竪琴を鳴らしていると喜ばれているようなので、演奏は続けている。
その光景は端からみれば、酒瓶を持って徘徊する泥酔した酔っ払いだったが、彼が気にすることはなく、現実ではそもそも素面に戻ったことなど片手で数えられるほどだ。
類い稀な才能をもつが大枠としては白痴に含まれる彼の足は、慣れ親しんだ雰囲気のある方へと進んでいく。
彼の歩みとともに道幅は狭まっていき、影が濃くなる。
ゲームとしては、護衛や救出クエストなどのために用意されているであろうそこはつまり、スラム街だった。
彼は周囲にプレイヤーが居なくなったので、演奏を中断する。
『条件を満たしているため、暗黒街に移動可能です』
道を塞ぐように屯していた
暗黒街では、顔を伏せた如何にも後ろ暗いところがありそうな露店商や冒険者には見えない武装した男などが、NPC同士で怪しげなやり取りを交わしている。
彼は商人に声をかけて、ゴールドを渡して軟膏や植物素材を受け取り鼻に翳すが、直ぐに捨てるように収納した。
それを繰り返しながら、奥に進んでいると、この場所からすれば異質な質素ではあっても清潔な服の女性が、壁際で薬瓶を並べている目深にフードを被った男に話しかけるのを見かける。
「生命の樹の葉を3枚ください」
フードの男は乾いた深緑の葉を3枚手にとって一言言う。
「6000」
「どうして......前に買ったときは3000ゴールドだったでしょう」
「ここじゃ言った値段言われた値段が適正価格だ、オンナ。草原も抜けられねえ奴が、東の森に生える【生命の樹】の葉を手に入れる奇跡がたったの6000なんざ破格だろう」
目の前に青色のプレートが浮き出てくる。
クエスト【落伍者の喜捨】
条件
暗黒街に悪性フラグで入り、不平等な取引を目撃する。
この表示の下にはYes、Noの二つの表示があった。
すると、男は彼に邪魔をするなと警告をしてくる。
それに対しての返しは、男の持つ葉を1枚取り上げて、露店の灯りに使われていた火に翳し、煙を嗅ぐことだった。
男は当然声をあげ、
「なに、人の商品に勝手に手をつけてやがる。代金2万ゴールド、払ってもらおうか」
「雑な乾燥で保存状態が悪く発酵しかけている。本物ではあるが、純度が低い粗悪品にしかならんな。途中、手に入れた一番質の良い品の8000ゴールドから計算すると、手当を入れても3枚1200ゴールドが精々だろう」
商人へ1200ゴールド押し付け、女性に葉を渡す。
女性は礼を言って去っていったが、彼は今までより若干しっかりとした足取りで露店を回り始めた。
『スキル【落伍者の喜捨】を取得しました』
数時間後、先ほどの女性が近付いてきて、不可思議な挙動をすると青いモニターが浮かび上がる。
クエスト【落伍者の喜捨2】が発生しました。
【フォレストクインビーの指輪】がクエストNPCに購入されています。
クエスト【落伍者の喜捨2】が達成されました。
クエスト【落伍者の喜捨3】が発生しました。
また、【落伍者の喜捨2】を露天の価格変更でのクリアのため。
エクストラクエスト【無法者の秩序】が発生しました。
どちらかのルートを選択して下さい。
エクストラクエスト【無法者の秩序】が達成されています。
『スキル【無法者の秩序】を取得しました』
女性は何度か口をパクパクさせると落ち着き、話しかける。
「ありがとうございます。あなたの口添えのお陰で娘を治すことができました」
「善哉、善哉。俺はお前の幸せを願っているよ、ここのような所では物より人の方が価値が低い。商品より商人を買うといい」
このクエストは商人の暴利によって発生するため、前提自体が崩れたことでクエストの連続即時達成が発生し、女性の挙動がおかしくなったようだ。
死に戻りなどもしていたものの長時間演奏でゴールドが貯まっており、場慣れしていたためにできたことだった。
「静乃は俺にこの遊戯は無理だろうと言っていたが、こうすれば良いのだな。不幸な人々を救っていけば冒険にもなる。だから雪麗は俺と遊ぶ遊戯にこれを選んだのか、愛い愛い」
パネルには、先ほど取得したスキルの詳細が表示されていた。
スキル【無法者の秩序】
複合スキル。
悪性の人間NPCに対する交渉が有利になる。
ゲーム内の1日が経過する毎に、遭遇済み悪性の人間NPC人数と規模に応じてゴールドを得る。
取得条件
エクストラクエスト【無法者の秩序】の達成。
「しかし、この街には阿片が存在しないのか。次の街に探しに行くとしよう」
しかし、彼が次の街にたどり着くことはなかった。
『スキル【平和主義】が【博愛精神】に変化しました』
この御方、常時トリップしてるのに、秘密結社の首領まで上り詰めることができるのよなぁ(゚∀。)y─┛~~
創作エリアやクエストについては掲示板で言及したいところ
クエストの葉は、違法性中毒性のない薬草です