※この作品はR-18です。

無題   作:よつゆともにぃ


オリジナル:その他/恋愛
タグ:R-18 R-15 残酷な描写
手癖で2時間くらいで書いたやつ。まだ文体の練り込みが足りない

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無題

ぴちゃ、ぴちゃ。

熱いほとばしりが首筋を撫でる。

身体は息を吹き返したように跳ね、鈍器で殴ったかのような音が部屋中に響く。

鼓動が、囁く。

血が巡る。速く、速く。浮き出た血管がごぽごぽと揺れる。

収縮する。

 

頸を、斬らねばなりませんね。

 

一体、どうしたと言うのか。

項垂れた意識が、顔を上げ、ぽつりと呟く。

どれだけの時が経った後だろうか。

ぴちゃ、ぴちゃ。

どくん、どくん。

苦しくはない。むしろ心地いい。

ただーー

どうしようもなく瞼の裏にこびり付いた闇が、私の不安を煽る。

 

みし、みしと床が唸る。

ぴちゃ、ぴちゃ。

身体が跳ねる。

どくん、どくん。

熱いものが込み上げる。

まだ、イカせません。

女が、そう囁く。

 

ーー嗚呼、そうか。

悟った途端に、氷が融けるように、きしきしと音を立てて瞼が開いた。

私がいる。

“私”の上に女がいる。

女の舌が首筋を這う。

ぴちゃ、ぴちゃ。

私はそれを見ている。

不思議なことに、私の視点は二つあった。

私を見下ろす私と、女を見上げる私。

天井から吊られた私と、布団に横たわる“私”。

興奮した彼女に呼応するように、頚動脈が収縮し、頭と繋がっていたはずの場所で、まだ熱いモノがぴゅう、ぴゅうと吹き出した。

それが“私”の右側を紅く塗りつぶすと、枕がじっとりと紅く、情熱的に濡れる。

彼女の指が、私の胸を薙ぐ。

私の頭を、頭があるべき場所を、彼女が塞ぐ。口付けのように。

女の黒い髪が、“私”を覆う。

とく、とく。

鼓動が聞こえる。

ぴゅう、ぴゅう。

吹き出すものを、溢さぬように。

ちゅう、ちゅう。

絞り出すように。

ごく、ごく。

まだ、イカせません。

足りないと喚き立てる。

 

一体、この女はどうしたと言うのだ。

血の通わぬ頭では考えられない。

 

まだ、イカせません。

どうか、生きていて下さい。

血を巡らせましょう。わたしが、貴方の心臓となります。

 

誘うような、響きだった。

とく、とく。

身体が脈打つ。

ぴゅう、ぴゅう。

熱いものが吹き出す。

ごく、ごく。

巡り出す。彼女の中で。

私の意識が、声が、言葉が。

 

ーーまだ、イカせません。

どうか、生きていて下さい。

 

とうに死んでしまった。

何故、生かす。死体を陵辱する。

 

ーーだって、

貴方の瞳が、わたしの光を奪ってしまった。

声が、言葉が、わたしの耳を塞いでしまった。

貴方の夢が、わたしの未来を閉ざしてしまった。

貴方の愛が、わたしの心を潰してしまった。

だから、逝かせてあげません。

この冷たい身体の何処に、それらがあるのですか。わたしから奪った、わたしの宝物。

骨に刻んであるのでしょうか。

ならば肉を削がねばなりませぬ。肉を削ぎ、骨をねぶらねば。

貴方が悪いのです。持ち去ってしまおうとするなんて。

最期まで、身勝手な人。

早く、教えてください。

わたしを唆した、その声で囁いてください。

わたしを誑かした、その指で示してください。

その瞳に、映してください。

 

不意に、目と目が合う。

彼女は“私”をそっと包むと、まるで我が子のように頬擦りする。

剥き出しの眼球に、紅く色づいた彼女の艶やかな微笑が映る。

互いが互いを見つめ合う。見つけ合う。

 

嗚呼ーー

そこに、いたのですね。

わたしのひかり

 

そこで、“私”の意識は貪られた。

 

 

女は満足気に身体を震わすと、嗚咽にも似た驚嘆を漏らす。

 

まだ足りませぬ。

まったく足りませぬ。

どうすれば、応えてくれるのですか。

 

心に直接触れれば、理解るのでしょうか。

それは何処に。この、どうしようもなく冷たい身体の何処にあるのですか。

肋骨を開けば、見えるでしょうか。

まだ、逝かせてあげません。

どうしてか熱いのです。お腹の奥が、どうしようもなく。

熱くて、熱くて、今にも死んでしまいそうです。

時間がありませぬ。鼓動が止むよりも先に、心臓を握らねば。わたしが生かしてやらねば。

刀が錆び付くよりも早く、肋骨を開かねば。腹を裂かねば。腑の一つ一つ、見て回らねば。連れて行かれる前に、還してもらわねば。

絞り出さねば。わたしの全てを。

爪の一枚、髪の一本、血の一滴たりとも、天に還すわけにはいきません。

 

 

だからどうか、どうかーー

 

生きていてください。

 


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