……の最初だけ。そのうち続きを書くかもしれない。
那須玲という少女に対する第一印象は、病弱で大人しい少女だった――――
家が隣だから、なんて安易な理由で引き合わされた俺と玲。
要は幼馴染というやつである。
だが幼馴染と言えど俺と玲は異性であり、普通なら思春期と共に疎遠となるのが既定路線だ。
しかし、残念ながらというべきかは定かではないが、少なくとも那須玲という少女は普通じゃなかった。
何を考えているのかわからない茫洋とした瞳、そして触れれば折れてしまいそうな華奢さと、病弱な身体。
とてもではないが、異性だからという理由程度で目の離せるような奴じゃなかったのだ。
玲の見た目は幼いころから飛びぬけていた。
見た目に釣られたのではないかと言われると完全に否定はできないのだが、当時の俺はそれどころではなかったのだ。
目の前にいてもいつ消えてなくなるか不安でたまらなくなるのが那須玲という少女であり、それ故可能な限りそばで助けてやりたいと常に思っていた。
だからまぁ、周りからすれば恋人のような関係だと見紛うほど、俺は甲斐甲斐しく玲を助けていたのは事実だ。
無論そんな事実はなく、単に家が隣の幼馴染というだけの理由で、俺は必死に玲を支え続けた。
だから気づけなかった。
何の見返りもない施しを受け続けた玲が、どれほど追い詰められているのかなんて。
「――――ねぇ、仁はなんでいつも私を助けてくれるの?」
何度反芻したかもわからない、きっかけとなった会話。
「なんでって……幼馴染だからだよ、玲のこと放っておけるわけないだろ」
特に深く考えずに、俺はそう返した。
無論放っておけないというのは真実、俺の気持ちでもあった。
「でも私、仁に何も返せてない」
「はぁ? 今更そんなこと気にすんなよ、見返り欲しくてやってるわけじゃないんだし」
この辺りから、どこか玲の雰囲気がおかしいことには薄々気づいていた。
気づいてはいたが……どうすればいいのかもわからず、とりあえず会話を続ける。
「じゃあ、いつまで?」
「いつまでって……」
「いつまで仁は私なんかに縛られないといけないの……?」
今だからわかる。
玲は、何の見返りもない俺の無償の奉仕を受ける度に苦しめられていたのだ。
幼馴染だから、なんて曖昧な理由で誤魔化せないほど俺は玲に奉仕し続けていた。
「ッ! おい、玲!」
「もう、嫌だよ。生き続ける限り、私は仁を縛り続けてしまう」
その言葉と共に顔を上げた玲の瞳は、ドス黒く濁っていた。
今の今まで隠していたのか、それとも気づけない程俺が間抜けだったのか。
そして玲は、決定的な一言を口にした。
「――――私、もう死にたい」
その言葉に俺は頭が真っ白になった。
少しでも目を離した瞬間本当に死んでしまうんじゃないかという不安、何としても玲を助けなければという強迫的な使命感。
それらがごちゃ混ぜになって、どうすればわからなくなり、俺は玲をベッドの上に押し倒し――――
――――その夜から俺は、玲という名の鳥籠に捕らわれた罪人になった。
本編とはあまり関係ありませんが、少年のアビスっていいよねという作者の思いが込められてます。