私は姉の玩具。 作:飯妃旅立
残念ながら、"優しかった頃の姉"という幻想は既に私の中から消え去っている。姉は恐怖の象徴であり、嫌悪の対象。それ以下でもそれ以上でもなく、抗い様も避け様もない"絆"で結ばれた存在。
それは果たして、悲しい事なのだろうか。
あるいは学校にいる"友人"と呼ばれる人たちが話すような、はたまたインターネットやテレビ放送で語られるような姉なるものが齎す愛情。良いモノだけではないだろうけれど、一定の距離感を持った兄弟姉妹というものにはもうありつけない事実は、果たして。
私にとって、つらく、苦しい事なのか。
……少し前の私なら、わからない、と答えていたかもしれない。
けれど今ははっきりと言える。
そうではない、と。
姉の存在そのものは私にとって辛苦ではない。嫌っているのは事実だ。悍ましいと思っているのも事実。彼女から受ける責め苦が苦痛であるのも、事実。けれど、姉と接するのが辛いとか、苦しいとか、そういうことはない。
だって姉は。
華梶の家に生まれた子供は、その将来が決定付けられている。将来に自由はないのだ。
華梶の娘は華梶の名のもとに生き、婿養子を迎え、次の代を生む役割がある。
才色兼備の名を欲しいままにする姉は、だからこそ誰の手からも逃げられない。これがもし国で有数の大貴族サマだとか政治家の娘、とかだったら話は違ったのかもしれない。もっとキツい縛りだったかもしれないし、芸能界へでも行ける程自由だったかもしれない。
ただ、華梶は過去が豪族で現大企業を持っているという
二人産んで、片方が使えないとわかったら、使える方に注力するし、使える方を使いやすい様にする。
今だけなのだ。姉がこうして、私にかかりきりになれるのは。
姉が学生である時だけ、姉は自由を得られる。もう数年あるとはいえ、姉が成人してしまえばそうも行かない。家を空ける事も多くなるだろうし、彼女自身の恋路……否、他企業、他勢力との繋がりのためのソレにリソースを割かなければいけなくなる。
だから、それまで。
私は華梶から、父親から何も求められていない。恐らくは社会に出る事も結婚する事も許されはしないだろう。親戚の集まりでも、私の誕生日でも、父は他人の前に私を出さなかった。自身の視界に入れるのが嫌。そして、誰かの目に入るのも──華梶の名を持つ汚物が存在する事を知られるのさえ、嫌。
学校に通わせてもらえているのだって奇跡のようなものだ。姉が強く懇願したから、だとか。姉は自由ではないけれど、我儘は言えるから、そういう事。
それまで、そこまで。
そこまでの辛抱で、今よりは楽になるということ。
レイプが終わる事は姉の性格を鑑みて無いとは思うけれど、その頻度は激減するはずだ。そうなれば、あとは無為に寿命を消費して、幽閉されたこの檻の中で死んでいく……そんな
……それが、救いだった。
私が今を諦めているのはその救いがあるからで。
もし、それが摘み取られたら。
……そんな未来は来ないと、そう祈るだけだ。
「それでねー? 教頭先生ったら私の胸元をじろじろ見てくるのー。教え導くべき存在が生徒を性的な目で見るとか、本当にダメだと思わないー?」
「……どうせ、自分からアピールしているのでしょう」
「あ、またそうやってお姉ちゃんを悪く言う~。マイちゃん、お姉ちゃんの事なんだと思ってるのー?」
「レイプ魔。強姦魔。それ以外に何かありますか?」
「ぶー、優しい優しい、マイちゃんの事を誰よりも愛しているお姉ちゃん、でしょ?」
裸で椅子に縛り付けた妹を前に、自身は優雅にティータイム。そんなヤツを優しい、だなんて呼べる者がいたら気狂いの名を進呈する。
こういう時間は、それなりにある。
ただ私を縛るだけ縛って、ただ私を剥くだけ剥いて。
その上で雑談に興じる……私からの返答を期待しているわけではなく、"裸の妹を縛り付けた家具"を飾って楽しんでいるだけの、悪趣味な遊び。
けれど、それだけが、この時間だけが私が姉の情報を得るソースになる。姉の事だけでなく、両親の、華梶の話もこうして気を張らない責め苦を受けながらの雑談からのみ得ることが出来る。
欲しいとは思っていないけれど、今家族がどうしているか、今姉がどんな状況にあるのか。否が応にも知ってしまっている、という現状。
「……ねえ、マイちゃん。お姉ちゃん疲れてるんだぁ。癒しが欲しいの」
「マッサージでも受けてくればいいのでは。もしくは呼ぶか? 知りませんが、容易いでしょう」
「そういうことじゃなくて~。ねぇマイちゃん、私はマイちゃんのことが大好きなの。愛してる。本当よ?」
「……」
「だから、好きって言ってほしいなぁ。愛してるって耳元で囁いて、お姉ちゃん、って可愛い声でー」
「嫌です」
「……ちぇ」
素直に従えばいいものを、とは思う。自分でも。冷静な自分が、そう思う。
けど。
嫌だ。もう何度も折れているし、何度も服従しているけれど、そんな懇願を聞いてやる程の"玩具"になったつもりはない。そんな、ボタンを押せば音が出るようなお人形さんには。
姉がティーカップを置く。
テーブルを回って、此方に来た。椅子に対してM字に足を開いた状態で縛り付けられている私は、彼女の行動にどう対処する事も出来ない。
「……ッ!」
「言う事聞いてくれない悪い子は、クリちゃん剥き剥きしましょうねぇ」
言いながら、陰核の包皮が向かれていく。元々が神経の集中した部位で、抓まれるどころか触られるだけでビクりと痙攣してしまう。もしかしたらクラスメイトの女子達はそうではないのかもしれない。けれど毎日毎日責め苦を受けている私の陰核は、その程度の刺激で敏感に反応してしまうモノに成り遂げていた。
その、包皮の外側から触れられて強い刺激のあるものを、抓まれ、剥かれる。
思わず呼気を漏らすほどの刺激。会陰の収縮と共に多少の屹立をしてしまうソコに、姉はにんまりと笑顔を浮かべた。
「どぉ? 愛してるって、大好きお姉ちゃん、って言いたくなったぁ?」
「……人心掌握術を学びなおした方がいいのでは?」
「えいっ」
「ひ──ぐ、ぅっ!?」
強い刺激と言っても指の、調整された力加減でのソレだった。それまで、ソレだった。
姉の軽い声と共に来た衝撃は強いなんてものじゃない、痛いの領域。同年代と比べた事は無い。比較対象は姉しかいないけれど、姉のそれと比べて多少腫れあがってしまっている私の陰核が──潰されている。
灼熱が如き痛み。その上で、陰核の先端を姉の指が撫でるのがわかる。痛みの方が強いけれど、混ざることなく、緩和されることなく、僅かばかりの快感が背筋を這う。
「ふ──ふぅっ、っはぁ、う、ぅぅう!」
「これね、クリトリス用のクリップ。リングやピアスもあったんだけど、素人がやると後が怖いから、ただのクリップにしましたー。どう? 気持ちいい?」
「ぅぅ、ぅうう……ッ、うううっ」
痛い。非常に、非常に強い痛みだ。
冷たいプラスチックにギザギザとした波が立っているらしいそれは、私の陰核をものの見事に挟み込み、圧し潰している。痛みに力めば陰核が膨張する。身を捩ればクリップに吊り下げられているらしい錘が動く。どうしても、どうもしなくても、痛い。痛い。痛い。痛み。痛みが体を支配する。
「それじゃあ、こっちもつけるね」
「う、ふぅ……んんっ!?」
その痛みの最中、甘い声が出てしまった事に驚いた。
それも痛いはずなのに。ああけれど、陰核よりは痛く無いし──そこもまた毎日の責めで、受け入れる準備が出来てしまっていたのだろう。
「ニップルクリップ。綺麗でしょ、小さいけど宝石付きなんだよ? マイちゃんにプレゼント。これを、こうやって首へ回して……あは、綺麗。ジュエリーを展示するマネキンみたいね」
陰核と乳首へクリップが、それを金色のチェーンで繋ぎ、ネックレスへ続く。
こんな展示があってたまるものか。こんな、痛い、痛い、痛くて──。
「気持ちいいでしょ?」
「ひ、ぅ……!」
……気持ちいいはずがない。のに。
依然変わらず、陰核は痛みを発している。痛みだけだ。快感など何もない。
けれど、どうだろう。乳首は……ああ。
潰される痛みよりも。自身が陰核のクリップを揺らすその振動が乳首のクリップへ伝わって……。
「ね、お姉ちゃんのこと、好き?」
「……」
「もう、恥ずかしがり屋さんなんだから」
痛いのが嫌。でも、気持ちいいと感じてしまう身体が、もっと。
……口には出さない。それはしない。もう従順も抵抗も姉を喜ばせるだけだ。無言を貫く。
「んー、じゃあ他の方法で癒しになってもらうね」
「……」
唇を噛んで無言を貫く私を見る、姉の目は。
……決して、私を愛しているとか、好きだとか、そういう感情の混ざらない、嗜虐的なソレだった。
「んんっ……んんん!」
「もう、静かにしてよぉ、マイちゃん。それとも、ああ、ふふ、クリちゃんスレてきもちいねぇ?」
姉の太腿が、布越しにクリップ事陰核を刺激する。
声なんて我慢できるものではない。けれど言葉にはならない。猿轡を噛まされ、言葉を失わされている。
両手は後ろ手に腰へと縛り付けられ、両足も完全にまとめ上げられてしまっている。膣は自ずと口を閉じ、故にクリップで無理矢理引き出された陰核が根元からも刺激を受け、結果膣が濡れてしまう。
それをぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃと布越しに弄られて、下腹部の周辺は不快感でいっぱいだった。
だが、水気の不快感は下腹部だけではない。
全身。全身、どこからどこまで──汗が余りに、不快。
外気が欲しい。風に触れたい。
……そんな願いは、この布袋の中でかなうはずもない。
「あはぁ、マイちゃんの匂いのする抱き枕……柔らかいし、んー! とっても気持ちいいわぁ」
狂気だと思う。陰核と乳首と首のクリップチェーンはそのままに、細長い布袋へ妹を入れ、抱きしめて寝る、なんて。呼吸する分の通気性が保たれている事は救いだけど、息苦しい事に変わりはない。そして発汗による湿気は全身を包み込み、膣から少しずつ漏れ出ている愛液が粘り気と共に足を濡らす。
こちらは痛みで眠れたものではない。気を失うには足りず、眠るには辛い。陰核から発せられる刺激はそういうものだ。
姉はそんな私の入った抱き枕を、何の躊躇も無しに抱きしめてくる。クリップがついている箇所だってお構いなしだ。陰核は余程強く噛みついているようで外れる事は無いけれど、乳首のクリップは何度かバチンと音を立てて外れている。その度に姉が枕のカバー越しにクリップを付け直し、その度に快感を……苦痛を浴びせられている。
狂っている。意味が分からない。姉のレイプに意味を見出すこと自体が間違っていると言われればそれまでだけど、今までの事以上に意味がわからなかった。
「小さい頃ぶりだねぇ、こうやって並んで一緒に寝るの。ふふ、あの頃から私、マイちゃんの乳首コネコネしたり唇に指を入れたりしてたんだけど……流石に覚えてないかぁ」
それは姉が私をレイプする前、という事だろうか。
……覚えていないし、どうでもいい。初めから姉は頭がおかしかったと、そう結論付けるだけだ。
「……ずっと一緒がよかったのに。ううん……ずっと一緒にいようね、マイちゃん」
絶対に──嫌だ。
その拒絶は、猿轡に遮られ、届くことは無かった。