プリンセスコネクトRe:Diveの二次創作です。神撃のバハムートからのゲストキャラ、ルゥちゃんがアストルムでエッチしたり、赤ちゃんを作ったり、若干曇ったりします。

※赤ちゃんは原作キャラが転生したオリキャラです。

1 / 1
プリンセスコネクトRe:Diveの二次創作です。進撃のバハムートのルゥちゃんがアストルムでエッチしたり、赤ちゃんを作ったり、若干曇ったりします。

タイトルはプリコネを意識しただけで特に猟奇的な描写等はありません。

※赤ちゃんは原作キャラが転生したオリキャラです。


【プリンセスコネクトRe:Dive】マナリア学院ノーテンキ少女の受難、そして幸福~ミスタルシア産幼女のコブクロのアストライア風(未成熟な子宮にボールアイの詰め物)~ ランドソル産ホワイトソースを添えて

 ――この世界はアストルムと呼ばれている。なぜそう呼ばれているのか、その言葉の意味はなんなのか、それを知る者はほんの一握りだ。ほとんどの者は何も疑うことなく、自身の種族と生まれを当然の運命として受け入れている。

 

 アストルムは最大の大陸であるアストライアを筆頭として、いくつかの大陸と島から成り立っている。それぞれ独自の文化、生態系が出来上がっているが、いずれも共通していることは自然が豊かであることと『魔物』が生息していることだ。

 

 アストルムに生まれるヒューマン、獣人(ビースト)、エルフ、魔族といった知恵を持つ種族。これら四種族がざっくりアストルムの民であり、知恵を持たずアストルムの民に仇なす魔物はその外敵という構図になっていた。

 

 放置しておけば魔物は数を増やしアストルムの民の生活を脅かす。魔物を狩ることを生業とした魔物狩り、王宮と民草を守護する衛兵などが主となって魔物の数を減らしている。

 

 アストルムに住まう四種族にはそれぞれ見てわかる特徴がある。ヒューマンは獣のような部位がなく耳が小さくて丸い。四種族中もっとも数が多く、商人になる者が多い。

 

 なおアストルムには貴族階級という制度が存在するがこれはヒューマンの一部が自分たちのために作った制度であり、さらにアストルムの法は貴族連中や権力者に都合のいい内容となっている。

 

 獣人(ビースト)は獣のような耳と尻尾を持った種族だ。歴史的に王家や権力者と対立していたという因縁があり、ヒューマンから悪感情を抱かれやすくアストルム全体で見ても弱い立場にある。

 

 エルフは尖った長い耳を持っており、森や自然と調和して生きる種族だ。自分たち以外の種族に排他的であり閉鎖的な面がある。以前よりは他者に寛容になり街に住む者が増えたとはいえ、森に住むエルフはいまだに余所者を受け入れない。

 

 魔族は伝説に語り継がれる種族の末裔だ。……ただし、悪役として語り継がれている。伝説の吸血鬼率いる魔族の精鋭『悪魔偽王国軍(ディアボロス)』が神々と大規模な戦いを繰り広げたというおとぎ話はアストルムに住む者なら誰もが知っている。

 

 魔族は数が少なく悪魔じみた姿をしており、そして生まれながらに特殊な力を持っている。それらの特徴から他種族はある種の羨望や畏敬の念を抱いていた。

 

 神々との戦いに敗れた敗北者として語られる魔族だが、相手が強大な神であることで格落ち感はそれほどない。そのため獣人(ビースト)のように蔑視されることもなかった。

 

 ……魔物とアストルムの民の長い戦い、長い間に拗れてしまった種族間の対立。アストルムの民のほとんどがそれらを自然な歴史として受け入れているが、論理的におかしな部分が幾つかある。

 

 首都『ランドソル』の王宮は高貴な血筋の者しか踏み入れることは許されない。その王宮にもっとも高貴な者として座するのが『陛下』だ。しかし、その地位に就いているのは、下賎な種族として王宮に入ることを許されない筈の獣人(ビースト)の女性である。

 

 先人の歴史を書き記した書物がないのも不可解だ。神々の時代の話から現在に至るまでを綴った歴史書などは確かにある。しかしいずれも最近になって製本されたもので、古い書物が全く見当たらないのだ。

 

 アストルムの民の識字率はほとんど100パーセントだが、これもよくよく考えると違和感がある。学校に通っているからという理由はあるが、不仲のはずのヒューマンも獣人(ビースト)も仲良く同じ空間で学んでいるのだ。スラムに住む明日も知れない者たちが、学はないのに言葉だけ流暢なのも奇妙だ。

 

 実はアストライア大陸のみならずアストルム全体には『認識阻害』の魔法がかけられている。脳裏に浮かぶ悪感情や差別意識、忠誠心や帰属意識といった行動原理は、必ずしも自身の胸の内から湧くものではない。魔法が認識を歪ませ、そして認識が歪んでいることに気付けないのだ。

 

 それらに疑問を抱かず自身の種族と生まれ、そして偶発的に発生する魔物を受け入れざるをえない。異常な環境を当たり前として享受することになる奇怪さ。それがアストルムという世界をねっとりと覆っている闇だった。

 

 虚構の歴史と嘘の認識で塗り固められたこの世界はどこか狂っていて、自然豊かでありながらも『管理社会、監視社会(ディストピア)』めいた様相を呈していた。

 

 ……とはいえ、人間はたくましい生き物だ。幸か不幸かこの世界の異常に気付いて抗う者を除けば、一人一人がそれなりの――悲喜こもごもの生活を送っている。

 

 

@@@

 

 

 ――首都ランドソルのルーセント学院。ここはランドソルの住人のために建てられた学舎だ。ここでは年齢、種族に関わらず学びを深めたい者たちが足を運んでいる。

 

 教壇に立ち教鞭を振るうのは魔族の女性『イオ』。この学院では自主性に任せて教員、生徒ともに自由な服装をしている。……しかし、それにしたってイオは卑猥な服装の女教師であった。

 

 少し屈んだら下着が見えてしまいそうな膝上までしかないミニスカート。そして体のラインを強調し、立派に育った膨らみを見せつけるように胸元が開いた上着。

 

 肌の露出が大きく、青少年の青い性を必要以上に刺激する服装である。当人の無防備さも相まって男子生徒から見ると非常にスケベだ。なお、当の本人にはエロい服装という自覚はないらしい。多分変態だと思うんですけど。

 

 ある者は真剣に板書し、ある者は授業が終わった後に思いを馳せ、またある者はイオを見て妄想を逞しくしていた。……と。黒板に向かっていたイオの手が止まりチョークが置かれる。そして生徒の方に向き直った。授業が終わったようだ。

 

 

 「はーい皆さん、今日はここまでです。テストに向けてしっかり復習しておいてね。……ルゥちゃんも最後まで起きていられるようになったわね。偉いわ」

 

 

 イオは全体に呼びかけながら魔法で手に付いたチョークの粉を落として、さらに手荒れも予防しつつ二列目の生徒に話しかけた。話しかけられたのは『ルゥ』という少女。アストルムとは別の異世界『ミスタルシア』から来た少女である。

 

 ルゥがミスタルシアの学院で課題として取り組んでいた、魔石への魔力供給。その際にアクシデントが発生し、ルゥとその先輩二人はアストルムに転移したのだ。不幸な事故かと思われたが、異世界であるアストルムにてルゥは運命的な出会いを果たすこととなる。

 

 ルゥはミスタルシアにある『マナリア魔法学院』の生徒であり、現在着用している制服はそちらで着ていたものだ。長袖で袖先が広がった黒いブレザーはだぶっとしてかわいい印象を抱かせ、少し短めで青いチェックのスカートから覗く太ももが眩しい。

 

 頭に被った犬ミミを思わせるフードはとてもかわいらしい。小さい体とクリクリとした丸い目も相まって人懐こい小型犬を連想させる少女であった。

 

 

 「とーぜんですよ!ルゥはやればできる子ですぅ!もう16才のれでぃだから下の子の手本になるですよ!」

 

 

 話しかけられたルゥは胸を張ってイオに答える。つるぺたであり物理的に張る胸がないのだがとにかくすごい自信だ。なおルゥが板書していたノートには落書きが描かれていて、授業内容は頭に入っていないようだった。

 

 落書きのモチーフはルゥの身近な者達だ。ルゥが先輩と慕っている『アン』と『グレア』。ペットの魔物(ボールアイ)の『オメメちゃん』。そして左前の席に座るアストルムで出会った青年『ユウキ』である。

 

 以前はミスタルシアの風景を平坦に描いてみたり取り留めもなく図形を描いたりしていたのだが、最近になって具体的な人物を描くようになったのだ。理由は『退屈せずに起きていられるから』。

 

 ルゥにとって身近な人物を――特に最近出会ったユウキを脳裏に思い浮かべ、その姿をノートに描き出すのはなんだか妙に楽しい気持ちになるのだった。

 

 いつもは授業の席に着いても数分とじっとしていられず、無理に座っていると蕁麻疹が出るか意識が夢に沈んでしまうので、起きているだけでも頑張った気分になれるのだ。

 

 ポジティブで楽天的なルゥの気質は近しい者から見ると少し心配になるものの、動物のようでかわいいとおおむね好意的に受け止められているのだった。普通に赤ちゃんみたいでかわいいと思う。

 

 

 「あらあら、生徒が成長してくれて先生も鼻が高いわー」

 

 

 イオはルゥの小さな前進にも喜んでみせる。その際無意識に胸を張ったので大きく胸が強調された。イオの胸の質感が視覚として伝わり、思わず男子生徒がため息を洩らす。

 

 

 (イオちゃんのオッパイやっぱりでけえな~。揉みしだきて~)

 

 (あの谷間にナニをとは言わんが突っ込みてえよなー。手とか顔とかさー)

 

 (オッパイプルーンプルン)

 

 

 男子生徒はイオには聞こえないような声量で好き勝手に語り合った。イオは痴女かと思うほど卑猥な格好をしているが、それは自身の魅力を軽く考えているためである。

 

 男子生徒がエロい目で見ているとわかればイオが服装を正すのは目に見えているため、男子生徒たちは陰でこっそりと語らうのだった。

 

 

 「ううっ、またイオせんせーにみんなの目線があつまってる気がするですぅ。つるぺたが軽んじられてるですぅ……」

 

 

 ルゥは悲しそうに呟きながら自分の胸をぺたぺた触っている。どれほどまでに抗っても覆しようのない貧富の差。残酷な運命のイタズラがルゥの明るさに暗い影を落としていた。

 

 そんなルゥの頭に手のひらが触れる。ルゥが顔を上げると、手の主は前の席に座ってこちらに向き直ったユウキであった。その表情は少し困ったような笑顔だ。彼の手がフード越しにルゥの頭を優しく撫でる。

 

 

 「元気だして」

 

 「ユウキさん、なぐさめてくれるですかぁ?ありがとですぅ」

 

 

 ルゥは貧乳の暗黒面から解放された笑顔で撫でられるに任せている。……ユウキという少年の性質を一言で言いあらわすのは難しい。彼を知る者からは『普通に赤ちゃんみたいでかわいいと思う』、『しょうがねーだろ赤ちゃんなんだから』、『えらい』、『かしこい』などの言葉を聞くことができる。

 

 ユウキと親しくしている女性は数多くいるが、共通している認識がある。それは初対面ではないような既視感(デジャビュ)を感じて警戒心が薄まること、会話などを通して赤ちゃんみたいでかわいいと思うこと、そして近くで彼を見ている内に守ってあげるだけのか弱い存在ではないと気付くことだ。

 

 ユウキは記憶が空っぽになった状態でいつの間にかアストルムに佇んでいた。ある女性の助力を得て小学四年生程度の計算力は身に付いたが、まだまだ情緒、常識、学力は幼子のそれである。

 

 ただし記憶を失う以前から親しくしていた者たち、そして新たに親しくなった女性には特異な能力を発揮する。ひとつは親しいものの潜在能力を解き放つ『プリンセスナイト』の力。

 

 もうひとつはユウキの生来の才能ともいえる、親しいものの心を和ませる能力である。ユウキは親しいものが喜んでいれば一緒になって喜び、今のルゥのように悲しみに暮れていれば少し困ったような笑顔を見せるのだ。

 

 喜怒哀楽の感情を本能で敏感に察知し、嬉しさを倍増させたり悲しみを癒すのである。ユウキのその性質を的確に見抜いた者がいる。それは『サレンディア救護院』で暮らす『クルミ』と、今現在ユウキに撫でられて癒されているルゥの二人だ。

 

 ルゥはユウキを傍で見ていて『自分となんとなく似ている』と親近感を抱いたのである。端的に言えば、ルゥは人の身に温厚な魔物の精神を宿したような少女だ。

 

 極めて本能に忠実であり、彼女の辞書に理性、自制心という文字はない。そんな性質を持ちながらも争いとは無縁な穏やかで前向きな気性のため、彼女は人のみならず、相容れない筈の魔物や魔族からも好かれるのだった。

 

 その特殊な性質ゆえにマナリア学院では苦労することも多かった。彼女が勉強を嫌うあまり『追試の女帝』、『落第の女王』の異名を冠したのはあまりにも有名である。

 

 落ちこぼれてはいるが自分の在り方や生き方にどこか達観しており、あえておどけてみせて周りの者を和ませることもある。そんなルゥにとってユウキは同じ目線で世界を見ることができる初めての相手だったのだ。

 

 始めはユウキがコッコロにお小遣いを管理されていると聞いて『この人ルゥよりダメそうですぅ』と思って安心したり、同レベルの相手が傍にいると思って嬉しくなったりした。しかし、しばらく傍にいる内に考えを改めることとなった。

 

 ユウキも親しいもののためにおどけてみせることはあるがそれはあくまで相手のためであり、自分の身を大して案じていないことに気付いたのだ。……ある日サレンディア救護院に蜂が入ってきたことがあった。

 

 蜂を見たアヤネが取り乱し、ぷうきちを振り回して壁を破壊しそうになった。それを見たユウキがアヤネを押し留めたのだ。……結局ユウキではアヤネを抑えきれずにボコボコにされてしまうのだが。

 

 しかし、「ダイジョウブダカラ、ダイジョウブダカラ」と笑顔で繰り返すユウキの気迫に負ける形でアヤネは落ち着いた。その後『家族を傷つけるとは何事か』とブチギレて声を荒げるぷうきち一家にアヤネは叱られ、誠心誠意ユウキに謝罪している。

 

 それ以降のアヤネが「虫が出るとちょっとぷうきちが重くなるんだよね」と、苦笑しつつも少し嬉しそうにしていたのがルゥには印象的だった。ユウキはその後も危なっかしく人助けをしており、彼に惹かれる女性の気持ちがルゥにも理解できてきたのである。

 

 ……こうして彼に撫でられていると、嬉しさと気持ちよさで顔が緩んでしまう程度には。

 

 

 「元気でた?」

 

 「はい、ルゥは元気ですぅ。ユウキさんの手、あったかいですねぇ。気持ちいいですねぇ……」

 

 

 ユウキは時々相手を慰めるために頭を撫でることがある。傍目からは事案であり不審者ムーブなのだが、犬だろうと女の子だろうと変わらない調子で撫でており本人に全く邪な気持ちはない。女の子も喜んでおり、『親しい人以外にはしちゃ駄目』と釘も刺されているので安心だ。

 

 そしてルゥは撫でられて貧乳の悲しみも忘れて気持ちよくなっている。顔が蕩けて気持ちよさが伝わってくるようだ。

 

 

 「ルゥちゃん嬉しそう。良かったわね……それじゃユウキくん。これをお願いね」

 

 

 イオは良かったわね、と言いながらもルゥが撫でられているのを羨ましそうに見ている。が、すぐに気を取り直してユウキに何か紙を手渡した。それはアストルムの文字と数字を勉強するための物で、今日の授業内容についてのルゥの課題であった。

 

 イオがルゥに付きっきりで教えようとしたこともあるが、ルゥは逃げ出そうとするし無理に教えても身に付かないのだ。ユウキなら脱線しつつも頭に入るようなので、ルゥに教えるのはすっかりユウキの役割となっていた。

 

 ルゥは異世界から来たとは思えないほど、色んな意味でランドソルに馴染みまくっているのだった。

 

 

@@@

 

 

 放課後になり学院から続々と学生が出てくる。ルーセント学院はかなり自由な校風であり、学生のバイトや魔物狩りなども認められている。学院から解き放たれた学生たちはめいめいパーティを組んで魔物狩りに繰り出したり、アルバイトに精を出したり、家を手伝ったりと自由な時間を過ごすのだった。

 

 ユウキとルゥも同級生に挨拶しながら学院から出た。今日は授業が早めに終わったのでまだ日が高い。

 

 

 「ユウキさんは今日はなにするですぅ?よければルゥとお菓子買いにいってくれないですかぁ?」

 

 

 ルゥは外出するときには誰かに着いてきてもらうことが多い。見知らぬ土地でも根拠のない自信で行動するため迷子になってしまうからだ。

 

 ただし、最近は頼れるマナリア学院の先輩が不在であることとユウキを見習うことで、一人で危ないことはしないように少し気をつけるようになった。

 

 行動範囲も意識して絞っているし駄菓子屋は何度も足を運んでいるので迷うこともないのだが、それはそれとしてユウキを誘ってみた。

 

 彼と一緒に行動するのはとても楽しいのだ。ギルド『美食殿』のメンバー、ペコリーヌやコッコロやキャルが加わることもある。それも賑やかで楽しいが、ユウキと二人きりは尚更楽しい時間でルゥのお気に入りになっていた。

 

 

 「ゴメンね。今日は魔物狩り。コッコロちゃんと一緒」

 

 

 ユウキはすまなそうに苦笑してそう言った。彼は美食殿のギルド活動として美食を探究している。……まあ美食とは銘打っているが実態はゲテモノ食いと紙一重なのだが。

 

 ギルドメンバーで連れだって美味しい店を探し歩く健全な活動をすることもあるが、今回のように魔物を狩って食べることも多い。

 

 ギルドマスターであるペコリーヌの食の探究心が凄まじいため、美味しいと噂の魔物がいれば狩るし新種の魔物が出たと聞けばやはり狩りに行くのだ。

 

 今回はサレンディア救護院で調理して子供たちと一緒に戴く予定なので、遠出はせず近場で済ませるようだった。

 

 

 「まもの狩りですかぁ。それはたいへんですぅ。まずはサレンディアきゅーごいんに帰るですかぁ?」

 

 

 ルゥは少しばかり残念だが面には出さず言葉を返す。

 

 

 「うん、コッコロちゃんが待ってるから一回帰る。ルゥちゃんも行く?」

 

 「うん!行くですぅ!今日はサレンディアきゅーごいんの皆とあそぶですぅ!」

 

 「後で宿題もしようね」

 

 「うっ……しゅくだいって聞くとじんましん出そうになるですぅ……でもしゅくだいなんかに絶対負けないですよぉ……ルゥはやる時はやる女ですぅ……」

 

 

 ルゥは他の誰でもなく自分に言い聞かせているようだった。声はか細いし表情も沈んでいる。しかし端から諦めてはいない。ルゥはユウキを密かに自分の目標にするようになったが、そのためか知らず知らずに意志が強くなっていた。

 

 

@@@

 

 

 サレンディア救護院に二人が着くとコッコロが出迎えてくれた。庭に立っているコッコロはソワソワと待ち遠しそうにしており、通りを見たり左右に行ったり来たりしていたが、二人の姿を見ると安心した様子で駆け寄ってきた。

 

 コッコロは『この世界を救う鍵となるユウキを導くように』という神託を賜った巫女であり、彼の家族のような存在として何くれとなく世話を焼いていた。自分がユウキのママだと信じ込んだりややイキスギている節はあるのだが、ユウキはコッコロを尊重して好きにさせていた。

 

 

 「主さま。ルゥさま。お帰りなさいませ。お熱は出ませんでしたか?コッコロに測らせて下さいませ」

 

 

 コッコロとユウキの顔が近づき、二人の額がピタッと合わさる。ユウキが帰って一番にやることは健康状態のチェック。額を合わせて熱がないか確認するのである。他にも体に不調がないかコッコロが手ずから確認し、自覚症状がないかも確認をとっている。

 

 

 「はい、お二人とも平熱で喉も問題ありません。薄いピンク色できれいな粘膜をしております。風邪はひいておられないようですが予防もしてまいりましょう。水場までご一緒いたしますね」

 

 「ありがとうコッコロちゃん」

 

 「コッコロさんありがとですぅ。ルゥもチェックしてもらって助かってるですぅ」

 

 「このくらいお安いご用でございますよ。……ルゥさま達がミスタルシアに帰られて、少ししたらルゥさまだけがこちらに来られたのは驚きました。安全に行き来出来る方法が見つかった時には、と再開の約束はしておりましたが。まさかお一人で来られるとは……」

 

 「(ガラガラガラ、ペッ)うふふーっ、ルゥを舐めてもらっては困るですぅ!ルゥは不可能を可能にする女ですよーっ!」

 

 

 偶然に偶然が重なりルゥ、アン、グレアの三人はアストルムに異世界転移を果たした。初めて遭遇する怪現象に戸惑ったものの、美食殿のメンバーに協力してもらいアストルムでの生活は楽しいものとなった。

 

 アストルムでは魔物料理を食べたり、思い出の品を買い漁ったりと青春の1ページを綴りながらミスタルシアに帰る手だてを探した。帰る手段を見つけて準備すること自体は難しくなかった。

 

 転移の原因はアンが召喚魔石に魔力を籠めすぎたことによる魔石の暴走。なので砕けた召喚魔石の欠片を集め、再度アンの膨大な魔力で暴走を起こしたのである。

 

 ……帰る手段は見つかっても、奇跡的に辿り着いた異世界から帰る心残りが大きかった。ルゥは魔物を自分の手で仕留めて美味しく調理までしたので、顔は笑っていても心残りはひとしおだった。

 

 帰ってからのルゥは今まで以上に気が抜けて勉強に身が入らず――傍目にはいつも通りではあったが。起伏のないなだらかな胸にぽっかりと小さな穴が空いたようであった。

 

 だから、学友でルームメイトの『リーズ』に相談したのだ。その時のルゥの動機は『アストルムに行けば勉強しないで済むから』という不純なものであった。しかし、それではあんまりにもあんまりだと自分でも思ったので『会いたい人がいる』という理由にしたのだ。

 

 ルゥが会いたい人として真っ先に挙げたのはユウキであった。その時は何となく頭に思い浮かんだ人を挙げただけだったが、リーズは驚くほど勢いよく食いついてくれた。彼女は恋する女の子だったのだ。

 

 彼女が慕うのはわずかな時間だけ教わることになった男性の臨時教師『ルシウス』だ。彼は実践的な経験を数多く積んでおり、確信と信念をもってリーズ達を力強く導いてくれた。

 

 異世界越しの恋愛というシチュエーションに胸が熱くなってテンションが上がったリーズは、自身の恋慕をうんざりするほどルゥに語りながら協力してくれたのであった。

 

 ルゥの友達の『ナイトメア』も協力してくれた。色恋沙汰とはまるで無縁そうな友人の行動に純粋に興味があったし、ルゥの淫夢は胸焼けしそうなほど食べ応えのある珍味に違いないと考えたからだ。

 

 ナイトメアはアストルムへの転移に関して頑張ってくれた。彼女は夢に干渉する力を持った魔族である。そしてアストルムは夢の力によって生み出された世界だ。……正確にはゲームの端末に囚われた人々の意識が見る『夢』のエネルギーが世界を形作っている。

 

 人の夢に人が干渉するという禁忌を犯して創られた世界だが、禁忌を犯した代償とばかりに人の手を離れて手がつけられない状態になっている。ナイトメアはルゥの意識に触れてくっついていたアストルムの残滓を食べ、アストルムへの『門』を召喚したのだ。

 

 そして、ルゥの親友でペットのオメメちゃんも協力してくれた。ルゥがオメメちゃんを無数に召喚し、自分の体をオメメちゃんで覆い尽くしてルゥの型を取り、オメメちゃんが自分達の魔力で保護色のようにルゥに擬態したのだ。

 

 ルゥが自分の髪や体液を採取し、それをリーズが呪術的に加工して『核』を作った。その核を擬態したオメメちゃんに挿入することでルゥの声色で喋れるようにもなった。

 

 魔物の知性なので受け応えはかなりトンチキだが、擬態の対象は魔物レベルの精神性を持つルゥである。普段が普段なので気付かれることはない。リーズがオメメちゃん達に魔力を補給し、ばれないように見ているので安心である。

 

 ルゥ自身も過去最高に頑張った。留年騒動で覚醒して搾りカスになった時よりも頑張ったと自負している。かくして友情、努力、幸運、そしてかすかな恋慕によってルゥは単身アストルムへの帰還を果たしたのだった。

 

 

 「クラスメートとのゆーじょーを思い出しますねぇ。懐かしいですねぇ……」

 

 「はい、ルゥさまタオルです。口をお拭きください。……ルゥさまには沢山の御学友がいらっしゃるのですね。少し羨ましいです」

 

 「ルゥはコッコロさんのお友達ですよぉ?ペコリーヌさんとかキャルさんみたいにつよくはないですけど……」

 

 「ありがとうございますルゥさま。ルゥさまがいると主さまが一人増えたみたいで、コッコロはやりがいがあるでございます」

 

 「えへへ……ありがとですぅ」

 

 「コッ……コッコロちゃん?お兄ちゃんは帰って……あっ、おっ、お兄ちゃん。ルゥちゃん。お帰りなさい……」

 

 「ただいま」

 

 「クルミちゃん、ただいまですぅ!」

 

 

 ルゥ達が和やかに話しているとサレンディア救護院の扉から少女が顔を覗かせた。少女の名前は『クルミ』。両親がアストルムの怪異『ロスト現象』に巻き込まれて独りぼっちになり、同じような境遇の子供達とサレンディア救護院に身を寄せている。

 

 彼女もルゥ同様ユウキの本質にいち早く気付いた一人だ。クルミは人間観察が趣味であり、人の感情や表情を真似るのが得意だ。得意すぎて見たくないものまで見えてしまうほどである。老若男女さまざまな人間がいるが、孤児と化したクルミを見る人の顔は大抵決まっていた。

 

 憐れみや同情が籠ったものが大半、社会に不要な物を見るような不快さを滲ませたものがごくごく少数。表面上は笑っていても笑顔の奥に潜む昏い感情は隠せない。クルミにとって人の顔を見ることは、心に暗いもやをかけて自身を見失うことと同義であった。

 

 自分が何者か見失いかけているクルミにとってユウキは特異な存在だった。ユウキは笑顔の奥に暗い思惑や打算を全く持たないのだ。彼の笑顔には動物的な本能からくる原始的な感情しかなく、さらに親しいものを癒す時にのみ感情が表に出ているようだった。

 

 クルミがユウキに抱いた印象は『大型犬』。愛するものに寄り添い癒すおおらかさと、今の自分にできる役割を精一杯こなそうとする姿に勇気づけられるのである。

 

 クルミがアヤネとユウキとおままごとをした時、ユウキを『犬』の役にしようとしたのはそういった感情からであって、抑圧された嗜虐的な性癖が表に出たというわけでは恐らくないのではないかとも思われる。

 

 また、クルミはルゥを見た瞬間にユウキと似ていると直感した。ユウキが大型犬ならばルゥは小型犬。ユウキがルゥを撫でているのを初めて見たときには、思わず『ワンちゃんのカップル』と口走ってしまった。誰にも聞かれていなかったのは幸いである。

 

 クルミもユウキやルゥと性質が似ているところがある。しかし、クルミは若干ネガティブであり、ルゥはユウキ同様ポジティブだ。そういった気質というのはちょっとやそっとで変えられるものではない。

 

 なのでクルミはほんの少しルゥが苦手……というよりも内心羨んでいた。自分はユウキ(お兄ちゃん)を深く理解しているという自負があるが、ルゥはユウキを本能で理解しつつさらに前向きであり、自分よりお似合いだと感じてしまうのだ。

 

 ユウキもルゥに対しては数少ない護る側の対象なので、同伴すると普段よりやる気を出しているように見える。二人が連れだっていると大型犬が小型犬を引率しているように見えてしまい、クルミは微笑ましくも羨ましさが募ってしまうのだった。

 

 

 「はっ、はい。ル、ル……ルーセント学院はどうでしたか?」

 

 「うん、バッチリ」

 

 「ふふーん!ルゥもスッゴクがんばったですよぉ!」

 

 

 サムズアップして笑顔で答えるユウキと、ユウキの真似をしてどや顔のサムズアップで答えるルゥ。二人は本当に兄妹のようだった。

 

 

 「う、うん。それは良かった、です。……あっ、そ、そういえばコッコロちゃん。ツバメお姉ちゃんが、エルフの里の薬の作り方について教えてほしい、って。それで私、来たんでした……」

 

 「あっ……」

 

 

 コッコロは口に手を当ててしまった、という顔をする。そしてユウキに向き直り申し訳なさそうに口を開いた。

 

 

 「主さま、申し訳ございません。私(わたくし)、ツバメさまとの約束を失念しておりました。ギルド活動に意識が集中してしまいまして。それで、今日の魔物狩りなのですが、ええと……」

 

 

 コッコロは申し訳なさで困り果てたように言葉に詰まってしまう。敬愛する主さまとの約束に舞い上がってしまい他の要件が抜けてしまったのである。いくらママとはいえまだ『11才』。子供らしさはまだまだ健在といえた。

 

 

 「はいはいはーい!それならルゥが代わりに魔物狩りにいくですよぉ!コッコロさんの代わりにルゥがママになるですぅ!」

 

 

 困り果てたコッコロを見てルゥが勢いよく名乗りを挙げた。実はルゥは『ママ』に少しばかり憧れているところがある。コッコロのような振る舞いがしたいというわけではなく、動物的な本能でママになることを望んでいるのだ。

 

 コッコロやサレンディア救護院のギルドマスター『サレン』のような概念としてのママではなく、生物の機能としてのママ。見た目によらぬ母性本能の賜物であった。実はかなり大胆なことを自分でもわからずに喋っているのだが、コッコロという前例もありこの場で気に留める者はいなかった。

 

 

 「ルゥさま、気を遣っていただきありがとうございます。でも主さまのママは私、コッコロでございますよ」

 

 「ずっ、ずるいよルゥちゃん。おままごとでも前回ルゥちゃんがママになったのに……」

 

 「ふっふっふっ。でもこの場で魔物とたたかえるのはコッコロさんをのぞけばルゥだけですよぉ?さいきんは前に出てユウキさんを守ることだってあるですぅ!」

 

 

 その言葉通りルゥはアストルムに来てから戦闘力が上昇していた。ルゥはユウキの知り合いでギルド『ドラゴンズネスト』の構成員『イノリ』に偶然会う機会があり、意気投合して一時的にパーティを組んで魔物狩りに繰り出したことがあった。

 

 そこでのルゥの活躍がだいぶ良くなかったため、見かねたイノリがギルドの伝手(つて)で魔法具を作ってくれたのだ。魔法具は魔力はあっても魔法が使えない人向けの装備品だ。魔力を注入すれば効果を発揮し、込められた魔法が発動する。

 

 腕力強化と脚力強化の魔法が込められたブレスレット型の魔法具はルゥの腕にぴったりで、ルゥは新しい友達との友情の記念にと洗う時以外は常に身に付けている。

 

 さらにアストルムに来てユウキと行動を共にしていたところ、ルゥもプリンセスナイトの強化を受けられるようになった。ユウキが剣を構えると女の子が強くなる怪現象だが、ルゥはユウキと親しくなった証のようで嬉しくて、気にせず強化を受け入れた。

 

 強化を受けた結果、無詠唱で魔力の球を飛ばせるようになった。それまでは適当に詠唱して『ビギナーズラック』で偶然魔法らしきものが発動するのを祈り、発動しなければ逃げ回ってオメメちゃんを投げつける戦法だったのだ。

 

 魔法具による身体強化と、プリンセスナイトの力による攻める戦術の安定。相変わらず魔法は使えないが、ルゥは自分以外の誰かも守れそうなほどに飛躍的に強くなったのだった。

 

 

 「確かに、ルゥさまの最近の飛躍ぶりは目を見張るものがあります。うーん……わかりました。ルゥさま。ママの座は譲れませんが、主さまにご同伴をお願いできますでしょうか」

 

 「まっかせてほしいですぅ!ルゥとオメメちゃんで魔物を狩りつくすですぅ!」

 

 「ルゥちゃん、いいなぁ……」

 

 

 こうしてルゥはユウキと二人で魔物狩りに出かけることとなった。いつもは他の誰かも一緒だったので、二人きりは初めてである。

 

 

@@@

 

 

 「うっさ~ぎ~美味し~です~!ジュノ~平野~!ほ~ね~も!ないぞ~も!捨てるとこ~ない~です~!」

 

 

 ユウキとルゥは連れだって歩き、ルゥはかわいい声で調子外れの歌を歌っている。ルゥが兎と言っている魔物は『ウイングロップ』。額に角が生えた兎のような魔物だ。

 

 肉は淡白だがどんな味付けにも合う。血は臭みがなく香りがいいのでソースの材料にしたり、少し凝れば血のデザートにすることもある。内臓も風味よく食べられるし、苦手なら細かく刻んで挽き肉料理にできる。骨はスープの出汁にすれば上品な味になる。

 

 余った角や毛皮は店で引き取ってもらうとちょっとしたお金になる。とにかく棄てるところがない上に美味で、魔物料理未経験者でも門戸を開きやすい人気のある魔物だ。

 

 サレンディア救護院でも一番人気である。狩って持ち帰れば子供達に凄く喜ばれる。その姿は高野で多く見られるが、ランドソル近辺の平野に迷い混んでくることもたまにあるのだった。

 

 

 「今日は魔物狩りですぅ!ユウキさんとふたりきりははじめてですぅ!」

 

 「ルゥちゃん、よろしくね」

 

 「よろしくですよぉ!……なんだかオメメちゃんも張り切ってるですねぇ?いっしょにがんばるですぅ!」

 

 

 いつもは聞き分けのいい子供のような、澄んだ穏やかな目でルゥの後を着いてくるオメメちゃんだが、今日はいつもより張り切っているらしい。なおユウキには違いがわからない。わからないが、妹のようなルゥとオメメちゃんを微笑ましく見守っていた。

 

 

@@@

 

 

 「オメメちゃん!連携ぷれーでいくですよぉ!てやああああっ!!」

 

 

 ルゥの投げたオメメちゃん達がリスのような魔物『ナッツシューター』にぶつかっていく。腕力強化によりオメメちゃんを投げる力も増しており、ランドソル近辺の弱い魔物ではひとたまりもない。声もなくナッツシューターは動かなくなった。

 

 

 「ナイスアシスト、オメメちゃん」

 

 

 ユウキが笑顔でサムズアップすると、オメメちゃん達は尻尾のような長い毛を左右に振ってユウキに返事を返し、一匹を残して宙空に消え去った。残った一匹は律儀にルゥの元へ戻っていく。

 

 このオメメちゃんがルゥが最初に出会った個体であり、後から召喚されてくるのはその仲間だ。ちなみに戦闘中次々とルゥの元に馳せ参じるのはルゥが召喚している訳ではなく、オメメちゃんが『マ○ハンド』よろしく自発的に仲間を呼んでいるのである。

 

 ルゥが適当に考えた詠唱をしてオリジナルの召喚陣を描くと『お、出番か?』と、オメメちゃんが察してルゥの魔力を食べて仲間を召喚するのだ。なおルゥはその因果関係に気付いておらず自分がオメメちゃんのプロだと思っているが、オメメちゃんの好意ありきとはいえ実際召喚されているので結果オーライである。

 

 

@@@

 

 

 「わずかな時間でたっくさん狩れたですぅ!これだけ狩れたらじゅーぶんですかねぇ?」

 

 「うん、いいんじゃないかな」

 

 

 ルゥの活躍によってどっさりと魔物を狩ることができた。歩くキノコや大きなネズミやたった今仕留めたナッツシューターなど、調理しやすく食べやすい魔物ばかりなのも嬉しい。

 

 

 「ルゥちゃん、頑張ってくれてありがとう。やることなかったよ」

 

 「えへへ……なでられるの気持ちいいですぅ……しっかりと結果を出したあとにほめてもらえるってすごくうれしいですねぇ……そういえばユウキさん。このネズミさんって臭みがあるんじゃなかったですか?子供たちがきもちわるくならないですぅ?」

 

 「うん、キャルちゃんが言うには田んぼのラットンは臭くなくてイケるらしい」

 

 「はえー……そうなんですねぇ。物知りさんですぅ」

 

 

 ランドソルの近くには田園地帯が密集する『ヘーベ丘陵』がある。ここには田園特有の魔物が棲み、作物に害をなすこともあるので魔物狩りに行くと喜ばれる。

 

 『ラットン』は大ネズミの魔物だ。下水はもちろん、街や建物に棲み着くラットンは臭くて不味いと専らの評判である。しかし田んぼに棲んでいるものは食べ物が違うのか臭みがない。キャルはネコなのでネズミにはうるさいのである。

 

 

 「それじゃ、まだ早い時間ですけど帰るですぅ?それとも遊んでいくですかぁ?」

 

 「コッコロちゃんも頑張ってるだろうし、帰ろう」

 

 「わかったですぅ!オメメちゃんと~いっしょに~運ぶっです~」

 

 

 ルゥはひと仕事終えてとても上機嫌だ。ユウキも普段よりリラックスしてルゥを微笑ましく見ている。――同じ世界を共有できて前向きな気持ちになれる友や仲間。そのような存在と出会えるのは幸運で幸福なことだ。今この瞬間、ユウキとルゥはありふれた日常の幸せを全力で享受していた。

 

 しかし、この場にいて不満を抱いている者がいた。そう、何を隠そうオメメちゃんである。オメメちゃんは自分の魔力供給元兼(けん)、見ていてなんだか面白く、そして放っておけない友達のルゥを案じていた。

 

 どうも彼女は人間という種族らしく、人間は同じ種族の男と女でくっついて殖(ふ)えるようだとオメメちゃんは理解した。単純な思考を持つものにとって『生存本能』は何よりも優先すべきもの。

 

 生きたい、殖えたいという本能があり、それを満たせると幸せなのだった。友達のルゥもそうだろうと思い見守っていたが、食べて眠っているときはとても幸せそうだ。しかし殖える兆し……ツガイを作る気配がないのだ。

 

 ルゥが尊敬している先輩二人は女同士だが、そのうち魔法で何とかして殖えそうである。そういうのも否定しないし、ルゥにそういう気(け)があれば温かく見守るつもりだった。しかし女性のそういう対象も居ないようだ。

 

 一度ボールアイの能力でルゥ以外のマナリア学院の生徒の視線を追ってリサーチしたことがある。そうすると男性の多くは豊満なもの……胸の膨らみが大きい女性に惹かれやすいことがわかった。

 

 魔物の世界でも超乳、複乳は多産の象徴であり、敬われて多くの雄(オス)に求愛される。つまりそういうことなのだろう。しかし我らがルゥは貧乳である。絶壁だ。

 

 オメメちゃんズは絶望した。これはいけない、と彼らは思った。しかし魔物の頭では良案も出ず、無為に時間が過ぎていくばかりである。異世界に転移したのはそんな時だった。

 

 ミスタルシアとは違う世界で出会ったのはかわいい赤ちゃん……ではなく、ルゥにどこか似ている青年である。オメメちゃんズは大喜びした。彼でいいじゃん、と。

 

 青年が女性の胸の膨らみは大きくても小さくても気にしないようなのも(知識がないので無頓着なだけだが)気に入った。しかし、ルゥには恋のライバルが多いようである。目に入る女性が大体彼の知り合いというのは恐れ入った。

 

 幸いにもルゥと青年……ユウキはお互いに波長が合うようでとても仲がいい。しかし、色気がない。雰囲気が全くエロくないのだ。一緒に散歩をして軽く毛繕いをするような段階から先に進まないのである。

 

 だから、今回の件は僥倖(ぎょうこう)だと思った。ルゥがユウキと二人きりで出かける初めての機会である。ルゥがツガイを持てるようにオメメちゃんが陰ながら全力でサポートする所存だ。

 

 ルゥは魔物狩りを始める前にオメメちゃんが張り切っているのを褒めていたが、つぶらな瞳の奥にルゥへの老婆心を滾(たぎ)らせていたのだ。しかし、お節介おばちゃんと化したオメメちゃんの努力は振るわない。

 

 ルゥもユウキも性衝動が薄くて二人きりでもそういう空気にならないのだ。衝動とは欲望とも言い換えることができ、人の生きる原動力でもある。激しい衝動を抱えた人間を燃え盛る炎のように表現することもあり、つまりは松岡○造である。

 

 衝動が希薄なものは生きる意味を失いがちだが、ユウキや今のルゥのように人を支えるものになって自己を確立することもある。そんな二人だからこそオメメちゃんは気に入っているのだが、その穏やかさゆえに二人の距離が縮まらないのはジレンマであった。

 

 

 ――ここは一肌脱がねばなるまい、とオメメちゃんの愛情(お節介おばちゃん)に火がついた。

 

 

 その時、遠目の草むらが『ガサガサ』と音をたてた。草むらからのそり、と毛むくじゃらの巨体が姿をあらわす。それは二足歩行をする巨大な熊。平野を離れた切り立った岩山にある『メティス大瀑布』の主、『サベージベア』であった。

 

 

 ――グオオオオオッ!

 

 

 サベージベアが迫真の咆哮をあげ、知恵を持たない野獣特有の敵意の籠った眼光をユウキたち――知恵を持つものに向けてきた。戦闘は避けられそうにない。

 

 

 「ぎゃあああーーーっっ!!?でっかいのが出たですーーっ!!」

 

 

 たまげたルゥは絶叫してサベージベアを視界に収めつつ、ユウキに横から抱きついた。ユウキはルゥに当たらないように気を付けながら剣を抜き、サベージベアに構える。

 

 ちなみにランドソルの占い師『シノブ』につい最近占ってもらったところによると、現在のルゥはレベル169、装備ランク17フル装備、スキルレベルMAXとのことであった。

 

 ルゥにはなんのことかよくわからなかったが『なんか強そう』だと思った。実際サベージベアが相手ならどうやっても負ける要素はないのだが、体がデカイのでビビってしまう。と、頭に手が触れる感触が伝わってきた。

 

 手の主であるユウキの顔を見ると、巨大な熊が眼前に居るというのに穏やかな笑顔だ。多分親しいものを安心させるオーラとかが出ているかもしれない。無言だが『傍に居る、大丈夫』という言葉が伝わってくるようだった。

 

 

 「うひゅぅ……気持ちいいですぅ……うん、こわがってる場合じゃないですぅ!ルゥはつよく……ううん、ユウキさんみたいになるですよぉ!」

 

 

 ルゥを見守るユウキのことを強く想う。ビビって体がすくんでいるのは変わらないが、守るべき人がいるのなら話は別だ。体が自然と動き、ユウキとの抱擁を解いてサベージベアに向き直る。そしてルゥの慣れ親しんだ構えを取った。

 

 半身になって横目で敵を捉え、魔導書の中身が目に入るように顔の近くに浮かせる。魔法を放つ側の手はいつでも使えるように自由(フリー)にしておく。尊敬するアン先輩の戦闘スタイルを真似たものだ。

 

 敵に気を配りながら魔導書に目を向けるのが難しいことと、そのせいで詠唱に難があることを除けばなかなか堂に入った構えであった。ルゥは普段とはうって変わってすらすらと詠唱を行う。

 

 いつもの逃げ回る戦闘スタイルではユウキにサベージベアが向かって行ってしまうかもしれない。そう考えるとルゥの小さな肝も引き締まり、淀みない詠唱ができるのだ。

 

 

 「これでどうですぅ!『カラミティインフェルノ』オォッ!!」

 

 

 ルゥは詠唱が終わると同時に手のひらをサベージベアに向けた。すると――次の瞬間、ルゥの手のひらから冒涜的な魔力の奔流が溢れだし、光とも闇ともつかぬ混沌の渦がサベージベアを飲み込んだ。

 

 混沌の渦は生き物の触手のように蠢き、大小さまざまなモノに姿を変える。多くの異形のものたちが這い寄っている。まるで奈落の底が顕現したような光景。さしもの記憶を失っているユウキも立ちくらみのような感覚を覚える。

 

 

 「うっ、うわわわわぁぁーっ!?」

 

 

 と、ルゥが後ろに吹っ飛びそうになっている。魔法の勢いが止まらずジェット噴射のようだ。あわや吹っ飛ぶ、という寸前でユウキがルゥの背後に駆け寄り飛んできたルゥを支える。

 

 が、勢いを止められず二人で吹っ飛び、木に背中からぶつかってようやく止まった。勢いでユウキは尻餅をついてしまい、ルゥはユウキの体にすっぽり包まれる形になった。

 

 

 「大丈夫?」

 

 「た、助かったですぅ。また助けられちゃったですねぇ……ユウキさん。ありがとですぅ」

 

 「うん。……ルゥちゃん」

 

 「はい?どうしたですぅ?」

 

 「やりすぎじゃない?」

 

 「あうぅ……くまさんどころか木がいっぱいなぎ倒されてるですぅ……これ、ルゥがやったですかぁ?」

 

 

 冒涜的な魔法が引き起こす現世の侵食ともいうべき光景はわずかな時間で消え去ったが、周囲の木が薙ぎ倒されて災害の後のようだった。ルゥ自身も自分のやったことに戸惑い困惑している。たった今ルゥの手のひらから放たれた魔法は、本来なら今の彼女には扱えないものだ。

 

 詠唱も不充分で場所、時間、知識、供物といった条件も満たしていない。『昏き底より出でる者』というミスタルシアの冒涜的な一柱の力を借りる魔法で、発動すれば絶大で絶望的な破壊を引き起こす。

 

 ユウキを守りたいというルゥの強い想いに心打たれたオメメちゃんが、高次の異次元に棲む、恒星レベルに巨大なボールアイに頼んでルゥの代わりに魔法を放ってもらったのだ。

 

 なお何体ものオメメちゃんを介してルゥの魔力を運ぶという非効率な運用をしているため、通常より何倍もの魔力を消費してしまう。アン以上の才能を眠らせているというルゥならではの魔法の使い方である。なお自力での制御はできない模様。

 

 

 「うぅっ……いつものルゥの魔法はこんなんじゃないんですぅ……ぽひゅんってなって魔法の球が飛んでくだけなのにぃ……こんなのおかしいですよぉ……ユウキさんを守りたかっただけなのに……ごめんなさいですぅ……」

 

 

 ルゥは普段から身の丈に合わないハイレベルな魔法を詠唱している。しかしいつも魔法の発動までは至らず、行き場をなくした魔力の塊が運良く敵に向かう形で攻撃していたのだ。実はルゥ(オメメちゃん)はヤバいのである。ヤバいですね。

 

 ユウキはどうすればいいか迷ったような顔で、自分に背中を預けて落ち込んでしまったルゥの頭を撫でる。撫でながらこういう時はどうすればいいかを思い出す。こんな風に何かをしてしまった時は、まず報告だ。

 

 頼れるコッコロ(ママ)や大人になるべく詳細に人、場所、状況を報告し、自分に非があればごめんなさいする。そして大人の力を借りるのがいつもの流れだ。……しかし、やらかしてしまったのはユウキではなくルゥである。それに、ユウキはここまでヤバいことをやらかしたことはない。

 

 自分がやったのなら頭を下げて、胸に微かに浮かぶ悔しさ、やるせなさを享受するのが当然だと思う。でも、それがルゥだったら?自分ではない他の人が……それも妹のようにかわいいルゥが、だ。叱られるならまだいい。

 

 でも、これだけのことをしてルゥちゃんはしょうがないね、と曖昧に受け止められたら?ユウキは記憶を無くしたという自覚があるが、ルゥはそうではない。16年の齢を重ねた少女にそんな扱いは酷だと思う。

 

 最近はユウキの後を追いかけてくるようになった小さな歩みが、その一歩一歩が重く、慎重になってしまうかもしれない。ユウキも普段から感じている、無力感からくるもやもやした気持ち。それがわかるからこそ、ルゥからはそういう状況をなるべく遠ざけたかった。

 

 サレンの負担も大きいと思う。ユウキやサレンディア救護院の子供たちが何かした時、全責任を負うのはギルドマスターのサレンだ。サレンとスズメの会話の端々からお金のやりくりが本当に大変だというのがユウキにも朧気ながら伝わってくる。

 

 お父さんや商人と商談をするらしいが、たまに『好色なヒヒジジイ』?がいるらしい。意味はよくわからないが何だか嫌な感じがした。

 

 

 ――ルゥちゃんにもサレンちゃんにも負担を負わせたくない。何とかしなければ。

 

 

 「ルゥちゃん、さっきみたいな魔法が使えるなら元通りにすることも出来るんじゃない?」

 

 「うっ、うん。もしかしたらルゥのねむれる魔法の才能がめざめたかもですぅ。やってみるですよぉ」

 

 

 ルゥは不安そうな顔をして詠唱を始める。ユウキはルゥの顔を見て優しく頭を撫で、プリンセスナイトの力でサポートした。

 

 

 「あうぅ……ダメかもしれませんですぅ……魔力が無くなっちゃったみたいです。ごめんなさいぃ……」

 

 

 ルゥは涙をにじませほとんど泣き顔になっている。ユウキはルゥの頭を撫でて安心させようとした。……たった今ルゥの詠唱をサポートしたとき、ルゥとオメメちゃんとの繋がりのようなものを感じた。

 

 まるでオメメちゃんもユウキ同様にルゥの魔法をサポートしているような……。オメメちゃんの力を借りられないだろうか?ユウキがオメメちゃんを指で優しく摘まむと、オメメちゃんはパチパチと瞬きするが特に警戒はしていないようだった。

 

 

 「ルゥちゃん、オメメちゃんって口に入れても大丈夫?」

 

 「えっ?はい、だいじょぶですぅ。ルゥは口寂しいとしょっちゅう口に入れてるですよぉ。のみ込まなければオメメちゃんも平気だとおもうですぅ」

 

 

 ルゥの返事を聞き、ユウキは思い切ってオメメちゃんを口に放り込んだ。

 

 

 「はエェッ!?ユウキさんがルゥの奇行にたえかねてオメメちゃんを食べちゃったですぅ!?ダメですよぉユウキさん!そのオメメちゃんはルゥが口に入れてるやつだからかんせつチューになっちゃうですぅ!」

 

 

 ルゥはトンチキなことを口走りながらユウキの体をガクガクと揺さぶる。ユウキは揺さぶられて危うくオメメちゃんを呑み込みそうになるがなんとか耐えた。

 

 揺さぶられながらも自分の為したいことを考える。『身近な人を守りたい。』シンプルで、だからこそいつだって強く胸に在る想いだ。自分は剣を振るえば女の子を強くできるのだ。倒木くらい自分でもなんとかできるはずだ。

 

 記憶喪失になる前から知っていた女の子達とは違い、ルゥはこちらに来てから初めて顔を会わせた女の子だ。彼女の記憶は全て鮮明であり、自分と似ているということもあってその想いは特別と言ってよかった。そして加速するユウキの想いは、ついに自分の殻を破り危険な領域へと突入する。

 

 

 「はれっ?はれえええっ??木がもとに戻ってくですぅ!」

 

 

 アストルムには『七冠(セブンクラウンズ)』という七人の異能者がいる。アストルムの開発に携わった者達であり、アストルムが人の手を離れてひとつの世界となった今では現人神と言っていいだろう。

 

 七冠にはプリンセスナイトが補佐として着いている者もおり、ユウキもまた七冠の一人『ラビリスタ』のプリンセスナイトである。七冠はそれぞれ生まれついての性質、能力をゲームに反映したような特異な権能を持つ。

 

 ラビリスタの権能は『オブジェクトの変更』。アストルム内のありとあらゆる物質は彼女の管理下にある。ユウキがオメメちゃんを口に含むと、オメメちゃんはユウキがルゥを守りたいと強く願っていることを知った。

 

 ルゥの自由で前向きな心を守るためには倒木を何とかしなければいけないことも。そしてユウキと繋がりのある存在ならば何とかできるかもしれないと思い、ラビリスタの力の一部をユウキに引っ張ってきたのである。

 

 オメメちゃんは魔力を餌に生きているため、魔力の操作や繋がりを手繰っていくのは得意だ。好意を抱いていない相手なら魔力補給の寄生先と認識するのみだが、ルゥやユウキのように好意を抱いた相手には大きな力を発揮してくれる。

 

 

 「よくわかんないけどすごいですぅ!……もしかしてユウキさんがやってくれたですかぁ?また助けられちゃったですぅ」

 

 

 ルゥはほんのりと頬を染めて顔を後ろに向け、大きな体で自分を包むユウキに頬ずりする。一方のユウキは、倒木が復元されたことに驚きつつ自分の体の変化に戸惑っていた。突然目の前の女性――ルゥを『ママ』と呼びたくなってきたのだ。

 

 さらには下半身が熱い。前にコッコロに『おちんちん』と教えてもらった大事なところが硬くなっているようである。先ほどまではなんとも感じていなかった、幼さを感じるルゥの甘い体臭、ほどよい柔らかさ、高めの体温が甘やかな刺激となりなおさらおちんちんが硬くなる。

 

 これもやはりオメメちゃんの仕業であった。ユウキの口に入れられた時は少しばかり驚いたオメメちゃんだが、これはいい機会(チャンス)だと思い直した。オメメちゃんの魔力操作で出来ることは多岐に及ぶ。

 

 今のユウキのように粘膜でくっついていれば動物としての本能を呼び覚まし、性欲を爆発させておちんちんをおっきさせることも出来るのだ。もちろんユウキにそんなことがわかるはずもなく、自分の体の変化に戸惑ってしまう。

 

 高所の吊り橋や崖から下を見下ろした時のような、背中を上ってくる痒みや焦りに似た感覚。その感覚の正体がわからず、『ハア、ハア』と荒い息を吐いてルゥを強く抱き寄せてしまう。細くて小さくて華奢な体だ。ルゥも無邪気なもので、ユウキが遊ぶ気になったのだと思いはしゃぎだした。

 

 

 「ウヒャヒャヒャヒャ!ユウキさん!そんなに顔を髪に押しつけられると、息が熱(あ)っつくて、頭がくすぐったいですぅ!それに剣の柄がルゥのお尻に当たってるですよぉ?ごつごつしてるですぅ」

 

 

 ルゥの無邪気な言葉にもユウキは返事をする余裕がない。なんとなく罪悪感がありやめようかと逡巡するも、ルゥが嫌がっていないしまあいいか、と初めての性的欲求に理性が押し流されてしまった。

 

 どんな聖人と謳われる者でも人は人。動物的な欲望を消すことはできない。それを表に出さず、欲望だけで思考を埋めないために『道徳観、倫理観(ロジカルな思考)』で自分を納得させるのである。

 

 欲望と上手く付き合う方法論であり、心理的な成長の一側面と言えるだろう。しかしユウキは記憶喪失(あかちゃん)だ。人はこうあるべきという価値観も、その活かし方もわからない。

 

 ただただ疼きにも似た性的欲求に興奮し、よくわからない罪深さのような恥じらいのような、胸に去来する鈍い痛みに翻弄されるのみである。今のユウキは『ママ(受容)』の『助け(許し)』を必要としていた。

 

 

 「もぉっ!ユウキさん。じゃれつきすぎですぅ!……ユウキ、さん?もしかして……その顔、遊びたいんじゃなくて苦しいですかぁ?それに、剣の柄だと思ってたこれって……」

 

 

 ルゥはユウキの顔をまじまじと見た。ユウキはいけないことをしたのがバレたような強い恥じらいの表情を浮かべている。ルゥの顔をまともに見ることが出来ないようだ。ユウキが浮かべている表情のその奥にある感情がなんなのか、ルゥにはすぐにわかった。

 

 『どうしたらいいのかわからない』という困惑である。ルゥにも何故急にユウキが発情し始めたのかわからない。しかし自分が女の子として見られるのは初めてのことであり、その相手が好ましい存在であるユウキということもあって素直に嬉しかった。

 

 彼にそういう目で見られるとルゥも妙な気分になりそうだ。ルゥは出来る限りユウキに応えたいと思った。あとは、ここで拒絶してはユウキを酷く傷つけるだろうという思いもある。

 

 動物的な本能に根ざした欲望を咎めることは人格を歪めることだとルゥには本能で理解できるのだ。欲望を抱くのは悪ではない。欲望への向き合い方が心を育みその後の生き方に続いていくのだ、とルゥは朧気に感じた。

 

 魔物狩りに出掛ける前に宣言した通り、ルゥはママになることを望んでいるのだ。赤ちゃんの欲望を受け留められずして何がママか。

 

 

 ――ルゥはユウキの顔を見ながら一瞬で動物的な論理を脳内に展開し、ユウキを受け入れる(ママになる)覚悟を決めた。

 

 

 「ユウキさん。なんで急にそうなっちゃったのかルゥにはわからないですぅ。だけどルゥはユウキさんをきらわないですよぉ?ユウキさんがしたいように、甘えて欲しいですぅ」

 

 「ルゥ、ちゃん…………ママ…………ママーーッ!」

 

 「ルゥをママって呼んで甘えたかったんですかぁ?うふふーっ、いいですよぉ。いっつもルゥが甘えてるから今日はユウキさんが甘える番ですぅ」

 

 「ナデナデシテー」

 

 「よしよし、甘えんぼさんですねぇ」

 

 

 ユウキはルゥに受け入れてもらったことに深く安堵し、ルゥの小さい体を求めた。小さく柔らかい身体を覆い隠す服が邪魔だ、と気が焦って制服を脱がせようとする。と、加減が利かないユウキの手をルゥがそっと押し留めた。

 

 

 「ユウキさん、焦っちゃダメですぅ」

 

 「あっ……ごめん。ごめんなさい……」

 

 

 ユウキは出先でテンションが上がりすぎて咎められた飼い犬のようにシュン、とする。ルゥはそんなユウキに屈託のない笑顔を見せた。

 

 

 「怒ってないですよぉ?ただ、この制服がやぶれちゃったらルゥが着るのがなくなっちゃうですぅ。今脱ぐですから……んしょっ、と」

 

 

 ルゥは上着を脱いで裸体を露にする。全体的に小さいが、見ただけで柔らかさが伝わってきそうな少女の体だ。胸は全く起伏がないが二つのピンクのポッチが艶かしい。

 

 上半身だけ裸になっているのがかなり卑猥であり、下を全部着ているのが逆にエロく感じる。短めのチェックのスカート、ふくらはぎまで覆うブーツ、スカートから顔を覗かす太ももと膝小僧が卑猥だ。

 

 記憶がないユウキでも、知らずに先走りを出して唾をごくり、と飲み込んでいた。

 

 

 「さあ、お待たせですぅ。またユウキさんのしたいことしていいですよぉ。……そんなに縮こまらないでだいじょぶですぅ。ルゥは丈夫ですよぉ?」

 

 

 ユウキは先ほどルゥの服を脱がせようとした時に、自制が効かなくなり手つきが少し乱暴になってしまったことを反省していた。本能は本能でルゥの母性(ママ)と体を強く求めているのだが、それとは別に傷付けたくなくて躊躇してしまうのだ。

 

 体の大きなものが小さくて華奢なものを大切な壊れもののように扱う姿はただただ尊い。そんなユウキの体にルゥがギュッ、と強めに抱きつく。ルゥにしては珍しく考えての行動である。

 

 優しいユウキが躊躇して手を出せないぶん、ルゥが二人ぶん頑張ろうという心づもりであった。二人だけの秘密の時間の中で役割を決めていくこと。ユウキとルゥはとても特別な関係の第一歩を踏み出し始めた。

 

 

 「んふふー……やさしいユウキさんがすきですよぉ……」

 

 「ルゥちゃ……ママも凄く優しいね。他の誰とも違う気がする。ルゥちゃんと離れたくない。ずっとくっついてたい」

 

 

 ユウキがルゥを他の誰とも違うと感じたのは、ユウキの中でルゥが特別な存在になったからだった。原始的な感情しかないからこそ、その言葉の意味は最短距離で伝わる。

 

 

 「ユウキさん。ルゥを誰ともちがうとくべつだって思ってくれるですかぁ?」

 

 「……そうなのかな?……よくわからないけど……ルゥちゃんは、特別。……うん。特別かもしれない」

 

 「すごく嬉しいですぅ。ルゥと似てるのに、強くてやさしいユウキさんのことがルゥもずっと好きでしたよぉ。たぶん、はじめて会ったときから……」

 

 

 感極まったルゥは瞳を潤ませてユウキの体に頬を擦り付ける。ルゥがユウキの体温と鼓動を感じることに集中したことで、ユウキも意識して身動ぎ(みじろぎ)せず声を潜めた。

 

 涼やかな風の音と草木の揺れる音、遠くで聞こえる鳥の鳴き声。自然の息吹が特別な関係の二人を包み込んでいた。

 

 

 「ユウキさんのお胸のおと。とくん、とくんって聴こえてきますぅ」

 

 「後でルゥちゃんのも聴かせて」

 

 「ふふっ。ユウキさんエッチですぅ」

 

 「えっ。それってエッチなの?」

 

 「うふふ。エッチですけどだいじょぶですぅ。……むしろユウキさんにはルゥの音を聴いてほしいですねぇ。……ユウキさんの、だいじなところ外に出すですよぉ?」

 

 

 ルゥは断りを入れてからユウキのおちんちんを外気に露出させる。ぶるんっ、とおっきしたおちんちんが勢いよく飛び出した。ルゥは目を丸くしてごくり、と喉を鳴らし『おっきいですねぇ』と呟きながらそっ、とおちんちんを握る。

 

 力は入っていないのに得も言われぬ快感がおちんちんを包んだ。ユウキはオメメちゃんの力で発情して快楽に弱くなっており、ルゥの拙い性技でも十二分に感じてしまうのだ。

 

 

 「うぅっ、ルゥちゃんの手が触れると……おちんちんが変になる……」

 

 「ユウキさんのお胸の音と、おちんちんのびくびくが連動してるですぅ。……あんまりちから入れてないですけど……?もしかしてルゥてくにしゃんですぅ?」

 

 「うっ、くうぅっ!ルゥちゃん、なんか、おちんちんが凄く変だよ!?」

 

 「変なのは気持ちいいってことですよぉ。いけないことじゃないですから、いっぱい気持ちよくなってください。やさしくしゅっ、しゅってしてあげるですから」

 

 

 余裕のあるルゥとは対称的に、ユウキはおちんちんを刺激されて快楽に喘いでしまう。

 

 

 「あぁっ、はあぁっ!ルゥちゃん!許して!おちんちん壊れる!」

 

 「はい、一旦すとっぷですよぉ」

 

 

 何か来そう、と思ったところで突然ルゥの手が止まってしまった。ユウキは未体験の快楽を怖がっていたが、おちんちんの気持ちよさには逆らえない。そして気持ちいいのを止められたユウキは不安になってしまう。何か悪いことをしてしまっただろうか、と。

 

 

 「ル、ルゥちゃん。はあ……はあ……おちんちんが苦しいよ……ごめんなさい……いい子にするから、治して……」

 

 「あっ……ちがうですぅ!ユウキさんは悪くないですよ!ただ、おちんちんから女の子をママにするおつゆが出そうだったからとめたですぅ!不安にさせてごめんなさいですぅ……」

 

 「えっ……本当?そんなの僕の体から出るの?ヤバくない?」

 

 「はいですぅ。ヤバくないですよぉ。そのおつゆが出るとおちんちんがすごーく気持ちよくなってすっきりするですぅ」

 

 

 『見たことはないですけど』、とイタズラっぽく付け加える。そしてルゥはスカートに手を入れて下着をするする、と降ろしていった。微かに衣(きぬ)が擦(す)れる音が耳に伝わりユウキの興奮と期待が高まる。

 

 

 「えっとですねぇ……はずかしくて見せられないですけど、ユウキさんならおちんちんが付いてる場所に、女の子はちがうのがあるですぅ……」

 

 

 ルゥは下着を畳んでポケットにしまい、『スースーするですぅ』と呟きながらユウキに女の子のレクチャーをした。スカートの裾をつまんで恥ずかしそうにしているのがかわいい。

 

 

 「うん。『おだいじ』のことだよね?」

 

 「ヴえぇっ!?ユウキさん知ってるですかぁ!?だれかに聞いたですぅ!?」

 

 「うん、コッコロちゃんにおちんちんのことを教えてもらった時、ついでにって」

 

 「コッ、コッコロさんですかぁ……その時、見せてもらったりなんかは……」

 

 「ううん、女の子はそういうのがあるって聞いただけ」

 

 「そ、そうでしたかぁ。よかったですぅ……」

 

 

 ルゥはほっ、と息を吐いて無い胸を撫で下ろす。例え赤ちゃんから成長するためだとしても、好きな人が初めて目にする女の子の部分は自分のがいい。ルゥの胸にママとは違う女心が芽生え始めていた。

 

 

 「えーっと……ちょっと自信なくてはずかしいですけど……えーいっ!こっ、これが女の子の部分!おだいじですぅ!」

 

 

 ルゥは暫し恥ずかしがっていたが、意を決してスカートを捲り上げる。ちなみに今の二人はユウキが木に背中を預けておちんちんを露出して座っており、ルゥはユウキの手が届く距離に立っている。そしてルゥは目を瞑りながら女の子の部分をユウキに晒していた。

 

 ユウキの目にはルゥの女の子の部分、おだいじが映っている。陰毛が全く生えておらず、陰唇も発達していない清廉な一本スジである。ユウキは無意識に唾を飲み込み、誘われるように手を伸ばす。

 

 スジの最下部と肛門の境目。会陰部(えいんぶ)に中指の腹をそっと押し当て、そこから最上部のクリトリスまで中指をゆっくり滑らせていった。ほんのりと湿った媚肉に指先が埋もれ、ルゥが分泌する甘酸っぱい香りのするとろみが指に絡む。

 

 

 「ひゃああああっ!?ゾクゾクするですぅ!いきなり触っちゃダメですうぅ!」

 

 「ごっ、ごめん。とってもかわいくて……」

 

 「かっ、かわいいですかぁ?……ユウキさんにほめてもらえるのは嬉しいですけど、背中がゾクゾクしますねぇ……えっ、えっとぉ。おちんちんの上にすわるですよぉ」

 

 

 恥ずかしすぎて耐えられなくなったルゥは、スカートで女の子の部分を隠しながらユウキと対面座位の形になった。おちんちんとスジが密着し、綻び始めたスジがおちんちんを軽く湿らせる。ユウキは興奮と快感で思わず呻いた。

 

 

 「ルッ、ルゥちゃん。これ凄く、おちんちんが変になるよ」

 

 「はっ、はいぃ。ルゥもすごく変な気分ですぅ。でもこれならルゥのスカートでおちんちんもおだいじも隠せるから、恥ずかしさはそんなにないですねぇ?」

 

 「う、うん。確かに恥ずかしくはないかも」

 

 「それならよかったですぅ。……それじゃあユウキさん。お待たせですぅ。おちんちんをルゥのおまたに入れてぇ……おちんちんからぁ、女の子をママにするおつゆ。いっぱいどぴゅどぴゅ、って。出しちゃいましょうねぇ……」

 

 

 ルゥは発情したのか雰囲気がやや妖艶だ。ママというより女といった感じでユウキはやや圧倒される。しかし悪い気はしない。記憶はないはずだが『処女でロリビッチ』という単語が頭に思い浮かび興奮する。

 

 おちんちんが限界までそそり勃ち、先端から先走りが溢れでる。しかし、少し心配だ。ルゥの体はとても小さい。『リトルリリカル』の子達よりほんの少し育ってはいるがそれでも不安になってしまう。

 

 

 「ルゥちゃんのおまたっておだいじのことだよね?そんなこと出来るの?痛くならない?」

 

 「だいじょぶですぅ!ルゥは丈夫なんですよぉ?マナリア学院にかよって今日までいきのこれたのがそのあかしですぅ!……まあ、最初はちょーっと血がでて痛いかもですけど……」

 

 「ルゥちゃんが痛いのは嫌だよ。それならおちんちん我慢する」

 

 「うーん……確かにさいず差はあるですけどぉ……」

 

 

 ルゥはチラッとスカートを捲っておちんちんを確認し、ユウキの顔を見る。その後も何度かおちんちんとユウキの顔をチラチラと交互に見ていた。

 

 

 「……言われてみると大きさがつり合ってないですねぇ。……でもルゥの体って多分もうおっきくならないですよねぇ……」

 

 

 勢いで動いていたルゥの頭に冷静さが戻ってきてしまった。初体験は痛いものという情報だけはルゥも聞き及んでいる。若干逃げ腰になったルゥはここで中断するか決めかねていた。

 

 これはいけない、と思ったのはオメメちゃんである。オメメちゃんはいつの間にかユウキの口の中から彼の頭の上に転移していた。オメメちゃんは思案する。きっとルゥのことだから今回は保留にして別の機会に、と考えているのだろう。

 

 しかしユウキの周りにはほぼ常に女の子がいる。今回は偶然二人きりになれたが、次にこんなチャンスが巡ってくるのはいつになるかわからないのだ。オメメちゃんはあまり気乗りしないが、ルゥにボールアイの能力を使うことにした。

 

 大きなひとつ目を持っていたり大量の目を持った魔物というのは、威嚇したりビームを出したり、必ずなにかしらの特性や特殊能力を持っている。そしてオメメちゃんの種族であるボールアイの特殊能力は比較的ポピュラーなもの。

 

 『魔眼』である。魔力の籠った目で相手の目を見れば感情を意のままに操ることができるのだ。『オメメちゃんの力が対象の魔法の抵抗を上回り』、『オメメちゃんの想像できる範囲で』、『相手がその感情を持っていれば』という制限はあるが。

 

 ルゥが敵にオメメちゃんを投げつけるときにも実は魔眼を使っている。自身が豪速球として投げられる恐怖、衝突したときの衝撃を相手にも伝えているのだ。これによってダメージに精神的ショックが上乗せされていることをルゥ本人は知らない。

 

 オメメちゃんはルゥのことをとても好ましいと思っている。なので能力を使う想像すらしたことはなかったが、この子が幸せになるためならやむを得ない。オメメちゃんはそう思い、ルゥとの距離を出来るだけ詰めようとユウキの頭から身を乗り出した。

 

 

 「あーっ!オメメちゃん!ユウキさんに食べられたかと思ったらそんなとこにいたですかぁ!」

 

 

 瞬時にルゥに捕獲されてしまった。まあ、この状態でも目を見ることさえできれば魔眼を使うのに支障はない。

 

 

 「……さっきはユウキさんがオメメちゃんを食べたらすごいちからが使えたですよねぇ?ルゥにも同じことできるですかねぇ?……えーい、ものは試しですぅ!」

 

 

 ルゥはそう言ってスカートを捲り――なんと、オメメちゃんを自分のおだいじの中に詰め込み始めたのである。さっきまでユウキの口の中にいたのでオメメちゃんは全身涎まみれだ。

 

 ルゥが少しだけ分泌していたとろみも加わり、スムーズにルゥの胎内(なか)に詰め込まれてしまう。転移しようにも魔力供給元のルゥは魔力切れ。なけなしの魔力はユウキの口から出るときに使ってしまった。

 

 

 「やったですぅ!ユウキさん!オメメちゃんといっしょならルゥはひゃくにんりきですよぉ!これで痛くないと思うですから、どーんと来ちゃっていいですぅ!」

 

 

 涙目のオメメちゃんをよそにルゥはテンション爆上がりだ。痛みなく大好きな人(ユウキ)を受け入れられそうなのでそうなるのもしかたないのだが。だが、ユウキは普通にオメメちゃんの身を案じていた。

 

 

 「ルゥちゃん。オメメちゃんは大丈夫なの?」

 

 「だいじょぶですぅ!オメメちゃんはルゥといっしょで頑丈ですよぉ!このくらいへっちゃらですぅ!」

 

 「……うん、わかった。ルゥちゃんはママだし、それに特別だし。きっとオメメちゃんも大丈夫だね」

 

 「しんらいしてもらえて嬉しいですぅ。……それじゃあユウキさん。今度こそ、おちんちんを入れちゃうですよぉ。んっ……」

 

 

 大変哀れなオメメちゃんをよそにルゥはおちんちんに手を添えて固定し、もう片方の手でスジをくぱぁ、と広げた。そのままゆっくり腰を下ろそうとする。

 

 ユウキのおっきしたおちんちんはなかなか立派なモノだ。ルゥの硬く閉ざされたスジがほどよくこなれ、性感が十分に育てばその魅力もわかってくるだろう。

 

 しかし、とろみが分泌されてオメメちゃんで幾らか物理的に拡張されたとはいえ、ルゥは初物のスジマンである。亀頭の大きさと膣口の狭さが合っておらず上手く入っていかない。

 

 

 「うーん……入り口に……入っていかないですねぇ……こまったですぅ」

 

 「あっ、ああっ!そんなに擦られたら、もう出ちゃうよ!くぅっ……」

 

 

 ユウキは歯を食いしばって耐えている。ルゥの手と膣口におちんちんを刺激され、急激に性感が高まったようだった。これはいけない、とルゥは思った。このままおちんちんが暴発してしまったら、きっとユウキだけが恥ずかしい思いをするだろう。

 

 それに上手く挿入できないルゥの焦りがユウキに伝わり、エッチなことに苦手意識が出来てしまうかもしれない。それは嫌だ。特別な人との初めては特別なものにしたい。

 

 きっとオメメちゃんも助けてくれる。あとは自分が勇気を出すだけだ。ルゥは覚悟を決め、息を止めてお腹に力を入れながら腰を落としていった。

 

 

 「一気にいくですっ!ふんぬぅっ!うぬぬぬっ……!!」

 

 

 ――ぬるり、という軽い異物感。おちんちんの先端が入ったのだとわかった。先端しか入っていないためか、はたまたオメメちゃんのお陰か痛みはない。

 

 

 「うっ、ぐぅっ……!ルゥちゃん、ごめん、出ちゃうっ……!」

 

 「あっ……ユウキさんの熱いのが……ルゥの胎内に……」

 

 

 ルゥの胎内にユウキの熱いものがとくん、とくんと注がれていく。異物感も、精の熱さも全く不快ではない。むしろ心地いいと思うのは大切な人がくれる熱さだからだろう。無意識に自分のお腹に手が伸び、熱さが注がれているところをさする。嬉しい、とルゥは思った。

 

 

 「ごめん、ルゥちゃん。我慢できなくて出ちゃった……」

 

 「ううん、大丈夫ですよユウキさん。ユウキさんはちゃんとがまんできましたよぉ。おかげさまでルゥは今、とーっても幸せですぅ」

 

 

 ルゥが心からの笑顔を見せると、ユウキも気まずそうだったのがすぐに安心した笑顔になった。二人は深いところでよく似ている。嬉しさも幸せも、なんでもすぐに共有できるのだった。

 

 

 「ルゥちゃんが幸せそうで嬉しい。痛くないみたいだし」

 

 「えへへぇ、オメメちゃんにはかんしゃですねぇ。ユウキさんとオメメちゃんのお陰でいたくなかったし、嬉しいばっかりでしたねぇ」

 

 「おちんちんからおつゆ沢山出ちゃったけど、大丈夫?お腹苦しくない?」

 

 「……そういえばぜんぜんお腹がふくれないですねぇ?ルゥにもしきゅー?ってのがあるはずですけど……おだいじから溢れてもこないですねぇ?おかしいですねぇ?」

 

 

 ルゥは大量の精液が注がれたのにお腹が膨れず、胎内から溢れ出ても来ないのが不思議でしきりに首を捻っていた。――と、その時。不思議なことが起こった。

 

 ルゥが精の熱さを受け入れた場所。子宮のある辺りが先ほどとは違う熱さを放っているのである。さらには熱を持った部位がピンクの光で発光し始めた。

 

 

 「はえぇっ!?ルゥのお腹がピカピカですぅ!?ルゥばくはつするですかぁ!?」

 

 「ええ……ルゥちゃん。まずは落ち着こう。痛いとか変な感じはない?」

 

 「は、はいぃ。痛いとかは特にないですねぇ……むしろお腹だけサウナに入ってるみたいな、気持ちいい熱さですぅ」

 

 

 二人は固唾を飲んで光を放つルゥのお腹を見つめていた。ややあって光が落ち着く。そしてルゥのお腹には、子宮をデフォルメしたような不思議な紋様――『淫紋』が浮かび上がっていた。

 

 これもまたオメメちゃんが関係していた。ルゥのおだいじから転移での脱出を諦めたオメメちゃんは、半ばやけくそになりルゥの痛みを無くそうと努めた。

 

 オメメちゃんの働きは功を奏し、膣粘膜の感度が鈍くなったルゥは全く痛みを感じずに済んだのである。そしてユウキの精が流れ込み、オメメちゃんは子宮口の奥に――子宮に進むことに決めた。

 

 オメメちゃんが子宮口を塞いでいてはルゥがママになれないからである。しかし、ここで予想外の出来事が起こってしまう。ユウキは射精の快感と衝撃に体を震わせながらさまざまなことに思いを巡らせていた。

 

 おちんちんの気持ちよさ、ルゥの体の心配、オメメちゃんは大丈夫かな、といったこの場にいる者全員のこと。そのなかで一番強い想いはルゥがママになることについてだった。

 

 街中で妊婦を目にしたことがある。コッコロに教えてもらったところによると、膨らんだお腹には赤ちゃんが入っているらしい。そして、お腹が膨らんだ女の人はママとなり、お腹を膨らませた男の人はパパになるそうだ。

 

 その時のユウキには実感が沸かなかった。でも、ルゥのお腹に精液(女の人をママにするおつゆ)を注いで色々なことがわかった。あの時の妊婦の女性は幸せそうに笑っていた。それはユウキにとってのルゥのように相手が特別だからだろう。

 

 ルゥはユウキのことが好きだと言ってくれた。それならルゥがママになれば、あの時の妊婦と同じような笑顔を見せてくれるかもしれない。家族というものの在り方。その一面をユウキは言葉ではなく心で理解できた。

 

 そして驚いたことに、この時の想いが元で精液越しにオブジェクトの変更が発動したのである。オメメちゃんはルゥの子宮口をわずかに弛緩させて子宮に侵入した。自身にかかる精液は最小限にしようと子宮の隅に避けておく。

 

 だが子宮に流れ込んだ精液はオメメちゃんを狙うように流動して包み込み、オメメちゃんに浸透したのだ。結果的にオメメちゃんがルゥに宿り、魔が宿った証としてミスタルシア特有の淫紋が浮き出たのである。

 

 

 「なんだか変な模様が出てきたけど……大丈夫なのかな?ルゥちゃん、爆発しない?ルゥちゃんが爆発したら嫌だよ」

 

 「うっ……うぅん。ばくはつはしなさそうですねぇ。……だけどお腹の……おつゆを注いでもらったしきゅーが熱いですぅ」

 

 

 ママになったら栄養が二人ぶん必要である。そして魔の者を孕んだときの栄養といえば?そう。精液である。ママになったルゥはパパの精液を欲し始めたのだ。ヤバいですね。

 

 

 「なっ……なんだろう。ルゥちゃんのお腹と、目を見てたら、おちんちんがむずむずして……」

 

 

 ルゥはオメメちゃんを宿したことによりボールアイの魔眼を継承していた。『子宮に精が欲しい』というママの本能が力となって眼光と淫紋に宿り、ユウキがルゥの目か淫紋を見ると発情してしまうのである。

 

 ルゥの胎内に収まったままで半勃ちになっていたおちんちんはすっかり元の硬さを取り戻した。

 

 

 「はぁ、はぁ……。ユウキさん。ルゥも変ですぅ。がまんできないですよぉ……。ユウキさんも元気になったし、動かしますねぇ」

 

 

 ルゥはユウキの首に手を回して腰を動かし始めた。ルゥの服装は変わらず上半身裸で、下半身は全部着用している。対面座位で繋がった部位がスカートで覆い隠され、局部が見えないことで逆に興奮を煽る。

 

 ユウキは自分の上で跳ねる小さな体に見とれ、なんだかエッチな気がするルゥの腰に左右から手をやる。そして、ルゥの腰つきが意外にいやらしいことに気づいた。

 

 体が小さいとはいえ16の乙女である。女性としての機能を備えるために最低限必要な成長は果たしていた。そう、子供を宿せるようにと骨盤が発達したのである。

 

 カリスマモデルなどの洗練されたスタイルとは比べるべくもない。しかし、幼い子供とは少しだけ違う女らしさがある。ミスタルシアとアストルム。二つの世界の人間でただ一人、ユウキだけがルゥの女らしさに気付いたのだ。

 

 ユウキは視覚と手ざわりから伝わってくるいやらしさに動物的な本能が刺激され、性欲に支配された野獣と化した。そしてルゥにとってもユウキの変化は望むところだった。

 

 精を欲する雌(メス)と性衝動に滾る雄(オス)。人という動物の根元的な愛のかたちがそこにあった。

 

 

 「ルゥちゃん!ルゥちゃん!ママにするおつゆ、また出ちゃうよ!」

 

 「はいっ!だいじょぶですユウキさん!ルゥの胎内にいっぱい出して!ルゥをママにしてくださいぃっ!」

 

 

 始めはおぼつかない動きだったルゥの腰付きはだんだんと激しくなり、いやらしいくねりが加わってユウキのおちんちんを刺激した。辛抱たまらなくなったユウキも腰を突き上げる。

 

 示し合わせるでもなく二人はお互いの腰の動きを合わせ、ひとつになった二人は高みへと上り詰めていく。

 

 

 「くうぅっ!また出るうぅっ!……ああっ……で、出たぁ……」

 

 「あうぅっ!……はぁ……はぁ……ユウキさんの熱いの、さっきよりしっかりと感じますうぅ……」

 

 

 先ほどと変わらない量の精液がルゥの胎内に流れ込んでいく。ふと、ルゥはユウキとキスしていないことに思い至った。

 

 

 「ユウキさん。キスしちゃいますね」

 

 「あっ、うん」

 

 

 ルゥはユウキに顔を寄せ唇を合わせる。唇が合わさるだけのシンプルなキスは10秒ほど続いた。

 

 

 「ちゅっ……ふぅ……なんだか、とちゅーからママとこどもって感じじゃなくなっちゃいましたねぇ」

 

 「うん。ルゥちゃんにはママになって欲しいけど、僕はパパになりたい」

 

 「えっ。……えへへ……それってぷろぽーずですぅ?」

 

 「そうなのかな?……僕には色々なことがわからなくて、自分で自分のこともできないけど、それでも頑張ってルゥちゃんと一緒にいたい」

 

 

 ユウキはたどたどしく言葉を紡ぐ。赤ちゃんでありながらも、ユウキらしい優しさと誠実さがあらわれた言葉だった。

 

 

 「ありがとございますぅユウキさん。ルゥも頑張るですよぉ。ずっと、ずぅっと一緒にいましょうね」

 

 

 暫し抱き合っていた二人は身支度を整え、サレンディア救護院に帰還した。

 

 

 @@@

 

 

 ――その後は二人でわずかな時間を見つけて逢い引きするようになった。単純に二人の時間が欲しかったし、ルゥもユウキもお互いの身体を欲していたのが大きかった。

 

 ルゥはユウキを見ると無意識に魔眼を発動してしまう。そしてユウキはかわいい妹のような、そして特別な存在のルゥを無意識に目で追ってしまう。遭遇したら二人とも即発情してしまうのだ。

 

 ある時は授業が終わった学院の教室。ある時は郵便配達の締めに二人で立ち寄った牧場の温泉。幸せな時間はずっと続くかと思われた。

 

 ――そして『その時』はある日突然訪れた。

 

 

 「んふふっ……ユウキさん。もぅこんなにおっきくなってるですぅ」

 

 「ルゥちゃんを見てたらこんなになっちゃった……今日もお願いしていい?」

 

 「うん、ルゥも準備できてるですぅ。それじゃあ下着は脱いで……はい、どうぞですぅ」

 

 

 真夜中のサレンディア救護院。その建物の脇で二人の男女が睦みあっている。ユウキとルゥであった。ルゥが下着を脱いで壁に手を付け、ユウキがルゥの片足を持ち上げて挿入する。

 

 これなら狭い場所でもできて、服がシワにならない。逢い引きする二人が短時間で愛し合うには絶好の体位である。

 

 

 「んっ……くぅっ……やっぱり中の感じがいつもと違う。それに入り口が締まって気持ちいい」

 

 「んぐぅっ……くはあっ!すっ……すごい深くまできてるですぅ!ルゥ、くし刺しになっちゃうですぅ!」

 

 

 男性側は膣を斜め下から突くことになり、普段とは違う快感を得られる。立っているため膣口の締め付けも高まり、おちんちんをきゅうきゅうと締め付けてくる。

 

 ユウキとルゥの身長差があるため、ルゥは地面についた足が半分浮いている。おちんちんが子宮口をこじ開けんばかりに奥まで刺さり、ルゥは深い圧迫感と性感に喘いだ。

 

 

 「あなたたち、何をしているのッ!!」

 

 

 ――ユウキとルゥではない第三者の叫びが木霊する。声の主はサレンディア救護院のギルドマスター『ママサレン』であった。

 

 

@@@

 

 

 ――その後しばらくして。ルゥは小部屋の椅子に一人で腰掛けていた。この部屋はランドソルから少し離れた平野にユウキがオブジェクトの変更で建ててくれたものだ。

 

 ルゥはユウキとの関係がばれてもサレンディア救護院にいるつもりだった。しかし救護院の子供達がルゥを見る目や、サレンの様子をユウキが見かねてルゥだけ住まいを移すことにしたのだ。

 

 ユウキは誰にもこの場所を告げていないらしく、ここにはユウキ一人で訪ねてきてくれる。ルゥの身体の変化もあり、魔力を籠めるだけで簡単に家事がこなせる魔道具も出してくれた。

 

 しかし、ルゥの心は暗く沈んでいた。

 

 

 「ルゥたちがこういう関係になって、こんなにも色んな人たちが傷付くなんて思ってなかったですねぇ……ママサレン……」

 

 

 二人の関係に真っ先に気付いたのはサレンだ。彼女はギルドマスターとして、大人の対応として、二人の関係に深く言及しなかった。しかし、二人の関係に気付いて以降めっきり塞ぎこんでしまった。

 

 サレンは自分でも気付かない内にユウキに強い想いを抱いていたのだ。サレンがギルド活動として救護院を立ちあげた理由。それは路頭に迷う子供を見かねて、というのも確かにある。しかし、それは後から付け加えられた理由にすぎない。

 

 最大の理由は『ユウキに出会った』から。次いで『自分が父親に似ているから』である。サレンは幼い頃にユウキと出会い、彼との思い出を幸福な記憶としてずっと胸の内に留めている。

 

 一方で成長するに従って自分が父親似であることを自覚した。父のことは家族として愛し尊敬している。そして商売人としての在り方も理解できるし共感できるのだ。

 

 サレンの父は利益の出ない商売――例えば救護院を建てるなどは絶対にしない人だ。だからこそサレンはギルド活動として救護院を始めることにしたのである。

 

 自分には父性だけで母性がないという気付き。自分が幼馴染みに淡い想いを抱く女の子であり、その上で自分を父親似だとよく知っているからこそサレンはママになろうとしたのだ。

 

 概念としてのママになるというのは、端的にいえば心に余裕を持ち自分以外のものを受容すること。受容するものが自分にバイヴスが近いものなら尚更いい。共感できる言葉は強く心(ハート)を震わせるからだ。

 

 サレンは救護院の運営以外にも、商売に苦戦している商人にはノウハウを提供するという形で無償の支援を行っている。その結果思いもよらぬ形で人を動かし、結果的に救護院の助けになることもある。

 

 人の心の琴線に触れ、心を動かすことが出来るというのは即(すなわ)ちママである。サレンは持たざる者だからこそより深く母性(ママ)を理解し、誰よりもママたり得るのだ。

 

 そんなママサレンの母性を揺るがす事態が発生した。ユウキとルゥの肉体関係の発覚だ。初めは理性で受け止めようとした。しかし、サレンが心からママでいられたのはユウキが誰のものでもなかったからだ。

 

 余裕がなくなれば受容することも分けあたえることもできない。ある日とうとう仮初(かりそめ)のママをしていたサレンのダムが決壊し、『私はママじゃない!』と悲痛な叫びをあげたのである。

 

 そこから芋づる式にサレンディア救護院の者達にユウキとルゥの関係が知られることとなった。……サレンには悪いことをしてしまった、とルゥは思う。でも、今の状況を避けるにはどうすればよかったのか、今でもわからないのだ。

 

 

 「グレア先輩がミスタルシアにかえるときに『私たちがいることで、この世界にどんな影響を与えるかも分からないから』って、確かいってたです。……それはきっとこういうことだったんですねぇ」

 

 

 ルゥは自分のお腹を優しくさすった。そこにはユウキとルゥの愛の結晶が眠っている。

 

 

 「ちがう世界の人とせーしゅんして、愛しあうのはダメなことだったんでしょうか……」

 

 

 ルゥの目から悲しみの涙が溢れ、頬をつたっていく。

 

 

 「サレンディア救護院の人たちとの関係はもう変えられないでしょうか。……この子をのぞまれない子にはしたくないですねぇ。……あなたは、パパとママが愛しあって生まれてきたっ、て、胸を張って……」

 

 

 ルゥは最後まで言葉を紡ぐことができず、はらはらと涙を流す。止めどなく流れる涙が、ルゥの端正な顔と服を濡らしていく。

 

 

 「やはりフィオの気配はなし、っと……えーっと、すいませーん。お邪魔しまーす」

 

 「うっひゃああぁーっ!?えぇっ!?ここにはユウキさんいがい誰も入れないはずですけどっ……お姉さん、誰ですかぁ!?」

 

 

 全身に『赤』を纏った女性が部屋の入り口に立っていた。赤い全身鎧に、赤いメガネ。髪までも真っ赤に染め上げている。一目見ただけで女性の偏執的とすらいえる性質が伺えるようだった。

 

 音もなくこの部屋に入ったというのがルゥを驚かせ警戒心を抱かせる。この部屋の入り口は普段外からは見えないようになっているはず。ユウキが入り口を広げなければ誰も部屋があるとは気付かないはずだ。

 

 

 「ユウキ少年、ね。……うん。別次元の人間だけど、ルゥちゃんの口から聞くのは不快じゃないな。……ああ、ごめんね。少年と同じ力で勝手に入らせてもらって。お邪魔しまーす。……驚かせちゃったね。アタシは『模索路 昌(もさくじ あきら)』。はじめましてだね、ルゥちゃん」

 

 

 赤い女性はお邪魔しまーす、といいながら部屋の中から入り口をトントン、とノックした。どうやら女性は昌という名前らしい。ランドソルでは珍しい感じの響きだ。

 

 

 「あっ、はい。ルゥですぅ。よろしくですよぉ。……あの、昌さんはユウキさんの知り合いですかぁ?あと、なんでルゥの名前しってるですかぁ?」

 

 

 ルゥにしては珍しく警戒心が高まっていた。色々なことがあって気分が沈んでいたし、昌がどうにも得体のしれない人物だったからだ。

 

 

 「アタシはユウキ少年の保護者みたいなものだね。保護者だからここも出入り自由ってわけ。ルゥちゃんのことは陰でずっと見てきたよ。少年といつも仲良くしてくれてありがとう。……そんな仏頂面じゃなくて、ユウキ少年と話してる時みたいに笑ってほしいな。少年と似てるからさ、ルゥちゃんの笑顔好きなんだよね~」

 

 

 女性はフレンドリーな感じがするし、さらにユウキの保護者だという。……本来なら打ち解けてもいいはずなのに、そういう気が起きないのがルゥには不思議だった。

 

 

 「……ごめんなさいですぅ。なんだかルゥはずっと悲しくて、そういう気持ちになれないみたいですぅ。昌さんはユウキさんのほごしゃなのにもうしわけないですぅ……」

 

 

 言葉通りルゥの表情は悲しみに満ちていた。そんなルゥを見て昌も困ったような表情になる。

 

 

 「う~ん、こういうのはやっぱりアタシには無理なんだよなー……『ネネカ』。お願いしてもいい?」

 

 「ええ。それじゃあ手筈どおりに」

 

 「ひゃひいぃぃーっ!?いつの間に後ろにいたですかぁ!?」

 

 

 いつの間にかルゥの背後には全身ピンクの女の子が立っていた。いかにも魔法少女といった出で立ちである。年齢はルゥと同年代か、もっと下だろうか。

 

 

 「彼と似ている、とは思っていましたが。こうして接触してみるとなおさら実感します。あなた、かわいらしいですね」

 

 

 ピンクの少女は仏頂面でルゥを褒めてきた。昌と同様にこの人もよくわからないが、意外と感情豊かなのかもしれない、とルゥは思った。

 

 

 「ねっ。可愛いでしょ。少年とのツーショットは厳選してメモリーピースに残しちゃった。ネネカもいる?」

 

 「お気遣いなく。私は私でしっかり保存しています」

 

 「まあ、アンタの『変貌大妃(メタモルレグナント)』はそういうの大得意だもんね」

 

 「地形に迷彩するあなたのデバガメ振りもなかなかのものでしたよ。『迷宮女王(クイーンラビリンス)』」

 

 

 どうやら二人は知り合いらしい。

 

 

 「さて、ルゥさん。あなたは異世界から来ましたね?一度は元の世界に帰って、またこの地に戻ってきた。そうですね?」

 

 「はっ、はい。そうですぅ……」

 

 「そうして彼……ユウキさんと恋仲になり、この地で彼を慕う女性達に目の敵にされている。間違いありませんか?」

 

 「…………はいぃ。……そうですぅ……」

 

 

 ネネカの声のトーンはずっと変わりないのだが、ルゥは責められているような気分になってしまい落ち込んでしまう。昌は難しい顔でそんなルゥを眺めていた。

 

 

 「ネネカ、その辺で……」

 

 

 昌が割って入ろうとするのをネネカは手のひらを見せて静止した。

 

 

 「ルゥさん、安心してください。私は魔法少女です」

 

 「……はいぃ?」

 

 

 ネネカの唐突な宣言に流石のルゥも妙な顔で頭に疑問符を浮かべてしまう。

 

 

 「彼とあなたのやり取り。そして先程の言葉。全て拝聴させてもらっています。……彼とあなたとの関係は、尊い。美しいです」

 

 「とっ、とうと……?うつくしい、ですかぁ?」

 

 「はい。あなたたちのような振る舞いは誰にでも出来ることではありません。だから美しいんです。世界があなたや、あなたたちの子供を拒むというのなら。私や昌が世界の方を変えてみせましょう。何故なら……」

 

 

 ネネカは魔法のステッキを取り出して決めポーズっぽいのを披露した。

 

 

 「魔法少女は希望を運ぶものですから」

 

 「お、おお~?なんだかすごい自信ですぅ」

 

 

 言っている意味はよくわからないがとにかく凄い自信だ。沈んでいたルゥも少し元気を取り戻す。ネネカの演説を聞きながら昌は『最近こうなんだよなぁ。頭でも打ったかね』とぼやいていた。

 

 

@@@

 

 

 ――そして現在ルゥは眠っている。眠気を催す粉が入った飲み物を飲ませたのだ。これだけ警戒心が薄いと心配になってくるが、全てが終わったら少年……ユウキがルゥを守るだろう。

 

 

 「眠らせて意識がないうちに済ませる、ってのはちょっとばかり気が咎めるね」

 

 「この子自体に干渉するわけではありませんから、まあ許容範囲でしょう」

 

 「まあ、確かに。少年や彼女らの絆のためには遅かれ早かれやらなきゃならなかったしね。……ルゥちゃんが居なくなったときの少年の損耗率はどのくらいだっけ?」

 

 「試算したところによると5から10パーセントといったところですか。……こういった『人間』の計算はまだまだ不明瞭ですので、数字のばらつきが大きいですが。彼が大きく損なわれることは間違いありません」

 

 「そりゃあほとんど廃人だね……。少年のためにもルゥちゃんを守ってやらないとね。……さっきの演説、よかったよ。ルゥちゃんも笑顔になってた」

 

 「まあ、私のキャラではないんですけどね。……少し芝居がかっていましたけど、話した内容は全て本当に思っていることです。あんなに綺麗に寄り添いあう二人から笑顔を奪うのは、世界が許しても私が許しませんよ」

 

 「やっぱり熱いね。まあ私も似たような気持ちだけどさ。……でも思い切った決断だったね」

 

 「なんの事です?」

 

 「変貌大妃(メタモルレグナント)を少年に、って話さ。最初は別の案を色々考えてたじゃない?なんで気が変わったのかって思ってさ」

 

 「……大したことじゃありません。ただ、マサキに色々言われましてね。使い慣れない新技術よりも、使い慣れた技術でいくことにしたんです。……ああいう時には妙に鋭いんです、彼は」

 

 

 ネネカは昌から目線を反らしルゥの方を見る。ネネカの頬はほのかに紅潮していた。

 

 

 「ああー、ごちそうさま。まあ、彼はあんた絡みだと無限に賢くなって無限に頭悪くなるからねえ」

 

 「ごちそうさまではないですけど。まあ、そんなところです。……認識に作用する魔法は簡単にいけそうですね」

 

 「元からある魔法にちょっと手(バグ)を加えてやるだけだからね。いまいましい魔法だけど、せいぜい利用させてもらおうじゃないの」

 

 「彼と、その周りの彼女達と、ルゥちゃんは、この魔法を受け入れてくれるでしょうか」

 

 「それははっきり言ってわからない。……悪い方にいくことだってもちろんある。だけど本当に全てが終わったあとに、笑顔でいてもらうために。この後にできることはまだまだある。そうだろう?」

 

 「昌も彼のことになると熱いですね。……オブジェクトの変更、彼が使うとだいぶ平和的ですよね。あんな使い方昌に思い付きますか?」

 

 「思い付かないね。やっぱり少年は面白いよ。変貌大妃(メタモルレグナント)も少年が使えば面白いことになるかもしれないね」

 

 「それは、流石に想像を越えてくることはないと思いますが。……でも、期待ですね。それじゃあ、そろそろ始めましょうか」

 

 「ああ、始めようか」

 

 

@@@

 

 

 ――それからしばらくして。ルゥたちが住む小屋に赤ん坊の『オギャア、オギャア』という泣き声が響く。ユウキとルゥの愛の結晶。その女の子の名前は『メメ』といった。ルゥはメメを抱っこして背中をぽんぽんする。

 

 

 「おーよしよし、ですぅ。お腹すきましたかぁ?それとも下がぬれましたかぁ?……うーん、これは健康そうないろですぅ。じょうずに出せましたねぇ」

 

 「ルゥちゃん、ご飯できたよ」

 

 

 ユウキが二人分の普通の食事とメメ用の食事を持ってくる。ユウキはここにいながらにして飲食店でバイトもしている。料理の経験値を積み、記憶喪失以前よりも遥かに料理上手になっていた。

 

 

 「わあっ!ユウキさんありがとですぅ!メメちゃーん。パパがごはん作ってくれましたよぉ。みんなでいっしょに食べましょうねぇ」

 

 

 ルゥがメメに笑顔を向けてあやしながらご飯を口に運び、ユウキはルゥの口にご飯を運びながら自分の食事も摂っていた。いつの間にか出来上がった食事専用フォーメーションである。

 

 

 「ルゥちゃんは今日はどうする?僕がここでメメを見てるから、ルーセント学院とかサレンディア救護院に行ってきても大丈夫だよ」

 

 「うーん……それもいいですけどぉ……」

 

 

 少し考えたルゥは、メメを抱っこしたままユウキにぴたっ、とくっついて体重を預けた。肉体労働と戦闘で少し逞しくなったユウキの体は二人分の重みを力強く受け留める。

 

 

 「えへへ……今日は家族でいっしょにいたいですぅ」

 

 「うん、じゃあそうしよっか」

 

 

 ユウキがルゥの頭を優しく撫でるとルゥは気持ち良さそうにしている。その間メメは興味深そうに『三つ』の目でユウキの顔をじっと見ていた。ユウキがメメの目の前で手のひらを広げると、メメは手のひらや指を弄って遊び始めた。その顔は満面の笑みである。

 

 メメはユウキとルゥの子供で、オメメちゃんも混じっている。左右の目の色はルゥと同じ紫、額の目も紫だがオメメちゃんを思わせる目の形をしていた。ルゥはメメと初めて対面したとき『オメメちゃんここにいたですかぁ!』と涙ながらに抱き締めていた。

 

 ルゥは結局オメメちゃんがどこにいったのか出産まで気付かず、肩を落としながら代理のボールアイに慰められていた。なおユウキにはボールアイの区別が付かないがルゥには普通にわかるらしい。

 

 

 「ルゥちゃんはサレンディア救護院に行くのはもう怖くない?」

 

 「……本音を言えばあのときのことを思い出してちょっと怖いですねぇ。でもみんな優しくしてくれるし、ユウキさんもいてくれるからだいじょぶですぅ」

 

 

 昌とネネカが世界への認識阻害にバグを仕込むことによって、サレンディア救護院の者はルゥと以前のように好意をもって接してくれるようになった。本来なら昌はバグを好まない。

 

 バグにバグが重なってアストルムが混沌としか言い様のない状況になっているからだ。しかし、アストルムを救う鍵となる少年のためならバグの利用もやむを得ないと思った。

 

 

 「それならよかった。ルゥちゃんが心から笑えるようになって本当に嬉しい」

 

 「心配かけてごめんなさいですぅ。……サレンディア救護院のみんなとまた仲良くなれましたし、それに今はユウキさんといつでも一緒にいられるですから。とっても幸せですぅ」

 

 

 ユウキはネネカの手により変貌大妃(メタモルレグナント)の権能を一部扱えるようになっていた。始めは自分の意思がある存在を複数持つことに慣れず、自分の意思を宿した謎の肉片を創造したりしていた。

 

 今は慣れたもので一部の動物や自分自身のコピーを作ることもできる。本体はここでいつでもルゥとメメを守っており、ランドソルなどで見かけるユウキはコピーである。

 

 

 「また、この前みたいに牧場の温泉とか行ってみたいね」

 

 「あの時はびっくりでしたよぉ。ほごしてい?の動物に変身したユウキさんの中にくるまって移動するなんて」

 

 「メメも喜んでたからよかったよ」

 

 「ユウキさんが分身できるととってもいいですねぇ。メメちゃんから目をはなさないですむですぅ」

 

 「なんか、こうして色々楽しいこと考えると幸せって感じがするね」

 

 「えへへ……ルゥもユウキさんに会えて本当に幸せですねぇ……」

 

 

 

 ――ルゥとユウキは互いの体温を感じながら静かに寄り添った。メメは興味深そうに二人を見ている。アストルムの現人神、ミスタルシアの魔物の祝福を受けた三人は、ささやかな幸福を感じながら暮らしていくのだった。

 

 その後のアストルムに額に目がある種族ができるのはまた別のお話。




赤ちゃんが赤ちゃん作ったっていいじゃない。二次元だもの。

明日はオナニーの日なので初投稿です

ルゥちゃん可愛すぎて頭がおちんぽになっちゃう

プリンセスコネクトで好きなキャラはマサキとアゾールドとオクトーとダイゴとラジラジとカイザーインサイトとユキくん

マサキは絶対いい奴です。いい男だねぇ(荒地の魔女並感)

大体全員好きです

ミヤコすき

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。