オレ達は二輪異馬鉄を厚く天日をさえぎり
空を覆いやがる黒煙下で走っていく。
「~♪」赤いぽんちょ羽織った無名は、オレの
後ろへ座り陽気に歌を口ずさんでやがる。
灰と砂がつもる畑や赤く立ち枯れた木々を
横切ってるときに、
「あっ誰かいる」
見えてないハズの無名が気配を感じない
ほぼ廃村を指差す。なんとなくだが、
好奇心から入っちまった。
「声が聴こえる……男の人と女の人が
言い争いしてんのかな」
オレの後ろから降りた無名はマチェットで
地面を叩きつつ、聴こえるらしい声のもとへ
歩きはじめる。CMMGMkGsのバンシー300
(チタン仕様)を構えた金太郎と、オレも
後を追う。無名はある住家に足を踏み入れる。
「ひへーうへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」
「い……いやっ!」
「おれのおかげで──」
今時よくある光景ではあるが、背後から
マチェットで突き刺し斜めに斬りあげた
無名。そこそこありそうな両胸を、腕で
隠し「あ……ありがとう」村の若い女は
礼を言った。
「おかげで乳も……腰も……」
「ちょっちごめんなさい」
まだ、上半身だけになっても動きやがる
クソッタレ。無名はふらつきながら
家の壁際に立て掛けた丸太を掴み、クソッタレの
頭部へ一撃しやがった。オレが止めるまで
何度も何度も丸太が振り下ろされ、気づけば
クソッタレの頭部が単なる地面の汚れに
変わってた。
「お姉さん、無事?」丸太を捨てた無名は
今度はまっすぐ若い女のほうへ歩み寄る。
どういうことだ? 見えるものにムラがあるのか。
「お姉さんの名前を教えて」
「八枝と言います。あなた方は?」
「その娘は無名。オレ様はジョニー“ディーコン”
桃太郎」
「間の名は呼ばれないけどな~」
「うるせーバカ。そして、軽口をたたくヤツが
ゴールデン・金太郎だ」
「ところで他の人たちはどうしたの」
「“中からしゃべり声が聞こえるぞ”」
外来語がどこからきこえてやがる。
また……伴天連軍の連中が来やがった。
オレは目で二人に武器をしまうよう指示を出し
両手をあげ、玄関前に立つ。
「“動くな!”」
「“ヘッ、ガキと女がいるじゃねぇか”」
「プリーズミー ヘルプミー」
「“なに言ってんだコイツ”」
無名がうっかり、ぽんちょから何かを
落としちまった。一瞬だけ兵士の視線が
そちらへ向くと、同時にオレは拳銃を抜き放つ。
弾を撃ち尽くした際にスライドを後退した状態で
固定する〈スライド・ストップ〉を延長した
バージョンと
金太郎も
カップ・ナショナルマッチを発砲していく。
「“助けっ……”」
オレは逃げようとした兵士の後頭部を
二発撃ち込む。顔面から鮮血と脳漿が
弾け落ちまった。
外から爆音を響かせながら猛速で
巨蛾みたいなのがこちらを巡回する。
あれば──
「
マジかよ。ねーちゃんが言ってた『対地・対戦車
用ミサイル祭り攻撃ヘリ』じゃねーか。
どうすりゃいい? 馬鉄も村の出入口まえ……
「軽機関銃かして」
「どうするつもりだ?」
「いいからいいから~あと、スティンガーミサイル
あったらディーコンに」
無名はなぜか
M249 SAW(分隊支援火器)を、金太郎から
拝借。オレにFIM-92 スティンガーを受けとるよう
促す。そのままふらつきながら、駆け出す。
ジグザグに動きつつ、単発ぎみで弾幕を
はり続ける。オレも必死にスティンガーを担ぎ
走り出した。
飛蛇は機首下にあるガトリング砲をゆっくり、
銃口を無名に向けた。無名は落ちつきを払い
ローター付近へ照準を合わし連射する。
オレはちょうど飛蛇の真下ヘ滑り込み
スティンガーを撃つ。一瞬大きな爆発音が
背後で響き、ズガアアアーンッと
飛蛇が真っ二つになり墜落しちまった。
へっ……ザマみやがれ。
「おーい、無事か」
「呑気だなオイ」
「あの……」
「あんかど~ゴールデン。それと
ディーコンもいい腕だね」
「私は……」
「それよりこの娘(こ)どうすんだ」
「安全な場所に置き去りにすれば?」
「置き去りにすんのかよ」
「あたしらと一緒にいてもどうしようも
ないじゃん」
「しょーがねーな」
とりあえず、八枝という若い女を
金太郎の馬鉄に乗せてまた進んだ。
こんな世界に安全な場所……そんなトコ
あるのか。
だが、僅かな可能性に賭けるしか
選択がねぇ。
あっさり撃墜。