しるの誕生日にだけ小説書きだったことを思い出すかんじになってきている最近。
「処女ビッチ」って今まで通ってなかったな、まだまだ通ってないジャンルあるな……。
レストランの一番奥まった席。一人で腰掛けるには大きすぎる豪奢なソファで、夜景を背にしていた。ここよりも大きな建物は周囲にはなく、全てを見下ろすことができる。
こういった席を用意されることは何度目かではあるが、その度に街の夜景は違って面白い。今回は近くを大きな河が流れていて、そこだけが暗く、天の川を逆にしたような風景が眼下に広がっていた。
それは興味深いのだが。
その私の正面で、得意げな顔をして同じテーブルを囲んでいる男。
ギルガメッシュ。
彼の表情が訝しい。
「……なんですか」
「いや、この席が気に入ったようで何よりだ」
「まあ、そうですね。中々面白い風景だと思います。ただ……」
私の前には綺麗に平らげられた空の皿。
景色を見ていたのは、他にやることがなかったから、というのもある。
「料理が少量ずつ運ばれてくるのはこう……なんというか」
おなかが空くと言うか、じれったいと言うか。
「一気にたくさんの方がいいかもしれません」
「はは! そうか、次は考慮しよう」
彼が笑ってワインを呷ったところで、次の料理が到着した。
先ほどまでよりも大きな皿に、メインの肉料理が乗っている。フルーツのソースとつややかな赤身がよい香りを漂わせていて、私の興味も窓の外からたちまちテーブルの上へと戻る。
「しかし、こうして食事をするのも毎度のこととなったな。中々我々の親交も深まってきたのではないか?」
「ご冗談を」
流しながら、ナイフとフォークを構えた。美味しい料理に思考を鈍らされながらも、少しだけそう言ってくる彼の真意について考える。
彼の目的はわからない。
なぜか私を食事に誘うが、休戦の申し入れをするでもなく、戦闘をしかけるでも情報を引き出そうとするでもない。直球で尋ねてみても、お前を妻にすることが目的だ、などと冗談で煙に巻かれる。
十年前から‘妻となれ’だの何だのと言っているし、本当に私を戦力下に引き入れる気で、懐柔を試みているのかもしれないが。
「勘違いしないで頂きたい。食事は魔力源にもなりますから、それがメリットだというだけです」
「ふむ。そういうことにしておいてやろう」
信じていない口ぶりにむっとする。が、それ以上重ねて言うこともできず、ただステーキを頬張った。うっかり口を滑らせて、マスターとの魔力パスが繋がっていない、なんてばれるわけにもいかない。
二件目を誘う彼をその日もすげなく断って、私は衛宮邸に帰宅した。
もちろん周辺の見回りを入念にしながら。
シロウ達が学校に行っている昼下がり。
お煎餅を食べながら、茶をすする。
……召喚されてからというもの、なんだか食べてばかりいる。
今夜も夕飯を食べた後、あの男とセカンドディナーに出かける予定だ。
「ごはんは美味しいですが……。そう多くを必要としない方法はないでしょうか」
独りごちた後、思いついて蔵へ向かった。
蔵の中には私を召喚した魔法陣がある。その周囲をしげしげと見回し、何か隠せそうな場所に目星を付ける。
キリツグの工房を兼ねていただろうここには、魔力のパスを繋ぎ直すためのヒントがあるかもしれない。
がさごそと棚や木箱をどけて、床下や戸棚の裏を重点的に探す。あまり大っぴらなところには置いていないだろうから。
家捜しすること十五分。
「あった」
やはり。
強化の応用に関する魔導書。
ぱらぱらとページを送りながら考える。パスを繋ぎ直す手段はここには載っていないだろうが、魔力吸収に関わる回路を強化できれば……?
食事からの吸収率が格段に上がるかもしれない。
分厚いページをめくって、読み進める。
案の定、その中にどうやら目当てのものを発見した。
‘魔力の供給量の増大’
これだ。
キャスターでなくとも、簡易な魔術ならば行使できるのは当然のことだ。そこにある魔法陣だって私がアイリを癒やすために描いたものだし、戦闘にも魔力を使っている。応用となると少し不安もあるが、しっかり読んで魔導書の通り慎重に行えば大丈夫だろう。
そうやって四苦八苦すること数十分。
「できた……」
腹部に刻印が浮かび上がる。それは派手な赤紫色で、単色で描かれた図からは想像していなかった鮮やかさに少し驚く。
まあ、何はともあれ。
これで魔力も万全になるはずだ。
その日の行き先は料亭だった。
複雑な間取り。部屋と母屋をつなぐ沢山の廊下。庭も綺麗に設えられて、みやび、というのはこういう佇まいを言うのだろう。
斜め前方に、和服というには仰々しい装い。別の廊下を渡り、芸子さんが離れ個室に入っていくのが、暗い中でもちらりと見えた。
ギルガメッシュと個室のレストランで食事をすることは多いが、こんなにも独立した空間は初めてだ。敷地内にたくさんの家があるかのようで、なるほど有名人や政治家がこういうところで会食するんだろうな、と想像できる。
そして入った部屋に用意される、肝心の料理だが。
前回のリクエストに応えてか、テーブルの上には豪華な和食がいっぺんに並べられた。
刺身、天ぷら、鍋。それに名前もわからない彩り豊かな皿がたくさん。
大きな盆を持った従業員が何人も出入りして、次々と増えてゆく。
「わああ」
「ふふん」
私のリアクションにギルガメッシュが得意げに鼻を鳴らす。別に貴方が作ったんじゃないでしょう、というツッコミが脳裏をよぎるが、そんなことより早く食べたい。
女将が料理の説明をしてくれて、では失礼致します、と襖が閉められる。その瞬間、その刹那に、私は箸を構えた。
「はあ……素晴らしいお料理でした」
全ての皿を平らげ、満足してお茶を飲む。
小洒落た皿を眺めながらそのお味を思い出しつつ、そう言えば、と思い出した。
食事からの魔力吸収量を上げるはずの、腹部の刻印に手を添える。
一通り料理を食べても、特に普段と変わりはない。
もしかして、失敗なのだろうか。
それどころか、なんだか熱っぽいようで、頭がぼんやりする。
「ついている」
ギルガメッシュがテーブルを挟んでのばした指先が、口元に触れる。
より一層、身体が火照る。
熱がある?
そんなはずはない。部屋が暑いのだろうか。
腹部に熱が溜まるように感じて、前屈みにその辺りを抑えた。魔力吸収の仕組みを作るのにに失敗して、この刻印が悪い働きをしている、という可能性が思い浮かぶ。いや、それ以外に考えられない。
「どうした? お前に限って食べ過ぎ……ということもなかろうに」
私の変調は取り繕えないほどになっていて、そう言われるのも無理はない。
「少し横になったらどうだ」
「そうします……、すみません」
幸いにして個室であり、座布団を枕に少し休んだとしても人目を気にする必要はない。
食卓を離れ、うずくまるように横になった。
だが、数分経っても症状が治まらない。ギルガメッシュも心配そうにしているし、これは流石に申し訳がない。
「あの」
せめて理由を教えておこう。自分の供した食事が原因では、などとこの男も気にすることがあるかもしれない。
「これのせいだと思うのですが……」
少々はしたないが、起き上がってハイウエストのスカートを緩め、ブラウスを巻くって見せた。そこにギルガメッシュが顔を寄せる。
「これは」
タイツ越しに見づらいが、へその下辺りの下腹部に、濃い薔薇色で左右対称の模様が刻印されている。
ギルガメッシュは珍しく、驚いたような顔をした。
彼が意表を突かれたような反応をするのは普段ならば面白いだろうが、その原因が私の魔術失敗となると、ばつが悪い。
「……食事での魔力吸収率を、ですね、上げようと思って、魔術を行使したのです」
目を合わせないまま、状況を説明する。
「でも何か失敗してしまったらしく、思うような結果にならなくて」
まじまじと見ながら、彼は記憶を辿っているように視線を動かしていて。もしかすると、彼のいた国や読んだ書物などに、これに類する術があったのかもしれない。
「あの、何か対処法を知りませんか? キャスターではない貴方も専門外だとは思いますが、リセットする方法を見聞きしたことなどは……」
「見たことがある、な」
「え!?」
「消去する方法は知らぬがな」
期待し、そして落胆した。
「まあ、しかし悪いことはない。むしろお前の目的は果たせるから安心しろ」
「これがどのような仕組みかも、知っているのですか!?」
「多分、な」
心配そうに覗き込んでいた彼が、今は何だか楽しそうに見える。そして、タイツの上からその刻印に触れた。
「んっ」
どういうわけかその箇所が熱を帯びて、反射的に眉を寄せる。その反応を見て確信したように、彼は言った。
「夢魔の類が使う魔術だ。子宮と性器粘膜の魔術的働きを飛躍的に向上させる」
あけすけな言い様に、数秒遅れて事態を把握する。
「……は」
にやついて饒舌に続ける男と対照的に、私の方は絶句するばかりだ。
「喜べセイバー。食事などより、もっと効率的な魔力吸収ができるぞ」
「なにを!?」
抱き寄せられて、唇が重なりそうになるのをかろうじて制した。
振り払って逃げなければいけないのに、のぼせたような倦怠感で身体が思うように動かない。
「離れ座敷とは言え、あまり騒ぐと人が来るのではないか」
「来たらなんだと言うのです」
人に助けてもらうなど英霊として恥ずかしい、などとはこの際言っていられない。大声を上げるのも手だ。
「来ても我は退かぬ」
察してか、全くもって誇れない宣言をされる。
「鎖で何人でも拘束して続行するぞ。ああ……ちなみに、観客がいるのが好みのプレイだと言うのならば我も吝かではない」
最悪な提案にぞっとした。
「ふふ……まだ決心が付かぬのか。我が寵愛と魔力がセットで手に入るのだぞ? 恥じらっている場合ではない。その淫紋も背中を押しておる」
「しょ、正気じゃない……!」
それ以上言葉が出てこない、わなわなと震える唇を彼が舐めた。
唾液に含まれる魔力に反応しているのか、下腹部が疼く。
「ん、む」
唇を逸れて、首すじに舌が這う。
その軌道がじくじくと熱い。振り払おうとする腕が重い。
そうしている内に胸元がはだけさせられて、唇の与える刺激も強くなる。ブラウスの中でホックが外されて、直に触れる。
「や」
後退ろうとしてバランスを崩し、身体が倒れた。そこにギルガメッシュは覆い被さってきて、視界が暗くなる。
ああ、これは本格的にまずい。
私には性交渉の経験がありません、なんて言っても余計この男を喜ばせるだけで、ブレーキになどなるはずもなく。
胸の些細なふくらみが刺激を拾って、のぼせた身体に響く。
模様の辺りを彼の掌は這い回って、タイツをずり下ろして直に触れる。
そして、刻印の位置では止まらず、それよりも下まで指がのびる。下着の中、先ほどから熱が溜まっている足の間に。
「っ、だめ」
湿った感触と、電気が走った。
「う、んんっ!」
力の入らない唇を、それでもぎゅっと引き結んで声を抑えた。
ひんやりとした指が粘膜を一度撫で上げただけで、膝が震えて眩暈が止まらない。
「これはすごいな。なるほど、こういった魔術ならば習得するのも悪くない」
指が粘液をこねて、にちゃにちゃと卑猥な音を立てる。
下着とタイツはずり落ち、太ももの辺りにあったのが今は膝下に纏わり付いている。スカートと一緒にそれを取り払われている間も、大きな声をあげないようブラウスの袖を唇に押しつけることで必死だった。
肉の割れ目に沿って指ではないものが這わされて、息を飲む。
「悦んで吸い付いてくるではないか」
触れているところにじんじんと響いて、腹の奥が疼く。
「ゆっくり焦らしながら可愛がってやろう」
挟み込まれたものが揺すられて、粘膜が火が付いたように熱い。誘い込もうとひくついて、下腹部が捩れる。
ほしい。
「っ、もう、ほしい」
「うお!?」
気付くと上に跨がって、ギルガメッシュを見下ろしていた。
押し倒されてぽかんとした表情をする彼を余所に、その下半身に手を添えると、宛がったものに体重を落とした。
「あ……っ」
濡れた肉が割り開かれる、初めての感触。
結合部で体液が少し濁って、血の色が浮かぶ。だが、その見た目に反して痛みはなかった。それよりも、思考が飛びそうになるくらい強い快感に、全てを持って行かれそうになる。
「お前、処女で……っ」
流れ出た色に気付いて、ギルガメッシュが呟いた。その意味ももうよくわからない。
「あ、すご、い」
奥まで満たされて、模様のある部分の内側にじんわりと幸福感が広がる。
衝動のまま腰を回すと、触れあう箇所がうごめいてより深く咥え込もうとする。
「く、う」
眼下でギルガメッシュが刺激に顔を歪めて声を漏らしたが、それを好ましいと感じた。
「ま、待て」
「だめ、まてない、あ、これ、いい」
擦れ合う度に眩暈がするほど気持ちいいのに、なんで待てなんて言うのだろう。
抜き差しにあわせて結合部から溢れて、血の色が薄まる。中が段々敏感になっていくのか、私が動き方を覚えたのかわからないが、行き来するほどに快感は増して、それで頭がいっぱいになる。
「あ、はあ」
「貴様、いい加減に……っ」
突き上げられて、身体が跳ねた。
「ひっ、あ!」
バランスを崩して彼の腹筋に手をついた。その手首を取られて、そのまま何度も打ち付けられる。
ずり上がった衣服から覗く、形の良い彼の身体。力んで、動く度に筋肉が波打つのが艶めかしい。視覚からも快感を得てしまって、この行いにより陶酔する。
「っ、ほら、受け取れ……っ」
その言葉を理解する前に、腹の中に熱が迸る。衝撃に口を開いたが、吐息のようなうわごとが漏れただけ。
「あ、う」
そして、その一瞬では終わらない。最後の一滴まで搾り取ろうと、中が激しくうねる。余韻に脳がぐわんと揺れる。
「……っ、っ、!」
薔薇色の刻印がより鮮やかで毒々しい色に変わる。
魔力と快感が身体中を駆け巡って、衝撃に声が出ないほどに。
陶酔感に、彼の上でぐったりと宙を見つめた。
やがて少しの思考を取り戻して、ふと元凶である、下腹部の刻印を見た。
「ん……、消えてはいないですね……」
魔力が充足していることはわかる。
この行為による吸収量が上がっているのかは、これがなかったときと比較ができない以上わからないのだが。
「もしかすると……魔力がいっぱいになれば消えるんでしょうか」
やってみようと、繋がったままの腰を動かす。
「ちょ、ちょっと待て」
「大丈夫ですから」
カットソーを捲り上げて、胸の先を両手で優しく転がす。男でも反応するのかわからなかったが、中で再び大きくなるものを感じて手応えに微笑んだ。
「貴方は受肉しているのですし、大丈夫のはず」
「どういう意味だ……!?」
「魔力が空になっても肉体は生命を維持してくれるでしょう、ということです」
「ひえ、誰か……! たすけっ」
大きな声を出されてはまずい。
私は彼の口に丸まっていたタイツを押し込んだ。
その後何回か搾り取らせてもらったのだが。刻印が消えることはなく、最後には達しても精液が出なくなってしまったので、そこでこの試みは終了となった。
だが後日、ギルガメッシュは宝物庫の書物を片っ端から調べて、これを解除する方法を見つけてくれた。
英雄王にも親切なところがあるんだなあ、と、私は少し温かい気持ちになったのだった。