ぜったい負けちゃ、らめなんですぅっ……!」
そしてわたしをまっすぐ見つめて、アリスは檄を飛ばしました。
「アリスは、アリスはまだ負けてないれす……! だから、諦めちゃ、らめれす……ローリナちゃんっ……!」
わたしは雷に打たれたかのごとき衝撃を受けました。
アリスはまだ負けてない……アリスのこころは、まだくじけてない! だったら、わたしも諦めちゃいけないわ! アリスがわたしの卵子を待っているんだもの! うおおお……!
さすがアリス、いいえ、最強の"ゲノムライダー"、"ヴォ―パルバニー"だわ! アリスはぜったいに、"
さらに時を遡ること四二分二一秒――。リフレクション。
「もぉ~、また取りにいくのぉ~? いくらなんでも食べすぎよぉ、アリスぅ~」
わたしは自分の胸に埋め込まれた"
「もうすぐ
「もーちょっと待ってです、ローリナちゃんっ! あとドーナッツココナッツティラミス一個だけだから!」
「ほんとにぃ~?」
「うんっ、ほんとのほんとっ。アリスうそつかないです! 漫画でも『うそつきは狂気のはじまり』って言ってるです!」
「なんていう漫画で?」
「えーっと、たぶん、聖書だったです」
「またそんなマイナーな漫画のネタを……もう、しょうがないわね。わかったわ、じゃあ、わたしのおかわりも注いできてくれる?」
「しょうちですっ」
「きなこたっぷりよー?」
「んーっ、しょうちしょうちぃっ」
ぴしっと敬礼して、アリスはふたたび色とりどりのスイーツが狂い咲く長テーブルへ突進していきました。
はあ……、困ったわ。
お店の窓の外の黄金にきらめく大洋と澄んだ菫色の空とは裏腹に、わたしは暗い気分でため息をついて銀食器を曇らせます。
"大図書館"から馬車でかれこれ五一時間二五分。つまり時を遡ること一時間と三分前。今回の任務の目的地である港町への道中でした――景観すばらしき断崖絶壁の上にぽつんと立つ、一軒の喫茶店に出くわしたのは。
その喫茶店は、木造で、こぢんまりとして、かわーいらしくって、おっしゃれーな感じで、さわやかな海辺によく似合った、いかにも女の子受けのよさそうなお店でした。
わたしたちは大図書館から与えられた
「あ、あんなところにカフェ発見ーっ! んーっ、すてきそうなお店ですっ。今度のお休みに来ようね、ローリナちゃんっ」
なーんて、約束をしたはずなんですよ。でも――。
『開店記念スイーツバイキング 時間内食べ放題 本日最終日!』
と書かれたのぼりを目にした瞬間、アリスったら、水銀病患者よろしく荷台から転げ落ちて、およそいきのワインレッドのワンピースと白いエプロンドレスをはためかせ、狂犬病にかかったみたいに猛然とお店に突撃しちゃったんです。
大図書館史上最年少にして最強のライダーになって、"穿孔大陸"の各地でヴィランをばったばったとなぎ倒し、悪の組織"ジャバウォック"の活動阻止に大貢献しているアリスも、まだまだ一三とちょうど半分の女の子。とくに甘いものにはめっぽう弱いのでした……。
そりゃあ、ライダーは総じて食いしん坊なもんだから、しょうがないところはあるけどぉ……。
テーブルの上でうんと背伸びをして窓の外を覗いても、憎たらしいほどにひたすら見晴らしのいい海岸線が続くばかり。港町はまだまだ先です。野宿にもそろそろうんざりさせられてきているし、もうかれこれ三日もダーリンの声を聞いてません。
はあ、はやく町に着いて、ダーリンに"伝話"したいな……。
アリスがスイーツを席を立ってきっかり三分後。
「おまたせーっ、ローリナちゃんっ。はいどーぞっ、にんじんシェイクのきなこ山盛りですっ」
きなこをどっさりぶちまけた、にんじんシェイクの深皿がわたしの目の前にでんっと置かれました。
「これはどうもご丁寧にありが――アリス!?」
そしてアリスのお皿を見て、わたし絶句。心臓の代わりにごとごと脈を刻み散らかしていた懐中時計も、止まったかと思いました。
アリスが取ってきたのは、ドーナッツココナッツティラミス一個だけではなかったからです。白桃のコンポートを乗せてシロップをふんだんにかけたパンケーキ風ワッフルフレンチトーストに、ふんわりざくざくシナモンミントミルフィーユパイ、ばちばち花火のおまけつきのしっとりガトーショコラのナタデココカップケーキ、サワーカスタードたっぷりのヨーグルトビスケットサンドシュークリームの抹茶ジャム添え、それからそれから、厳選卵と牛乳でつくったタピオカココアヌガープリンまで。
きっと、わたしの体重とおなじぐらいの量はあるんじゃないかしら……じゃなくて!
わたしは憤然とテーブルの上を猛ダッシュ、フォークを握るアリスの左手を揺さぶりました。
「ア゙ーリ゙ーズー!」
「わわわ、なになにどーしたのローリナちゃんっ? ドーナッツココナッツティラミスがぐしゃぐしゃになっちゃう! どーしてこんなことするのっ」
「なーにがドーナッツココナッツティラミスじゃ! なにがどーなったらこーなったのか聞きたいのはこっちだスットコドッコイ! ……こほん! アリス、いったいどういうことなの! ドーナッツココナッツティラミス一個だって約束したじゃない! あなたうそつかないんでしょ!?」
アリスはにへらってお日さまみたいに笑いました。
「えっへへっ。あのね、そのつもりだったんだけど、お店のおねえさんがね、こっちもおいしいわよーって、いっぱい取ってくれたんです!」
アリスがナイフで示した先、店主らしき妙齢のおっとり系黒髪巨乳美人がにこにこしながらわたしたちに手を振っていました。
まったく余計なことを……でしゃばるのはデカパイだけにしてほしいものだわ!
わたしはごんっとテーブルに頭を打ちつけました。
「はあああ……、あのねぇ、アリスぅ。わたしね、あなたの"
「んーっ、そうですっ。ローリナちゃんはアリスの"
「だからねぇ、ビーティ"
「うんうんっ、いつもごくろうさまですっ。んーっ、パイさくさくーっ」
「多少の休憩なら認められてるわよ? 三〇分ぐらいなら、聞きこみだってごまかすこともできるわ? でもねぇ、ただでさえあとがつかえてるのに、一時間七分もこんな辺鄙な喫茶店で消費しちゃ、言い訳のしようがないわよぉ! それ全部食べるのにまだ二三分はかかるはずでしょう! あなたよく食べる癖に食べるペースは
「だいじょーぶっ、変身して全力疾走すれば一時間半ぐらい、すぐ取り戻せるですっ」
「そんなことしたら港町に着く頃にはへろへろになって戦えないじゃないの! ライダーがどうして馬車を使って移動してるのか、あなたわかってないのね!? そもそもどうやって帳尻を合わせようとも、わたしの懐中時計に記録は残ってるんだったら! 一時間半もの遅滞だなんて、わたし、もう報告書になんて書けばいいかさっぱり浮かばないわよぉ……」
蜂蜜のように甘く無邪気で、ひまわりのように溌剌としていて、それにとろけたバターみたいな優しさ……アリスのいいところはたくさんあるし、いざ戦闘となると向かうところ敵なしでとても頼もしいのだけれど、この壊滅的なまでの危機感のなさは、それらをすべて台無しにするほどです。
「諦めちゃだめっ、ローリナちゃんっ。甘いもの食べたら浮かぶはずですっ。漫画でもトト神はこう言ってるですっ。『甘みは真実である』っ」
「あなたが甘いもの食べてるから浮かべなきゃいけないって言ってんでしょーがこンのへちゃむくれ!」
だはあぁ……、この先、ほんとうに心配だわ……。そろそろ矯正してもらったほうがいいのかしら?
本気でアリスの思想再教育を申し込むかどうか悩みつつ、にんじんシェイクに持参のペヨーテ酒をまわしがけしていると、むんむん匂い立ちそうなほどの巨乳をぽよんぽよん揺らしながら店主がやってきて、アリスににっこり笑って言いました。
「とっても愉快なお友達を連れているのね。言葉を話す兎さんだなんて、はじめて見たわ。それに、とってもとってもおしゃべりさんなのねー」
しまった、騒ぎすぎたわね。ライダーの任務遂行中は目立たないことが原則なのに……。
「ライダー? 任務? もしかして"
唇のまわりをクリームでどろべとにしたアリスが元気よく答えます。
「そうなんですっ。アリスはコードナンバー:LC8979、アリス・ザ・ルナティックチャイルドフッドですっ」
「アリスぅ……任務とはなんの関係もない相手に"
「あわ、そうでした……ごめんなさいっ、忘れてくださぁいっ」
「まあ、コードナンバーだなんて、とってもかっこいいわ。アリスちゃんはすごいのねー、そんなに小さいのにライダーで、遠いところからひとりで……」
わたしもいるわよ! おっぱいのせいで見えねえのか!?
「うふふ、そうね、ごめんなさい。ひとりと一羽で来たなんて、えらいわねー。じゃあアリスちゃんは、"
「あ、アリスはお勉強ができないから蒐集部門じゃなくて――」
「すとーっぷ! それ以上はだめよ、アリス! 任務の内容までばらしちゃったら、厳罰よ!」
「あらあら、ごめんなさい、そうだったのね。――ねえ、ライダーのお仕事はつらくない? 世界の平和を守るために難しい任務ばかりなんでしょう?」
「んーっ、ときどきは、しんどくなっちゃうし、漫画みたいにうまくいかないときもあるですけどっ。でも平気ですっ! "
この子ったら、もう……。
そんな
思いっきり対ヴィラン部門だってばらしちゃってるけど、まぁ今日のところは大目に見てあげますか。
アリスの元気いっぱい、健気な答えを聞いて、店主はにこにこ微笑みました。
「――そう。羨ましいわねー、そんなすてきなお友達がいて。そうだ、プラムケーキはお好き? バイキングには出してないんだけど、もう売れ残りそうだし、よかったら食べてくれないかしらー? あなたの食べっぷりを見込んで、おねえさんからお願いするわ」
「いいの!?」
だめよ! と断らせたいところだったけど、大図書館の評判もあるから、"蹠民"の好意をむげにはできません。わたしはしぶしぶ、ぜったいに一個だけよ、と念押ししました。
「じゃあちょっと待っててねー、すぐに持ってくるわ。そちらの兎さんは、なにかお飲み物は?」
「……ロイヤルアヘンティ。角アンフェタミンみっつ入りで」
わたしは観念して、純度一〇〇パーセントのコカインラムネを砕いてスナーーーッフしてすっきりしたあと、黒蜜漬けにした大麻をパイプに詰め込み火をつけました。
まったく、アリスのくちの軽さったら、ほんとうにどうかしてるわ……あやうくまた口封じしなきゃならないところだっじゃない。リフレクション。
「はあ……、優しくって、きれいなひと……あんなすてきなおねえさまが欲しいですっ」
目をきらきらさせて、店主にあつぅい視線を送るアリス。せっかく気分を落ち着けようとしているというのに、むかっとさせられました。
……アリスのおねえちゃんは、わたしなのに。種族こそちがえど、おなじ遺伝子から分岐してわたしのほうが先に産まれたんだから、まちがいなくわたしはアリスのおねえちゃんなの! ……一か月先に産まれただけだけど。
「でもローリナちゃん、なんでそんなに急いでるんです?」
ぎくり。
「そ、それはアリスがはやく起こしてくれなかったから、出発が半日も遅れちゃったからよ! あなた、むだに早起きなくせに、任務のことすっかり忘れてずっと漫画読んでたなんて、ライダーとしてありえないわよ!」
「えっへへぇ、つづきが気になっちゃって」
「もう二一八回も読んだシリーズじゃないの!」
「だって、最後まで読んだ頃には最初の方、忘れちゃうんだもん……」
ううん、正直なところ、アリスに几帳面さは期待してないの。出発が遅れるほどわたしが寝坊した原因は、その前の夜にダーリンとの伝話に夢中になりすぎたこと。
だって考えてみてもくださいな! 数日、回線が通じてる場所から離れなきゃいけないのよ? そんなにダーリンと離れるなんて、耐えられないわ。
「でもそのだーりんさんって、まちがい伝話で知り合った大陸の反対側のひとで、顔も知らないんですっけ」
「か、顔を知ってるとか関係ないわよ」
「そーゆーものなの?」
「そーゆーものなんです」
「ふぅん、アリスは恋人がいたことないから、わかんないです。恋愛に関係するページ、権限なくて見れないですもん」
「当然よ。担当のライダーが恋愛なんてした日にゃ、ウォッチャーはねじを巻かれなくなっちゃうわ」
フォークについた抹茶ジャムを舐めとりながら、アリスがこてんと小首をかしげます。
「どーしてそこまでするほど、ライダーは恋愛禁止です?」
「恋愛は人間にとってはとってもいやらしくって破廉恥なことだからよ。人間が恋人同士や、めおと同士でなにをするのか知ってる?」
ぶんぶんと首を振るアリスに、わたしは"セ"ではじまり"ス"で終わる行為を委細詳しく説明してやりました。するとアリスは、みるみるうちに耳を茹だこみたいに紅潮させて、頭からぼふんと湯気を噴出させました。
「ぁぅ……」
「ね? アリスはそんなことできる?」
「で、できないですぅ……"
ライダーは大図書館の枢要であり、正義の象徴。他人に触れられただけで叱責されるほど厳格な金科玉条を課せられているのです。ましてや、ファックなんてしようものなら。
「狂気に落ちて、
「そうだったですか……そんなことしちゃうなんて……、恋はひとを狂わせるって、ほんとうだったんだ……。でも、ローリナちゃんはどーして恋愛してもいいの?」
「わたしはいつだって正常だからよ。"
「遅刻はしたのに?」
「……」
「それにローリナちゃん、だーりんさんとやりとりするようになってから、お酒をたくさん服むようになって独り言がやたら増えたような――」
「……お酒はいいのよ。たしかに一時的に判断力は落ちるけど、いずれガンになれれば細胞の供給源として高待遇で扱われるんだから」
わたしはダーリンのことを想いながら、飲みきったにんじんシェイクの皿を押しやって、盛大に煙を吐きました。
そもそも、こんな辺境の港町から通報してくるやつが悪いのよ……どうせたいした
アリスが声を落として慌てふためきます。
「ローリナちゃん、ほかのお客さん見てるです見てるですっ」
肥満体のおにいさんや、若い女の子がちらちらわたしに視線を送っていましたが、大麻の煙を吹きつけると目をさっと逸らしました。やれやれ、これだから田舎者の蹠民は……。
そんなこんなで五分一三秒ほどして、店主がプラムケーキとロイヤルアヘンティを持ってきました。
「お待たせしました。たーんとめしあがってね」
テーブルにぎりぎり乗るぐらいの、象の足みたいに巨大なホールで。
きさまぁ!
わたしが人間だったら、この店主の憎たらしい化け物じみたおっぱいをビンタしていたところです。
よく食べるからってふつう、女の子ひとりにこんなデカいケーキ出します? というか、売れ残るとか、つくりすぎたとかいう問題じゃありません。というか、こんなものが焼けるオーブンがあるのかしら? まずそこが疑問だわ。
はあ、今日はもうなんだかすっかり気疲れしてしまったわ。やたらずっしりくる疲労感のせいで怒る気にもなれません。経費で落とせなくなるのはつらいけど、もういっそ記録を改ざんしたほうがよさそうね……。
わたしは気持ちを切り替えんとペヨーテ酒をどばどばそそぎ足したロイヤルアヘンティをすすり、麦角ガムをくちに放りこみました。
怒りを通り越してあきれてしまったわたしとは対照的に、アリスは目を爛々と輝かせて大喜び。
「アリスの本性は獣! 嵐のごとき、胃袋のちからを解き放つときです!」
そしてがつがつと採掘するかのごとくプラムケーキを掘り食しはじめました。
「んーっ、不思議なお味のプラムケーキですっ。さくらんぼのタルトと、カスタードと、パイナップルと、七面鳥の丸焼きと、キャラメルと、焼きたてのバターつきトーストの混ざったような味がして、とってもおいしーっ!」
店主はにこにこと、そんなアリスを見守っています。
「うふふ、さすが強い分、よく食べるのねー。ヴィラン狩り、忌むべき仲間殺し、最強のライダー、"
「あれーっ? おねえさま、どーしてアリスのふたつ名を知ってるです?」
店主は相変わらずにこにこと――薄ら寒い笑みを貼りつけていて――。
「もちろん知っているわよー? あなたはとっても有名だもの――あたしたちジャバウォックの間ではね!」
にわかにまばゆい真紅の光を発したかと思いきや、全身が極彩色の体毛に覆われはじめました。そして腕からはめきめきと翼が生え、膝から下は脚鱗が顕れ鉤爪が飛び出し、さながら
その鮮血のような真紅の虹彩は――まごうことなき狂気のしるし。
「うふふふ、はじめまして、アリスちゃん。あたしはシャーロット。ジャバウォックの幹部のひとりよ。ライダー時代は
店内は騒然。客はテーブルの下に隠れてがたがた震えています。
アリスは素早く右手でわたしの首根っこを掴むと、蹴り飛ばされた猫のように後ろに思いっきりジャンプしてその場から離れました。青々とした緑眼でひたとヴィランを見据えるアリスの左手には、腰のペンホルダーから引き抜いたつやめく漆黒のゲノムライターが逆手に握られています。
「まさかこんなところでヴィランが人間になりすましているだなんて……しかもジャバウォックの幹部ですって!?」
わたしはお店の床にガムを吐き捨てました。
「ふん! むしろ願ったり叶ったりだわ! アリス、変身よ!」
「はいっ、やってやるですっ、ローリナちゃんっ! ゲノムライター、インサート!」
アリスは、とくに意味もなく指先でゲノムライターを華麗に回転させました。そしてペン先を――わたしのあそこに勢いよくぶち込み、ペンのスイッチを押しました。
「んお゙ぉ゙ぉ゙お゙っ!」
はからずも雄叫びをあげてしまうわたしの卵子を、ペンが採取。卵子の遺伝情報を書き換え全能性を付加しながら、引き抜かれたペンはアリスのエプロンドレスの下に隠れていた変身ベルトのバックルに垂直に突き立てられます。そして、バックル内に記録されている"ライダースーツ"情報を読みこみつつベルトを貫通。変身ベルトに直結しているアリスの下腹部内まで侵入し子宮内に到達――アリスの卵子とわたしの加筆卵子が融合、突き刺さるように内膜に
「変身!」
掛け声とともに、アリスの体躯があえかなるエメラルドの輝きに包まれます。一六文字DNAによる八重螺旋の遺伝情報を組み上げた胚はアリスの体細胞に食いこみ急速分裂。内側からアリスの細胞情報を、人知を超えた
翠緑の光の粒が飛び散り、なかから現れたのは――、一騎の可憐なライダー。頭に白い兎耳と黒いヘアバンドを備え、青を基調としたふんわりワンピースドレスに身を包んだアリス……いいえ、ゲノムライダーアリスこと、ヴォーパルバニーです!
アリスの手からテーブルに跳び移り、指示を飛ばします。
「やりなさい、アリス! あのむだにでかい胸肉を引きちぎってから揚げにしてやるのよ! 久々にしこたま肉を食ってやるわ!」
「はいですっ! あなたの正気を失わせ、ヴィランへと堕落させたその狂気っ……月に代わって打ち砕きますっ! てやっ!」
兎の遺伝子によって強化された脚力で床を蹴り、アリスが飛びだします。稲妻めいたパンチを繰り出しますが、シャーロットは歌いながらひらりと宙に舞いあがってかわしつつ、鉤爪を閃かせました。
兎の遺伝子が持つ超聴覚によって、その行動を読んでいたアリスは、スカートの裾を鋭利な爪で切り裂かれながらも暴なるまわし蹴りを放ちました。音速を超えたフラットシューズの先端がヴィランの首を落とす死神の鎌となって振るわれ、シャーロットは紙一重のところで宙返りしてこれも回避。されることを見越して、アリスは体細胞を原料としてスカートから産み落とした針鼠を散弾よろしく射出していました。
ところがシャーロットは両腕を羽ばたかせて羽根を撃ち出し、頬をかすめた一匹を除いて、針鼠を串刺しにして叩き落としたのでした。
「ならば!」
ぢゅうぢゅう悶え苦しむ針鼠を踏みつけ、その血脂のぬめりで加速しながらさらにさらに回転。大量の燃え葡萄蜻蛉がアリスのスカートのなかから飛び出し、シャーロットの全方位から火焔の波濤となって突撃しました。
ヴィランが巨大ローストチキンと化する寸前、シャーロットも競うように翼を広げて
アリスは多少裾を焦がされましたが、スーツのおかげで無傷。わたしもアリスが陰になってくれたのでなんともありませんでした。
「ぎゃあああ……!」
ただし、テーブルの下で隠れていた女の子はしめやかに炎上。火だるまになって悲鳴を上げています。
まあ、たいへんだわ!
「無関係なお客さんに、なんてひどいことをするんです!」
「あら、火を持ちだしたのはアリスちゃんでしょう? おねえさんは避けただけよー」
わたしは窓の外を指しました。
「アリス! 外は海よ! すぐに放りこんであげて!」
「しょうちっ!」
アリスがスカートをつまんで持ち上げると、いい匂いがしそうな乙女の空間からフラミンゴが滑りだしてきて、床に重々しく嘴をごとんと打ちつけました。大理石さえ打ち砕くフラミンゴ・ハンマーを引っ掴んだアリスは、とくに意味もなくくるりとハンマーをまわして振りかぶり、燃え盛る女の子の腰を強打。
「ぐぅげっ!?」
めぎぱきょ小気味よい音を響かせながら女の子はすっ飛んで窓を突き破り、流れ星のごとく海へと落ちていきました。
ふう、ひとまずこれで安心だわ。
「うふふふ、さすがその歳にして対ヴィラン特化のライダーだけはあるわねー。とても、とても素晴らしい身のこなしだわ」
歌うようにアリスを褒めるシャーロットの美貌に走った一条の裂傷は、もう塞がっています。幼いながらもすっかり戦士の顔をしたアリスが、不敵な笑みを浮かべました。
「おねえさまこそ、スーツもないのにすごい反応ですっ。漫画でも悪の幹部はとっても手ごわくてなかなか倒せないもの……でも最後に勝つのは正義ですっ!」
ライダースーツはなんとかチキン質? とかTNT? とかよくわからないけど生体由来のとにかくすんごい成分で構成された戦闘着で、ライダーの肉体を保護すると同時に強化してくれます。ライダー自身の細胞を利用していて皮膚や骨格から直接展開されるから、破損してもごらんのとおり、すぐに自動修復されます。汚染された極限環境である魔女の巣に潜りこみ、"
このスーツのおかげでライダーはヴィランに対して有利な立場にあるはずですが、シャーロットはアリスとほとんど対等に立ち回っています。悔しいけど、さすがは幹部かしら。
逆に、アリスの方は若干動きが悪いような……きっとスイーツの食べすぎね。アリスったら……。リフレクション。
「アリス! 長期戦は不利よ! 一気に決めなさい!」
アリスがこくりとうなずくと、変身ベルトのバックルからゲノムライターがにょきりとせり出してきました。アリスの手によってひと息に引き出されたそのゲノムライターは、ペン先から目もくらむ光の螺旋柱を迸らせています。
――"ヴォ―パルソード"。貫きてなおも貫く、光り輝く二重螺旋階段。
これこそ、あらゆる狂気を刻み狩り獲る、ライダーの奥の手です。消耗が激しいのでふつうのライダーならとどめにしか使いませんが、ちょうどカロリーを大量に摂取した直後ですし、なによりアリスはすぐれた敏捷性と超聴覚を持ち味に独自の戦闘方法を編み出し、大図書館でも随一の剣の使い手にして最強のライダーでもあります。
漫画ばかり読んでいたせいで勉強が出来なさすぎて対ヴィラン部門にまわされたのがきっかけといえばきっかけですがともかく、今こそ、アリスを
「とーうっ!」
アリスが光の長剣で切りかかります。さしものセイレーンも歌う暇なく真剣な面持ちで飛びまわってぎりぎりのところで回避しては、羽根を発射し、牽制するのが精一杯という様子。
それも時間の問題。アリスの見惚れるほどに洗練された剣舞でみるみるうちに店の隅へと追いつめられたシャーロットは、ついに輝く一太刀を顔面に浴び、野太い雄叫びをあげました。それは、あきらかに男性の絶叫で――。
「あ、あれ? あれーっ?」
アリスが困惑します。わたしも困惑します。なんなら戦闘を見守っていたほかの客だって困惑してます。なぜなら――アリスが仕留めたと思われた相手は、シャーロットではなく、よく肥えたおにいさんだったからです。
「うふふふ、アリスちゃんたら、ひどいわね。無関係なお客さんを切りつけるだなんて」
頭上から、美しい声が降ってきます。シャーロットが涼しげな顔で、梁に腰掛けていました。
「あなたの剣の腕前は、おねえさんも聞き及んでいるわよー。もちろん、耳がとってもいいことも。一方、おねえさんの特技はね、相手の五感に作用する歌声を発すること――アリスちゃんを声で惑わせるのは、ものすごく簡単だったわー。あたしたち、とっても相性がいいのね」
幻覚……! なんて狡猾なの……!
誤って攻撃されたおにいさんはうずめき叫びました。
「な、な、な、なんてことしやがるんだこのメスガキ……!」
おにいさんは思いっきり顔に斬撃を食らった割には元気そうで、それもそのはず、ヴォーパルソードはヴィランの体組織を崩壊させますが、ふつうの人間に害をなすことはないからです。ただ――。
「だいじょーぶですっ、お顔、とってもかわいいですからっ!」
アリスは元気づけるように手鏡をおにいさんに見せました。鏡に映ったおにいさんの顔は――なんということでしょう、ヴォーパルソードに搭載されたアリスの遺伝子情報に上書きされて、美少女のそれへと大変身を遂げていたのです……!
「こ、こ、こんな顔で生きていけるか……!」
ところが、おにいさんはそう叫ぶや、先ほど燃える少女が飛びだしていった窓に駆け寄り、身を投げてしまいました。ぼちゃっと水風船が弾けたみたいな汚らしい音が聞こえます。
あのからだとあの声のままじゃあねぇ……。ま、後始末の手間が省けてちょうどよかったわ。
「がーんっ……こんな顔って……」
あ、アリスがだいぶへこんでます。だいじょうぶよアリス、あなたは全身くまなくかわいいから。
アリスはわなわなと手を震わせました。
「罪もないひとをこんなにも犠牲に……やっぱりヴィランは最低です!」
「うーん、それに関してはだいたいあなたが悪いと思うのだけど」
「卑怯なまねはやめて、正々……堂々、戦……って……く、ら、は……い……?」
無辜の民を巻きこまれた怒りを糧に、ますます闘志を燃やすアリスの言葉とは裏腹に、その矮躯はがくがく震えてその場にへたりこみました。
「あ……え……?」
呆然としたアリスの顔は、林檎みたいに真っ赤、頭のてっぺんから足の爪先まで汗びっしょりで、自力では立ちあがれないほど急速に衰弱しているようでした。
「ど、どうしたの、アリス!? まさかまた幻覚で!? 耳に青虫を詰めるのよ!」
「そんなことしてもむだよー。これは声による異常ではないから。うふふ、やっと効いてきたみたいねー」
シャーロットが悠然と舞い降りてきて、アリスに歩み寄りました。
「おいしかったかしら、おねえさん特性の超強力媚薬入りプラムケーキは?」
「ふああ……あつくっへ……、ふあふあ、するでひゅ……」
「な……毒入りケーキだったというの!? ことごとく卑劣な鳥女が……!」
でもおかしいわ。媚薬程度の毒ならば、変身して強化された代謝ですぐに排出されるはず……!
「ええ、そうね。だからあなたのロイヤルアヘンティにも、薬を色々混ぜさせてもらったわー。あなたが正常な卵子を出せないように、ね」
「ぐ……! よくもまぁ、そんな都合のいい薬を偶然持っていたものね!」
「あら? 偶然なんかじゃないわよー? あたしははじめから、アリスちゃんを狙ってこの罠を仕掛けたんだから」
「な、なんですって……!?」
「おかしいとは思わなかった? 辺鄙な港町なんかを、ジャバウォックが襲撃したこと。その道中、こんな町はずれに喫茶店が開店していて、アリスちゃんの大好きなスイーツバイキングなんかやっていて、しかもまさに今日が最終日だったこと。超強力媚薬入りプラムケーキをあらかじめ用意していたこと。おしゃべりなあなたにあやかって、教えてあげる。すべてはアリスちゃんをここに誘い込み、この状況に持ちこむために、仕組んだことなのよ」
「どうしてそんなことを……!」
「言ったでしょう。アリスちゃんはジャバウォックでは有名なの。任務遂行のためなら蹠民の生死さえ厭わない、
「……? はんしょく、がかり……?」
アリスはまったく状況が飲みこめていません。繁殖という言葉はアリスにはまだ早すぎるからです。
わたしも別の意味でこれっぽっちも理解が及びませんでした。
「意味がわからない! そんなことできるわけないわ! アリスに狂気を与えてヴィラン化させることまではまだわかる。でも、繁殖だなんて! ライダーにもヴィランにも、生殖能力はないのよ! 勝手に子どもなんてできないよう、"
「ええ、そうねー、ふつうなら。でも繁殖力の高い種のウォッチャー遺伝子を持つヴィランと、変身ベルトを使えば理論上、受胎因子の再活性化、すなわち生殖能力を取り戻すことができると、最近の研究で判明したの。でも――」
「け、研究ですって!? 新しい技術を開発し、文化を創出することはとても危険なことなのよ! 一九八四年前の"ワルプルギスの夜"以前の古代文明が、利便性と快楽を追及したからこそ滅んだのを忘れたの!? 愚かな旧人類どもがひたすら戦争を繰り広げていた地球文明史上最悪の暗黒時代に逆戻りするつもり!? なんて邪悪なのよ、あなたたち!」
「だって、あたしたちは悪の組織ジャバウォックですもの」
「ええ、そうだったわね。ごめんなさい、続けてちょうだい」
「――でも、あたしたちが保有していたベルトは実験やらなにやらで手を加えてしまっていて、この計画に使えそうな状態じゃなかった。それに、ライダーは腐っても大図書館の精鋭。これはジャバウォックにとって非常に解決の難しい問題よ。
蒐集部門など非戦闘ライダーは警戒心が強くて近づけず、探すのもとても困難である上に、唯一おびき寄せられそうな対ヴィランライダーの戦闘能力はヴィランよりも遥かに高い。ヴィラン化させたライダーと変身ベルト、両者を無傷で手に入れることはほとんど不可能だわ。
だからねー。あなたがいなければ、この計画は成立しなかったの。協力してもらって、とても、とっても、感謝してるわよー、おしゃべり兎のローリナちゃん?」
「は……? ど、どういうことなのよ……。わたしはあなたのことなんか知らないわ! そんなおっぱい、見たらぜったい忘れるわけないもの!」
シャーロットは、喉に手を当てて言った――。
「あら、つれないわねー。あんなにたくさん愛してるって囁いてくれたくせに」
伝話口で耳慣れた、わたしのダーリンの声で。
「そ、そんなまさか……!」
「そう、アリスちゃんの弱点や行動パターンを探るために、あなたを利用させてもらったの。あなたがうんざりするぐらいのおしゃべりだっていうことは、大図書館で知らぬものはいないようだったから。うふふ、でもまさか、恋人になった途端、機密情報を何からなにまでぶちまけてくれるだなんて、思いもよらなかったわ。大図書館は、ウォッチャーにウォッチャーをつけた方がいいかもしれないわねー」
わたしは懐中時計を三週間巻き戻し、一秒一秒つぶさに
あわわわわわ……たしかに思いっきり暴露しちゃっていたわ、わたし……アリスが甘いものに弱いことや、今日この辺りを通過すること、スリーサイズや、ライダーとしてのスペックがすべて記述された遺伝子設計仕様まで……!
目の前が真っ暗になるとは、このことでしょう……わたしは深い絶望の底に叩き落とされていました。まさかわたしのせいで、アリスを危険にさらすなんて……。
ごめんなさい……アリス……、わたし、だめなおねえちゃんだわ……。リフレクション。リフレクション。リフレクション。
「アリス、は……らい、じょうぶ、ろーりな、ちゃん……」
媚薬のせいか、弱ぼらしく衰弱したアリスは、だけど最後のちからを振り絞って、わたしがいるテーブルにヴォ―パルソードを投げました。
「むずかしい、おはなしは……よくわかんない……だけど、アリスは、正義の、ライダーで……ジャバウォックは、悪です……そして、悪を倒すのは、正義しかいない……! 世界の平和を、守るには……、アリスたちが……、戦うしか、ないんです……!
わたしははっとしました。アリスの意図を即座に汲みとりました。
そうだ……そうだわ! 新しい卵子を出して、再び変身すれば、代謝は正常化するはず! そうすればこんなヴィラン、アリスの敵じゃないわ! そのためには……自慰するしかない!
わたしはヴォーパルソードの柄であるゲノムライターに飛び乗ってまたがり、激しく腰を前後させはじめました。
待っててアリス! 今に排卵アクメをきめてあなたをピンチから助けてあげるわ……!
シャーロットが、ぐったりしたアリスを抱きあげ、ソファに寝かせました。
「うふふ、いいわねー。面白くなってきたわ。あたしがアリスちゃんを狂気に堕とすのがはやいか、あなたが排卵するのがはやいか、勝負といきましょうか」
「アリスちゃん、キスしましょうか」
「ふぇ……きしゅ……? んむっ」
頬に手を添えられ、アリスの小さな唇にシャーロットの紅く妖艶な唇が重ねられます。それは優しくあやすような、だけどしっとり、おとなっぽいくちづけ。
「んっ、んぅっ、ん……」
最初は驚いて目を見開いたアリスですが、敏感な唇で相手の柔らかな体温を味わわされる未知の体験に、すぐにとろんとしはじめました。
さりげなく髪や腰をそっと撫でられ抱き寄せられ、脚をからめられたりして、薬で引き起こされたアリスの早熟な陶酔が、ますます深まっていくようです。
「ん……ふぁぁ……、あふ……」
唇の間から熱い吐息が漏れ出すのを見計らって、シャーロットがアリスの口内に舌を挿し込みました。わたしはぎょっとしました。
シャーロットの舌は、なんというか……、ピンク色の鰻みたいなぶっっっとくて、ながぁぁぁい人外のそれだったの……!
「んびゅ、ぐぷ、ぁぷ……」
でもあくまでシャーロットの舌使いは優しく、丁寧で、アリスは苦しむ様子もなく陶然とそれを受け入れています。
アリスの薄く短いかわいらしい舌が、シャーロットの奇怪な舌に巻きとられ引っぱり上げられ、にゅるんにゅるんとねぶりあげられ、口腔を舌肉で満たされているさまは、かつてわたしがこっそり読んだどんな
「うふふふふ。あまぁい。甘いものばかり食べてるかしら、唾液まで甘いのね。キス、はじめてよね。どうだったかしら?」
「んぁ……ふわふわして……、どきどきする、でしゅ……」
「キス、きもちいい? すき?」
「ぇぅ……」
ぽーっと夢見心地で瞳をとろけさせたアリスの顔は、這い寄る狂気の相を呈しはじめています。
「だめよアリス! それは狂気よ! その感覚に身を委ねてはだめ! それは、恋人やめおと同士でするような、とってもいやらしいことなのよ!」
わたしの叱咤を受け、アリスがはっとして虹彩に不屈の闘志を取り戻しました。
「ア、アリスは、きすなんて、いやですっ……、きらいですっ……!」
「ふぅん、さすがライダー。よく教育されているわねー。じゃあ、こんなのはどう?」
シャーロットが鉤爪を伸ばし、びりびりとスーツを引き裂きました。
「ぁっ、きゃぁっ」
アリスの月のように白い肌が露わになります。
正常な状態だったなら、スーツはすぐにでもアリスの体細胞を吸い上げて自動修復されるはずなんだけど……だめだわ、そんな気配、これっぽっちもなし。
恥じらい、胸元を手で隠そうとするアリスの手をやんわり絡めとって、万歳させるみたいに頭の上で押さえつけると、シャーロットは空いた方の腕に備わっている柔らかな羽毛で柔肌をさわさわくすぐりました。
「ぁっ、きゃっ、ひゃふっ、あはっ、くすぐったっ、あはははっ」
きゃあきゃあ黄色い声をあげて、アリスが身をよじります。
「うふふ、どう? 気持ちいい―?」
「くふふっ、こんなのっ、こしょばいだけでっ、んふっ、はふっ、なんともっ、ないでふっ、ひゃははっ」
シャーロットはあからさまに残念そうな声を出しました。
「あら、困ったわねー。この攻撃はおねえさんの奥の手だったのに……これを受け切られたら、もう打つ手がないわ? アリスちゃんは、ほんとうに強いのねー」
「んはははははっ、あっ、あたりまへっ、うふっ、でふっ、ふはっ、あはははっ、はひっ、ありしゅはっ、せいぎのっ、みひゃひゃらもんっ、うひゃひゃっ」
「うふふ、じゃあもうすこーしだけ続けるけど、この程度じゃなんともないわよね?」
「あひゃあっ、はひっ、もひろん、でふっ、んふっ、ぷふふっ、きがすむまでっ、くすぐれば、ひっ、いいれひゅっ、あははははっ」
アリスは勇ましくシャーロットの挑戦を受けると、極彩色の羽毛が身体中に触れるのを許しました。
……おかしい、おかしいわ……。たしかにくすぐるだけで、狂気に落ちるとは思えない……でもこの幹部セイレーンが、むだな攻撃を仕掛けるとも思えない……きっと、なにかたくらみがあるはずなんだわ……。
わたしは訝しみつつも、そのたくらみを暴くまでには至りませんでした。わたしには、もっと重大なほかの焦燥があったからです。
だめ……ぜんぜん集中できない……卵子が、出ない……。薬をきめすぎたせいかしら……だって、こんなところで戦闘があるだなんて思っていなかったんですもの! でも、アリスを助けるには、今はこの方法しか……! リフレクション。
「はぁーっ、はぁあっ、あっ、はっ、はひっ、はふっ、はっ」
愛らしい耳の裏側や、ほっそりした首筋、骨格の浮いた肩、蠱惑的な腋の下、ぷについた二の腕、うっすら脂肪の乗りはじめたあばら、くびれの浅い脇腹、ぷりんとしたおしり、まばゆいばかりの内腿――全身を羽で愛でられたアリスは、犬のように息を荒げて、珠のような汗を浮かべていました。
「はっ、はひぃんっ、ひゃああ……、あふっ、はうぅんっ」
すっかり消耗しきって、もう笑う気力もないようです。それに、どことなく――。
「はーっ、はっー、はーっ、あ!? あ! あ!」
つーーーっとお腹の正中線を上から下まで羽先でなぞられて、がくがくがくっとアリスが痙攣しました。
「うふふ、もう笑わなくなっちゃったわねー。どうしちゃったのかしら? つらい? 苦しい? もう降参? もう狂っちゃう?」
「しょ、そんなことぉ……、ちょっとらけ、ぞくぞく、して……、ひりひりして……、熱い、らけれすっ……! アリスは、狂ったり、なんか……ひゃぅんっ、んっ、んーっ」
どことなく――、色っぽい。
汗で額に金髪を貼りつけ、声を噛み殺そうとしている姿が。潤みきらめき、まなじりが下がりきった翠瞳が。鮮やかに紅潮したきめ細かい肌も、切なげに擦りあわれている太腿だって。
「そうー? じゃあこれは、どういうことかしら?」
「ぁひゃぁぁあんっ!」
おもむろにシャーロットの手が、アリスの股の間に伸ばされました。アリスの太腿の間をひと撫でしたその指には、夕日を浴びてきらきら輝く液体が。わたしはぞっとしました。
「そんなの、汗に決まっているわ!」
「あら、じゃああなたがまたがっているものをよく見た方がいいわよ、兎さん?」
わたしはゲノムライターのペン先に視線を落とし――ますますぞっとしました。ヴォ―パルソードのかがよう刀身であり、アリス本来の遺伝子情報を出力している光情報体でもある二重螺旋が、明らかに短くなっていたのです。
それは偽りようのない、狂気に蝕まれている証拠。
ど、どうして……くすぐられていただけなのに……。
シャーロットは紅い眼をすがめ、アリスに勲章でも見せびらかすように濡れた指を見せつけました。
「性行為や快楽に関する知識から遠ざけられているあなたたちは知らないでしょうけど、くすぐったいところというのは得てして性感帯なのよー。そしてアリスちゃんはそもそも性感を得たことがなかったから、拒むべきかどうかも判別がつかず、あたしの愛撫を受け入れ、狂気をこんなにも刻み込まれてしまった。残念ねー」
深い後悔、そして自責の念でわたしは押しつぶされそうでした。アリスが着実に狂気に侵されていたのに、わたしはただ腰を振って眺めていただけだなんて……。
ところがアリスはかえって気を強く持ち直したようで、ぎろりとシャーロットを真正面から睨みつけます。
「まだまだ……勝負は、ついてないれす……最後の瞬間まで……正義のライダーは、諦めないんれす……!」
ああ――。
この子は、なんて強いの。悪を前にして、決して屈しないこの精神力……正義の信念! これこそ、アリスが最強のライダーであり続ける最たる理由だわ!
「その意志の強さ――なまなかなヴィランでは対抗できないわけねー。でもその分、折れたときの衝撃は大きいもの。そろそろ、とどめを刺してあげるわ――」
そう言って、シャーロットが蜂蜜の瓶に、指を浸しました――。
蜂蜜をまぶしたシャーロットの指先が、アリスのはちきれそうに充血した陰核をそっと撫でまわしました。
「んひゃぅんっ! あっ! んーっ、んっ!」
アリスは唇をきゅっときつくむすんで、真っ赤にしたあどけない顔をぶんぶん振り、懸命に耐えています。
「んぅーっ! んっ! んんんっ! んんぅ~~!」
ぴんと尖って、ピンク色で、つるつるした小豆みたいなかわいらしいアリスのいとけないクリトリス。その根元で、くるくると輪を描くようになぞられたり――。
「んっふぅぅぅんっ! んにゅぅっ! んんーっ! んぅぅぅ~~っ!」
二本の指で、両側からふわっ、ふわって摘まみあげるみたいに、くすぐられたり――。
「んっきゅぅうっ! んみゅぅうっ! んいぃぃぃぃっ!」
陰核の先っぽに指を乗せられて、くにゅってちょっぴり押しつけられて、蜜のねばねばでくっついたクリトリスを引っ張られ気味に指を離されるのを、とんとんとんとん一定のリズムで続けられたり――。
「んんはぁぁああっ! あーっ! あっ! あっ! ああぁっ!」
アリスはがんばってます。快楽の蕾を花開かせていく優しい指使いに負けないように、ほんとうにがんばっているんです。
でも……もう……、だめそうです……。
「んあーっ! らめらめらめらめぇっ! おまめっ、ばくはつしちゃうのぉっ! おっこちちゃうっ! とんでっちゃうぅっ! 狂っちゃうぅぅっ!」
セイレーンのたおやかな指であそこをくちゃくちゃいじられるたびに全身をびくびく痙攣させて、肩や腰、髪をやさしく撫でられるたびにぶるぶる身震いして童顔をとろけさせるアリス。
ああ、困ったわ……きっとものすごく気持ちいいんだわ……。
クリトリスをこねくりまわす指を休めないまま、シャーロットがアリスの頭の上の兎耳に唇を寄せて、あまぁく耳打ちしました。
「うふふ♥ いいのよー、落っこちちゃっても♥ 飛んでっちゃっても♥ ――狂っちゃっても♥ そのまま気持ちいいのに身を任せて? 全身のちからを抜いて、イッちゃいましょう?♥ はじめてでこんなにとろとろにされちゃったんだから、きっとものすごくものすごく、気持ちいいわよー?♥ 病みつきになって、ずぶずぶにはまりこんで、一生忘れられない、しあわせ初アクメ、できるわよー?♥」
超聴力で増幅されたぞくぞく声が、確実にアリスから理性を削ぎ落としていくのが見えるようです。必死に言い返す声も、とても頼りがいがありません。
「や、らぁあっ……! そんなのっ、らめっ……! らめれすっ……! きもちよくなんかっ、なってないれすっ……! アリスはっ、きもちよくなんか、ならないれすぅ……!」
「えー♥ 気持ちよくされちゃったんだから、気持ちよくなっちゃっても、しかたないわよー♥ つらい責任とか、ぜぇんぶ投げ出して、おねえさんに負けちゃいましょう?♥ ぜったいに勝てっこない快楽に流されて♥ 支配されて♥ 言うこと聞かされて♥ わけわかんなくされちゃって♥ かわいいあかちゃん♥ いっぱい産まされちゃいましょう?♥ いっしょに子孫、増やしましょう?♥」
「うぅぅゅぅっ……! やらやらっ、そんなの、ぜったいやらぁ――んわぁぁあんっ! おまめころころらめぇぇえっ……! とれちゃうとれちゃうとれちゃうぅぅっ……!」
ふんわり押しつぶされたまま、指の腹で転がすみたいにクリトリスを弄ばれて、アリスが泣き叫びました。
「ねぇ、そんな悲しいこと言わないで? おねえさんのお嫁さんになってくれたら、とっても優しくしてあげるわ? たくさんたくさん、かわいがってあげる♥ 毎日毎日お日さまが見てる時間からとろとろの快楽漬けにして♥ 毎晩毎晩、気絶するぐらい、幸せに狂わせてあげる♥ そして毎朝、おねえさんの胸のなかで目覚めて、いちゃいちゃして、甘やかされて……またぐずぐずにただれたえっち三昧の一日を過ごすの♥ あなたのかわいいここをずぅーっと、甘ぁーく犯されまくるの♥」
「きゅぅぅうんっ~~……♥」
あまい、あまーい、甘すぎる、
ああ、終わったわ……。
わたしは絶望に飲みこまれました。こんなに追い詰められて、もはや耐え忍べる見込みはありません。ぴょんぴょこ外はね気味のふわふわ金髪を振り乱し、青りんご色のおっきな目には涙を溜めて、全身汗みずくで、あそこは汗以外のお汁でもどろどろになっていて、かくかく腰砕け状態。
だれが見ても、もうすぐはしたなくエクスタシーを極めてしまう寸前です。
嵐に見舞われたかのようにもみくちゃにされた喫茶店のなか、唯一無事なテーブルの上で必死に腰を振って、光の刃が飛びだしたゲノムライターの本体で陰部を激しく摩擦していたわたしは、失意のあまり自慰の速度を緩めてしまいました。
それでも――そこまで追い込まれても、アリスは、こう宣言しました。
「――アリスはっ……! アリスは、正義の味方……! ライダーだもんっ……! あなたなんかに、ぜったい負けちゃ、らめなんですぅっ……!」
そしてわたしをまっすぐ見つめて、アリスは檄を飛ばしました。
「アリスは、アリスはまだ負けてないれす……! だから、諦めちゃ、らめれす……ローリナちゃんっ……!」
わたしは雷に打たれたかのごとき衝撃を受けました。
アリスはまだ負けてない……アリスのこころは、まだくじけてない! だったら、わたしも諦めちゃいけないわ! アリスがわたしの卵子を待っているんだもの! うおおお……!
さすがアリス、いいえ、最強のゲノムライダー、ヴォ―パルバニーだわ! アリスはぜったいに、
変身したアリスの弱点は、わたしとおなじ、尻尾をもふもふされることだもの! そこを責められない限り、アリスのこころは、ぜったいに折れたりしない!
「あら、いいこと聞いたわねー。じゃあさっそく」
「ひゃわわわわわっ♥」
腫れあがった肉芽をいじられながら、白い毛玉みたいな尻尾をさわさわと撫であやされて、アリスは目を白黒させて脚をぴんと伸ばしました。
し、しまったわ……、絶体絶命のなかでも頑張るアリスがあまりに誇らしすぎてついくちが滑ってしまったわ……! リフレクション。
「あーっ♥ らめらめらめらめらめぇぇぇっ♥♥」
かくんかくんかくんと太腿を震わせ、アリスが突きだすように腰を浮かせます。
「あらあら、すごい感じよう。とっても気持ちいのねー。弱点というのはほんとうだったみたいね。うふふ、どうせ堕ちてただろうけど、手間が省けたわー」
ちくしょう! この鸚哥女が! フライドインコにしてやる!
「まあ、汚い言葉づかい。もう黙ってていいわよー?」
シャーロットがさっと翼を振るうや、羽毛が飛んできてわたしのくちに張りつきました。
「むぐー! ムゴギョゴエ!」
くっ……、がっちりわたしの体毛に絡みついてとれないわ……くちが使えたところでなにができようわけではないのだけど……。
それよりも、今わたしがなすべきは一秒でもはやく卵子を出すことよ! はやくっ、だせっ、卵だせっ、わたしの卵巣……!
シャーロットがほくそ笑みながら、アリスに囁きかけます。
「ねぇ、アリスちゃん♥ あなたのお友達、アリスちゃんのいやらしい姿をずっと
「んあぁあーっ、しょんにゃあっ、やらぁっ♥ みないれっ♥ ごめんなしゃっ♥ いやらしくてっ♥ きもちよくなっちゃってっ♥ ごめんなさぁいっ♥」
羞恥のあまりにぎゅっと目をつぶり謝罪を繰り返すアリスに、シャーロットはなおも語りかけます――。
「謝ることないわよ、アリス! ウォッチャーとライダーはいつもいっしょ、ふたりでひとつだもの! いっしょに気持ちよくなるのは当たり前よ!」
わたしの、声色を使って。
「んあぁあっ、んあーっ、あっ♥ あたりまえっ、なのっ?♥ ろーりなひゃんっ♥ きもちよくなっても、いいのっ?♥」
これは……いやな、予感がする……!
「もちろんよ、アリス。だって今までわたしたちはずっと、楽しいこともつらいこともわかちあってきたじゃない。固く結ばれたわたしたちの絆を忘れたの!? わたしはアリスの
「うんっ、うんっ、うん……♥ ローリナちゃんは、アリスの相棒……れすっ……♥」
「それに、わたしはウォッチャーよ。ぜったいに狂ったりしない生物なの。漫画では、『うそつきは狂気のはじまり』なんでしょう? ならいつだってまともなわたしは、いつだってうそをついたりしないの! だからわたしの言うこと、ぜんぶ信じてくれるでしょ?」
「はいっ、はひぃっ、しんじるっ、しんじるよっ、んうぅうっ♥」
ああ、そんな……それだけはだめよ!
わたしの予感は的中しました。おそろしい……どこまでも狡猾で、謀略に長けたシャーロット……これが幹部の実力……。
限界まで追い詰められ、正誤の判断がつかなくなったアリスの脳に、擦り込むようにして甘い言葉をとろとろとろとろ垂らしこまれます。
「聞いて、アリス。わたしが再び卵子を出すには、気持ちよくなるしかないの……。でもとってもきれいなおねえさんヴィランの薬のせいで、卵子を出すのが難しくなっちゃったわ。だからアリスにもいっしょに気持ちよくなってもらって、卵子を出すお手伝いをしてほしいの! そして、ふたりであのすてきで美人なヴィランを倒すのよ!」
「あーっ♥ あっ♥ んひゃぁっ♥ ほんとっ?♥ ほんとにっ?♥ ふたりでならっ、たおせるっ?♥」
「もちろんよ! わたしたちがちからを合わせれば、なんでもできるの! 一足す一だって、二〇〇になるわ! 一〇倍よ、一〇倍!」
「あっ、あーっ、ひあっ♥ れもっ、れもぉっ♥ イッちゃったらっ♥ 狂気にっ、あっ♥ んあぁぁんっ♥ おちちゃうって……!」
「なに言ってるの、大司書や、漫画がまちがってただけよ。だって今我慢してるアリスは、とっても苦しいでしょう? 胸が張り裂けそうで……♥ おまんこが熱くてたまらなくって……♥ 頭が真っ白になって……♥ 爆発しちゃいそうでしょう?♥」
「あ♥ あ♥ あ♥ あ♥ あ♥」
「おなかのなかは、ずっとぞわぞわして♥ 背筋はぞくぞく♥ 肌はぴりぴり♥ 乳首だってこんなにかちかちに勃起して♥ ずきずきしっぱなしでしょう?♥」
「んひゃぁっ♥ あっ♥ あー♥ らめ♥ ひゃぅうんっ♥ んーっ♥」
「悪は苦痛をもたらすもの……ならば、苦痛は悪よ。だからこんなに苦しいのは、狂気に決まってるわ? そんな状態でいると、おかしくなっちゃうわよ? 狂っちゃうわよ? そう思わない?」
「んああっ、っくぅんっ♥ そおっ♥ かもっ♥ そおかもぉっ♥」
「ね、体験しないとわからないことなんて、いくらでもあるのよ。漫画なんて、本なんて、ぜんぶうそなのよ。うそだから、狂気なのよ。想像上の産物なのよ。あなたが実際に感じるものこそが、本物なの。まだ毛も生えてないかわいいあそこを、たっくさんかわいがられて♥ えっちなおつゆでとろとろにされちゃって♥ 気持ちよくて気持ちよくてたまらなくされちゃって♥ 初めてのおっきなおっきなアクメの予感でうずうずずきずきさせちゃってる♥ それこそ現実で真実なの♥」
「はっ♥ はっ♥ はっ♥ も♥ らめ♥ ら♥ め♥ が♥ まん♥ でき♥ な♥ たしゅ♥ けて♥」
幾尋と計り知れぬ甘すぎる
その精神的負担は尋常ではないはずです。ライダーとはいえ幼いアリスには、あまりに残酷すぎる……。
底の見えない愉悦の淵に追いやられたアリスの背に、シャーロットが最後のひと押しを加えます。
「だいじょうぶよ、アリス♥ いっしょにイキましょう♥ いっしょにイキさえすれば、すべてから解放されて、楽になれるわ♥ わたしがついているから♥ わたしを信じて♥ わたしといっしょにイッて、えっちなヴィランやっつけちゃいましょう♥ さぁほら♥ イッて♥ イクの♥ イけ♥ イけ♥ イけぇっ♥」
「うぅぅぅっ♥ っきゅぅっ♥ んあ♥ あ♥ あ♥ あ!?♥ っ――♥ っ――♥ っ――♥」
がくがくがくっと肢体を跳ねさせ、ついに未曾有のエクスタシーを極めるアリス。桃色に染まり、ほころびきった未熟な陰唇からは、ぷしゅぷしゅと飛沫さえあげています。
「うふふ♥ 白目剥いてお魚みたいにびちびち跳ねて潮まで噴いちゃって、すごいイキっぷり♥ 一三でこんなこと覚えさせられちゃったら、あとが大変ねー♥」
「――♥ ――♥ ――♥」
もはや言葉もなく、自身の肉体の制御さえ失い、ただひたすらに内なる快楽の爆発に悶え狂うばかり。
「ぐ――♥ ぅ――♥ ゅ――♥」
常人であれば価値観を塗り替え、記憶を洗い流し、将来を台無しにするような、破滅的な法悦。それを気絶せずに受けとめ続けられているのは、アリスが変身していて並みならぬ耐久力を備えているからであって、だからこそ、逃げることは許されず、許容量を超えた悦楽を真正面から少女の脳に叩きこまれ続けています。
こちらが発狂しそうなほどに長すぎる三分一〇秒間ののち、アリスのからだはようやくひと段落してぐったりと弛緩しました。
「ぁー……♥ ぉ……♥」
壮絶な絶頂体験に、アリスの意識は朦朧としているようです。汗でべっとり濡れた頬に張りつく髪を耳にかけてやりながら、シャーロットがにこにこして自分の声で言いました。
「うふふ♥ 初イキごちそうさま♥ 人類を裏切って、じょうずにイケてえらいわねー♥」
「ふぇ……ろういうこと……? ありしゅは、あなたを、たおしゅために、イッて……?」
「くすくす♥ そんなわけないじゃない♥ ほら、見てごらんなさい?」
アリスが虚ろな目でヴォーパルソードを見やりました。ぱきぱきに砕けて、半分ほどになってしまった、その光の刃を。
アリスの顔が困惑と絶望に支配されます。
「で、でも……ろーりな、ちゃんが……」
「さっきのは声真似よ。あなたは騙されて、おねえさんにいちばんいやらしいところを見せて、あんなにも狂気に侵食されてしまったの♥」
「あああ……、そんな……アリス……負けちゃったんだ……」
いよいよこころを折られたアリス。かわいそうに、静かにぐずぐずと泣きはじめました。
わたしは自分のくちを塞いでいた羽をやっとの思いでむしり取りました。
「ごめんなさい、ごめんなさい、アリス、ああ、泣かないで……」
わたしは涙ながらにひたすら謝罪を繰り返します。
「ごめんなさい、ごめんなさい、まだ……卵は、出てないの……でも――」
アリスが諦める姿を、見たくなかった――誇り高きゲノムライダー最強のアリスが、ヴィランなんかに狂わされる姿を、見たくなかった―ー。
「でも、まだまだヴォーパルソードは残ってるわ……! わたしはかならず、卵子を出してみせる……! おねえちゃん、がんばるわ! だから、アリスもがんばって……諦めないで! あなたはライダーなのよ! こんな卑怯な相手に、あなたが負けるものですか! シャーロットは、セイレーンは、ぜったいに赦してはならないわ! 戦うのよ、アリス!」
アリスが、かわいい妹が泣く姿を、見たくなかった、ただその一心で、アリスを励ましてしまった――。リフレクション。リフレクション。リフレクション。……リフレクション。
アリスはわたしに鼓舞され――瞳に不撓不屈のこころを取り戻しました。
「そう……です……。アリスは、ローリナちゃんのいもうと……アリスは、ライダー! 一度イカされちゃったぐらいで……、正義のために、負けるわけには、いかない……! こんなの、へっちゃらです……! 追いつめられたときこそ……、ヒーローは、成長して強くなるんです……! アリスは、あなたに、勝つ……!」
シャーロットはさもおかしそうに嘲笑しました。
「うふふふふふふ、お互いに励ましあって、慰めあって、姉妹愛ってすてきね。それが裏目に出るとなると、なお儚くて、すてきだわー」
「な、なにが言いたいの」
シャーロットは喉に触れ――囁きました。
「それほどあなたがちからを尽くして自慰にふけっているのに、卵子がひとつもでないのはおかしいと思わない? 違和感はない? アリスちゃんが毒を排出できなかったように?」
「ま、まさか――」
「ええ、そのまさかよ。ロイヤルアヘンティには、排卵抑制剤をも混入していたの。どれだけ努力しても、あなたの卵子が排出されることはないわ」
「な……!」
わたしは愕然としました。一方アリスは、怪訝そうにわたしとシャーロットの顔を交互に見比べています。
「どー……したの? ローリナ、ちゃん……? なにか、あったです……?」
調整されたシャーロットの声は、わたしの耳にだけ届いているようです。
「というわけで、あなたの努力はなにもかもむだなの♥ この子の我慢もね♥ じゃあ、もうからだのほうも十分仕上がったし、楽しませてももらったし、最高に気持ちいい最期、迎えさせてあげるわね♥」
「きゃあっ! やあっ! みないでっ……!」
アリスの脚を開かせると、シャーロットは細い金毛が芽吹きはじめたばかりの股ぐらに顔を寄せました。そしてあのぶっっっとくてながぁぁぁい舌をうねうねくねらせ、先っぽでほころびはじめた幼い秘唇を押し広げていったのです。
「んんんっ! あつっ……! あっ! やだっ! そんなとこっ! 舐めちゃ……!」
「うふふ♥ アリスちゃんのおつゆと蜂蜜がまざって、とってもおいし……♥ 奥の方は、どうなっているのかしら……?♥ れぉぉ……♥」
「あ!? あーっ! うそっ! うそうそっ! べろがっ! はいってっ……! んひぃっ!」
にゅるんにゅるんにゅるんと蜜を押し出しながら、シャーロットの舌がねばらかにアリスのなかへ飲みこまれていきます。
「あー、やだっ! そんなとこまでっ、なめないでへぇ……!」
そんなとこがどんなとこなのかはわかりませんが、どこにせよ、かつてだれにも触れさせたことのない場所を淫猥に侵略されているのにはちがいありません。
アリスは百戦錬磨の最強のライダーである以前に、一三と半分の女の子。いとけない性器を内側から舐めまわされる淫靡極まる体験を前には、身もだえして悲鳴をあげることしかできません。
「もおぉっ! やだぁあっ! アリスのなかっ! あつあつにゅるにゅるしないれぇっ!」
細長く柔軟な肉塊をずりずりずりずり押しこまれては、ずるずるずるずる引き抜かれる――行為そのものは凌辱的でありながらも、動作はどこか気遣うような優しささえ感じられます。
そのせいでしょうか、出し入れされるつど、その舌はシャーロットの唾液以外のものでぬらぬらと粘つきはじめているように見え――。
「んひぃぃっ! んああっ! ひゃめっ! そこっ! おっ♥ おへそのうらっ! らめらめらめぇっ! おぉっ♥」
びくんびくんと、先ほどクリトリスと尾っぽの同時責めをされていたときとおなじ甘ったるい声を漏らしています。
快楽を感じている自覚があるのやもしれません。アリスは必死にシャーロットの頭を押し退けようと手を突っ張ります。が、しとやかに指を絡められ、つかまえられてしまいます。もう傍目には、らぶ握りいちゃいちゃクンニをされているようにしか見えません……。
「んやぁぁんっ♥ んにゃっ♥ あーっ♥ おまめはむはむしないれっ♥ いりぐちぐちゃぐちゃかきまわさないれっ♥ おつゆすいださないれぇぇぇっ♥♥」
息継ぎのためか、シャーロットが一旦舌をずるんっと引き抜きました。
「あぉんっ♥♥」
「ふぅ……うふふ♥ アリスちゃんのなか、熱くて、ざらざらして、ぬめぬめして、すてき……♥ それに、舐めあげるたびに、気持ちいいよ気持ちいいよーって、きゅうきゅう何度も締め付けてきてるわ♥ とってもとっても、欲しがりさんね♥」
「き……、きもちよくなんか、ないもん……♥ まら、らいじょーぶらもん……♥ アリスは、まけないもん……♥」
「うそはいけないわねー♥ 一回イッたから気が狂いそうなほどに気持ちいいはずよ♥ おねえさんにはわかってるのよー♥」
悔しいけど……シャーロットの言うとおりだわ……。闘志を再燃させたとはいえ、明らかにさっきより気魄がない……。
たった一度――、凄絶なまでに甘やかな絶頂に導かれた事実と感覚が、こころとからだの奥底に深く鋭く刻み込まれてしまったのです。そして、アリスから永遠に貞淑さを拭いとり、ぐずぐずに爛れた狂気の世界へと招かれてしまった――。
「……さて♥ 下調べは、この辺にしておきましょうか♥ れぇー……♥」
シャーロットは、アリスの体液にまみれた舌をめいっぱい伸ばすと――ぐりんぐりんぐりんと蛇がとぐろを巻くようにねじれさせていったのでした。そうして組み上げられたグロテスクな螺旋の肉柱は、今まで挿入されていた舌の何倍も太いもので――。
まさか……いいえ、それしか考えられません。
「ふぇっ……、うそ、そんなのっ……むりれすっ、いやっ、やら――ぉごぉぉっほぉおおっ♥♥」
無慈悲にも、アリスの小さな花弁を強引に押し広げて、体内に埋没していったのでした。舌が根元まで埋まるなり、ごりごりぬちゃぬちゃと、媚肉をこそぎおとし愛液をそっくりかきださんばかりの抽挿が開始されます。
「おおおぉぉほぉぉっ♥ ぉんっ♥ ぅあぁああああっ♥ あぁあぁあんっ♥ んっひぃぃぃんっ♥♥」
同時に瑞々しい上唇でこりこりに充血しきったクリトリスをかわいがられ、羽根でかちかちに尖った乳首をさわさわ、ちょっと揉まれただけでへにゃへにゃになってしまうほど敏感な尻尾をふわふわ持ち上げるように弄ばれ――。
「んおおお♥ お♥ お゙っおぉ♥ おぁぁああんっ♥♥」
狂ったような獣のごとき盛り声――つい二三分八秒前まで、恋人同士がなにをするのかさえ知らなかった乙女が出していい声ではありません。いえ、それどころか――のけぞって感じまくるアリスは過度の興奮からか、鼻血まで出していました。
アリスのあそこを舐めえぐりながら、シャーロットが喉を鳴らしました。特別に調整された声が、わたしの鼓膜を震わせます。
「アリスちゃんは、およそライダーが耐えきれる限界を超えて我慢したせいで、常人なら一生分足し合わせてもまだ足りないほどの強力なアクメに晒された。それほどの尋常ならざる絶頂を体験すれば、ふつう、神経が焼き切れて絶頂の歯止めがきかなくなるものなの。それでもアリスちゃんは、強すぎる精神力だけで絶頂を押さえ込もうとしている。だから肉体の方が負荷に耐え切れず、壊れかけているのよ。このままむりに絶頂を我慢しつづければ、脳の血管が切れて後遺症が残っちゃうかもしれないわねー」
「そ、そんな……!」
「しかも、その上――うふふふふふふ。ヴォ―パルソードを見た方がいいんじゃないかしら?」
「な……!? これはいったいどういうことなの!?」
アリスは肉体を犠牲にしてでも、絶頂だけはすまいと必死になっているのに――無情にも、ヴォーパルソードの残された光の刀身は、ごりごりと削れつつあるのでした。
「ありえないわ! アリスは、確実に立ち直ったはずなのに!」
「一度でも敗北を自覚したからよ。アリスちゃんはたしかにあなたの激励を受けて、絶頂を精神力だけで食い止めているわー。でもね、狂気の世界を垣間見て体験してしまったアリスちゃんは、絶頂しなくとも、快楽を感じて期待してしまっている罪悪感だけで、正気を失いかけているの。復活したとはいえ、こころにはとっくにひびが入っている。そんなこころで、狂気に立ち向かおうとしても、ますますそのひびを拡大させてしまうだけよー。そしてもうまもなく――こころは完璧に砕けて、狂気に堕ちるでしょう」
ああ……、そんな……。
「こころが破壊されてしまえば、まちがいなく廃人決定ねー。本当に正気を失って、もはやヴィランどころか、ただ排泄物をひり出すだけの獣以下の存在になりさがるわ。アリスちゃんにとっては、その方が楽かもしれないけれど」
いやよ……それだけは……アリスを……かわいい、いもうとを、そんなふうにはさせられない……!
「アリス! ここは一旦逃げるのよ! こころを治して、体勢を立て直してからシャーロットを倒すの!」
「お゙ね゙え゙ぢゃ゙ん゙っ……♥ ごめ゙ん゙な゙ざい゙っ……♥ ごめ゙ん゙な゙ざい゙っ……♥ ぎも゙ぢよ゙ぐな゙っでっ、ごめ゙ん゙な゙ざい゙っ……♥♥」
わたしの言葉が届いているのかいないのか、シャーロットの舌技にすっかり錯乱したアリスは悲痛に泣き叫んでいます。
一方、肉がほぐれてきたのでしょう、まっピンクの粘膜が螺旋舌に張りついて、ピストンのたびに巻きこまれてひきずりだされたり、大陰唇ごと奥まで押し込まれたりするさまは、目を背けたくなるほどの卑猥さです。
「むだよー。もう遅いわ。あまりにも、遅すぎるわ。アリスちゃんにはそんな気力も理性も残されていない。ほかでもない、あなたががんばれと言ったから、すべてのちからを振り絞って耐えようとして……あたしの罠にかかった」
「な、なんですって……」
シャーロットの言葉が、わたしの脳をざくざくと切り刻んでいきます。
「あたしの敗北条件は、ふたつあった。ひとつはあたしが討伐されること。もうひとつはあなたたちが戦闘から離脱し、大図書館に報告されること。だからここまで用意周到な計画を練り、逃げられないよう焚きつけた。あなたたちはね、一回イッた時点で、いいえ、この店に足を踏み入れた時点で、もう負けてたの。それもこれも、あなたが情報を流してくれたおかげよー」
「っ……!」
わたしはただ愕然として、アリスを見つめていることしかできなくなっていました。
「ああ、そうそう、排卵抑制剤は、うそよー? だって最初は変身できていたでしょう? ヴィラン繁殖計画を成就させるには、ライダーを堕としてヴィラン化させる必要があった。つまり一度は変身してもらう必要があったのよ。抑制剤を使うわけがないわ。そんなうそをついたのは、ただあなたを絶望させたかっただけ。あたしの気まぐれ」
「……」
わたしのこころを追い詰める、シャーロットの言葉。
「あなたが卵子を出せないのはね、心因性によるもの。あなたのこころが、弱かったからよ。この子とは不釣りあいなほどに、ね。そんなあなたのために、アリスちゃんはこころさえ永久に失おうとしている……かわいそうないもうとさんねー」
「……」
わたしの魂を打ち砕く、シャーロットの言葉。
「――諦めなさい。アリスのために。もう勝ち目などないのだから、これ以上はアリスをむだに苦しめるだけよ」
わたしの時間を止めた、シャーロットの言葉。
「……ごめんなさい、アリス……。もう、いいの……、我慢しなくても……。イッて……、楽に、なりなさい……」
許しの言葉が、アリスの枷を外す――アリスを正気から、解放しました。
「っ――!♥♥ おおお♥♥ ああああ♥♥ い゙っぢゃ゙ゔ♥ ぐる゙ゔ♥ ぐる゙っぢ゙ゃ゙ゔ♥ ぐる゙っぢ゙ゃ゙ゔぐる゙っぢ゙ゃ゙ゔぐる゙っぢ゙ゃ゙ゔぅぅぅぅう♥♥♥ うゅぅ――っ♥♥♥ っ――♥♥♥ っ――♥♥♥ っ――♥♥♥」
「ちゅぷぶっ♥ ちゅるるるっ♥♥ ちゅうぅぅぅぅううっ♥♥♥」
ヴォ―パルソードの光が弾けると同時、アリスは背骨が折れ曲がらんばかりにのけぞり、シャーロットの顔に股間を押しつけるようにして腰をくねらせ、ついに人生二度目にして最後のエクスタシーを極めます。
「っ――♥♥♥ っ――♥♥♥ っ――♥♥♥」
それは人間としての尊厳、人格、価値観、意味――すべてを投げ出した破滅の絶頂。
「っ……♥♥♥ っ……♥♥♥ っ……♥♥♥」
かっと見開かれた青りんご色の双眸が、瞳の奥から燃えあがるようにして真紅に熟していきます。皮膚はわさわさと純白の体毛に覆われていき、わずかに残っていたライダースーツは一秒間の間に何百年も経過したみたいに崩壊していきました。バックル裏の侵襲部分が体外に押し出され、変身ベルトがごとりと音を立てて床に落ちます。
わたしにはなすすべもなく、みるみるうちに悪の怪人へと変貌していく少女を見守っているしかありません。
「っ……♥♥♥ っ……♥♥♥ っ……♥♥♥ お゙ほお゙お゙っ……♥」
いつまで経っても絶頂から降りてこられないアリスから、ぢゅぽんっ、と舌を引き抜くと、シャーロットは艶然と微笑みました。
「うふふ♥ 仲間入りおめでとう、アリスちゃん♥ じょうずに
――今。
分娩に伴う歓喜の咆哮が、繁殖室にこだまします。
「おっほぉおおおおおおぉぉんんっ……♥♥♥」
虹色の蜂蜜のごときねばけばしい粘液とともに、アリスが陰唇からひり出した肉色の肉塊がみっつ、銀の桶に張られたお湯にぼちゃぼちゃぼちゃりと落ちました。
「おぉぉ……♥ ほー……♥ ぅおぉぉん……♥ ぉー……♥」
腫れあがり、ぽっかり開き切った陰部からはほかほか湯気が上がっています。
「うふふ。すごいわ、今月に入ってこれで一三匹目ねー。もうあなたが倒したヴィラン分、まかなっちゃったわよ」
「ほぉ……♥ ぉー……♥ こうもりぃ……♥ きらきらぁ……♥」
大好きな出産オーガズムで放心状態のアリスの額に慈愛のこもったくちづけをすると、シャーロットは胎児を診察しました。
「三匹とも、元気なあかちゃんね。お母さんとおなじ誕生日だなんてすてき。きっとだれよりも強くて、だれよりもえっちな子に育ってくれるわねー」
シャーロットはこどもたちを部下に任せると、わたしの前にやってきました。鉄格子に入れられ、脈拍を一〇分間に一度まで減速したわたしの前に。
シャーロットは鉄格子を開けると、のろのろと見上げるわたしをそっと抱えあげました。アリスとおなじ、真紅の瞳がわたしを覗きこんできます。
「
「……」
「なにも答えなくていいわ。あんなにおしゃべりだったあなたでも、今や一音節喋るだけでひと苦労だろうから。だからあなたの代わりに、あたしがおしゃべりしてあげる。これでも、あたしも昔はよく、おしゃべりだって言われてたの。役目はきちんと果たせるはずよ」
シャーロットのしなやかな指が、わたしの耳を梳いていく。
「……今さらだけど、あまり気に病みすぎないでね。あなたは、悪くないわ。あなたはずっと、伝話を通じて、あたしの声によって狂気に感染させられていたの。あたしが、あなたの理性の歯止めを少しずつ壊していたから、あなたは情報漏洩と判断ミスを繰り返してしまった。だから、本当に、あなたは、なにも、悪くない。
ジャバウォックとしてはね。アリスちゃんのことは完全に廃人にしてもよかったの。でも、あたしにはそれができなかった。それに――あなたのこころをへし折ってやりたかった。あたしの一四年間の嫉妬のはけぐちとして。だからこんな計画を立てて、あなたたちを追い詰めた。
……いじめすぎてごめんなさいね。あたしはね、単に妬いていたのよ。あなたもあわれな被害者、おなじ細胞情報から生まれた分身だというのに――」
シャーロットのしとやかな声音が、わたしの耳を撫でていく。
「悪の組織ジャバウォックは、なんのためにあるのか――。
ジャバウォックは大図書館とは対立してきたけど、人間と敵対しているわけじゃないわ。ふつうの蹠民に対しては、節足動物に対するボルバキアのように極めて無害なの。それどころか、ヴィランは人間をとってもしあわせにできる。ヴィランとひとは、共存できる。実際のところ、ヴィランは徒党を組む必要がないの。
だからゲノムライターで加筆されたウォッチャー遺伝子には強烈な正の制御がかかっている。ウォッチャー遺伝子が支配的になりすぎないよう、間を取り持って調整してくれているのが、変身ベルトというわけね。
ところが、狂気、すなわち繁殖欲が高まることにより強化されたウォッチャー遺伝子の勢力が変身ベルトの制御能限界を超えてしまうことがある。そうなると基本状態が合成生物側に傾いて、正常な人間に戻れなくなる。それこそが、
ただしヴィランも遺伝子的不均衡であり、過渡状態にすぎない。そのまま進行すれば、やがて完全にウォッチャーと同一の遺伝子になってしまう。そしてウォッチャーとなってしまえば最後、あなたたちのように
ただね、合成生物状態で生き延びるだけなら、卵子はそれほどの数を必要としないわ。定期的に提供してくれる人間のパートナーを見つけるか、あるいは無理やりにでも捕らえておけばそれで事足りる。合成生物は、人間よりはるかに強いのだから。そうやってひっそり隠遁生活を送っているヴィランはたくさんいるの。社会を脅かしさえすれば、ヴィランは狩られることがない。
それでもあえて人間に反旗を翻しているのが、あたしたちジャバウォック。その目的は――大図書館の転覆よ。
一九八四年前にもたらされた、永遠に祓われざる過去の闇。ワルプルギスの夜。栄華を極めていた人類文明は、"魔女"によって闇に葬られ、あらゆる国が、都市が、叡智が、突如現れた極限環境地下空間たる"魔女の巣"に飲みこまれた。
地上は魔女の手下である"使い魔"どもに蹂躙され、数千億もの人類が殺戮され、絶滅寸前にまで追いやられた。
そんなどん底の人類文明再生に一役買ったのが、大図書館だった。『智は命。智は自然。智は万物。智は世界。智は人間。智は夢』――叡智祝詞をモットーに掲げ、ワルプルギス以前の書籍を中心に知識と技術を集約しはじめた大図書館は、やがて古典生物学を基として今のライダースーツの原型となる生体由来の強化装甲を再発明し、この穿孔大陸から使い魔を締めだした。
さらに生き残ったわずかな人類を導き、統治して、安定した社会を築き上げるまでに至った――ここまでは、あなたたちもよく知ってるでしょう。幼い頃から司書たちに教えこまれているだろうから。そして虚構でもないから、説得力もある。その頃の大図書館は、まちがいなく正義の味方と言えたでしょうね。
だけど……いつしか大図書館は、人類文明再生よりも現人類統治の方に注力するようになった。進化しすぎた機械や情報網、管理下にない繁殖がワルプルギスの夜を惹起し、世界を滅ぼした原因だとして狂気に分類、魔女の再来を防ぐためと称して、古代文明の叡智を厳しく制限し、結果的に富と資源を独占した。
比較対象、外乱がない状況において言語は思想を完全に支配する――"閉鎖系言語的相対性原理"を用いて、大司書や司書たちの都合のいいように情報と倫理を書き換えはじめた。
そして従順な走狗として、ライダーとウォッチャーをつくりだした。正義の名のもとに大図書館の意向に沿わないものたちを排除し、独裁体制を強めていった。穿孔大陸上のあらゆる書籍と知識は思想から文字ひとつに至るまで大図書館の完璧な管理下に置かれ、その統治は一〇〇〇年あまり続いた。
だたひとつ、大図書館には誤算があった。穿孔大陸の外にも、人類は生存していたの。大図書館同様に、知識こそ鍵だとして古代文明の書籍を蒐集して人類再生を目指していた組織はいくつもあった。
大図書館はとりわけ巨大で強大な組織だったけど、その分、内部に目を光らせるのに精一杯で、外部には見向きもしなかったから、発見できなかったのね。
穿孔大陸の外側にいたそれらの組織は、使い魔どもを掃討し社会が安定しだすなり、当然の帰結のように今度は組織同士で抗争をはじめた。それゆえ外交のノウハウを自然と身に着けていた。
だから外部組織――"彼ら"と呼びならわされるものどもが穿孔大陸を発見し、大図書館の存在に気づいたとき、取る手段はひとつだった。つまり、ひそかに穿孔大陸に潜りこみ、内側から瓦解させ、その叡智を吸収すること。そのために接触したのが、あたしたちヴィランだった。
彼らはあたしたちに、大図書館がいかに非人道的な服従を強いているのかを啓蒙した。閉鎖系言語的相対性原理を打ち破り、あたしたちに真の自由を教えてくれた。
その意図は、たしかに彼らの利益のためだった。だけど大図書館があたしたちのからだを好き勝手に加工し、ぜったいに抗いようのない遺伝子次元で隷属させ、人生を奪っていたのはまぎれもない事実。
かくしてヴィランたちは蜂起し、傲慢な大図書館に復讐するために、混沌の知の怪物ジャバウォックがこの世に産み落とされた。あたしたちはジャバウォックは、大図書館を転覆させ、穿孔大陸に知と自由と希望を解放する。そしてヴィランのみならず、すべてのライダーをも救済する。
もちろん、それだけではないわ。大図書館の叡智を利用して、だれにも、彼らにさえも打ち倒されることのない怪物となって、人類を本当の意味で永劫守護する。それがジャバウォックの最終目的よ。
だから――心配しないで、兎さん。あたしたちはアリスちゃんにひどいことはしないし、させないわ。あたしたちは大図書館とはちがう。だから、アリスちゃんに選択の余地を与えた。アリスちゃんは、気持ちよくならない選択もできた。狂気に堕ちない選択もできた。でもそうしなかった。
あたしたちは強制はしない。それでもアリスちゃんがヴィランになったということは、こころのどこかで自由を求めていて、あたしたちに賛同してくれたということなの。脳に刷り込まれた大図書館へのおぞましき忠誠心にすら打ち克つちからを与えてくれる自由って、とてもとっても、すばらしいでしょう?
あたしたちは決して、仲間を使い捨てにしたりしない。だから安心して、あなたのいもうとを預けて? アリスちゃんのことはかならず、あたしがしあわせにしてみせるから」
娩出による長い長い長い長いエクスタシーがようやく収まったアリスが、多幸感にまみれた甘え声でシャーロットを呼びました。
「はーっ……♥ はーっ……♥ おねえさまぁ……♥ ふーっ……♥ アリス、またあかちゃん産めたですぅ……♥ ほめてほめてぇ……♥」
「うふふ♥ いいこいいこ♥ アリスちゃんはあかちゃんつくるのとってもじょうずね♥」
「えっへへぇ……♥ ほぉお゙お゙お゙お゙お゙ぉんっ♥」
胎盤を排出しながらはにかむアリス。
「はーっ……♥ ふーっ……♥ おねえさまぁ♥ アリス、おなか
「あらあら♥ 今産んだばかりなのにもうおねだり? アリスちゃんったらほしがりさんねー♥ でもだめよ、あと一時間は産褥期が続くんだから、それまで我慢なさい?」
「はぁーい♥」
シャーロットがわたしをそっと檻に戻し、がちゃりと重々しい音を立てて錠をおろしました。そしてアリスの頭を胸に抱き寄せ、甘く囁くのです。
「――もう手放さないわ。ずっといっしょよ。あたしのかわいいアリス。あたしのかわいいいもうと。もっともっとあかちゃんを産んで、あたしたちの"
わたしは懐中時計を巻き戻します。一時間後もまた、アリスのしあわせな姿を見守っていられるように。記憶を魂にくべるために。
時を遡ること四五三七時間二四分三六秒――。リフレクション。リフレクション。リフレクション。……リフレクション。
どこかに続きがあるらしいです……。
たぶんそのうちこっちにも投げます。