今回はエロなし。次回はエロ回の予定。
業深迷宮、もとい大罪虚飾女帝『
それは世界最大の迷宮の名であり、世界有数の水源地であるネミツ湿地帯を汚染し、一時は周辺国家を破滅寸前に追い込んだ恐怖の象徴。
天に聳える巨大かつ卑猥な白亜の塔からは絶えず媚毒が溢れ出し、その影響を受け迷宮外でも淫系統魔物が闊歩する淫獄と化したネミツ湿地帯は、もはや水源ではなく汚染源に成り果てている。
この汚染地帯を取り囲むように大魔王の誕生後急ピッチで建造された聖なる城壁が無ければ、今頃周辺国は消滅していたといえば、その汚染の激しさが窺えるだろう。
そもそも、城壁で守られた現在でも井戸水をそのまま飲む事は不可能であり、井戸から組み上げた水に薬剤を混ぜて毒素を沈澱濾過し、その上で蒸留精製することでようやく飲用可能な水が手に入れられている状態なのだ。
当然、それらの水処理施設を運用する為に多くの錬金術師が周辺国と聖神教によって招集されており、湯を炊くための大型魔導具に魔力を充填するべく神官達が三交代で昼夜を問わず付きっきりというこの現状は、紛れもなく『戦場』であった。
だが、彼らにこの土地を放棄して後退するという選択肢は無い。大魔王に屈して1歩でも退却すれば、その1歩が2歩になり、10歩になり、百、千、万と増えていくのは目に見えているからだ。
故に、それがドブに金を流し続けるような所業であっても、人類はこの前線を維持し続ける他ない。
今もなお業深迷宮に挑み続ける冒険者達も、そんな人類の前進のための礎の一つだ。
功名心と聖神信仰を胸に抱き、果ての見えぬ迷宮の闇に潜る彼らは、田舎から出て来た駆け出しから歴戦のベテランまで多種多様。『世界最大最強の大迷宮を踏破する』という名誉はそれだけの魅力を放っており、そして同時に圧倒的な富を人類に齎している。
業深迷宮に生息する多様な淫系統魔物の素材は世界的に希少であり、錬金術師や薬師の手で精製及び無毒化することで、
とある冒険者集団が奇跡的に持ち帰った淫乱尾籠猥蟲竜の死体が某国に買い取られたしばらく後に、戦線復帰した傷病兵による師団が幾つも設立されたと言えば、その戦略級の価値がよく分かるだろう。……まぁ、その件の裏は『撒き餌』として迷宮が敢えて冒険者に獲物を持ち帰らせただけではあるのだが。
しかし、実情はどうあれ業深迷宮には富と名誉が満ちており、冒険者の挑戦は止まるところを知らない。————だが、そんな夢と希望に溢れた冒険者達に地獄を見せるのもまた、業深迷宮なのだ。
* * * * * *
業深迷宮第一界層『水没神殿』。界層守護者の『
半ば水没しているその場所を訪れる事ができるのは、優れた実力を持つ冒険者のみであり、生半可な実力では、迷宮外層の湿地帯と塔を越えることすら叶わない。
人類の尺度では湿地帯外縁部、湿地帯内部、塔下層部、塔中層部、塔上層部、塔内上層部、塔内中層部、塔内下層部を経て至る『第九層』がこの第一界層であると認識されているほどなのだ。
それはつまり『迷宮に入る前』に挫折する者が多数居る事を示していると言っても良いだろう。
今まさに『塔下層部』と呼ばれる迷宮の玄関先で頭を抱えているミネコもまた、そんな冒険者の1人だ。
「無理無理無理無理! 誰か助けてぇ!?」
そんな情けない声と共に、塔を構成する白い街並みを駆けるミネコ。彼女の背後から迫るのは空を舞う『鬼婆蜂』*3だ。人間大で人型なのにパーツ全てが余りにも『昆虫』なその魔物によって彼女の目の前で攫われた他の冒険者達は、既に何処かに持ち去られて行方知れず。
ミネコが涙と鼻水を流しながらも逃げ切れているのは、彼女が『悪運・大』という『窮地であればあるほど幸運になり、平時は若干不運になる』技能を有しているが故のこと。絶体絶命のピンチに反応したその技能が『運良く行き止まりを回避』『運良く曲がり角の多い区画に到達』『運良く死角を発見』などのミラクルを呼び寄せた結果、彼女はどうにか鬼婆蜂を1体を残して撒くことに成功し、今この瞬間まで命を繋いでいるのだ。
だが、もはやミネコの脚は鉛の様に重く、必死に駆けようとするその心ばかりが先行して、肉体が着いて行かなくなっていた。せっかく稼いだ距離は詰められ、耳に響く羽音は徐々にその音を大きくさせて、死の実感が背中を這い上る。
そんな中。
「其処の貴女、此方へ」
そんな声掛けに横を見たミネコが見たのは、分かれ道の先で自分に手を差し伸べる女神官の姿。もたつく脚をバタつかせ必死に其方へと進路を切り替えたミネコの眼前で杖を構えた女神官は、耳触りの良い声で魔術を行使する。
「天に在します聖神よ、我が信仰に応え、その輝きを此処に」
その言葉と共に杖から放たれた『聖光』の術がミネコを追う鬼婆蜂の体表を焦がし、その聖気に畏れを為した鬼婆蜂は、泡を食った様に踵を返して飛び去っていく。
その光景を見た直後、安堵から脱力したミネコの身体は糸を切られた人形の様に崩れ落ち————かけたその寸前で、女神官の柔らかな体躯に抱き止められた。
「おっと。ご無事ですか?」
「す、すみません……」
どうにか謝罪するミネコだが、悲しいかな身体は言う事を聞かず、女神官のたわわな乳房を枕に力なく脱力することしかできない。だが、そんなミネコをそっと支えて座らせた女神官は、柔らかな微笑みと共にミネコに薬瓶を差し出した。
「随分走られたのですね。宜しければ此方をどうぞ。精気賦活のポーションです」
「ありがとうございます……なんとお礼を言ったら良いか……」
「困った時はお互い様ですから」
そんな実に神官らしい答えにミネコはただただ感謝を述べながら、差し出された乳白色のポーションを一息に呷った。瞬間、舌先に感じるミルクの様な香味と、飴のような甘味。その美味に驚く間も無くするりと胃袋に流れ込んだ霊薬はたちまちの内にミネコの血肉に取り込まれ、精気が止め処なく丹田から湧き上がり、疲労困憊だった筈のミネコの身体は冒険に旅立つ前以上に元気を取り戻す。
————これ、とんでもなくお高いポーションなのでは?
飲み切ってその効果を実感したが故に、脳裏に過ぎる思考。先程までとは別種の『恐怖』に顔を青褪めさせるミネコだが、そんな彼女の思考を読むかの様に女神官は言葉を紡ぐ。
「そのポーションは『身内』の方から頂いた貰い物ですから、代金はご心配無く。それよりもお加減は如何ですか?」
「あ、え。……ありがとうございます。お陰様ですっかり元気です」
「それは重畳。しかし、活力が戻ったとは言え気疲れもお有りでしょう? 宜しければ私共の
「いやいやいや、命を助けて貰った上に流石にそこまでしていただく訳には……」
「どうか遠慮なさらず、私の徳積みを助けるとでも思ってくださいな」
そう告げて柔和に微笑む女神官の声は蜜の様に甘く、蕩ける様にミネコの脳髄へと染み込んで、気付けばミネコは彼女の言葉に意図せずして首肯を返していた。
そしてそんな自身の行動に疑問を抱く事もなく、女神官に連れられるがままに『塔下層部』の街並みを歩くミネコ。だが、茹った彼女の脳に残った微かな理性が、その道筋に僅かな疑問を抱いた。
歩く先は一本道であるにもかかわらず、振り返れば多くの分岐があるその道は、例えるならば大樹の枝先から幹を目指すかのような道だ。進む分にはひたすら『合流』を繰り返すだけだが、帰る際には無数の『分岐』を選ばねばならない。
だが、『この構造は内側から獲物を逃さぬ為にあるのではないか』と考えるよりも先にミネコの理性は再び女神官の甘い声に溶かされた。
「さぁ此方です。私の仲間にご紹介しましょう」
そんな声と共に通路の先にある扉を開いた女神官。彼女の後に続いてその中に足を踏み入れたミネコの前には、石造りの家具を利用して休息を取っていたらしい冒険者達の姿があった。
「戻ったかムムケル。……誰だそいつ」
「ロペルキアナ、そう威圧しないでください。ミネコさんが怯えてしまいます」
「ロペは目付き悪いもんねぇ。で、ミネコだっけ? どうせ魔物にでも追っ掛けられてたのをムム姉がお節介で拾ったんでしょ?」
「ピケル、貴女は貴女で失礼ですよ」
「でも否定しないってことはやっぱりそうじゃん? どうするロペ?」
「……まぁ、寝床は貸してやる」
そんな風にミネコの頭越しに交わされる気易い会話。どうやら女神官の名は『ムムケル』というらしく、女剣士らしき『ロペルキアナ』と女斥候と思しい『ピケル』が彼女の仲間らしい。
女所帯なその顔触れにミネコが内心安堵したのは言うまでもない。ミネコとて冒険者稼業をしている以上『覚悟』はあるが、好き好んで見知らぬ異性と同衾したくはないのだ。
況してこの迷宮では媚毒を抜く為に己を慰めるのは日常茶飯事。気の知れた異性同士の場合事に及ぶ事も少なくない。そういった点でも、同性で固まっているムムケルの仲間達はミネコにとって安心できる存在だった。
とはいえ、いきなり馴れ馴れしく出来るはずも無いのがミネコという女だ。
「すいません、御厄介になります……あ、ミネコと言います……どうも」
そう言ってペコペコと会釈して、部屋の隅を借りようとするミネコの対応は、彼女の控えめな性根を良く表している。だが、そんな彼女に対して、ピケルは悪戯な笑みを浮かべてズケズケと踏み込んできた。
「そんな隅っこに居ないでもっとこっちおいでよ! 大丈夫、ロペが凶暴なのは目付きだけだって!」
そう言いながらミネコの背中に抱きついてくるピケルの身体は女性的な起伏に富んでおり、たわわな双丘、いや双子山がミネコにグイグイと押し付けられる。
そしてそんなピケルに同調する様にムムケルが「貴女がそんな仏頂面なのが悪いんですよロペルキアナ」などと言いながらロペルキアナを引っ張って来るのだが、その引っ張っているムムケルも引っ張られるロペルキアナも、皆馬鹿でかい乳と括れた腰に馬鹿でかいケツが標準装備なのだ。
挙句、「仲直りのハグをしなさいロペルキアナ」だの「相変わらず天然ボケてんなテメェはよ。つぅか違えるほどの仲じゃねぇどころか、初対面だろうが……」だのやりとりがあった挙句、何故かミネコとロペルキアナがハグするハメになり、背中にピケルをくっ付けたままミネコはロペルキアナにぎこちなく抱き締められてしまう。
————この集団は冒険者集団じゃなく最強最高級娼婦軍団とかなのでは?
などと馬鹿な疑問を抱いてしまうほどの柔らかさの暴力。前門のデカパイ、後門にもデカパイ、ならば左右に逃げようかと思っても、その先にはムムケルのデカパイ。
女の身でもムラムラと来てしまうほどの甘い雌臭と仄かなミルクの匂いに漬け込まれたミネコは、己の内側から溢れる精気が性欲へと転化されていく事に気付きながらも、なす術なく乳肉の檻に囚われている。
だが、そんな天国めいた乳肉布団に挟まれる環境は、少し数える間に「これで満足かよムムケル? ミネコも困惑してるみてぇだし、お前らも離れてやれって。……ウチのバカ姉妹が揃いも揃ってすまねぇなミネコ」というロペルキアナの無情な一言で一気に解体されてしまった。
生殺しにされたやり場の無い性欲が内に篭り、ジリジリと焦げ付くミネコの精神。しかし、善意でスキンシップを取ってくれたと思しい爆乳三人娘達に文句を付けられるはずもなく、ミネコは「あはは……」と曖昧な愛想笑いを浮かべて茶を濁す。
だが、そんな笑顔の裏で彼女の股はその内側に愛液をたっぷりと滲ませ、子宮がギュンギュンと収縮して甘い快感を発していた。
————私ってこんなに淫乱だったっけ?
そんな疑問を抱きながらも、息を整えるべく深呼吸をするミネコ。しかし、胸一杯に吸い込んだ空気に含まれる甘く濃厚な女の色香が、むしろミネコの興奮を掻き立ててしまう。
そうなればもはや止まらない。頬は上気し、視線は蕩け、鼻腔が膨らみ、口角が緩む。収縮を繰り返す子宮、イヤらしく開閉する秘裂、硬く
ミネコが発するそれらの発作めいた発情サインに初めに気づいたのは、ムムケルとピケルをミネコから引き剥がした直後のロペルキアナだった。
「……おい、大丈夫かよミネコ。お前、顔色悪いぞ」
「はッ♡ ふッ♡ ヘァ、ら、らいじょぶ……」
「絶対大丈夫じゃねえじゃねえか。ほれ、手首貸せ。……脈が早すぎる、こりゃ精気過剰だな。お前、こういうのは良くあんのか?」
歴戦の冒険者らしくテキパキと診断を下すロペルキアナと、されるがままのミネコ。先の問いにふるふると首を振るミネコに対し、ロペルキアナは溜息を吐くと共に、ムムケルへと話を振った。
「おいムムケル、テメェだろコレ。精気賦活薬が効きすぎたとかじゃねえのか?」
「心当たりはありますが、ミネコさんに差し上げたのは『普通』の精気賦活薬ですよ?」
「『普通』のヤツ使ったのがダメなんだろうが。そっちは『身内』用なのを忘れやがって。……『他人』には薬草煎じたクソ不味い方でいいんだよ」
「でも『クソ不味いのに毛程も効かない』と
「こっちに振るの!? いや、たしかに言ってるのは聞いたことあるけどさぁ、ムム姉、こういう時は素直に『ごめんなさい』しようよ」
「つーか、その3人の感想を根拠にして、自分でも苦しい言い訳だと思わねえのか? チッ、まぁ飲ませちまったもんはしゃあねぇ。原因が精気賦活薬なら、暫く放っておいてやれば落ち着くだろ。この様子なら、ざっと3日ってところか?」
「ロペルキアナ、舌打ちは行儀が悪いですよ」
「誰のせいだと思ってんだこのボケナスがよ……」
頭を掻きながらそう告げるロペルキアナ。だが、彼女のその発言はミネコにとっては絶望的な宣告であった。
————3日もこの衝動を耐える? 絶対に無理!
そんな内心の叫びを吐き出そうにも、今のミネコは舌が震えて喘ぎ声しか出せない無様な状態。
更に言えば、ミネコを心配して介抱してくれている3人娘達のワガママナイスバディがムチムチモチモチとミネコに当たっているのもタチが悪い。仮にミネコが男であれば、乳児だったとしても即座に精通しバキバキ大人チンポが覚醒してしまうレベルのエロスの暴力がそこにあるのだ。
この状況で必死に性欲を押さえ込む、という苦行に晒された彼女が精神的に強烈な『窮地』に陥っているのは言わずもがな。
彼女がそれを自覚した直後。————『悪運・大』が、状況を打開するべく起動する。
平穏時に不幸を呼び、窮地に幸運を運ぶその技能が因果律に干渉した結果、引き出されるのはロペルキアナの一言。
「……3日放置っつうのは流石に酷だよな」
ミネコを気遣う様なその発言。しかし、それに対して諌める様に口を挟むのはピケルだった。
「でも任務はどうするの?」
「
「まぁ、それでロペが良いなら良いけど。私は怒られるのやだよ?」
「いや、最悪怒られるとしてもムムケルだけじゃねえか? コイツが元凶だろ」
「……それはそっか。じゃあ私はなんでも良いや!」
「私は怒られるので何も良くないのですが……」
「そこは今この状況の尻拭いを私がやってやってるだけでも感謝しろよマジで……」
そんな呆れたような発言の直後、ミネコをグッと抱き上げたロペルキアナは手短に「長く普通に苦しむのと短くガッツリ苦しいの、どっちか選ばせてやる。長い方が良いなら頷け」とミネコに問う。
————その問いに首を縦に振らなかったのは、果たして正しかったのか?
そんな疑問をこの先一生抱えることになるとは露知らず、ただ如何に短く苦しみを終えるかだけに思考が囚われたミネコは、ロペルキアナにされるがまま、彼女の天幕へと持ち去られて行くのだった。