pixivより転載
カルデアから計測しても、この森の向こうに何がいるかは定かでない。そのため、斥候が必要になった。それに斎藤が自ら手を上げたのは偶々だ。
「アサシンの方が向いてんでしょーが、最近働いてなかったんで僕にやらせてください。体も感覚も鈍っちゃう」
「いいけど……無理しちゃ駄目だよ一ちゃん」
「だから一ちゃんはやめてって」
何て遣り取りをしつつ、飛び出したのが数十分前。速やかに森の中に潜入したが、特に異常はない。
異常がないのが異常だった、と斎藤は直ぐに気付かざるを得なかった。鳥どころか虫の鳴き声ひとつしないのだ。ただ生温い風に吹かれた葉擦れの音だけがさわさわと囁いてくる。移動する度に木の幹に姿を隠すが、人影は見えない。尤も敵がヒトの形をしているとは限らないのが今の戦闘相手だ。油断せずに行こう――そう決めた矢先、ふわり、と。甘ったるい香りがした。頭中に警戒音が鳴り響く。鯉口を鳴らしながら、さらに匂いを嗅ぐ。水の匂いもした。音もする。さらさらと水の流れる音だ。思い切って、幹の前から躍り出た。
そこは予想通り川だった。深さは、泥で淀んでいてわからない。そう言えば直前まで雨が降っていたな、と思い出す。辺りを見渡しながら、始終漂っている甘い香りの元を発見しようとした。あるいは、そこで油断したのかも知れない。斎藤は、引き抜いた刀の片方で水深を測ろうとした。要は川に刀を突き立てようとしたのだ。
しゅるり、水中から飛び出た太くてピンク色をした何かが素早く刀に巻き付いた。
「っ」
咄嗟に引き抜こうとしたが一歩及ばず、刀は奪われてしまった。鬼神丸、と思わず英霊の座にまで持っていった愛刀の名を呼ぶ。それと同時に脇差を引き抜いて「それ」を切り裂こうとしたのはさすが斎藤一というべきだろう。しかし、彼は1歩及ばなかった。その脇差すらも弾かれてしまったのだ。それは彼が生前1度も相手をしたことのない――カルデアにサーヴァントとして呼ばれてからも対面したことのない相手だった。
実体はわからない。しかし、とても大きなモノだと斎藤は思った。引っ張り出した知識だと、それは甲殻類――カブトエビに似ていた。問題は、そのカブトエビ全体が斎藤の身の丈よりも大きく、そして口と思しき場所からは、ピンク色の、汁が滴った肉の群れ――たとえて言うなら、形状だけならパスタメーカーと言えたかも知れない。問題は絞り出し口から溢れんばかりにそれ――仮に触手と呼ぼう。触手が何本も何十本も溢れ出ていたことだが。
さすがの斎藤一も、この事態には頭が硬直した。しかし、それ――触手が素早く足に巻き付いてきたとき、彼の全身に悪寒が走った。
「や、やめ」
咄嗟に残された鞘を引き抜こうとしたが、それより素早く両手首を触手が拘束する。それがまずかった。足の方は靴下がまだ防御してくれている。しかし手首は、直接、肌に「汁」が触れた。途端、得体の知れない感覚が全身を襲う。
否、これは知っている。人間として、新撰組を抜けて、普通の人間として生きた身としてこれは知っている。これは――性衝動、というものだ。それも、タチが悪いことに、それを数十倍にも濃縮したようなもの。
この汁はこれ以上触れてはいけない。しかし、ぬるぬるとした触手は奇妙なほどに力が強く、筋力Bの斎藤の力を持ってしても引きちぎれそうにない。いっそ噛み千切ろうかと思ったが、妙な性的興奮をもたらしてくる「これ」を無闇に口に入れたくない。そんな迷いが出てしまった。隙が出てしまった。
しゅるり、幾本かの触手が伸びてきた。そしてそれらは斎藤の服の隙間という隙間から這入り込んできて、内側からボタンを、ベルトを引き千切った。
「は?」
思わず呆ける。どんな膂力をしているんだ、思わず感心したがそれどころではない。今やスラックスは足元まで落ち、ジャケットやワイシャツのボタンは全て弾け飛び、ボクサーパンツ以外すべてさらけ出されてしまった。否、その最後の砦のパンツも触手がたった今引き千切った。そのときに1番敏感なところに僅かに汁が触れ、びくりと体が跳ねた。跳ねてしまった。
大凡、その得体の知れないカブトガニのようなものは、表情筋というものが見当たらない。そもそも目も鼻も口も見当たらない。それなのに――嗤った、気がした。ゾッとする。何より、今は武装解除されてしまい抵抗も出来ない。それに何より、喰われると思った。サーヴァント、あるいは人間を捕食するタイプのモンスターか、厄介すぎる、これは報告しないと、と思ったが、今はそれより自分が脱出する必要があった。しかし、できない。そうこう考えているうち、先程斎藤の服を弾き飛ばした触手が、ねっとりと近寄ってきた。そして、腹に、乳首に触れる。
「んっ……」
ぴりぴりとした感触。触手はずるずると数を増やしていき、斎藤の体を蹂躙していく。脚を、腹を、乳首を、袖の下から腕を、手を、指の先まで。いっそ倒れて振り解きたかったが、それもできないほどに支えられてしまった。終いには口を開けさせられ、触手の先端が斎藤の口腔を蹂躙した。ずぶ、ずぶと音を立てて、汁が口の端から溢れ。溢れさせきることができずに多少飲み込んでしまった。途端、体温が5度は上がったような錯覚を感じた。無論錯覚だ。しかしそれほどに昂ぶりを覚えたのは事実だ。吐き出したかったが今なお触手が口腔を埋め尽くしていた。いっそここまで来たら噛み千切ろうか、と思って、力が抜けている今の全力で噛み千切ろうとしたが、奇妙な弾性に弾き返された。無力だ、と思った。所詮刀のない自分など……と厭世的になりかけた。あるいはそれは現実逃避だったのかも知れない。
全身は最早汁だくで、あの奇妙な汁の効果で全身は最早性感帯だ。性器は触りもしてないのに――触手はなぜかそこだけは避けている――、既にギンギンに勃起していた。先走りが止まらない。その先走りと体中の汁が混じり合って不快感がひどかった。
しかしそれを上回る不快感が、後孔を襲おうとしていた。
操り人形のように、触手の動きで体が操られる。そのせいで両手首が前に出て、尻を突き上げる体勢になった。これは人に見られたくない、そう思っていると、尻の辺り――正確には後孔の周りを、触手が汁を塗りつけていった。垂れていった先で、過敏な後孔に触れた。途端、わき上がる感覚。
「~~~~っ!?」
知らない。こんなのは知らない。生きていた間だって知らない。だって女しか相手にしてこなかった。逆アナルなんて特殊なプレイはしたこともない。だから生前も、死後の現在も、斎藤はまさしく処女だった。その処女を、今、触手が散らそうとしている。それを察した斎藤は、口が解放されたのもあってはじめて懇願した。
「おい、やめろ、やめてくれ、そこだけは」
しかし触手は無慈悲だった。
たっぷりと後孔に汁を擦り付けた触手は、ずぶりと後孔を貫いた。
「――――アッ!? やめ、やめ、ろぉっ……」
後孔を、触手が分け入っていく。斎藤は自分の顔の前に出た両手首に縋るように歯を食いしばる。気持ち悪い、気持ち悪い、やめてくれ。
――そう思っていた、刹那。一点。
「あっ……!?」
触手が、その一点を押してくる。執拗に。斎藤の全身が跳ねる。最早斎藤の顔は耳まで赤い。先走りと汁の混じった液体が地面に落ちた。汗も混じっていたかも知れない。本来なら、そこは、確かに快楽をもたらす場所ではあるが、ここまで斎藤を追い詰めるものではない。触手の垂らす汁こそが斎藤の体に変化をもたらしていた。
その触手は斎藤の後孔を出入りしたまま、遂に残りの1本が、斎藤自身に触れた。
「――っ……!」
じゅく、じゅく、水音を立てる。音を立てて、触手は斎藤自身を愛撫した。蠢く全身の触手。竿を、亀頭を擦り上げる。その間にも後孔は斎藤のそこを刺激し続けた。
次第に竿を擦り上げる力が強くなっていく。後孔の動きも激しくなっていた。斎藤は既に喘ぎ声が漏れることを止められなかった。
「も、だめ、だって、ば……!」
その声に応えるように、後孔の触手は、いきなり太くなった。
「お”」
そして、「そこ」への圧迫がより強くなった。思わず後孔を強く締めつける。途端、びくびくと腰が跳ねた。
「あっ出る、出るっ」
途端、体が持ち上げられ、「それ」が目に見える。羞恥が出たが、それより悦楽が勝った。びくびくと、斎藤は後孔を締めつけながら――果てた。
「あ、戻ってきた!」
「ちょっと大丈夫ですか斎藤さん、森に入って消息絶ってましたけど。……っていうかなんで一臨の姿になってるんです? さっきまで二臨だったじゃないですか。それにやけに甘ったるい匂いもしますよ」
「あー……マスターちゃん、沖田ちゃん。その、あの森には入らない方が良い。カルデアにもそう伝えて」
「え? でも」
「情報はなかった。なかったから。頼むからもう離れよう。……離れたいんだ……」
その後、斥候に行った斎藤からの情報も特になく、微小特異点は問題なく修正され。その森はなかったことにされた。
そこに何が「い」たかは、斎藤のみぞ知る。
End.