ゴブリンガービッジ~恋人が苗床廃人になったので格安娼婦に仕立て上げます~ 作:幻闇
――ゴトン……ゴトン……。
辺境の街道を走る馬車の乗り心地は、お世辞にも快適とは言い難い。帝都のある大陸中央部ならばともかく、辺境部の街道は満足に舗装などされていないからだ。
簡単なスプリング機構しか装備されていない乗合馬車が地面の凹凸によって車体を揺らす度に、俺は痛む尻に加わる衝撃に顔をしかめる。
「馬車なんて乗るのは久しぶりだな……ここまで酷かったか? 大丈夫か? ユナ」
隣に座る、フードを目深に被ったローブ姿のユナに声をかける。
「…………あー…………ううぅ…………」
解っている。
フードの下で白痴めいた表情の口元から涎を零しながら焦点の合わぬ瞳を彷徨わせているユナがマトモに返事など出来ない事は……。
だが、普段と変わらぬ様に接して居れば、何かの拍子に反応が返ってくるかもしれない。今は駄目でも、いつかまたユナが笑い掛けてくれるかもしれない。そんな期待を込めて、俺はユナに話しかけ続ける。
「大丈夫そうか。なにかあればすぐ言うんだぞ」
「…………………………」
ユナをあのダンジョンから救出した後、貿易都市ミルガーナで受けられるだけの治療は受けさせた。そして、肉体的な傷と体力がある程度回復するのを待つと、俺はユナを連れて帝都に向かう事を決めた。いくら発展した都市とはいえ辺境と帝都では受けられる医療も大違いだからな。
ユナが心を失っていなければ、ある程度の金は必要だがユナよりも高位のプリーストの癒しを受ければすぐに回復するのに……いや、これは俺のせいだ。いくら事情が有ったからとはいえ、救出が遅れていなければ……俺がもっと強ければ……なんて、たらればの話をしてもどうしようもない事は解ってるんだ。でもそう思わずにはいられない。
西部辺境の中でもっとも栄えている都市についた俺たちは、そこで魔導列車に乗り換えて帝都を目指す。魔物も多く、碌に街道の舗装も出来ない場所と違い、四方の辺境区の都からは帝都直通の大陸鉄道が使えるのだ。
元気な頃ならばともかく、今のユナは余り人目に触れさせたくない。
幸い、金には困っていないので魔導列車の一等客室の切符を購入して個室に入った俺達。こんな贅沢をするのは初めてだが、車窓から見える景色を楽しむ余裕なんて今の俺には無かった。
「ユナ、もうすぐ帝都だ。あそこなら体も綺麗に治せる。心の方だってきっと……」
「…………あー………………あぃ…………」
車窓の外を流れていく景色を、茫洋とした眼差しで見つめ続けるユナに話しかける。
もしかして、景色を楽しんでいるのだろうか。傍目にはまったく解らないが、心の中では何かの刺激を受けているのかもしれない。そんな風に思った俺は、呆けた表情で車外の景色を眺め続けるユナの横顔をじっと、飽きる事無く見つめ続けるのだった。
大陸を統べるドランロード帝国の帝都ヴァーダイト。都市人口は300万を超える規模の、まさに大都市である。都市の発展に伴って周囲を巡る城壁を建設し続けた結果、円状の城壁が幾つも連なる様子は大木を伐り倒した際の年輪にも似ている事から、輪の都とも呼ばれる帝国の首都だ。管理されたダンジョンだけでも都市内に大迷宮が一つ、中迷宮が四つ存在し、新人冒険者の鍛錬の場として利用されている。
とまぁ、そんな事は今の俺たちにはあまり関係が無かったな。
魔導列車を降りた俺はユナを伴い、不動産ギルドに向かう。長く滞在する為に比較的安価な賃貸物件を探す為だ。
比較的安値で、目星をつけていた治療院の近くにある物件を借りた。
受け取った鍵を手に、こじんまりとした戸建ての家に到着した俺はユナを休ませると、予め購入しておいた家具を魔導鞄から取り出して配置していく。
二人で借りた一軒家。ずっと二人で各地を回って宿暮らしをしていた俺達にとって、賃貸とはいえ初めての二人だけの家……なのにどうして、こんなにも虚しいんだろうな。ははッ、当たり前か、ユナの笑顔が無い家なんて色の付いてない絵画みたいなもんだ。
なにはともあれ治療だ。帝都でもかなり大きな規模で良さそうな治療院は調べてある。設備もしっかりしていて金もかかるが、精神を病んだ患者も診てくれる数少ない治療院だ。
家を借りた翌日に、ユナを伴って治療院に向かう。そこで診察を受けた結果――
「入院か……」
「はい。ユナさんの症状と原因を聞かせていただきましたが、ゴブリンの苗床となっていたとか……稀にそういった女性を視る事も有りますが、その症状として最も恐ろしいのは生殖器の変性なのです」
「子宮や卵巣も含めた……という事だな」
「ええ、ゴブリンの苗床にされた女性はその囚われていた時間に比例して、治療が困難になります。何故なら、長期間ゴブリンの精液で受精し続けると生殖器はゴブリンの子しか妊娠出来ない様に変化していってしまうのです。ユナさんの囚われていた期間はおよそ五か月とか、ここから回復した例は高位のプリーストの癒しの奇跡以外にはありません。ですがもしかしたら……という事もありますので早急に入院される事をお勧めします」
「心の方はどうなんだ? ここでは精神に障害を負った者も診てくれるとの事だったが」
「誤解しないで頂きたいのですが、精神の病に関しては時間のみがもっとも有効な治療です。こちらで出来る事は、介護の出来ないご家庭からお預かりして静かに心安らかに過ごして頂くだけです。一番良いのは、ユナさんに近しい方が一緒に住んで、刺激を与えてあげる事ですよ」
「なるほど……問題ない。傷が治れば俺が面倒を見る」
「入院期間は一月、それで肉体の損傷はほぼ治せると思います。変性した生殖機能に関しては期待しないでください」
「構わない。ユナをよろしく頼む」
そのまま入院患者用の建物に向かい受付で説明を受ける俺達。面会時間や決まり事、入院に掛かる費用などだ。ユナが寝泊まりする部屋は勿論大部屋では無く個室だ。
「じゃあな、ユナ。面会時間は18時までだから俺は帰らないといかん。また明日来るぞ」
「…………あー……うぅ…………」
「寂しいか? でも一月の辛抱だ。明日はユナの好きな竜王樹の果実をもってきてやるから……おやすみ――」
ユナの唇に、触れる程度の淡いキスを落とす。
相変わらず反応は無い。寂しいのはきっと俺の方だな、ユナを救出するまでの気が狂いそうだった五か月間に比べればまだマシだが……。後ろ髪を引かれそうになるのを奥歯を噛み締めて堪えながら、俺は借りたばかりの家へと帰る。
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あれから毎日欠かさず、なにかしらの手土産を持ってユナの病室へ俺は通った。
ユナが好きな食べ物。珍しい異国の工芸品。どうせ遊びもしないとわかってはいるけれど、退屈を紛らわせるような玩具。個室を埋めてしまう様な見舞いの品の数々に、流石に看護師さんに苦言を呈されてしまったので最近は食べ物ばかりだが。
ユナが入院してから二十日目。
救出した際はあれほど酷い有様だったユナの身体は、以前と変わらぬ美しさを取り戻していた。
経過を観察したドクターの話によれば、特に損傷の酷かった乳房や酷使された女性器、肛門周り等も含めてほぼ完全に回復しているらしい。今は念の為の経過観察と、変性した生殖機能の再生治療を試みているとの事だ。
あそこまで酷い状態だった股間が完全に治るとは思っていなかったんだが、流石に帝都の医療は格が違ったということだろうか。暫らくミルガーナで世話をしていた頃は、おむつが無ければ垂れ流してしまうし、常に10cm程の穴が開きっぱなしのオマンコは薬液を染み込ませた巨大張型を突っ込んでいないといけない程だったというのに。
だがやはり気になるのは生殖機能の変性だ。なんとかしてユナの心を取り戻して、癒しの奇跡を受け入れられる様にしたい。帝都には位階7以上のプリーストも何人か居たしな、
一応冒険者ギルドで、心を失った者に効く様な薬や魔導具の話が無いかも聞いてみたのだが……。
霊薬とも云われるエリクサーは肉体の欠損すら復元できるが精神には効果が無い。伝承レベルの話だが魔神の迷宮に棲むと云われる魂の魔神の力を借りれば可能なんて話もあったが、どう考えても胡散臭い。そもそもついこの間起きた霊魔戦争、帝国が召喚した異世界の英霊達と冒険者、神にも等しい力をもった魔神皇とその軍団同士の戦争で、魔神達はほぼ滅ぼされている。
どれも期待出来そうな物ではなかった。
結局はドクターの言う通り、俺が頑張るしかないんだろう。
っと、もうこんな時間か。いつも通りユナに挨拶のキスをして――
「――んっ、なんだこれは……」
ユナの唇に触れた瞬間に、自分の唇に感じる不快な感触。
俺はこの感触を良く知っていた。ユナを行きずりの冒険者たちに寝取らせて、散々に弄ばれた彼女を抱いてキスをした時にたまにあった事だ……まさか――
「ユナの唇に……毛? いや陰毛だと……?」
ユナの身体に被さっている布団をめくり、入院着を少し脱がせて確認……特に変わった様子はない。女性の看護師が入浴補助をしてくれてる筈だ、流石に痕跡が残っている様な事は無いか。
たまたまユナの唇に、食事の時に付着した? 考えられなくもないが……、個人的には夜な夜な男の看護師にイタズラされている方が――って流石に犯罪だな。俺が普通の男なら許さない所だが……。
「ゴクリ……こんな何もわかってない無垢な赤んぼうみたいな状態のユナが……俺が帰った後に口を使われて……いや、もしかしたら下の方も……」
焦点の定まらない瞳で、ぼんやりと俺を見上げているユナの姿。
そんな状態の彼女を下卑た表情で、ダッチワイフの様に犯す男の姿が重なる様に浮かび上がり……俺は思わず荒い息を吐くと、パンパンに膨らんだズボンの股間を擦り上げていた。
「くぅっ……はぁ……はぁ……確認しないと……な」
肌身離さず身に着けているウエストポーチ。ダンジョンで見つけた、空間魔法の付与された魔導鞄から俺は二つの魔道具を取り出す。
淡い輝きを放つ水晶球と、複雑な文様の描かれたハンカチ程度の大きさの布。魔力を籠めると丸一日、周囲の風景を音声と一緒に保存出来る記録水晶と、上に置かれた物の認識を逸らす認識阻害の布だ。前に、娼婦の真似事をユナにして貰った時に購入した魔道具で、それなりの金貨を支払わされた品である。
「これを花瓶の隣に置いて……じゃあまた明日な、ユナ。おやすみ」
昏い欲望を胸に病室を後にする。
ユナの様に、俺も狂っているのかもしれない。いくら合意の寝取らせ行為をしていたとはいっても、あんなマトモに思考も出来ないような状態の恋人が、夜な夜なイタズラされているかもしれないというのに……、でも、もしかしたらと期待してしまうんだ。俺とユナの性癖、それを踏襲する事で、もしかしたら彼女が心を取り戻す切っ掛けにならないか……と。
翌日。
まだ確定したわけでは無いが、今後の事も考えて記録水晶と認識阻害の布を魔道具店で購入する。二つあれば片方を持ち帰って楽しんでいる時も記録できるからな。
そのままユナの見舞いに治療院へと向かう。
個室のベッドに横たわるユナに変わった様子は無かった。声をかけると微かに反応したり、食べ物を近づけると手を伸ばしたりはしてくるが、能動的に何かを行おうとする気配は無い。
看護師の巡回しない時間を見計らって、唇や下着の下を確認する。おっぱいは……うん綺麗でエロい、最高のデカパイだ。パンティの下は……染み一つ無いパイパンマンコだな……割れ目がほんのり開いて潤っている。エロい。
うーん、犯されたかどうか判断がつかないな。まぁ記録水晶を確認すれば一発だが、新しいモノと取り換えて……と。今夜が楽しみだ。
「あと九日で退院だ。そうしたら暫らく二人で暮らそう。そして……治ったらまた冒険をしよう。おやすみ――」
「……んぅー…………あー…………」
くすぐったいのか、キスをするとむずがる様な表情をして顔をしかめたユナ。最初の頃に比べれば大分感情豊かになってきた様に思えるが……。
病室を後にして家路へと向かう道すがら、ドクターから説明された事を考える。
ユナの意識はどうなっているのか。
専門家ではない俺にも理解できる様に説明してくれたドクターの言葉によれば、彼女の魂は幾重にも連なった分厚い金属の殻の中に閉じ込められている様な状態なのだという。
辛い現実から魂を護る為に、精神の中に作られた檻。その中で眠っている意識は生半可な事では起きない状態であると、記憶も含めて閉じ込められている為に普段の彼女は、あの様な赤子の状態になっているらしい。
程よい刺激や、安らげる平穏な日々、親しい人との交流が一番の薬であると、そう告げるドクターだったが。ギルドの図書室で症例を調べた俺は知っていた。その状態から回復した患者の例は驚く程少ないという事を……。
だがそんな事は関係ない。
俺は絶対に、ユナの心を取り戻して見せる。
その為にも……まずは記録水晶の確認からだ。これはかなり重要な事だからな。
何も無いなら無いで、残念だがまぁ……良い事だろう。犯罪者は居なかったという事だ。本当に残念だが……、だがもし、期待通りの映像が残っていたら――
自然と浮足立ってしまう気分を落ち着かせながら、俺は記録水晶の納められた魔導鞄を大事そうに左手で護りながら家路につくのだった。