【書く】。この行動は時代が進むにつれ、少しずつ衰退している。デジタル化が進んでいく世界において、書道や筆絵はそれを避けられないだろう。特に日本ではそれらにまつわる八百万の神々も困窮し、忘れられて死を迎える者や祟り神になってしまう者もいるとか。これはその一端に過ぎない、人が消えた集落に立つ御神木の小噺である───

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コロナ禍でリア友と会わなくなったせいで持っている2人プレイ可能なゲーム(格ゲーとかテイルズとか)が軒並み2〜3年くらい息してません(憤怒)


猫又巫女と柳の御神木様

───とある片田舎の山の麓。そこには寂れた祠と、その隣に太い幹の柳の巨木がある。風雨で傷んだしめ縄が巻かれており、柳の御神木らしい。御神木や祠の周囲は雑草が生え、中にはかなり昔に供えられたであろう朽ちた筆が散乱している。そこに、草を掻き分ける草履の音が聴こえてくる。

 

「ふーふっふふーふーふ〜ん♪」

ポニーテールの黒髪と白い袖をヒラヒラと揺らしながら鼻歌混じりに祠に足を踏み入れたのは、巫女だった。巫女にしては荘厳さが欠片もなく、悪く言えばコスプレのような雰囲気を醸し出している。巫女は御神木に背を預けたあと、そのままゆっくりと腰を下ろして座り込む。

 

「やっほー爺ちゃん♪ 元気してた?」

巫女が軽いノリで木に話し掛ける。当然返事はなく、そよ風に吹かれて枝葉が揺れる。次に軽い握り拳で強めにノックをする。……これも反応は無い。腹を立てた巫女は立ち上がって右手に力を込め、御神木の幹をサッと軽く引っ掻く。すると巨獣の爪牙で引き裂いたかのような大きな爪痕が瞬時に刻まれる。それに驚いた御神木は、飛び起きて空間そのものに響き渡るような声を発した。

 

『あだだだだだ…………儂を引っ掻いて起こすなと言うておろうが、ミケ……』

「寝ぼすけさんの貴方が悪いんでしょ、筆柳(ふでやなぎ)様。これで起こすの何十回やったと思っているんですか」

『儂を起こすのに他の方法で試したのか?』

「逆に聞きますけど、私の爪(これ)以外の方法で起きた試しがありますか?」

『む、むう……』

筆柳と呼ばれた御神木は、己の寝坊助具合を恥じる。ミケと呼ばれた巫女はまた筆柳の根本に座り、擬態を解いて頭から猫耳、袴の尻側からふたつの尻尾が透けて現れる。巫女の姿をした猫又だった。

 

『……で、なんだその格好は』

「へへーん、どうよ。久々に巫女さんの格好してみたんだ♪」

『お前………さてはまた隣町の神社から盗んできたな?』

「借りてるの!人聞きの悪い」

『まったく、悪戯娘なのは相変わらずか………』

「だってウチ猫又だしぃー?」

『はあ…………お前は相変わらずだな……』

筆柳は呆れ、溜め息をつく。話を終えてお互いにしばらくそよ風で涼んだ後、筆柳の方から話を切り出す。

 

『……いつもされているはずの手入れが全くされていないな。何年経った?』

「十年だね。爺ちゃんが寝てる間に私は人間に化けて色んなところ旅したんだけど………今は世界中の人間が大混乱に陥っているよ」

『この十年の間でか……?何があった?』

「最近……と言っても三年くらい前だけど、新しい病魔が暴れているんだってさ。半年足らずで患う人間達が爆発的に増加して、その上どこかの国で人為的に作られたって説もあるしで散々だよ。分かりやすく言うなら……そうだね、インフルエンザなら爺ちゃんも知ってるでしょ?アレの比じゃない凶悪さらしいよ。ここ日本(ひのもと)も全体的に被害を被ってる」

『なんと………』

「どこ行ったって人間達がピリピリしててつまらないったらありゃしない。それで戻ってきたの」

視界に留まった小石を拾って投げながら、旅路の報告をする。どこか寂しそうな目で空を見ており、筆柳は何かを悟りながらミケに話し掛ける。

 

『…………ミケよ』

「んー?」

『昔のように儂に登ってみるか?』

「いいの?今のアタシは人間だと十八歳くらいだよ?爺ちゃんは普通のより大きい柳の木だけど、ウチもウチで大人に近い体格だから登って折れちゃったら大変だし、時間が掛かっちゃうけど子供の姿になった方がいいんじゃない?」

『いや、よい。それより登るなら早く登れ』

「なんでそんなに急いでいるのさ?いつものんびりしてる爺ちゃんらしくないね」

『済まぬなミケ、儂(・)に(・)は(・)も(・)う(・)時(・)間(・)が(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)』

「……え、それって…………………」

ミケの猫耳がピクリと動き、目を見開いて固まる。言葉の意味を理解して悲痛な表情になるミケをよそに、筆柳は穏やかな口調で話を続ける。

 

『お前の言う病魔が人の営みを害するのであれば、人が途絶えたこの地の龍脈が枯れるのも必然…………儂が死ぬのも時間の問題だろう。病魔が人災であろうと、人を怨みはせぬ。が…………お前がせっかく足を運んでくれたのだ。儂の方からもてなしておきたくてな』

「そんな………」

『数百の年月を共に過ごした仲だ………遠慮は要らぬ。さあ……』

「…………………。久しぶりに、お邪魔します……筆柳様」

ミケは猫らしい軽快な跳躍で筆柳の枝元に飛び乗り、枝葉が綺麗に分かれていて見晴らしの良い場所に陣取る。

 

「……久しぶりだなあ、この景色……」

『そうか、久しいか……』

「今は大人に近い姿だからかな……なんか、いつもより景色が小さく感じる」

『お前は猫と幼子の時によくここで寝ていたな』

「だってここ風通し良いんだもん」

『そうか……儂はお前が側にいてくれて嬉しく思うぞ、ミケよ』

「なに?愛の告白ってヤツ?」

『ん……?そういう風に聞こえたのか?』

「しっかりしなよ、爺ちゃん……」

『はっはっは、まあ………こういうのも悪くなかろうて』

「もう………」

ミケと筆柳はお互いに朗らかな雑談を交えるが、それでも筆柳の寿命が近いという事実の前にして寂しい空気が漂う。口数は次第に少なくなっていき、また静かになる。その静かな時間の後、ミケが筆柳から下りて話を切り出す。

 

「……ねえ、爺ちゃん」

『なんだ?』

「何十年くらい前だったかな……この村でも祭りとか神事があったの、覚えてる?」

『随分と懐かしい話だ。確か“てれび”という物が民の間で普及し始めてから、あれらはいきなり途絶えた覚えがある』

「うん………その事なんだけどね。爺ちゃんさ、祭りで巫女さんとヤっていたでしょ?」

『ああ、あれか……。子孫繁栄の祈願とは言え、儂に巫女を捧げるとは村の衆も考えたものよな』

「よくアタシも見てたんだ。中(・)身(・)も、さ」

『だろうな。お前が知らない筈はない』

 

「………………………………。……アレさ、ウチにもやってくれない?」

『…………なに?』

それは、あまりにも唐突過ぎた。ミケに自分から交わりたいと言われ、筆柳は動揺する。

 

『……待て、頭を冷やせミケ……儂は仮にも神だぞ?人間ならまだしも、お前は妖(あやかし)だ。神の子種を授かるなど……!』

「やってみなきゃ判んないよ。それに………」

『……?』

「……アタシさ、何度も転生してるけど……未だに爺ちゃん以上に良い男に出会えてないんだ」

『ならぬ!儂が持つ神性がもしお前を殺してしまったら……!』

「爺ちゃんの子供が欲しいの!!!!!」

『っ………………!!』

ミケの決意は本物だった。張り上げた声はわずかに震えているものの、その瞳は一点の曇りもなく筆柳を見据えている。

 

「失敗して死んだっていい。爺ちゃんの子供が欲しいの。このまま爺ちゃんが死ぬのを見届けて、アタシだけが残るなんて……嫌だよ」

『ミケ………』

「………………………。お願いします、筆柳様」

『………………良いのだな?』

「はい」

『……分かった。しばし目を瞑れ』

「……うん」

ミケは言われた通りに目を瞑る。すると風が止み、閉じた瞼越しでも明るかった筈の視界は次第に暗くなっていく。完全に暗くなった瞬間、ぬめぬめした何かにニュルリと頬を撫でられたのを最後に意識も暗転した。

 

 

 

 

『……もう良いぞ、ミケ』

「う…………ん……?」

意識が暗転している間に横になっていたミケは、瞼を開いて辺りを確認する。何かの胃袋のようなブヨブヨした閉じた薄暗い空間に移動しており、生温かい空気に包まれている。仰向けで寝たまま四肢を拘束されていて身動きは取れない。

 

「……アタシが寝ている間に準備したの?」

『そんなところだ。お前の心の整理がついたら始める』

「……………………」

ミケは静かに自分の状態と周囲を改めて確認する。触手に全身を拘束されて身動きが取れない状態で、白衣は胸元を開かれてたわわなおっぱいが露出し、スカート状の緋袴をたくし上げられ露出した下半身は触手に太腿と脛を纏めて縛られており、更に股を開かれた状態になっている。股を隠す為の下着は見当たらず、女陰が丸見えになっている。何より自分の周囲に大量の触手が待機しており、種付けは本気なのだと思い知らされ、緊張で生唾をゴクリと飲み込む。

 

「言い出したのはアタシだから……覚悟は出来てるよ。やろ、爺ちゃん」

『……始めるぞ』

(しゅる……ぬりゅ、にちゅ……)

まず手始めに触手が全身に纏わりつき、触手の触感を確かめさせる。どこからか分泌している粘液でぬめっており、瞬く間にミケの全身がぬるぬるになっていく。

 

「っ…………………」

『緊張を解してやらねばな』

「ッ!…………………?」

丸筆のような触手がミケの首筋に何かを描いている。何かの文字であり、描き終えると緊張しているミケはすぐに落ち着きを取り戻す。

 

「……今のは何?」

『緊張を和らげる神言を書いた。落ち着けたか?』

「う、うん……」

『次はこちらだ』

(くぱぁ……にゅる、ぬちゅっ、くちっ……)

「……ふ…………くっ…………」

唐突に触手に女陰を開かれ、そこに平筆に酷似した別種の触手が粘液のついた筆先で乳首と尿道口を舌で舐め上げるような挙動で粘液を塗り込んでいく。ねっとりとした愛撫で小さな刺激が蓄積されていき、撫でられていくうちに膣奥からは愛液が垂れ、クリトリスが少しずつ勃起していく。ミケは愛撫を受け入れてはいるが、恥ずかしいのか赤面していて声を押し殺している。

 

「ん……………はぁ……………」

『愛いやつよの……』

「はあ…………はあ………………ぁ……♡」

(しゅりっしゅりっ……にちゅにちゅにちゅ)

「あんっ♡うぅ……♡爺ちゃんの筆が……んはっ、はああ……♡」

『お(・)前(・)の(・)身(・)体(・)に(・)直(・)接(・)書(・)い(・)て(・)い(・)る(・)の(・)だ(・)。気持ち良いだろう?』

「んにゃあ♡爺ちゃんのスケベェ♡いじわるぅぅ……♡」

包皮から飛び出るほど肥大したクリトリスを複数の平筆の触手で執拗に撫で回され、絶頂の波が近付いてくる。程なくして尿道口が膨れ、今にも潮を吹きそうな状況にも関わらず触手の筆先は乳首とクリトリスに加え尿道口も刺激する。

 

(にゅるっ、にゅるっ、ぬちぬち……)

「はあ、はあ、はあ………♡にゃ………♡も……もうだめ………♡イッ……………!!」

言い終わる前に絶頂を迎え、勢いよく潮を吹く。潮を吹いて疲れ果てたミケの膣はまだ尿道口が膨らんでおり、しばらくして脱力に任せて膀胱に溜まった黄色い液体を排泄する。

 

(しゅいいぃぃーーーーーー…………っっ)

「うう……おしっこまで…………………見ないでぇ……」

(ピュッ、ピピッ……)

『……言うのが遅いぞ、ミケ。全部見ちまったわい。……だが、儂の筆で身体の内外がだいぶ解れただろう。種付けを始めるぞ』

「あぅ…………うん……」

ミケは赤面し、顔を逸らす。筆柳の宣言を合図に触手が一斉に活発に動き出し、ミケの四肢を縛り付けている触手以外は積極的にミケの身体を這い回る。

 

「……爺ちゃん、時間がないって言ってた割に元気だね」

『はっはっは。空元気の老いぼれに言う言葉ではなかろうて』

「……いっぱい、ちょうだい?」

『うむ。言われなくともそのつもりよ』

(ぬぷぷ……)

「ん…………♡」

触手の先端で拡げられたままトロトロの愛液を垂らしているミケの膣に、他よりも少し太く肥大した触手が挿入っていく。肉ひだをかき分けて子宮口に到達し、ゆっくりと抽送を開始する。

 

(くっちゅ、ぐちゅっ、ぬっちゅ……)

「んあっ♡にゃああ♡爺ちゃん、セックス上手い……♡」

『当たり前じゃ。何人の生娘を相手したと思っとる』

得意げに語りながら、触手でミケの子宮口をコツコツと叩く。その度にミケは声を上げ、卑猥な水音は勢いを増す。

 

(ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ)

「んっ、んっ、はあっ、はあ……♡爺ちゃん、爺ちゃん……!」

『……子種だ。しっかり受け取るのだぞ』

(どぷっ!ぶびゅっ、びゅるるるる……)

「ッッ………!!?!!??」

子宮に大量の子種が注ぎ込まれる。しかし、同時にミケに与えられたのは快楽ではなくとてつもない苦痛だった。

 

「が……っ!!……ぅ……あああ……………痛い……熱い……!!」

『……くっ、やはり神と妖とでは……!今すぐ儂の子種を取り除───』

「だめ……爺ちゃん!!!それは、だめ………!!!!!」

筆柳の子種が放つ神気の激痛に耐えながら、声を張り上げて筆柳を制止する。ミケは痛みを耐え続け、全身から冷や汗が噴き出す。

 

「はあ…………はあ…………!大丈夫、だから……。なんとか……身体に、馴染ませる……から……」

『っ………。ミケ……気をしっかり持つのだぞ……!』

筆柳は少しでも痛みを紛らわそうと、伸ばした無数の触手でミケの下腹部を優しく包む。ミケは呼吸すら厳しくなるほどの苦痛に長らく悶えていたが、徐々に落ち着きを取り戻していく。

 

「はあ…………………………はあ……………………………」

『大丈夫か、ミケ?』

「……うん、大丈夫。まだお腹のなか痛いけど……ちょっとずつ爺ちゃんの神性がアタシの身体に馴染んできてる」

『無理をさせてしまったな……』

「アタシが言い出した事だから気にしないで。もうちょっとしたら再開しよ」

『……………………………』

ミケの無事を確認した筆柳は安心するが、最期の時は少しずつ迫っていた。どうにかミケに悟られないように振る舞いながら、しばらくして種付けを再開する。

 

(ずっ!ぐちゅっ!ずっちゅ!ぬっちゅ!ずっぷ、ずぷっ……!)

「はあ、はあ……!!にゃああっ♡ 爺ちゃん、爺ちゃあん……!!!」

『ぬうう……ミケ……………ッ!』

互いに呼び合いながら、命を確かめるように交わる。完全に筆柳の神性に適合したミケは膣どころか尻にも大量の子種を注がれて白い精液のようなものが溢れており、それでもなお筆柳の触手達はミケへの激しい種付けを止めない。

 

「爺ちゃんの子供……絶対孕むから……!だから、私の身体に入りきらないくらい……いっぱい種付けしてぇ!!」

『ッ………………!!』

いきり立った触手達が、口腔も含めたミケの穴という穴を犯し続ける。乱暴な射精はミケの身体の内外を白濁させ、それを塗り込むように筆の触手達が乳首やクリトリスといった性感帯だけでなく、ほぼ全身を筆先で撫で回し続ける。ミケは快感のあまり絶頂を迎えては潮を吹いたりおしっこを漏らすが、お構いなしに筆柳の子種を求め続ける。

 

「はあ、はあ…………にゃあ……♡ 爺ちゃん、もっと……もっとぉ……♡♡」

『ミ、ケ……!!……ミ………………ケ…………………』

筆柳も触手から射精をする毎に生命力が削られ、次第に言葉が出なくなっていく。その間もミケに子種を求められ、永遠にも等しい夢心地の性交を続けた。

 

 

「……じい……ちゃ……………?」

『─────────────────────』

長い長い性交をしている内に眠ってしまっていたミケが目を覚ますと、倒れた祠と葉が全て枯れ落ち完全に朽ち果てた柳の木がそこにはあった。ミケの巫女服は綺麗サッパリ元に戻っているが、下腹部からは何かの胎動を感じている。ミケは立ち上がり、枯れた柳の木に両手を当てて話し掛ける。

 

「爺ちゃん……ごめんね。最後の最後で無茶させちゃって。爺ちゃんの子は、必ずアタシが産むから………………ゆっくり……眠ってね」

凛とした顔つきになった巫女は柳の木に深く一礼をした後、瞳に涙を滲ませながら優しく微笑んで別れを告げる。柳の木は風に枝を揺られながら、種を託した最後の巫女を見届けた───

 

 

 

 

「んー!今日も絶好の旅日和だねー♪」

あれから一ヶ月後。キャンピングカーから顔を出して朝日を迎えたのは、マスクを着けた妙齢の女性。海辺の道に車を停めており、すぐ隣に猫耳巫女のキャラクターが描かれている痛車も停まっている。女性が朝日を浴びながら軽く背伸びしていると、同じくマスクを着けたオタクと思われる青年が寝惚けた顔で出てくる。

 

「あー……オハヨーっす、柳田さん」

「おはよう、◯◯君。昨日は道案内ありがとね」

「いや、いいっすよあれくらいなら。俺も連休で良いドライブになりましたし」

「何かお礼したいところだけど、もう行かなくちゃ。……あ、そうだ」

「?」

柳田と呼ばれた女性は、軽い挨拶を交わしながら古びた鈴と年季の入った筆を腰のポーチから取り出して青年に握らせる。

 

「これをお礼に。この鈴と筆を持って、◯◯◯◯に立ち寄る事があったら、鈴を鳴らして“ミケ”って呼んでみてね」

「ミケ?猫の名前っすかね?」

「ええ、知り合いの飼い猫なの。それじゃあ、もう行かなくちゃ。また会えると良いわね」

「はあ……」

女性は急いで自前のキャンピングカーに乗り、エンジンをかけてUターンをして道路に沿ってその場を去る。去り際に青年と目が合って手を振っていたが、青年の目には何か別のモノも映っていたようだ。

 

「(えっ待って、猫耳……?猫耳カチューシャ?いやでも柳田さんそんな趣味あんのかな……?)」

青年は錯覚なのかすら判断がつかない瞬間への疑問に悶々としながら、自分の車に戻った。

 

 

「◯◯◯◯なら良い龍脈ありそう。産むまで時間かかっちゃうかもだけど……それまで待っててね」

運転しながらジーンズ越しに下腹部をさする女性。さする手から、返事をするように淡い光が漏れたような気がした。




登場人物&設定紹介

◎御神木【筆柳】
樹齢五百年の巨大な柳の神木。性格は優しいお爺ちゃん。村から人が途絶えた事で龍脈が枯れ、人に怨恨を撒き散らす祟り神に堕ちる前にミケと交わった事で、全ての生命力を使い果たして神としての最期を受け入れた。筆柳の声が聞けるのは同じく神秘の存在かつ永い時間を共に過ごしたミケのみ。

◎ミケ(人間界(令和)での名前:柳田 ミカ)
村に伝承が残っている三毛猫の猫又。筆柳の事を“爺ちゃん”と呼んでいる。猫らしく悪戯好きではあるが人間に滅多に害を及ぼさない珍しい種で、人化けを利用して人間社会に紛れて暮らしてきた。一人称や話し方が不安定なのは度重なる転生と人化けで人間界を生きてきた影響によるもので、唯一素を晒け出せる筆柳と話す時のみこの現象が起きる。猫又として生まれ落ちた時から筆柳には世話になっており、筆柳とは祖父と孫娘のような仲。筆柳と交わった事で筆柳の死と引き替えに神の子種を授かり、豊かな龍脈を探す旅をしながら胎内に宿した新たな神の誕生を待っている。

◎筆柳の祠・信仰・村について
かつて神木・筆柳は祠ではなく神社を持ち、筆をお供え物にする事で達筆になるという信仰があった。…が、テレビ普及に伴いその信仰とそれに因んだ祭り、筆柳に巫女を捧げ交配させる神事も村の報道対策として執った情報隠蔽により信仰と行事は断絶され、神社を解体し信仰の名残だけでも残すため祠を建てる。更に昭和後期の時点で既に限界集落だった村は次々と若人の移住と老人の逝去が相次ぎ、平成と令和を経て無人の村になる。残ったのはこの地にまつわる猫又の伝承だけになり、当人であるミケも村を何度も離れていたため伝承も薄れ、筆柳の死を最後に全てを失った廃村と化した。

◎古びた鈴&年季の入った筆
鈴はミケが猫の頃に着けていた鈴のひとつで、筆は使い古した何の変哲も無い筆。モブの青年に持たせたが特別な使い道がある訳ではない。要はゴミの押し付けである。

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