長くなりましたが、皆さまお待たせ致しました。今回はR18らしい内容に仕上がりました。力不足を痛感するばかりの拙者も一安心です。
描いてて今までで一番楽しかったです。前話を読んで下さった方は息抜き回との落差も加えてお楽しみいただけると嬉しいです。
「フーッ!フーッ!フーッ!!」
グルルル!!と擬音がなってきそうな程に獰猛な息を吐く存在が一人。都の大路での大捕物のクライマックスは飛び六胞が一人うるティの渾身の「ウル頭銃」によって飾られたものだと誰しもが思った。下半身を露出したまま、ついでに見たこともないような最上大業物を文字通り曝け出し…抜刀した状態で縦横無尽に美女という美女を食い散らかす公方の進撃はここでお仕舞い…となるはずであった。だが公方は後ずさることもなく頭をかち割られ、そして彼の瞳は白眼を剥いた。
「カイドウめぇ〜〜!!余計なことをしおってからにッ!!もうダメじゃぁーー!!」
「将軍!落ち着かれよ!!」
何処からともなく悲鳴が聞こえた。
〜〜〜〜〜
鬼ヶ島へと伝達された情報は虚な瞳の遊郭公方が乱痴気騒ぎを起こしているという恐ろしいものだったが、これにカイドウは胸を撫で下ろした。「まだ大事ねぇ…白目じゃねぇなら何とかなる!」と彼は麾下の実力者を呼び寄せた。以前カイドウを打ち負かしたという公方の伝説に興味を示した飛び六胞から志願が殺到したが、何故か滅法強かったうるティとブラックマリアが勝ち抜いたため、彼女らの派遣が決定した。オロチは嫌な予感で体が震えて前に出てこず、本土に着いて早々に彼女達は都へ走ったのだった。
「頑張れペーたん風のように早く走るでありんす!!」
「姉貴!自分で走れるだろ!」
「二人とも仲がいいわね〜」
無理矢理連れてきたペーたんことページワンに飛び乗ったうるティと、彼女に誘われて彼に同情しつつも同乗していたブラックマリア。スピノサウルスに変身済みの彼は既に臨戦体制であったが彼の背に乗る二人の華に戦支度は見受けられない。気を抜いているわけではないが、自然体といった様子であった。ページワンは嫌な汗をかき始めた。
「姉貴!そろそろ着くぞ!もう降りろ!」
「お、り、ろ!?はぁ!?降りてくださいだろー!」
「ぐえ!?」
「きゃぁ!」
どざぁッ!!
「えー!?ぺーたんしっかり!しっかりするでありんす!!誰がこんな事を!?」
都の入り口と立ち登る無数の煙から明らかに騒動が予見されたページワンから降車勧告が出たが、彼の発言内容と言い方が気に食わなかったのか、生意気な!とうるティの両手が恐竜化して彼の首を絞めてしまった。奇襲に意識を持ってかれそうになったページワンは千鳥足で大地に倒れ込み、当たりどころ悪くそのまま昏倒した。振り落とされた際に驚いたブラックマリアと、自分で気絶させた弟を本気で心配するうるティだったが、いよいよ喧騒が度を越したものとなったことで二人も自分の足で都の中心へと向かった。
「うぉぉ!?!?だれかー!!公方を止めてくれー!!」
泣き叫ぶ男の声が響く。男は百獣海賊団所属の戦闘員であったがその所属にもかかわらず現地ワノ国にそれはそれは美人の妻を作っていた。彼と彼女は仲睦まじく暮らしており、さぁ子供を作ろうと所謂妊活の真っ最中であった。
「アッアッアッ!!ごめんなさぃぃッアンっ!貴方ぁ!私っもうダメかもぉぉ…!!」
…そんな二人の片割れ、妻の方から喜びの悲鳴が響いた。謝罪の言葉とは正反対の満面喜色の表情は快楽に爛れており、くびれた腰には男の手の跡がくっきり残っている。体中に赤いキスマークを残された女から苦痛の感情は受け取れそうにない。女を農耕具の様に仰向けにして犯しながらも歩みを止めない公方の息が荒くなってきていた。
「耐えろ〜!!もうすぐ助けが来るから!!」
男は真打ちとして都で警備に携わっていたが、男は既に先程の公方からの覇気もまとっていない拳一つで肋骨と肩の骨を損傷して地に伸びていた。声だけの声援に如何程の効力があるのか…。
「アッ…イッグゥゥゥ!?…あ、ダメぇぇ…やっぱり公方しゃまの方がしゅてきぃ…」
ドクン!と男にも聞こえる大きな音が鳴った。発信源は女の腹からである。それが射精の音であると気づいた男は気を失った。男の気絶後はさらに勢いを増してビュブビュブと吐精し続け、女の腹を妊娠3ヶ月程の大きさにまで膨らませてから音が止んだ。
「くっ!!うぅぅ…!まただ!また一人堕とされてしまった!」
女の幸せそうな顔に、公方を止めようと集まった男達から悲鳴が上がる。女を地に横たえた公方は目を虚にさせたまま女から腰を引き始めた。
「ぁ…アッ…まだぁ…かたぁぃ……んぉっ…」
「…ばっ、化け物め!!」
膣から肉棒を引き抜かれた女は引き抜かれるまでの過程でもう一度絶頂した様である。ピュルピュルと潮を吹かれながら容赦なく腰を引き抜いた公方の股間には未だ最上大業物が健在であった。栓を抜かれた膣からは黄ばんだ精液が溢れた。
公方の腰に屹立する威容に丸腰の彼を完全武装で囲んでいた男達が後ずさる。戦慄と淫臭に包まれるこの場についにうるティとブラックマリアが到着した。
「来てやったでありんすよ!!っえぇ!?へ、変態でありんす!!」
「待ってくれぇっ!!姉貴ぃー!!って、ギャァぁぁぁ!!!何なんだよこの変態!!!」
「…あら…お、おっきいわねぇ…」
「飛び六胞のご三方がいらしたぞぉ!!」
「やった!これで奴もしめぇだ!!」
「お願いします!!どうか奴を!公方を止めてください!!」
到着早々に淫汁濡れの最上大業物を見せつけられた三人は唖然。しかし、三人の驚きに構う事なく周囲の男達は威勢を上げた。飛び六胞の面々は三者三様の動揺を見せた。うるティはジルクの全裸フル勃起の狂態に顔は真っ赤にして目を見開いて固まり、ページワンは姉と慕ううるティの目に隠すところなく曝け出している変態に泡を吹きかけ、ブラックマリアは鬼の様に立派なジルクの最上大業物に目を奪われていた。最初に我を取り戻したのはうるティであった。
「へっ…変態!カイドウ様の目先でとんでもない騒動起こしてくれやがって!!」
「あっ、姉貴!待て!嫌な予感がする!!!」
「あぁ!?ま、て、だぁ!?黙って見てろよペーたん!!」
「もー知らねーからなーー!!くそっ!!俺もやる!!覚悟しろよ変態!!」
「…私はお邪魔だったかしらねぇ…」
初っ端から全力で助走をつけて飛び上がったうるティに続いて、ページワンが飛び上がった彼女のガラ空きの足元をカバーする様にスピノサウルスに変身した状態で胴体でジルクを押しつぶす様に突進した。ブラックマリアは怒りやら羞恥やらでいきなり全力を出した二人の姿に自分はオーバーキルであろうとキセルをふかして高みの見物と決め込んでいた。
「頭かち割れろ!!ウル頭銃!!!!」
ボッッカァァァァン!!
「……ッッ!?!?直撃したぞ!!!姉貴!やったか!?」
ページワンの体当たりが直撃する前にうるティの強力な頭突きが全裸で防御力ゼロのジルクの頭蓋に寸分狂わず炸裂した。パギャ!!と何か硬質なものが圧壊する音が辺りに鳴り響いた。ページワンは少しでもうるティから変態を遠ざけようと、既に絶命しているだろうジルクに向かってそのままの勢いで突貫した。
「姉貴から離れろぉぉぉ!!!」
ズザザザッッッ!!!
「キャーーー♡ぺーたーん!!やさしーー!!」
「うるちゃんったら嬉しそうね♡」
「やったぞぉぉぉ!!!あの遊郭公方を食い止めたぞ!!」
「流石は真打ちのトップ達だぁぁぁ!!!痺れるぜぇぇ!!」
「どれどれ〜!野郎の死顔を拝んでやらぁ!!」
ページワンの突進もまた正確に棒立ちのジルクに直撃した。恐竜の中でも大柄なスピノサウルスの巨体がジルクに衝突した轟音と舞い上がる砂埃に歓声が湧き上がる。着地していたうるティはジルクのことなどもう意識になくページワンへ声援を送り、ブラックマリアもまたうるティの可愛らしい姿に微笑みを浮かべていた。周囲の男達もまた公方を打倒できたと大喜びで口々に憂さ晴らしとばかりに救世主達を讃えた。ゾロゾロと砂埃の中で木っ端微塵になっているであろう公方の死顔を拝もうと男達とうるティがまだ姿を見せないページワンと公方の元へと向かった。少しずつ砂埃が晴れてゆく。
「…!?……あ、あねきっ!…にげろ!!!」
ゴパァン!!!
「グハァッッ!!ゲボォ!?」
「ペーたん!?」
「!?」
「「「「ヒィぃィ!!まだ生きてやがる!?!?」」」」
砂埃が晴れる頃に空高く弾き飛ばされたのはページワンの巨体であった。うるティへの警告とともに意識を失ったページワンの体の上には白眼を剥き全裸で仁王立つ、恐ろしいオーラを放つ無傷の公方がいた。うるティとブラックマリアは驚愕に慄き、ぬか喜びとなった男達は涙鼻水小便…とにかく身体中から汁を飛ばして震え出してしまった。
「フーッ!フーッ!フーッ!」
「ゴクっ!……本気モードじゃないといけないってことね…」
「……見切り間違えたかしら…」
「逃げろーー!!ここはもうもたねぇ!!!」
「散れー!!血祭りにあげられるぞ!!」
「公方様が白眼を剥かれたーー!!この世の終わりじゃーー!!!」
強大な波動を放つジルク、臨戦態勢のうるティとブラックマリア、ピクピク痙攣しているページワン。もはや手に負えない死の狂闘に恐れをなした周囲の男達は逃げの一手と決め込んだ様で、蜘蛛の子を散らす様に居なくなり、残されたのは海の魔王と四皇の精鋭達、失神してる苦労人の弟だけであった。恐るべき闘いの火蓋が今、切って降ろされたのであった。
〜〜〜〜〜
(以下うるティのみ)
巨大なクレーターと立ち登る煙が月の表面の様にも見えるここはしかし花の都の大路である。先ほどから繰り広げられているうるティの一方的な攻撃を、ジルクは一歩も退くことなく受け続けていた。時々頭を割られすぎて意識を取り戻すこともあったが、そのたびにうるティが頭突きで意識を奪ってしまっていたので、事態は一向に改善されていない。
「ウル頭銃!!!ウル頭銃!!!ウル頭銃!!!」
バガァァン!!!バガァァン!!!ボッカァァァン!!!
「…………」
恐ろしい威力の頭突きを繰り返すうるティと、だんだんと慣れてきて頭で殴り返すまでになってきた白眼のジルク。爆発音や衝撃波が広い大路にヒビを入れ始めた。
ビシビシビシ!!!
「かち割れろ!かち割れろ!かち割れろっつーのッ!!!」
ズガァン!ズガァン!!ズガァン!!!
「………」
パギャ!バゴ!!ベキョ!!!
巻き上がる瓦礫と二人の覇気がぶつかり合い、ビシビシと鋭い石礫が嵐のように広範囲を削りとる。動きながら災害を撒き散らす二人はその後も人間離れした戦闘を続けたが、全く効いた様子のないジルクに痺れを切らしたうるティがついに全身を恐竜に変身させた。ジルクは中段の構えをとった。その手には得物らしきものはなく空気を刀の如く握りしめていた。よく見ると構えている刀の角度とチ○ポの射角が一致していたが、それは見間違いに違いない。
「あーーーーもーーーー!!!何でピクリとも効かないんでごりんすかぁぁぁぁ!!!!」
苛立ちの限界に達した彼女の咆哮が崩れ落ちそうな周囲の家々をビリビリと振動させた。ジルクの最上大業物は圧し折られることを恐れる事もなく女の代わりに天を突いていた。怒りに身を任せつつ、今日一番の大技を繰り出そうと肉迫するうるティ。彼女の突貫を真正面から受け止める構えを見せたジルクは、白眼で彼女を見据えるとまるで大剣豪の様に厳かな動作で握った空気を上段に振り上げた。
「………無二念断刀流…」
オロチは前以上に嫌な予感がしていた。頼むから夢であってくれ。現実でもいいから何でもいいから勘弁して下さいと、誰に言うでもなく…いや彼の目の前にはいないが絶対に問題を起こしているであろう公方に謝り倒していた。頼むから平穏に今日は寝かせてくれと、今日さえ我慢してくれたら暫く税とか許すからと、世界で一人しか使い手のいない流派の剣技が炸裂しないことを神に祈った。だが、それは当然許されるわけはないのである。
「もう!スクラップにしてやるでありんす!!!ウル頭銃群!!!!!」
ズガガガガガガッッッッ!!!!
うるティの最高の破壊力を誇る大技が変わらず全裸のジルクに向けて炸裂した。彼は自身に迫り来る技の残心に目も暮れない。恐竜の姿だが間違いなく美女であるうるティの姿を心の曇りなき眼で見据えた彼は上段に振り上げた空の一刀を振り下ろした。
「……"蛇羅苦災(しゃらくさい)"……」
バオッッッ!!!!
振り下ろした空の一刀はカタナというよりはハンマーであった。
「カハッ…!?…ぁ…」
ガチィィィン!!!
バリバリと電流の様にうるティの頭に経験したことのない痺れが走った。衝撃波が彼女の脳を揺らし、空気圧によって生み出された斬撃の如き衝撃波は彼女に強烈な脳震盪を引き起こし、空の一刀と彼女の頭蓋の接触音が一拍遅れて耳に届いた。うるティの技は空圧に相殺されたが、ジルクの放った斬撃は彼女の全力を薙ぎ払ってなお余力を残しており、前のめりに倒れ込むうるティの頭上を超音速で抜けていった。斬撃の進路は言わずもがなのオロチの居城であった。
その日、将軍は青空の下で眠ることになったとかならなかったとか…。
ワーン!
トゥーー!!
スリィーーー!!!
カンカンカン!!!!
こうして、うるティVSジルクの激戦はジルクの勝利に終わった。因みに、勝者には然るべき褒美と敗者への裁量権が与えられるのである。
うるティ敗北の報告にカイドウを始めとした20年前の大事件「海公方クニトリ事件」のトラウマを思い出したもの達は、静かにうるティへと黙祷を捧げたのだった。
〜〜〜〜〜
命のかかった死闘の後というのは生存本能が昂り性欲にも火がつくものである。人間は勿論、魚人や巨人にも敵うもののいない性豪と謳われるジルク程のモノであればそれは殊更である。一際大きなクレーターに沈むうるティを抱き抱えたジルクは近場の遊郭へ光に引き寄せられる蛾の様に入店した。未だ意識のない彼の入店に驚いたのは、まだ幼い年頃の店番の少女であった。
「いらっしゃいまッ!?く、公方さま!!…あの…先ほどいらした時にうちの遊女様方はみなお召し上がりになられたのでは…」
「……」
「……あっ、お手持ちがございましたかっ!…ぁ、おっきぃ……ど!どうぞ!お部屋へご案内します!…そのぅ…大っきくなったら私もお願いしますね?…キャ!」
既に遊女全員がジルクとの行為で腰を痛めて明日まで起き上がれる状態ではなかった。申し訳ないがお帰り願おうとした少女だったが、ジルクの腕の中で目を回すうるティの姿を見て納得したのか部屋まで二人を案内し、帰り際にジルクへの予約を取り付けた彼女だったが、無意識にも少女の桃色の欲を感知したジルクからキスで奇襲を受けて轟沈したのだった。
部屋に入ったジルクは既に敷かれていた布団の上にうるティを横たえると、彼女の目覚めを待たずに先手必勝の攻勢を開始した。
〜〜〜〜〜
じゅる…じゅるる…ちゅるる…じゅぷじゅぶ…
「…?…んむぅ〜…ッ!?んゅ〜〜!?ふもぉ〜〜!!」
じゅっぷぷ…じゅぶ…じゅぶ…じゅるるる!ちゅば!
「ン!!んも〜!?!?…じゅるるるッ!ぷはっぁ!!」
眠ったままの姫に口づけする様に、或いはライフセーバーが溺死しかけた人に人工呼吸をするようにジルクはうるティに執拗なキスを繰り返していた。遊郭へ連れ込んでからうるティが起きるまでの20分間を彼女への口撃に費やしたのである。目を覚ましたうるティは、突然の出来事に目を白黒させたが手足が拘束されていないことに気づくとジルクを押しのけようと力を入れた。
入れたのだが…彼女の手足がジルクを押し退ける為に働くことはなく、逆にジルクをキツく抱き締めてしまっていた。驚いたうるティだったが、酸欠の時の様なぼんやりとした頭が働くことなく、寧ろ流される様に身体中が熱を帯び始めていた。長い長い口づけが終わり口と口が離れる頃、離れていくジルクの舌をマスク越しにうるティの舌がレロレロと名残惜しげに追っていたのは彼女も気付いていないことだ。
「……はぁっ…はぁっ…はぁっ…あちきには、その…ぺーたんっていう弟もいるでありんすぅ…そ、それにぃ…カイドウ様もお怒りになるでありんすぅ…」
「………」
キスから解放されたうるティは彼女が気づいていないだけでスッカリ絆されていた。故に彼女は言い訳の様に身内の話をし始めた。彼女は弟が大好きというブラコンの宿命を背負っていた、また彼女自身の実力もあって彼女を本気で口説くような気概のある男はいなかったのである。
また、カイドウは自分よりも強いが好みから外れていたし、他の男も顔が好みじゃなかったり、スタイルが好みじゃなかったりと兎に角彼女の好きのハードルが高いというのも大きな一因であった。そんな彼女の前に突然に現れたのは直前まで敵として、というより討伐対象の変態として死闘を演じた相手である男である。普通の感性ならば受け入れるどころか舌を噛んで死ぬところかもしれないが、彼女にマスク越しの熱烈なキスを捧げた男は他ならぬジルクである。この男は色々と破壊的であることは皆様もよくご承知であろう。
うるティは目を覚ました時に視線を占有する男の美顔にかなり興奮していた。そしてその男が先程の変態であることに気づいて失望しかけ、よく見るとこの男が自分の好みドストライクであることに気づいて歓喜していた。
彼女にとって強いことはとても重要なことだ。そして、うるティを一刀の元に打ち倒したジルクはその点でカイドウ以上にスマートで、かつ美しいという判定が彼女の脳内で叩き出されたのだ。更に、彼女にとってマスクというのは一種のアイデンティティでもあり尚且つ不可侵の場所であった。
コンプレックスであるかに関してはともかくとして、マスクを剥ぎ取られていれば彼女は怒り狂ったかもしれない。
しかし、彼はそのマスク越しに全力で彼女の口を吸っていたのだ。この点も、うるティの乙女心を強く刺激したのである。既にかなり濡れているのは秘密である。他にも身長的な話もある。うるティの人間の姿の時の身長は173cmであり、ジルクの人間の姿の時の身長は180cmである。少し背伸びすればキスできる!という期待にうるティが胸を膨らませてしまったのは純情拗らせブラコン頭突きガールの彼女からすれば致し方のないことなのである。
「…ね?だからあちきのことは諦めて欲しいでありんすぅ……」
「………」
彼女はまるで貴族の令嬢と平民の男の身分違いの恋は互いにとって不幸を生むのだと自分に言い聞かせる様に言った。潤んだ目をジルクに向けながら彼女は本気で口説きにくるのか否かについて、彼女なりの最終審査を迎えていた。ここで追ってこない様じゃ男じゃないでやんす…じゃなくてありんす。と彼女は考えていた。彼女は最高にチョロいがされど強かな女であった。神に祈る様に手を握り合わせて目を潤ませるあざとい彼女の視線の先には未だ白眼のジルク。返答は無しか…と彼女が落胆しかけたのと、ジルクの瞳に黒点が戻ってきたのは同時であった。
「……誰だい?君…まいっか。そんなことより君!すっごく可愛い!!好き!」
「………合格でありんす!ダーリーン♡はぷぅっ♡」
状況はわからないけど目の前でマスクをドロドロにした美少女に大満足で素直な感想をぶつけた心臓にタワシが生えているジルクと、素直な好意でアゴをかち上げられたうるティ。うるティは目の前で微笑む男が変態竿出し男だったことなど銀河の彼方に忘れてしまった。今の彼女の頭の中は目の前で微笑む全裸の王子様で一杯である。
元気よくグ!と効果音がつきそうなサムズアップを披露した彼女はそのまま自分からジルクにマスクキスをご馳走し始めた。強姦ではなく完全な和姦になってしまったが、二人とも満足そうなのでよしとしよう。
「はふ…あむ…むちゅ…ちゅるる…じゅぅ〜…ぷはぁ♡好きでありんすぅ〜♡ねぇねぇ〜ダーリーン?わたしに何したかったんでありんすぅ〜?さっきのつ・づ・き♡して欲しいでありんす〜♡」
「……??」
うるティは深いキスが大好物らしかった。
彼女はマスク越しだというのにマスク無しのキス以上にいやらしく、ねちっこく自身の舌をジルクのそれに絡ませた。
互いの口の端から溢れた唾液がポタポタと座敷に滴り落ちた。マスクという壁越しに互いの舌をつつき合い、唾液を生地を通して交換するのはとても背徳的であった。
もどかしさを味わいながら性の高まりに身を震わせるのは心地よく、性行為など初めてに近いうるティはジルクから与えられる純朴に見えて的確に性感帯を抉る口交の妙に翻弄され、生娘らしく膨らみすぎた愛情と焦げつきそうな憧れのこもった瞳で愛しの男の顔を心と頭に焼き付けていた。
息が続かなくなったことで二人の口づけは終わりを迎えたが、彼女の高揚はもはやキスやお遊びの愛撫では解放され難い程にキツく心を締め上げていた。うるティはジルクにしなだれて彼の体を撫で弄りながら、積極的に愛を求める。
未知の快楽が続いたことで彼女の中では理性と純情な乙女心の上に成り立つ性行為よりも本能と肉欲に支配された交尾を求める雌の部分が急速に肥大成長を遂げていた。
ジルクは全く身に覚えのないうるティからのお誘いに疑問符を浮かべていたが、彼女の火照った表情や、互いの唾液でドロドロになったマスク越しに蠢く彼女の舌の動きに本能が刺激されたのか、たぎる体に任せて彼女を貪りはじめた。
〜〜〜〜〜
遊郭の座敷に荒く湿った息遣いが充満している。
「フーッ…フーッ…フーッ!ぁ…ぁぁ…だーりん…しゅごいぃ…にほい…で…ありんひゅ…ぅ……」
「……くすぐったくて気持ちいいかも…」
グイッ
「ひうぅッ!?…ぁっ…そんなにぃ…つのぉ…つかんで、押さえ込むみたいにぃ……もぅ、全部…ダーリンの匂いしかしない…でありんすぅ……」
ジルクが思いついたことは一日中使って洗っていなかった最上大業物を角を掴んだうるティの鼻先に押し付けるという鬼畜プレイであった。常に勃ちっ放し、使いっ放しであったそれは女性の淫らな香りと男のすえた匂いのする精がこびりついた淫乱な薫りが醸成されており、生娘のうるティにいの一番で嗅がせるべきモノでは冗談でもなかったが、ジルクは悪意も悪戯心も無く、単に彼女からのお願いに答えようと思いついたことを実践したまでであった。あまりの淫臭に開始数秒でうるティの嗅覚は麻痺してしまった。生まれてこの方感じたことのない淫らな刺激に鼻腔を通して脳まで打ちのめされた彼女には正常な思考の為に最低限必要な理性ですら無くなっていた。今の彼女に残されていたのは強烈な淫臭を無理矢理に嗅がせてきた力強いジルクという雄への隷属的で野生的な愛情からくる奉仕の感情だった。彼女は顔の前に突き出された砲身にマスク越しに舌を這わせ始めた。
「…ぅっ…れる…れりゅ…ぉッ…ぁむ…ろうれ…んむッ…はりんふ?」
「ぅう…きもちぃ…」
「…そ、そうれありんふか♡…ふふ…むぷ…んべぇ…れる…」
ジルクは基本的に女の穴を口でしゃぶることはしない。そして、同じように女に自分の砲身をしゃぶらせる趣味もない。彼はそれどころか自慰すら自分ではしない。彼は良くも悪くも純粋である。それは性に関しても同じであり、本能的に生殖や交尾の方法は理解していたが、それ以外のつまり快楽を貪るための性技というのにはとんと疎いのである。彼はそのためか前戯も最低限しか知らない。そんなのでよく女を傷つけずに生きて来れたなと思うかもしれないが、彼は口づけや愛撫に関しては寧ろ乗り気であり、口を使わないだけで相手の体を弄ることには余念が無いのである。そんなわけで、人生でも数えるほどしか経験したことのない口奉仕による快感に彼は小さく喘いだのだった。うるティはうるティで、目の前には突き出された熱く脈打つ肉竿にどうしたらより快楽を与えることができるのかと考える前に、強い性の香りに犯された脳が勝手に最適解として彼女の敏感な舌を性具に用いることを弾き出したのであった。彼女は初心であったが故にタガが外れれば自ずから忌避されるような淫らな方法を開拓していったのだった。ジルクの気持ちの良さそうな声に、雄へ快楽を与えられているという充足感を感じた彼女は更に激しく舌を操る。
「れぇ〜…れる…ちゅぴッ…じゅるるるるッ!…ちゅぅぅ〜!」
「ふぅ…ふぁ…うぅ…」
「ふふん♡きもひぃ?…きもひいれありんふか?…んじゅぅ……ちゅ…ちゅ…ちゅ…じゅぅ♡…んぐぅ!?」
うるティの舌はジルクの我慢の限界など知らずに暴れ回った。ジルクが気持ちよさそうな声を漏らすほどにうるティは昂り、彼が喜んだ所を重点的に吸い上げ、舌を這わせ、マスク越しに荒い吐息で責め立てた。うるティは例に違わずジルクの体に、声に、仕草に、全てにメロメロになっていた。母性本能をくすぐるような声や優しげな顔に似合わぬ巨大な肉砲というギャップはむしろ女たちにとって高得点であった。ジルクがもっと喜ぶように、もっと気持ちよさそうにする様に、うるティは淫らな味と匂いが全身を血と共に巡るのを幻視しながら熱に浮かされた様に奉仕した。マスクには唾液と雄の汁が滲み、彼女の清楚を殺してより雄に都合の良い雌に育て上げていく。彼女の奉仕は左右の竿から竿の裏にまわり、そして最後に肉竿の先端へと行き着いた。じゅぶじゅぶと雄臭い淫液が止めどなく吹き出す先端の穴にマスクを押し付けたうるティは、蕩け切った瞳で上目遣いにジルクと目を合わせながらその穴を吸い上げた。じゅぅぅぅぅ…と誰かに聞こえれば赤面してしまう様な下品な音を立てながらジルクの種を啜り出すように先走りの汁をマスク越しに吸い込んでいくうるティ。彼女の容赦のない攻めが功を奏したのか、ジルクの我慢は限界を超えた。ごぶりゅりゅりゅ…という重厚な音と共にうるティのマスクを突き破る様な勢いで精液が吹き出した。彼女は驚きの声をあげたが口を、マスクを離すことなく受け止め続ける。ジルクの吐精の勢いは凄まじく、彼女の口と肉棒の間に布の壁など無いと言わんばかりにマスクをぶりゅぶりゅと濾し通りながらうるティの喉を通過して、彼女の胃へと精液の濃さと重さと熱さを伝えていた。
「…ごぶ…ごぶ…ゴク…ゴク…コク…けほッ…ゲホゲホッ……す、すごい濃かったで…ありんす…あぇ〜〜ろぅれありんふ?」
「わぁ、飲んでくれたの?」
「…けぷ…こんなに喉にへばりつくモノ飲んだのは初めてでありんす…けふ……」
「美味しくなんかないのに…ごめんね?…ありがとう!うるたん!!」
「えへへへへ〜〜♡そ、そんなことないよ〜♡あっ、でありんすぅ〜♡」
ジルクが吐き出した大量の精液に溺れかけながら、うるティは健気に口へ注がれる精を飲み続けた。彼女の胃袋が精液でぽちゃぽちゃと音を立てる頃には吐精も終わっていたが、彼女の口に入りきらなかった精がうるティの顔中に塗りたくられていた。顔に乗った精液の重量感はジルクが自身の体を液体にして彼女の顔と口と体を濯ぐまで消えなかった。
目を開けることができる様になったうるティは飼い主に褒められたい忠犬のようにジルクへと空っぽの口を見せた。口を開けた時に舌を淫靡にぬらつかせるのも忘れない。
彼女の工夫に気づくかはともかく、ジルクは自身の精液を綺麗に飲み干したうるティの頭を優しい手つきで撫でながらその健気さを褒め称えた。謝罪とお礼と共に、知ったばかりの彼女の名前を呼んだジルク。彼から名前を呼んでもらえたことで感極まったうるティは裸のジルクへと抱きつき綺麗になった頬と彼の頬をスリスリと擦り合わせた。
先ほどまであれほど帷薄不修の限りを尽くしていた二人は、まるで手を繋ぐのにも一々顔を赤らめ綻ばせる新婚夫婦のような甘い空間を構築していた。
二人のイチャイチャはそのまましばし続いた。
正気を取り戻したジルクと恋人が出来て有頂天のうるティの二人は結局本番をすることなく互いに別れを惜しみながらその日は解散となった。解散の理由はうるティが「カイドウ様が心配してるかもしれないでありんす!二人の秘密がバレてしまったら禁断の恋に支障が出るでありんす!!」と、貴族の令嬢と平民の男との身分違いの恋という設定を遵守したためであった。だからといって彼女のジルクへのガチ恋心を疑ってはいけない。彼女はガチ中のガチである。次に彼女たちが逢瀬を果たす時、その時が生娘うるティの初夜となるのだ…というのが彼女の純愛設定である。…ジルクもジルクで「カイ坊が心配してるの!?なら帰ってあげなきゃ!」と本気でうるティの言葉を真に受けて彼女を心配していたので問題らしい問題はなかった。
かくしてワノ国一のバカップル第二号が誕生したのであった。
………ん?第一号が気になるって?
〜〜〜〜〜
おこぼれ町 茶屋
「はい、あ〜ん♡」
おしるこのお餅を掬いジルクの前に差し出すトキ。その表情は輝かんばかりの眩い笑顔である。身体中から発されるハートの波動と一緒に少し後光まで差している気がする。彼女の視線の先には笑顔で口を開けたジルク。
「あーん…むぐむぐ」
満足げに素朴な甘味に舌鼓を打つジルク。トキが彼に向ける眼差しは母のように慈しみを帯びており、姉や妹の様に世話を焼きたいとうずうずしており、そして何より恋人らしく甘く優しかった。
「……な、仲が大変よろしい様でっ…」
そんな甘い空気を放つ二人の姿を茶屋で働く長身の美女が忌々しそうに…主にトキを…見つめながら呟いた。彼女に対してトキは如何にも、と優越感に胸を張った。ジルクもトキとは別の意味で素直に胸を張った。
「…それで、本日は何の御用件でいらしたんですか?拙者とても、それはとても忙しい身でありまして、トキ様のドヤ顔を拝見させていただくほど暇では無いのですが?」
所々トゲを感じる言葉にトキはむしろムン!と胸を張り、二十年振りの彼女…菊の丞…へと今日の要件とやらを話し始めた。
「あら、お菊はそんなことをいってしまうのね…私は悲しいわ、たったの二十年も見ていない間にこんなに貴女が変わってしまうなんて…うふふ、それとも嫉妬かしら?」
「拙者たちは変わっておりません…他ならぬトキ様のお力のおかげです!トキ様のおかげでこうしてトキ様よりも"二十年も若い"ままでございます。それに、拙者も残念に思います…あれほどに慈悲深く領民に慕われていた聡明なトキ様が二十年でこれほどまでに狭量な御方に変わられてしまったとは…これではトキ様を大事になさる殿方が不憫でなりませぬ…お可哀想に…じる「おでんさんかしら?」…」
要件を話し始めたかと思えばトキの口から飛び出したのはお菊への挑発であった。ただでさえ目の前でジルクとのイチャつきを見せられて苛立ちを感じてお菊には効果的面だったようだ。しかし、お菊もなにもやられっ放しではない。彼女はトキへの反撃として、如何にも褒めている様で激しく挑発を織り交ぜた返しをしたのだ。だが、最終的にはトキが一枚上手であった。あんまりな返しにお菊は言葉を失い、トキが勝利した。
「とと様〜お菊が私に意地悪をしてくるのです…ううぅ」
「えぇッ!?お菊!だめじゃないか〜トキはとっても繊細なんだぞ!」
「…こんな時ばかりとと様呼びとは…主様もどうかお気を確かに!」
明らかに嘘だとわかる演技にもかかわらず、それまでおしるこに夢中だったジルクは真に受けてしまう。これにはお菊も知っていたとはいえ驚きである。
「……さて、お遊びはこれぐらいにして本題に入りましょう。」
満足したトキはジルクへ抱きついていた体勢を正してからお菊に何事もなかったかの様に話し始めた。ジルクはおしるこに夢中である。
「貴女…いえ、今回ばかりは貴方ね…ねぇ、お菊?これから湯屋に行かない?私も旦那様も暫くはここらに滞在しようと考えているの。」
「湯屋ですか?…それとお二人に何の関係が?それに!拙者たちのようなおこぼれ町の住人が花の都に入ればどんな目に遭うのかはご存知では?」
突然の提案に驚いたお菊だったが、あくまでも公然の事実を鑑みた上で冷静にトキの提案への疑問について質問した。ジルクはおしるこが無くなってしまい残念そうである。
「……そうねぇ。それより、そろそろ来る頃なんじゃなくって?」
「……?くる、とは?何のことですか?」
トキは質問に答えることなくお菊へ逆に何かを聞き返した。お菊はトキの意図を計りかねたが、彼女の意図するところはすぐに明らかとなった。
どしん!どしん!どしん!
「おぉぉ〜〜い!!お菊ぅ〜〜!!今日こそはこの浦島の嫁にくる覚悟ができたかぁ〜!!!」
大きな足音を響かせておこぼれ町へとやって来たのは花の都で大横綱として名を馳せる巨漢。士族の髷が特徴的な浦島であった。彼はお菊を見初めて以来彼女の意思など関係なく執拗に嫁に来いと誘っていたのだった。
「…成程…。よくご存知ですね…トキ様と主様はお下がりを。」
「あら?あらら?どうしたのかしら?」
「?お菊〜?どうしたの?」
お菊の剣呑な雰囲気にトキはわざとらしく、ジルクは本気で心配した様子で彼女に声をかけた。しかし、二人が隠れるより先に浦島が二人を見つけた。
「ん〜〜?おいお前!!さっさと失せやがれ!!テメェの様な甲斐性のない男が俺のお菊に近づくんじゃねぇ!!!」
「キャーーーー!!!とと様!!わたし、とっても怖いわッ!!!」
「えぇ!?トキ様!?いきなりどうされて…」
浦島の剣幕は確かに力無いものからすれば恐ろしいものだったろう。しかし、大名の妻としてカイドウにも堂々と相対するトキが三下浦島の恫喝如きで怯むわけが無いのだ。だのに先ほどまでとは人が変わった様に怯え出した演技派女優トキ。彼女の変化にお菊は驚きを隠せなかったが、すぐにその驚きは上書きされることになった。
「なに!!可哀想にこんなに怯えて!!僕の可愛いトキをいじめる奴は誰だ!?」
何と本気で怒るジルク。おしるこが無くなり不機嫌になっていたのも助けて彼は初めから怒り心頭であった。
「えぇ!?主様!明らかに演技ですよ!」
「…ニヤリ…」
「あっ!いま笑いましたよ!トキ様絶対に怯えてなんかいませんよ!」
ジルクの素直さにも驚いたお菊だったが、ジルクの肩に頭を乗せながらニヤリと彼女に笑いかけたトキに気づいてジルクにトキの演技を告発する。
「え!?そーなの?トキ?」
再度、真に受けるジルク。疑うことなく聞いた彼に対してトキは演技派の真骨頂、泣き落としでジルクを再度魅せる。
「あぁ!とと様!トキはあの男が恐ろしくてなりません!見てください!まわし一丁です!なんて卑猥な!!私、とと様以外の男の裸など想像もしたくありません!!」
先日…というか今日の昼間にマッ裸だった男に抱きつきながらこの台詞を吐けるトキもトキである。しかし、見事なまでの涙の輝きにジルクは珍しくシラフで怒りを露にした。…全く怖くはないが。
「うう!許せん!!トキを泣かせるなんて!!僕は怒ったぞ!!」
彼の怒りに一番驚いたのは除け者にされていた浦島である。
「えぇ!?!?何だお前!!俺のお菊とどういう関係だ!?」
「お前だな変態!町を裸同然の格好で歩くなんて!恥ずかしくないのかい!」
「ええぃっ小癪な!!都まで吹き飛ばしてやる!!」
話が通じないジルクと話が見えていない浦島の言い合いが終わるとすぐに二人は臨戦態勢をとった。
浦島が四股を踏むとズシィィン!!と大地が揺れた。それに対してジルクは何時ぞや見せた空の一刀を今度は下段に構えた。二人とお菊の緊迫、そしてトキの興奮が高まっていく。二人の男の緊張が最大に登り、遂に決闘が始まった。
「行くぞォオ!!!」
「…無二念断刀流…」
飛び出した浦島。巨体がそのまま質量爆弾としてジルクを襲う。しかし、動かないジルク。彼の瞳から微かに光が失われた。
「ぶっつぶれろぉぉ!!!下民がぁぁぁ!!!!」
「"火灼凪(こしゃくな)"」
ズバァァァァァ!!!!
「グギャァァァァァ!?!?」
ジュゥゥゥゥゥゥ……
突進の瞬間にジルクの瞳から光が失せた。瞬間、下段に構えられた空の一刀は切り上げられ、突進の勢いをそのまま斬撃の切れ味向上に活かされた浦島の体を袈裟がけに切り捨てた。下段で分子の運動が固定されていた水蒸気が切り上げによる斬撃の軌道に沿って固定の反動から分子の激しい運動が引き起こされたのだ。抜き身に炎を纏った剣技よりも恐ろしい内部から噴き出る様な放出熱の斬撃によって、浦島の体は見事に斜めに切り捨てられていた。
一瞬の間に全てを決したジルクの瞳にはいつのまにか光が戻っていた。
「キャ〜♡素敵っ♡惚れ直したわ♡アナタ♡」
「そ、そーかなぁ〜?えへへ♡」
「…刀の腕まで達人の域とは…噂も侮れませんね…」
わざとらしいまでの歓声を上げて、本気で惚れ直しながらジルクに抱きつくトキと、彼女からの褒め言葉に照れ、男らしからぬ可愛らしい笑顔を浮かべるジルク。恍惚と憧憬の籠った眼差しでジルクを見つめるお菊。彼らには浦島のうめきなど聞こえていない。
〜〜〜〜〜
「まっっことにもーうしわけない!!公方殿!今回は何卒!何卒ご容赦の程を!!!…オロチ将軍からの伝言。一言一句違えずにお伝え申し上げた。」
城からの早馬の内容はその通りであった。結局、今回の落とし前としてトキがジルクの代わりに交渉を有利に進めたお陰でお菊も花の都を自由に出入りすることが許されたのだった。お菊は納得がいかない顔であったが、初恋の人と花の都を楽しめるとわかってからは鼻歌を奏でるくらいには上機嫌であった。
トキがお菊の嬉しそうな様子を見てそれまでの優越感に浸る様な笑顔ではなく、娘の初恋を応援する母の様な顔で微笑んでいたことは誰も知らない。
少しややこしい構成になってしまいましたが、完結とは言ったものの終わりではありません。キリのいい最後を先に描いてしまいたかったという拙者のわがままでございます。ご迷惑をおかけすることと思いますがまだ拙作は続きます。ジルクとトキ親子の旅は終わりましたが、ジルクとトキの恋人同士の旅が始まりました。ジルクはトキとの夫婦生活を満喫しつつもヒモ生活を止めることはありません。ペースは落ちますが、今後とも誰かを幸せに出来るヒモの旅は続きます。
p.s うるティは好きなのでまた描く予定です。