違法建築が密集して、見通しの悪い路地裏や暗がりが多い。治安は最悪で、毎年、死者や行方不明者が出ている。把握されていないケースも多かろう。
間違っても、女性が夜に一人で出歩くべきではない。アリスほどの美少女ともなれば、自殺行為だ。ゆるくウェーブのかかった煌めく金髪、類をみないほど整った美貌は、完全に場違いだった。
すれ違うのも困難な、狭い路地を歩く。掘っ立て小屋がひしめき合い、路肩では毛布にくるまって寝ている者もいる。排泄物や生ゴミの腐臭がほんのり漂ってくる。
やはり、彼女には似つかわしくない。悪目立ちしていた。物陰や暗がりから、好奇の視線を浴びせられまくっている。
より人気のない路地へと向かう。とうとう辿り着いたのは、誰からも忘れ去られた行き止まりだ。
宵闇の中で、シアンカラーの瞳があたりを見渡す。剥き出しの地面はじめじめと湿っており、苔むしている。壁面にはカビや、得体の知れない染みが浮かんでいる。いつ投棄されたかもわからぬゴミが、隅に転がっていた。
ここが具体的な目的地だったわけではない。が、都合は良さそうだった。数年単位で人が訪れていないだろう空間は、絶対に見つからないという条件を満たしていた。
ふぅ、と一息をつく。最悪のどん詰まりにいながら、頬は青ざめるどころか紅潮していた。なにせ、今からとっても楽しいことをするので。
衣服に手をかける。胸元を緩める、どころではない。大胆にも、脱ぎ捨てていく。人気がないとはいえ、いつ誰に見られるとも分からぬ場所で、素肌を晒していく。
彼女の美貌を「人形のような」と表現するのは、気が利いているようでまったく的外れだ。どんな人形師であっても、こうも整った顔立ちを作り上げられはしない。額・眉・瞼・瞳・鼻・耳・頬・唇・顎の、位置・サイズ・厚み。どれをとっても、寸分違わず完璧だ。
肉体も同様だった。輪郭、脂肪、筋肉のバランス。しなやかながらも柔らかな、女性らしさを湛えたボディは、まさに女の理想型だった。
白磁の肌は月光を浴びて、下を通る血管を透けさせている。最上級のシルクが足元にも及ばぬ滑らかさだ。顕微鏡で調べても、傷一つ見つからない。
まさしく、女体のイデア、美のイデアだった。うっかり目にすれば、瞳に焼き付いて二度と離れなくなる危険物だ。
首のラインはすらりとして、絶妙な緊張感を孕んでいる。左右へ伸びる鎖骨の優雅さは、ペガサスの翼を連想させる。窪みへ水を溜めれば、どんな酒よりも芳しい甘露となるだろう。丸みを帯びた肩の稜線が、可愛らしさをも備えている。
成人男性の掌にすっぽり収まるCカップは、ふっくらした、小山のような形をしている。なんらかの数学的理論に裏打ちされた、寸分の狂いもない美しい輪郭だ。
確かな弾力をもちながら、僅かな呼吸にも震えるほど柔らかでもある。揉みしだく幸運を得られたなら、たちまち天国に連れてゆかれるだろう。
パステルピンクの乳輪は、こんもり盛り上がったパフィーニップルだ。度肝を抜かれる美乳に対し、やや品がなく思える。しかしそのギャップが、素晴らしい淫らさを生み出している。
乳頭は、なんと充血してぷっくり膨らんでいた。誰が見ているとも知れぬ場で裸体を晒していることに、興奮を見出しているのだ。
ほんのりとくびれたウェストラインは、わざとらしくない見事なバランスを保っている。スマートでありつつ女性らしく皮下脂肪を蓄えた、柔らかな曲線だ。目を剥く肌の白さゆえ、腹のように面積が広くなだらかな部位では、どこを見ているか分からなくなってしまいそうだ。縦に走った臍が、唯一にして最高のランドマークとなっていた。
骨盤はゆるやかに広がって、乳・腹・腰までの蠱惑的なラインを成している。ふんわりした陰毛は縮れが強く、西洋の血を感じさせる。頭髪よりもやや濃い、マリーゴールドを思わせる色合いで、男の興奮を否応なしに煽る。
女性を女性たらしめる裂け目は、穢れなど知らぬといわんばかりの姿を晒している。一方で綻びつつもあり、すでに色を知る年頃なのだと感じさせる。驚くべきこととして、若干ながら湿り気を帯びていた。性的に昂ぶっているのだ。
後ろに回れば、染み一つない魅惑の背中が目に飛び込んでくる。ちらりとのぞく無防備なうなじは、吸い付きたくなるほどだ。肩甲骨、脊柱の輪郭が、たまらなくセクシーだった。
とはいえ、やはり視線を引き寄せるのは臀部だろう。きゅっと引き締まって上向きつつ、たっぷりと脂肪をまとった、女性らしいヒップだ。
人形製作中はずっと座っているためか、洋梨型の尻はスレンダーな体格に比べてやや大きめだ。恥ずかしいわ……と本人は気にしている。とはいえ、顔を埋めて頬ずりしたくなるほど魅力的なのは、間違いなかった。
脚もまた、同様に素晴らしい。弾幕ごっこの最中に蹴り技を使うことからも分かるとおり、実用的でしなやかだった。
普段は好まないヒールを履いているため、レッグラインはさらに強調されている。美脚を表現する「カモシカのような」という定型比喩があるが、カモシカでもとても及ぶまい。
まさしく、最高の女体、セクシーの塊、理想的な美だった。誰が見ているとも知れぬ場で晒すには、あまりにも勿体ない。
「あはッ……」
ましてここは貧民窟。倫理観を持たず、女に飢えた獣のねぐらだ。もし見つかれば、何をされるか分かったものではない。感じるのは不安、恐怖、そして性的興奮だった。
アリスはもともと、かなりの淫乱だ。外面こそ楚々としているが、毎日自慰もするし、セックスだって大好きだ。
特に、強い露出癖があった。とはいえ、満たすにはリスクのある趣味だ。最初は自宅にて裸で過ごすくらいの、ライトな行為で済ませていた。
が、何事も繰り返せば、だんだん満たされなくなる。より強い刺激を求めるのは生物としての性だ。家の中、外、魔法の森、夜の人里。下着を着けない、短いスカートを穿く。胸元を大胆に広げてみる。内容も場所も、どんどんエスカレートしていった。
そうしてとうとう、今夜に至る。貧民窟での、全裸での露出散歩だ。
誰かに見つかれば、すなわち社会的死。さらには貞操まで危ない。あまりにもリスキーだ。だからこそ、飢えた欲望を癒やせるのだ。
行き止まりから歩きだす。人に見つからぬよう、気配を探りつつ暗がりを進んでいく。ちらちらと、月光が肌を照らす。こんな薄汚い場には不釣り合いな、滑らかで美しい肌を。
「はぁあん……」
うっとりしながら路地を行く。ときおり、夜風が肌を撫でる。無数の羽箒で愛撫されているかのようだ。服を着ていては味わえぬ感覚に、己が裸であることを思い出す。ぞくぞくぞくっと、腹の底から震える。
「あん、やだぁ……」
気付けば、股の間から、透明な汁が伝い始めていた。粘っこくヌルついた汁が。
汗や尿でないのは、見るからに明らかだ。股座の裂け目から染み出たそれは、愛液だった。人生をベットした自慰行為に、官能を見出しているのだ。
「ふふッ……」
ふと、いいことを思いついた。念のために周囲を見渡す。人の気配はしなかった。
壁に背中を預ける。両脚を、軽く広げる。誰に見つかってもおかしくない中で、あろうことか己の股へ指を伸ばしていく。
「はぁんっ……」
裂け目はヌルついていた。自己開発された快楽神経が、じんじんと甘い性感をもたらしてくる。
そのまま、緩やかに擦り上げていく。ぬちっ、くちっと、蜜がこねられ小さな卑猥音をあげる。
「はぁん、あっ、くぅ、ふぅ、ふ……んっ」
指の動きは、尺取虫を連想させた。ぬちぬちぬちと淫音をあげながら、性感地帯を刺激する。
「っあ!」
親指で、とんっとんっと陰梃をつつく。
甘やかな快感に混ざって届くソリッドなエクスタシーは、腰をふるふると震わせる。
肉洞はすでに十分ほぐれている。自宅での自慰では張型を使ったりもするので、異物挿入には慣れているのだ。指を潜り込ませる。中指と人差し指で、膣道半ばのザラついたところを重点的に擦っていく。
「あぁんッ、あっあっ、はぁ、あぁ……ッ」
しょっちゅう弄るので、どこが弱いかよく知っている。そこが彼女のヴァギナにおける、最大のプレジャー・ポイントだった。腰を緩やかにくねらせながら、小刻みな動きで弱点を嬲る。膝がかくかくとカクついていた。
「あぁんッ、あん! はっは、ああ、気持ちいい……ッ、オナニー、たまんなぁい……っ」
ぬちゅぬちゅと濡れ穴をこね回しながら、甘い声を漏らす。
へこへこ腰をくねらせながら、嬌声を上げる。
いつ誰に聞かれるとも分からないのにだ。
「んッ! くっふ、うふふッ、あはぁ、アッ、あぁん、あ~ッ……!」
もちろん、見つかるわけにいかないのは理解している。それはそれとして、見つかってみたいという薄暗い欲望も抱いていた。矛盾する思いで板挟みになりながら、退廃的自涜にふけり続ける。形のよい乳房がふるふると揺れ、肉洞からしぶいた愛液が足元にシミをつくる。
「あんっ、あんあん、あはぁ、あぁッ……!」
「おい、なぁにやってんだ? コラ」
「アッ……」
己のものではない、低くドスのきいた声。指が止まる。ぎぎぎ、と、首がそちらへ向く。
見知らぬ男が立っていた。
目つきは悪く、体つきはごつく、いかにもごろつき然としている。
「なんだてめぇ、怪しい奴だな。素っ裸でこんなとこ歩くとか、まともじゃねぇ。ヤク中か?」
ニタニタと、下卑た顔でこちらを見つめている。馬鹿にした口調ではありながら、目には興奮が浮かんでいた。誰もが憧れる美少女、アリス・マーガトロイドの裸身を、無遠慮に見つめている。
「見回りの最中に、まさかこんな女に出くわすとはなァ。クソみてぇな仕事だと思ってたが、なかなか悪くねぇじゃねぇか」
貧民窟は浮浪者や犯罪者が集まって自然発生した吹きだまりだ。正式な地区ではないので行政の手も入らず、ならず者どもによる自治で治安維持が行われている。里における通常の警察機構と異なるのは、団員のモラルだ。活動は気分や賄賂に基づき、暴力により行われる。
彼もそうした組合の一員らしい。権力を持ったごろつき。タチの悪い存在だった。
「嗚呼……」
悲嘆にくれた溜息が漏れる。が、恍惚の吐息にも聞こえた。
見つかってしまった。いや見つけていただけた。見逃してくれるわけもない。きっとひどいことをしてもらえる。いったい、何をされてしまうのか。していただけるのか。
「あんッ、あっあっ、はぁッ、あぁん……ッ」
社会的な死とどうしようもない興奮に、指はひとりでに動き出す。ぬちぬちくちと、猥褻音が股から響く。私は露出狂の淫乱ですという、なにより分かりやすい自己紹介だった。
「おうおう、何やってんだ。人が話してるときくらいオナニーやめろや」
あまりにも真っ当な指摘だ。とても反社会的な人間とは思えなかった。
とはいえ、本当にやめろとは思っていない様子だった。ニタニタと口元をいやらしく歪めており、目線はひどくいやらしいのだから。
「なんだてめぇ、変態女か。見て欲しいんだろ、ん?」
「そんなの……ンッ、違うわ」
「ハッ、こうして話してる最中もマンズリこいといて、何言ってんだっつーの」
腰を屈め、ぬっちょぬっちょと今もほじられている淫洞を見つめている。ギトギトした視線だ。まるで精子を浴びせられているようだった。そんなふうに見ないでほしい。奥から汁があふれて、止まらなくなってしまうから。
「ぉんっ、はぁッ、あんッ、あん」
「嬉しそーにマン汁垂れ流しやがってよ。え? 雌くさくてたまんねぇ。相当オナ慣れしてやがんな。言って見ろよ。どんくらいオナニーすんだよ」
「あん、もう、そんなのぉっ……」
「お? なんだ答えねぇつもりか。怪しい奴だな、連行して話を聞いた方がいいかなこりゃ」
「毎日よ、毎日するわ……多いときは一日に二回とか、三回」
「おいおい、そりゃとんでもねぇ淫乱だな。サルかよ」
嘲られて見出すのは性感だ。もちろん、屈辱は覚えている。それがネガティブな感情に繋がらないだけの話だ。高鳴る胸に、指の動きはいっそう激しくなる。淫乱音をまき散らしている。
「怪しいなァ。こんなエロ女が都合良く現れるとか、童貞の妄想かってんだ。なんか危険なモノとか隠してんじゃねぇか? ボディチェックしなくちゃなぁ」
なんともわざとらしく言ってのける。靴以外はなにも身に着けていないのに、隠すもへったくれもない。ただのお為ごかしだ。
「おほッ、柔らけぇ。最高だな、へへへ」
「あぁんッ、あはっ、あん」
男の手が、乳房を鷲づかみにする。むにゅっ、むにゅんと、柔らかく圧力を受け入れ、形を変える。確かな弾力で押し返す様に、男は目を細める。
我が物顔とはこのことだ。が、抗議などしない。これはボディチェック、すなわち正当な捜査だ。自分は危険な犯罪者などではなく、善良なる市民なのだから、協力するのは当たり前のことだった。
「乳首もこんなボッキさせてよぉ。普通の女じゃねぇな。いよいよもって怪しいぜ」
「はんッ! あッ、あぁッ!」
硬く膨らんだ先端を親指と人差し指で摘まみ、くりッくりッとダイヤルしてくる。ソリッドな性感に、焦がれた声が漏れる。きゅううッ、とつねられ、もはや夢見心地だった。雌穴をほじる指の動きも、いっそう激しくなるというものだ。
「おいおい、そこを今から調べるんだからよ、ちょっと指どけろや」
「あぁんッ……」
「グッチャグッチャエロ音たてて、一生懸命ほじってやがったからなぁ。なんか隠してんじゃねぇのか、お~?」
手をどかされる。ほじくってくれていたものを喪った穴は、寂しいのと言わんばかりにヒクついていた。
陰唇に指がひっかけられ、左右に割り開かれる。ぬちゃぁ……と蜜の粘っこい音とともに、肉穴内部が視線のもとに晒される。快楽を求めるかのごとくうごうご蠕動する様は、普段の清楚な振る舞いからは想像もつかなかった。
「あーあー。なんちゅう淫乱穴だよ。正気か? おい」
「あぁんッ!」
身体を跳ねさせる。裂け目の端でぷっくり膨れ上がっていた肉豆を、キュッ、とつねられたのだ。女性最大の弱点へのオーバーな刺激に、喉から上がるのは焦がれた声だ。思わず、腰をカクつかせてしまった。
「中に何か隠してねぇか? おお?」
「ぉッ、ひッ、あぅんッ、ひぃッ、あはぁ、あんあんッ、はぁあッ」
「次から次にマン汁垂らしやがって。こりゃ怪しいなァ?」
当たり前の顔をして、膣内に侵入してくる。鉤状に曲げた人差し指と中指で、襞を擦り上げてくる。
雑で乱暴な指使いだ。それでも、自分で弄るのと人に弄ってもらうのとでは、得られる快楽のレベルが違う。切なく上ずった声をあげながら、愛撫にあわせて腰をヘコつかせる。
「ちっ、何も見つかんねぇなぁ。もしかして口の中に隠してやがんのか? ニンジャは奥歯に薬を仕込んだりするしな。てめぇもその手合いか。おら口開けろ口」
「んはぁッ、んむッ、んちゅぅッ、んぅう」
唇を奪われる。接吻は、愛する者同士の行為だ。今日初めて出会った男と交わしていいはずもない。
名も知らぬ男と恋人になりながら、むっちゅむっちゅと舌を絡ませ合う。脅されて仕方なくとはとても思えぬ、熱烈な奉仕だった。
口端から透明な汁が滴る。体液が盛んにやりとりされていた。混ざり合った二人分の唾液を、音をたてて嚥下していく。
「んはぁん……」
たっぷり一分ほど続いた口交の後、ようやく唇が離れた。もっと嬲ってほしいとばかりに、口を開き、レロレロと舌を蠢かしている。他人には見せられない、猥褻極まる雄誘惑だった。
「凶器やらヤクのたぐいは出て来ねぇが、この淫乱さ加減は法に触れるな。ウン触れる触れる。よし! 連行だな。オラ手ェ出せ手」
「あぁん、そんな……」
無茶苦茶極まる発言だった。懐から手錠を取り出している。きっと、ねぐらにでも連れ込むつもりなのだろう。
絶体絶命の状況に思えるが、実はそうでもない。なにせこちらは魔法使いだ。人形は持ってきていないが、ただの人間くらいならどうとでも対処できる。
だからこそ、何もしない。理不尽を素直に受け入れる。両手を差し出し、枷を受け入れた。
「あはッ……」
たかだか人間、それも底辺のごろつき風情に、行動の自由を奪われる。屈辱的なシチュエーションに、被虐的性感を覚える。口元がへらりと歪んだ。
「よし。んじゃ牢まで連行するからな。ついてこい」
「え? あの、服は……」
「あるわけねぇだろ。お前みたいな変態女は、見せしめに大恥かかせてやんねぇと学ばねぇからなぁ?」
「……あはッ」
最悪だ。誰にも見つかってはならないと思っていたのに、いったい何人に見られてしまうことになるのか――昂ぶりがやまなかった。
「ホレ、来いや」
「あんっ」
腰に腕を回される。尻を撫でられながら、強引に連れてゆかれる。
男は路地を、人気のあるほうに向かっていく。やがて、比較的大きな道に出た。貧民窟における大通りだ。左右に立ち並ぶのは、今にも崩れそうな掘っ立て小屋ばかりだが。
「おうお前らァ、起きろ起きろ、い~いモンがあるぞぉ!」
男は声を張り上げる。庭石をめくって虫がワラワラ出てきたときのように、建物や暗がりから、人々が顔を覗かせる。
大抵は、迷惑そうな顔をしていた。気持ちよく寝ていたのになんだ、と言わんばかりだ。すぐ、喜色を浮かべる。男が言うところの「いいもの」を見つけたからだ。すなわち、素っ裸の女を。
なにせ貧民窟の住人は、女に恵まれない。娼館に行く余裕などないし、行けたとして入店を断られるのもザラだ。
貴重なものを見られる好機を、逃すわけもなかった。ぞろぞろと、野次馬が集まってくる。さながら地獄の餓鬼のごとく。
「うひょ、なんだアレ、すっげぇな!」
「とんでもねぇ美人だ。いや夢かコレ?」
「ハダカの女だ、うへへ、いつぶりかなァ。あっやべっ勃ってきちった」
群衆が口々に囁きあう。アリスの美貌に、一糸まとわぬセクシャルボディに、度肝を抜かれているらしかった。無理もない。誰もが憧れ、しかし高嶺の花過ぎるからと諦めるのがアリスなのだから。
「いいかお前ら。この女は物陰で一人寂しーくマンズリこいてやがった露出狂女だ。貧民窟でンなことするなんて普通じゃありえんから、メチャクチャ怪しい。たぶん犯罪者なので、連行している」
人混みをぐるりと見回しながら、男は演技がかった口調で言う。男達からの目が、一気に下卑た欲望をまとう。あまりの美人っぷりに気後れしていたらしいが、オナニーをしていた露出狂だと分かって、遠慮がなくなったのだ。
両手両脚の指をフルに使っても足りぬ数の見物人がいて、誰も気遣おうとはしていない。目の前の裸体を、自由に嬲っていい玩具として認識していた。
「あ、っは」
数え切れない、性欲まみれの視線。全身に精液をぶちまけられているかのようだ。女性ならば誰もが恐怖してしかるべき状況において、しかしアリスは、昂ぶっていた。じゅわっ、じゅわっと、腹の奥から悦びの汁が分泌される。
ぽたぽたと、足元に淫蜜が滴っている。見逃す彼らではなかった。というか、視力さえあれば気付く勢いだった。
「おいマン汁垂らしてやがるぜアイツ!」
「変態だ変態、マジで露出狂だ、アタマおかしいんじゃねぇか!」
げらげらと哄笑が響く。誰もが見下す浮浪者やならず者に見下されている。くらくらするくらいの屈辱は、マゾヒスティックな興奮をもたらした。
「ほれ、行くぞ変態女。パレードの始まりだ」
「え、そんな……」
「なんだァ? 歯向かうつもりか。いよいよ怪しいな。こりゃ全員で『取り調べ』してやらねぇとダメかぁ?」
尻肉を揉みしだかれる。体型に比してムチムチとした洋梨型のヒップは、確かな弾力で指をお押し返す。
「はぁ、んっ、……分かった、分かったから」
「分かりました、だろぉ? 猥褻物陳列罪女が」
「分かりました、あんッ……」
分かりゃいいんだよ、とばかりに、乳首をピンッと指先で弾かれる。腰を揺らめかせながら、彼についていく。
といっても、普通には歩けなかった。身体はとうに発情しきっており、腹の奥で官能の炎がじくじくと燃えている。脚は明らかにふらついていた。
「へへッ、マン汁垂らしまくりやがってよぉ」
ぽたぽたと染みが残っている。淫乱女がこちらに向かいましたよという道しるべだ。後ろから、男達がついていく。悩ましげにプリプリとくねる尻を、欲望まみれの瞳で見つめている。
いや後ろからだけではなかった。前からもだ。形のよい乳、濡れそぼつ陰部を、じろじろと無遠慮に眺めている。手枷をしていては、隠せもしない――隠すつもりもなかったが。
「おい淫乱犯罪者女、こんだけ見物客がいるのにファンサービスの一つもしねぇつもりか? ん?」
「ファン……?」
「おうそうだそうだ俺らにサービスしろサービス、マンコみせろや、マンコッ!」
マンコマンコと、知性ゼロのシュプレヒコールがこだまする。あまりにも異常な状況だった。もちろん今のアリスに、逆らうなどという選択肢は残されていない。
軽く脚を開き、腰を前方に突き出す。下腹を曝け出す形だ。雌露に濡れてしっとり湿った陰毛、どろどろの三角地帯が、男達へと差し出される。
さらに、股座へ自ら手を伸ばす。淫裂に指を引っかけ、左右へ割り開いた。
「うひょぉ! マンコだ!」
「どけクソ野郎! 見えねぇだろが!」
「アァ!? てめぇがどくんだよォッ!」
途端、男達が群がる。おそらく今後一生見られないだろう、極上の雌穴を、視界へと焼き付けるために。まさに殺到と呼ぶのが相応しい光景だった。
「あはぁあッ……」
恐怖を覚えてしかるべき場面で、しかしアリスは甘い吐息を漏らしていた。膝が微かにカクついている。
誰に命じられもせず、肉穴を自らほじくっていく。くっちょぬっちょと、猥褻音を鳴り響かせる。
「おうおう、本当にどうしようもねぇ露出狂女だな。つかテメェ、なんて名前なんだよ」
「っ、それは」
憚られた。アリス・マーガトロイドは人里において、ちょっとした有名人だ。多少なり調べれば、簡単に辿り着けるだろう。
「なんだ? 答えねぇつもりか。こりゃ素直になるように、全員でブン輪姦してやんねぇといけねぇか? あぁ?」
「そんなッ、は。アリスよ、アリス・マーガトロイド……」
「あッ! どっかで見たことあると思ったらソイツ、たまに人形劇しに来てる魔法使いじゃねぇか!」
ようやく気付いたか、男の一人が指さしてくる。目の前の女が有名人だと察したか、男達の色が嗜虐的な色を孕んだ。
「へぇ、そりゃオレも名前くらいは聞いたことがあるな。そうかそうか、テメェがそいつか。ガキどもにお芝居してやってるお姉さんが、こんな淫乱だとかなぁ? やべ、レイプしたくなってきた」
「あん、だめよレイプなんて……」
最初にアリスを見つけたごろつきが囁いてくる。貞操を直接的に脅かす台詞を吐かれて、しかし彼女はむしろ期待するかのごとき潤んだ声を返す。
「おいおい、逆らうつもりか? 俺の権限使って、コイツらに輪姦させちまうぞオイ」
「そんなの、もっとダメに決まってるわ」
やんやんと、ぶりっこするように首を横に振る。男の目は、さらに嗜虐心を強めていた。目の前の生意気マゾ女を、どういたぶってやるか考えているのだ。
「はん。レイプもダメ、輪姦もダメだぁ? 注文の多い変態だな。……イイコト思いついた。てめぇみてぇな生意気女は、ちょ~っとキツめの尋問、してやらねぇとなぁ」
ちょっとではないぞと、口調が告げていた。一体何をされるのか、ゾクゾクと心が震えている。
「おら、こっちだ」
強引に引っ張られる。大通りを外れ、再び路地へ入る。歩を進めるほどに、周囲の光景はみすぼらしくなっていく。
辿り着いたのは一軒の、土蔵を思わせる小屋だった。今にも外れそうな建付けの悪い扉を、半ば蹴破るように開く。
中はボロボロだった。床板は腐りかけているのか妙に柔らかく、壁は黒ずんでいる。排泄物を思わせる、饐えた臭気がむわりと立ちこめていた。
家畜小屋かと思った。にしては、飼い葉などのありがちな物品が見当たらない。また、小屋内を六畳くらいの広さで、鉄格子が区切っている。どうやら、牢獄らしかった。
「てめぇみたいな生意気カス女は、懲役するに限るわ。おらッ、入れ」
「あっ!」
格子の扉が開かれる。背中を突かれ、乱暴に放り込まれる。床にすっ転んだ。
「三日もここで反省してりゃ、素直になるだろうさ。へへ、じゃあごゆっくり」
「あ、ちょっと!」
言うだけ言って、男は牢の鍵を閉める。去り際に、こちらを振り向いた。
「おいカス野郎、てめぇにプレゼントだ。嫁を連れてきてやったぞ。せいぜい楽しめや、ギャハハ!」
「……?」
扉が閉められる。残されたアリスは一人、呆然とするばかりだ。
「うーん……こういうのは望んでないのよね……」
あまり望んでいない展開だった。いやらしい目で見られ、嘲笑され屈辱に震えるのは大いに構わない。社会生命を天秤にかけたやけくそな快楽は、脳をヒリつかせてくれる。
が、単に牢屋で大人しくしておけというのは、普通にキツい。七十二時間なにもせず過ごすのはあまりに退屈だ。
それにこの場所は、控えめにいって衛生的でない。床板は腐敗して柔らかく、得体の知れない汚れで妙にベトついている。正直、素肌で触れたくない。寝起きするなど、もちろんごめんだった。
「はぁ……」
溜息を吐く。きっと男達は、こちらが飢えや渇きに音を上げたころ現れ、無抵抗になったところを輪姦するつもりだったのだろう。魔法使いに飲食の必要がないことを知らなかったのだ。
めくるめく凌辱劇には期待が持てるが、だからって待たせすぎだ。せっかくいいところだったのに、興ざめだった。サクッと解錠の魔法でも使って脱出するかと、魔力を練る。
「お、ほほッ、女? 女か? 女だぁ」
奇妙な声が聞こえ、振り向く。小山があった。いや違う。人間だ。とてもそうとは思えなかったが。
素っ裸の、ず抜けた巨漢だった。全長にして二メートルほどで、横幅も同じくらいある。常識外れの肥満体だった。生活習慣というよりは体質だろう。
首は埋もれていて見えないし、手足も胴体に半ば埋もれている。人だと思えないのも無理はなかった。そういう異形の妖怪と言われたほうが、よほど納得できる。
それだけの巨体でありながら、顔だちは不釣り合いなほど幼い。異様にまん丸で知性を感じられぬ目、低く潰れた団子鼻、弛んだ頬肉と窄まった唇。肉が余りまくっているゆえか、全体のパーツが中央に押し込められている。
「うッ……」
アリスの美が極限のバランスのもと成り立っているなら、彼の醜さは極限のアンバランスによって成り立っていた。思わず、顔をしかめる。彼があまりに醜悪だったからではない。それもあるが、何より汚さゆえだ。
猛烈な臭気を、全身から放っている。薄い頭髪が汗やフケで固まっていた。ぶよぶよと弛みきった肉は垢まみれで黒ずんでいる。肉と肉のシワから漂う汚臭は、堪えがたい生理的嫌悪をもたらす。
どれだけ風呂に入っていないのか、想像もつかない。一週間や二週間ではない。数ヶ月――下手すれば年単位だ。
「ッう……ぷ」
横隔膜がせり上がり、えずく。鼻呼吸をやめ、口呼吸に切り換えるが、それでも気分が悪い。後ずさる。背中に壁が触れた。
「おっ、おめえ、おめえ女だな? おれの嫁だな? 嫁入りしにきたんだ、そうだろ」
「は?」
素で聞き返した。半ば吐き捨てる勢いだったのは、単純に男が醜すぎて、嫌だったからだ。
冷たい声色を気にもせず、男は告げる。
「看守どんが言ってたろぉ、嫁連れてきたってぇ。あの人は、い~いお人なんだァ。おれにこんないい家くれて、たまに飯も届けてくれる。しかも今夜は、嫁なんて! ひっ、いひひ」
最後の引きつった鳴き声を笑い声だと認識できるまで、若干の時間を要した。
あまりまくりの頬肉と、がびがびに固まった汚れが邪魔をして、笑顔もろくに作れないらしい。
あのごろつきが何を狙っていたかと、去り際に残した言葉の意味を、ようやく理解する。コイツと三日間も同じ空間で過ごすのは、なるほど拷問として有効そうだ。なにせ、もうすでにかなり嫌だった。
「こぉんなイイ女が嫁さんなんてなぁ~……。おれは運がいいなぁ」
「ちょっと……嫌よ、嫁なんて」
不気味なほどくりくりとした目で、へばりつく視線を送ってくる。先ほどの連中には自ら見せつけていたというのに、今は肌を隠そうとしていた――手枷があるので、上手く隠せてはいなかったが。
白痴じみた顔で嫁、嫁と繰り返す男に、拒絶の意を返す。アリスは好色なたちで、度を越した露出癖もちでもあるが、流石に誰でもいいわけではない。
目の前の相手は、評価するなら最悪だった。見た目の醜さもあるが、言っていることも支離滅裂だ。ちょっと――なんならちょっとどころでなく――気が違っているのかもしれない。こんなやつに身を許すほど、プライドは安くなかった。
「はあぁあん!? どう見ても嫁だろうがぁ! こんっ、こんなとこにハダカで来てよう、スケベしてくれって言ってるようなもんだろぉっ! そんでスケベしたらそりゃもう、夫と嫁だろうがぁ!」
「そんな無茶な――あッ!?」
拒まれ、男は怒気を浮かべる。飛びかかって、むりやり組み伏せてくる。ずんぐりむっくりした体型からは想像もつかぬ、機敏な動きだった。
かなりの体重がのしかかってくる。垢でネチャネチャした肌が触れる。嫌悪に鳥肌がたった。
「ちょ、っと、やめてよ」
「やめるわけないだろぉ、スケベするのは夫婦として当たり前なんだからなぁ」
脚を掴まれ、広げられる。魔法使いはさほどフィジカルに長けた種族ではないが、だからといってただの人間には負けない。にもかかわらず、まったく抵抗できなかった。脳味噌の箍が外れているような腕力だ。
「ホレっ、もう濡れてるだろ。おれにスケベしてほしくて濡れ濡れなんだろうが。ええ?」
先ほどまでの余韻を残す淫裂を、じろじろと見つめてくる。じゅるりと、滴る涎を啜る。むはぁと、興奮をありありと浮かべた吐息を漏らす。夏場のドブ川を思わせる口臭が漂った。
「へへ、まずは指で、可愛がってやるからなぁ。オイ暴れるな! 嫁のくせに生意気だぞ!」
「んぐぅッ!」
出来の悪いウインナーを思わせる指を見せつけてくる。得体の知れない汚れにまみれ、爪は伸び放題だ。
あんなものを入れられたら、病気になってもおかしくない。どれほどの好き者でも、絶対に嫌がるだろう。
アリスとて例外ではなかった。身をよじり、逃れようとする。が、体重をかけられる。苦しさに呻いているうちに、指先が裂け目へ押し当てられた。
「ほぉれ、スケベマンコに今から旦那の味を教えてやるからなぁ」
「ッ、あ、ッああ!」
狭穴を押し広げて、太指が入り込んでくる。おぞましさに顔が歪む。声は嫌悪をありありと孕んでいた。
一方で、刺激されればその分だけ、快感は生じる。先ほどまでたっぷりと悦びに浸っていた肉体は、特に飢えていた。じりじりと痺れるような感覚は、少なからぬ官能をもたらす。
「んんん? 膜がない……なんだぁ、中古かこのアバズレ女、人に嫁入りしておいて、なんてやつだ!」
「ッぐ、あッ、あ! このッ、いい加減、にッ」
がしがしと、指を激しく動かしてくる。
付着していた汚れを塗りつける勢いだ。
アリスほどの美女に好き放題しながら、男は分不相応にも不満を覚えているらしい。彼女が純潔でないからだ。
ふざけるなと言いたかった。むろん、仮に清いままの身体だったとしても、こんな輩に捧げるなど真っ平ごめんだった。
「アバズレ女はお仕置きしないとなぁ――かぁああッ、ぺッ!」
「んな……ひッ!?」
赤紫のたらこ唇から、黄ばんだ汁が吐き出される。べちゃりと、頬にぶちまけられる。
痰混じりの唾だった。こんなところで過ごしている以上、歯を磨くこともあるまい。口内衛生は最悪で、汁は腐臭を放っていた。
ぞぞぞと、鳥肌が立つ。悪臭に横隔膜がせり上がり、えずく。拭いたかったが、触れるのも嫌だ。目を白黒させる。
「へへ、どうだぁ、思い知ったか。分かったら今後は、おれとだけマンコするんだぞぉ」
「っぐ、アッ、は、くぅゥ、うう!」
グチョッグチョっと、蜜の音が響き渡る。擦り切れそうな勢いで、激しく肉穴をほじくり倒していた。汚れが混ざって黒ずんだ愛液が、膣口から飛び散っている。
「ぐふッ、きもちいいか? 旦那様の指でほじられて嬉しいなぁ?」
あまりまくりの頬肉を歪め、男は訊いてくる。無論、嬉しいわけもない。顔を歪めるばかりだ。
伸び放題の爪で、ガリガリと膣内を抉られている。内臓を虐待されているも同然だ。痛いに決まっている。人外特有の頑丈な肉体でなければ、とっくに出血していた。
しかし同時に、性感も生じていた。妖怪はそもそも、苦痛への耐性が高い。アリスの被虐性癖は、普通なら泣き叫ぶ刺激に対し、法悦を見出しつつあった。
「ッは、あっ、あぁッ、く、ぅうッ、あ」
「なんだぁ、やっぱり感じてるんじゃないか。いやぁ、素直な嫁だなぁ」
苦悶の呻きに、甘いものが混じり始める。自分勝手なストロークをせめて少しでもマシにしようと、動きに合せて腰をくねらせる。勝ち誇った声で、男は告げる。
「っく、これはッ、違くて」
首を振り、否定する。普通の男相手なら、リップサービスで気持ちいいと答えていたかもしれない。しかし、流石にコイツを前に、お世辞を言う気持ちにはなれなかった。
「何が違うんだ! こんなにマンコ濡らしておいて! この嘘つき女が! この!」
「ッあ!」
それが気に食わなかったらしい。首がそっぽを向く。思い切り頬を張られたのだ。人外であるアリスを押さえつけておける膂力での一撃だ。頬に赤く、掌の痕が残る。
「まぁったく、アバズレで嘘つきが嫁かぁ。トホホだぁ……ホレ嘘つきマンコ、手マンしてやったんだからお返しにしゃぶれぇ?」
指が引き抜かれる。乱暴に弄ばれた肉穴は、勘弁してよとばかりにヒクついている。滴る愛液は、指の汚れが混じって黒ずんでいた。
ぐったりするアリスの眼前に、男は屈み込む。差し出したのは、股間のモノだ。
到底、普通とはいえぬペニスだ。
まず、サイズが規格外だ。赤子の腕ほどもあり、全長は三〇センチ近い。いきり立ち反り返った姿は、とても人体の一部とは思えない。
そして、グロテスクだった。全体に、白いものがへばり付いている。ヌルついた、強烈な蛋白系の腐臭を放つペーストがだ。ろくに風呂にも入れぬ生活で溜め込んだ恥垢だった。
雁首回りから見kいにかけて、赤いできものがいくつも浮かんでいる。茶緑色の膿を、じくじくと滴らせている。なにか厄介な病気もちなのが、一目で分かった。
「う……っぷ」
ふたたび、えずいた。色々な男を相手してきた中で、コイツあんまり綺麗にしてないな、と顔をしかめることもあった。が、コレは論外だ。身だしなみがどうこうとか、そういう問題ではなかった。まさしく汚物だ。
「ほれぇ、早くしゃぶれよ、嫁の義務だろぉ」
そんなえげつない一物を、あろうことか頬に押しつけてくる。腐敗しかけの恥垢が、塗りつけられていく。嫌悪感に、顔が歪む。
「だ……からッ、嫁じゃないってば……!」
こんなモノをしゃぶるなど、冗談ではなかった。苛立ちとともに吐き捨てる。途端、男は眉を吊り上げた。
「なんだとこのお、あれだけやってまだ分からないのかぁ! 生意気女が、女が男に逆らうなッ!」
再度、両脚を掴まれる。ぐいっと押し広げられる。相変わらず、馬鹿げた腕力だった。力一杯抵抗しても、びくともしない。
「このっ、お前みたいな分からず屋マンコは、こうだ、このッ、この!」
「っひぃッ!?」
足裏で踏みつけられる。角質で硬くなり、汚れに黒ずみきった足裏で、恥丘を。
「ッ、が、ひッ、あぐう、あぁッ、ひぃッ」
百キロを優に越す体重が、骨盤にかけられる。圧迫感に、目を見開いた。
ぬちゅぬちゅと、膣口が摩擦されている。強烈な嫌悪と痛みに、身悶えする。
「ほれぇ、反省しろ、反省しろこの生意気女ぁ。許してって言ってみろ、嫁になるって言えぇ」
「や、っめ、このぉッ」
堪えがたい屈辱とはまさにこのことだ。だからこそ、肉体は被虐性感を見出す。腹の奥から溢れる蜜が、足裏の汚れと合わさって黒ずんだ汁になり、床を濡らしていく。
「まだ反省しないのかこのッ。なら、こっち来い」
「やッ、何、やめて痛い痛い、ちょっとぉッ」
髪を引っ掴まれ、引きずられる。何本か、ぷちぷちとちぎれる。頭皮が引っ張られる痛みに、男の腕を掴み止めさせようとするが、やはり無駄だった。
部屋の隅へと連れてゆかれる。床板を丸く切り取って、穴が開いている。
ろくに調度もない部屋の中で、唯一わざわざ作られた穴。何のためのものか察する。つまり、便器だ。
「ほれッ、反省しろ! 反省しろ!」
次の瞬間、男がとった行動は、アリスの想像を絶していた。彼女の頭を、穴の中に突っ込んだのだ。
「っぶッ――ぉ、ぶッ、ぐ!」
部屋全体に立ちこめていた饐えた匂いがどこから来ていたか、理解する。ろくに掃除もされない牢屋の、やはりろくに汲み取られてもいない便所。ここからだ。
発酵・腐敗した排泄物の臭気が、鼻を刺す。慌てて呼吸を止めるが、わずかに遅かった。
横隔膜がせり上がる。胃液がこみ上げてくる。すんでのところで押さえ込んだが、嫌悪感は止まらない。
激烈なる汚臭は、鼻を責めるばかりでは済まない。目にも刺さってくる。涙がぼろぼろとこぼれ、止まらない。
「ホレッ! ホレッ!」
「ぃッ、くぅッ、ぐぅうッ!」
バシィッ! バシィッ! と、打擲音が響く。無防備に差し出されたムチムチの尻へ、力強く平手が打ち込まれている。
昔から、悪い子へ反省を促す手段といえば一つだ――すなわち、お尻ぺんぺんである。とはいえ、人外に勝る怪力での一撃だ。ヒップがたちまち、赤く染まっていく。さながら猿のようにだ。
「ッひッ、アッ、あぁッ! くッ、は、あぅッ、ぅううッ!」
さらには、肉穴に指をねじ込んで、ぐっちゃぐっちゃと掻き回してくる。独り善がりで自分勝手な指使いでも、粘膜刺激による性感は生じる。吐きそうな汚臭、スパンキングの痛みと混ざって、彼女の意識を混濁させる。臭いのが気持ちよく、痛いのが気持ちよくなっていく。もはや、わけが分からなくなりつつあった。
「ひッ、許し、許して……もう、勘弁してェッ」
「お、何だってェ? 聞こえないなぁ?」
えげつない三重苦に、とうとう心が折れる。小さな呟きは、打擲音と蜜の音に掻き消される。
「許してくださいぃッ! わたしが悪かったですからぁっ!」
「そうかそうかぁ、なら嫁入りするかぁ? おれの嫁になるか、ンンッ、どうなんだ!」
「なります、なりますからッ、はなしてッ、放してくださいぃッ……!」
「ふん。最初からそうやって素直ならいいんだ、バカマンコめぇ」
地獄のごとき臭気の便器から、ようやく顔を解放される。涙にまみれ、美貌は台無しだ。毒ガスじみた汚臭にさらされたことで、頭ががんがんと痛んでいた。
「ホントに反省してるのか? あぁ?」
「してます。してますから……っ」
「怪しいなぁ。ならチューしろチュー。旦那様にベロチューするのは嫁の義務だぞ」
自らの口元を指しながら言う。ぶふん、と吐息を漏らす。たらこを思わせるほど太い、赤紫色のグロテスクな唇だった。乾燥しきって、皮が浮いていた。
「わ、分かりました……」
やはり、受け入れがたい。が、またあのような虐待を受けるのと比べれば、まだマシだった。躊躇いながらも、顔を近づけていく。
やはり、臭い。皮膚自体から、洗っていない人体の匂いがぷんぷん漂ってくる。唇の隙間から、夏場のドブ川じみた臭気が漏れていた。
「ッ……ぅ」
「んぶふッ、んぢゅるッ、ぢゅるるるッ、れろぉッ、ぢゅるるるるぅうッ」
おそるおそる、唇を触れさせる。薄桃色の艶めくリップを、最低最悪の醜男に捧げる。
男は大いに興奮していた。汚らしい一物をビンビンと反り返らせながら、当然のごとく舌をねじ込んでくる。口蓋、口壁、歯茎、舌。美女の口腔を、あますところなく凌辱していく。
「ッ、ぐ、ぅッ、ふぅッ、うぅうッ」
やはり、臭い。が、思っていたほどでもないと感じた。便器から立ち上っていた、地獄じみた汚臭のせいで、鼻はすっかり馬鹿になっていた。
「んぅううッ!」
ぬっぢゅぬっぢゅと、口内を貪られている。ムチムチの尻に手が回され、ぎゅぅううッ、と握りつぶされる。お前もディープキスしろ、という意味に違いなかった。
「く――んちゅぅッ、れろッ、んちゅる、れろれろれろ……んっ、ふ、んぅう」
「ムフフッ、グフッ! ぢゅるうぅっ、ぢゅるる、んぐふっ、んぢゅぷぅうッ」
嫌々ながら、従う。れろりれろりと、相手の動きに合せて舌を絡ませていく。「嫁」からの奉仕に男は大いに気を良くしたらしく、顔面全体を吸う勢いでむしゃぶりついてくる。
乱暴で、どうしようもない舌遣いだ。先のごろつきとの口交とは、比較にもならない。だというのに、アリスはあろうことか、性感を覚えつつあった。好き勝手に弄ばれて、マゾヒスティックな悦びを覚えていた。
「ぢゅッ、ずぞッ、ずぞぞッ、ムフフッ、ぢゅるるる」
「ん――ぅグッ、ふぐ、んぅうっ、くぅッ、う、うぅ」
唾液を啜られている。反対に、あちらからも唾を送り込まれている。どれだけ歯を磨いていないか、そもそも何を口にしたかも分からぬ口腔に溜まった、ヘドロじみた唾をだ。悪趣味極まる状況に、頭がくらくらしてくる。
「ッ、ぐ、ふッ、ぅう……ッ」
混濁する意識の中、尻肉を揉まれている。先ほど散々叩かれ、猿のように赤くなったヒップを、むにむにと揉みしだかれている。グラつく意識に、甘い官能が刻まれていく。ひどいことをされるのは気持ちがよいと、脳味噌が錯覚しはじめる。
「んぶはぁあッ……」
「ん、は。うぇえッ」
たっぷり一分ほどもむしゃぶられて、ようやく口が離れた。二人の唇の間を、おぞましい唾液の糸が伝う。
アリスは目に、うっすらと涙を滲ませていた。浮かぶのは、どうしようもない嫌悪の表情だ。が、瞳の奥で、被虐の悦びがちらちらと見え隠れしていた。
「さぁて、嘘つきバカマンコが嫁入りしたことだし、おれのモノってマーキングしてやらねぇとなぁ」
「アッ、ちょ、何を……っ」
「何をって、マーキングって言ったろぉ? 嘘つきマンコ女には、理解できねぇかぁ? 一緒に勉強していこうなぁ。マーキングってのはなぁ、おれのものだって印をつけることだぞぉ」
そういう意味で何を、と訊いたのではない。もっとも、指摘するだけ無駄だろう。
のしかかってくる。百数十キロにのしかかられ、圧迫感に息が詰まる。
ミルクを思わせる白肌に、黒ずみ汚れた肌が擦りつけられる。普通、肌はあるていど乾燥しているはずだが、彼のはネチャネチャしている。生理的嫌悪に、何度目かの鳥肌が立つ。
男が口を開く。舌が這い出してくる。舌苔まみれの、歪な舌をだ。
「れっろぉおおッ」
「うッ、うぁ」
べろりんちょと、ちょっとふざけた擬音が似合う勢いで顔を舐め回してくる。べろんちょべろんちょと、唾液を塗り込んでくる。
犬が飼い主にやるのと同じだ。もちろん、繰り広げられているのは、あんな愛くるしい光景ではなかった。嫌悪に、顔が引きつる。
「ッ……う」
肺に満ちるのは、炎天下に放置して藻まみれになった魚用水槽を思わせる臭気だ。当然、快くはない。ないが、やはりだいぶマシに感じ始めていた。嗅覚が、どんどん麻痺しつつある。
「ぐふふぅッ」
「ちょ、っとぉ」
悪夢は、まだ終わらない。美貌を汚泥で台無しにした次は、下へ向かう。首から、鎖骨のラインをなぞっていく。さながら蛞蝓のようだ。
「むぢゅぅッ、ぢゅるるッ、んぢゅッ」
「アッ、は、ちょっと、待ちなさいっ、この」
神にも造形できない、完璧なCカップバストを、涎でどろどろに汚す。女の象徴たる部位を、見るも無惨に汚していく。
こんもり膨らむパフィーニップルに吸いつき、蛭のごとく吸い上げてくる。引き剥がそうにも剥がれないあたりも、蛭にそっくりだった。
「いぃいッ!?」
嫁のくせして逆らった罰だとばかりに、ガリッと噛みついてくる。性感帯とは要するに神経の集中した部位だ。突然の痛みに、裏返った悲鳴をあげる。口が離れる。歯形がくっきりと残されていた。
「れろッ、れろれろ、んぢゅぅう」
舌はどんどん、下へ向かっていく。縦に走ったセクシャルな臍を、ほじくり倒してくる。そうしてとうとう、三角地帯へ至る。
「ぐふッ、口ではあれこれいっても、濡れ濡れマンコなんだよなぁ。旦那様とスケベできて嬉しいよなぁ?」
「ッひッ、アッ!」
膨らんだクリトリスを、ピィンッと弾いてくる。突然走ったソリッドな性感に、切ない声を漏らす。
「れろッ、れろれろれろれろガリッ、れろれろれろッ……」
「っひッ、ぃッ、あぁぁあッ、いぎッ! あぅうッ、ひぃいッ」
そのまま、舐め回してくる。敏感極まる陰梃へのヌルついた責めに、腰を揺らめかす。すると、動くなとばかりに軽く噛まれる。強烈な刺激と痛みからくるマゾ性感に、悲鳴をあげる。何度も繰り返されるうちに、どんどんと体力を消耗していく。
「へへ、俺ばっかり舐めてるんじゃ不公平だなぁ。お前にも舐めさせてやるよぉ。おれってイ~イ旦那だなぁ……」
ぐるんと、姿勢を入れ替えてくる。互いの股間が、互いの眼前にくる形だ。いわゆる、シックスナインの体勢だった。彼が上だ。
目の前に、男の一物がぶらぶらとぶら下がっている。三〇センチ超えの大業物にして、醜悪なる肉塊が。
「ッ、ぐッ、ぅぐッ」
ろくに風呂も入れないだろう生活の中で、垢や汚れを溜めまくった排泄器。いうまでもなく、危険な臭気が漂っている。生存本能が、コレはヤバいぞと告げている。嘔吐感に、横隔膜がせり上がる。
「ン……っふ、は」
一方で、あろうことか、うっとりする恍惚をも感じていた。牢に放り込まれてから、この激臭とともに快楽を与えられ続けてきた。おかげで、臭いほど気持ちが良いと、脳が錯覚し始めているのだ。
ありえないわと自らを否定するも、脳の機能だ。心のもちようで制御できるものではなかった。
「ほれぇ、何してんだ? さっさとしゃぶれよぉ、おらおら」
「うっ、うぅ」
先ほど塗りつけられた唾液が乾いてがびがびの頬へ、亀頭が擦りつけられる。ねちゃねちゃと、嫌な感触だ。ペースト状の恥垢がこねられている。
歯向かう選択肢はなかった。ろくなことにならないと、重々理解していた。
「ッ、ぅ、ちゅッ、ぅぐッ」
恐る恐る、唇を近づける。汚物そのものの肉竿に、そっと触れる。
途端、こみ上げてきた吐き気を、躍起になって抑える。同時に、甘い官能が胸を満たしつつもあった。やはり、脳味噌がイカれつつある。
「れ、ろっ、れろッ、れる……んふッ、ちゅっ、れろぉ……っ」
気が進まない。まったく、進まない。
にもかかわらず、舌を伸ばし、れろりれろりと舐め始める。スメグマが隅々までへばり付く、どう見てもなにかの病に犯されているペニスに、あろうことか性奉仕していく。
鈴口や裏筋を中心に、亀頭をれろれろと責める。雁首にそって、舌先を這わせていく。幹に舌腹を押し当てて、擦りあげていく。唾液をたっぷりとまぶし、垢をふやかしていく。こんなおぞましいモノにときめきなど感じていないと、自らに言い聞かせながら。
熱心だった。少なくとも、見ているだけで悪心を催すモノへの扱いとしては、相当上等だ。
「舐めるだけじゃダメだろうがバカマンコぉ!」
「ッあ!」
が、まったく男は満足していなかった。むしろ不満を抱いてすらいた。
細い腰が跳ねる。下半身へ走った痛みゆえにだ。曝け出された三角州へ、ビンタを放ったのだ。しゃぶれと言ったのにしゃぶらない、不出来な嫁への罰だった。
「く……ぅ、ぇあ」
また、先ほどのように便器に顔を突っ込まされてはかなわない。従うほかになかった。
口を大きく広げる。下品なほどに大きくだ。埒外の巨体にそびえる規格外の男根を迎えるには、それくらいしないと到底無理だった。
「は、ぁ、あむぅうっ」
ぱくりと咥え込む。途端、口内に強烈な汚臭がぶわりと広がった。垢、膿、汗、尿、そうしたものの匂いがだ。目の裏側や頭の中にまで、充満していくかのようだった。
快いはずもない。現に今も、油断すれば吐いてしまいそうだ。にもかかわらず、強い恍惚を覚えてもいた。惹かれるまま、口淫奉仕を始める。
「んぢゅるッ、ぢゅぽッ、くぷゥ、んふッ、んぅッ、んくぅっ」
頬を窄め、頭を前後させる。くぽッ、くぽっと、口端から音が鳴る。病のできものを浮かべた肉幹を、口腔で扱き上げていく。誰もが憧れる艶めくリップを、汚物掃除の道具とする。
口内では、唾液をたっぷりと纏った舌が、ヌルッヌルッと竿全体を愛撫している。亀頭・雁首を中心に、レロレロレロと舐め回す。へばりつく恥垢を唾でふやかして、こそげ取っていく。
汚物に等しい垢を、こともあろうに自ら嚥下していく。雑菌塗れの老廃物を、胃袋へと取り込んでいた。嘔吐感にせり上がる横隔膜を、無理やり抑えつけながらだ。
相手の醜悪さ加減を考えれば、熱烈という言葉でも過小評価にあたる奉仕だった。アリスはわりあい、完璧主義者なところがある。やるからにはきっちりというのが、染みついていた。
何より、興奮を覚えていた。下卑きった男に汚され、嫁呼ばわりされ、性処理玩具として扱われる。その嫌悪に、マゾの悦びを見出していたのだ。鼻が腐り落ちそうな激臭も、ちょっと癖があって素敵、くらいにすら感じ始めていた。
「ぢゅぽッ、ぢゅるぅッ、ぐぇ、んぽ、んぷっ、ぢゅっぽッ、ぢゅるぅうッ」
穢らわしいモノを、ぐぽぐぽとしゃぶりたてていく。絶対にありえない口淫奉仕だった。
彼のごとき男がこれほどの奉仕を受けられる機会など、本来なら一生訪れない。圧倒的な幸運に、伏して感謝すべき場面だ。
ところが、男は満足しない。己の魔羅を少しでも気持ちよくするべく、天に唾吐くがごとき行動に出る。
「うへへへぇッ」
「ぉごッ!?」
ぶよぶよとした下半身が、振り下ろされる。頭に、何十キロという重さの下腹が叩きつけられる。反り返る肉竿は物理法則に従って、彼女の喉奥にまで至る。粘膜を抉られる鋭い痛みに、目を見開く。
膿や汚物に塗れた肉棒が、口腔をみっちりと埋め尽くしている。それだけではなかった。陰嚢が、顔面に載せられている。鼻孔を金玉が塞いでいる。
どれほど洗っていないのかも分からない、蒸れに蒸れきった玉裏の臭気が、鼻から肺に上ってくる。ほとんど毒ガスに近い激臭がだ。強烈な吐き気を覚える――すなわち、恍惚をも見出していた。
「ほれほれッ、喉マンコしろよぉ」
「ごッ、ぉごッ、ぐぶッ、んぐぅッ、ぐごぇッ」
腰が浮く。再度、叩きつけられる。
どすんどすんと、床板が抜けそうなほどの衝撃が生じる。少女の美貌を、無茶苦茶にしていく。
三〇センチを越える大業物が、食道までもほじくっていく。みちみちと、身体の中から音が聞こえる。肉が、限界まで引き延ばされているのだ。
「ごッ、っぐッ、ぉごえッ、んぐぅッ、ぐごッ、んぼっ」
勢いよくほじられるたびに、白い喉がうごうごと蠢いている。亀頭のシルエットが浮かんでいる。野太い肉棒が、そこまで届いているのだ。喉粘膜が、勢いよく抉られていく。容赦なく、破壊されていく。
悪逆非道な扱いを受け、ぐわんぐわんと意識を揺さぶられる。にもかかわらず、彼女は逃げようとしていなかった。ぢゅうぢゅうと雄棒に吸いついて、積極的に奉仕を続けていた。口内では舌を踊らせ、ヌルヌルと肉幹を舐め回していた。
その熱烈さは、むしろイラマチオされる前よりも激しくなっていたほどだ。狂うほどの悪臭と苦痛に突き動かされていた。
「ぉほッ、おほほッ、ぉおッ」
アリスのような少女を好き放題に弄ぶ優越感は、宝くじで三億円を当てる幸運があっても得られない。それでもなお男は、分不相応にも、さらなる悦びを求める。
「んっぼぉっ……げほッ、ごほッ……」
腰が浮かぶ。肉棒が引き抜かれる。
散々潰されたアリスの顔は、無様なことになっていた。得体の知れない粘液が付着している。亀頭から口端を、破棄された粘膜や恥垢、膿の混じった汚汁がどろりと伝っている。
ぜぇぜぇと、荒い呼吸を繰り返す。咳き込む声は嗄れている。目尻からはぼろぼろと涙が零れている。
悲しいのか苦しいのか、はたまた嬉しいのか、自分でも分からなかった。
何か考える余裕は、未だ戻っていなかった。
口虐は、まだ終わったわけではなかった。再度、男の下半身が降ってくる。ただし、今度はイラマチオを狙っての行為ではなかった。
「んむぅうッ」
唇に押しつけられたのは、激臭放つ陰嚢だ。縮れ毛がゴワゴワと固まった、汗と老廃物に蒸れきった玉裏だ。
「んちゅっ、んちゅっ、ちゅむぅッ、んちゅッ」
「おほッ、おほほッ、そうだぁ、いいぞぉ」
地獄のごとき汚物に、むちゅっむちゅっと口づける。何を命じられるでもなく、自分からだ。狂った興奮が、彼女を突き動かしている。
「んれろっ、れろッ、ぉえッ! れろッ、んぐぅゥ、れろろろろろッ……」
人形劇の際、台詞を読み上げるので、それなりに発声訓練もするし、舌はよく回る。その舌を自在に蠢かして、柔玉袋を舐め回す。
苦いとも酸っぱいともつかぬ、奇妙で複雑な味がした。一ついえるのは、すさまじく不味いということだ。いや不味いを通り越して、人体に有害な味がする。腐敗したものを口にしたとき、思わず吐き出す防衛反応を、無理やり押さえ込んで奉仕していた。
「いいぞいいぞぉッほれ、もっと舐めろォ」
男の調子に乗ることとしたら、天井知らずだった。顔面全体にのしかかり、玉裏を押しつけてぐりぐりと圧迫する。美少女の花容に、えげつない臭気を染みこませていく。そしてさらに、大胆で不遜な行動に出る。
「でへへッ、ほれぇ」
「ッ――!」
男が腰を、わずかにずらす。艶めく麗しのリップ唇へ近づけるのは、できものがぼつぼつと浮かぶ臀部。尻たぶの奥の奥、排泄孔だった。
眼前に、地獄が広がる。みっともなく生える縮れた尻毛には、得体の知れないカスがこびりついている。ろくに行水できないどころか、排便後に尻を拭けもしない暮らしのなかで、焦げ茶色をした出口は蒸れに蒸らされている。うごうごと蠢く様は、グロテスクと称するほかにない。
見ているだけで、吐き気にする景色だ。それが、眼球からほんの数センチにて繰り広げられている。悪夢以外に、どう表現できようか。
「ぉッ、あ、が」
涙が溢れて止まらなかった。何かしらの情動を覚えてのものではない。激しい刺激臭に晒された目が、自らを守るためにシールドを展開しているのだ。ありとあらゆる気色悪いものをかき集め煮詰めた汚臭は、僅かな涙の膜など貫通して、粘膜にダメージを与えていた。
「おめえは嫁なんだから、旦那の全部を愛して当然だよなぁ? ケツ穴まで愛するんだぞォ!」
「は、ッ、んぐぅううッ……!」
腰が落ちてくる。最悪そのものが唇に触れる。
「ぉぶぇええええッ……!」
今まで幾度となく嘔吐感に揺さぶられてきた。が、これは特大だった。どれだけ洗っていないか、拭いていないかも分からぬ排泄器官に口づけたのだ。気絶していないのが、むしろ不思議なくらいだ。
それでいて、彼女の本能の一部は、今までにないエクスタシーに浸ってもいた。被虐嗜好の悦びに、意識が白熱する。脳味噌が、ぐっちゃぐっちゃにこね回されていく。訳も分からぬまま、猛烈な衝動に突き動かされて、あろうことか奉仕をし始める。
「むちゅッ、んちゅぅッ、んちゅッ、れろれろれろれろぉっ」
幾度となく、出口に入口で口づける。誰もが憧れる瑞々しい唇を、穢らわしさの塊で汚していく。舌を伸ばして、れろれろれろと舐め回す。みっともないチョロ毛、汚れ、垢まで、丹念にしゃぶりとっていく。
「おほッ、おほほッ、おほほほぅ」
男から、気色悪い声が上がった。全自動ウォシュレットマシンの熱烈な働きに、魂を奪われているのだ。
「ほれッ、舌ッ、舌入れろ、中まで舐めろぉ」
従わねばこうだとばかりに、ぐりぐりと押しつけてくる。半ば本能だけで動いているアリスが、逆らうわけもなかった。
固く閉ざした門に、舌先をぐりぐりと押しつける。優しくも強引にこじ開けて、中へと滑り込む。
おぞましい生暖かさを感じる。地獄じみた臭気が、いっそう強まった。まさしく、反吐がでる。
もちろん、平気でいられるわけもない。もうほとんど、気絶していた。意識を失わずにいられたのは、燃え上がる性への欲求ゆえだ。
「何してるゥ、チンポも扱くんだよ、はやくしろっ、役目だろっ」
男はなおも満足しない。不遜を極めきり、調子に乗りまくっていた。アリス・マーガトロイドという極上の美女を、下品なアナル奉仕玩具にしておきながら、いきり立つ肉棒への奉仕まで求める。
人形を操るためにある、白く長い麗しの指が、あろうことか穢らわしい男根に絡みつく。唾液や喉粘膜にまみれた巨砲を、ぬっちぬっちと磨き上げていく。
とてもやらされているとは思えぬ、猥褻極まる手淫だ。テクニックも相当なものだった。手首のスナップをきかせて扱き、亀頭や裏筋を指先でヌルヌルと責め立てる。娼婦も顔負けのテクニックだった。なにせ、何十という人形を同時に操れるほど器用なのだ。
舌の動きも、止まってはいない。直腸全体をスッキリさせるのだといわんばかりに、自由自在に踊り狂っている。ぬぽッ、くぽっと、おぞましきアヌスから猥音が響く。
「おっほッ、出る出る出るッ。ほりゃッ」
「ごぶぅうッ……!」
掌の内で、ただでさえ巨大な一物が膨れ上がりはじめる。今にも破裂せんばかりだ。再度腰が浮かぶ。手や舌を振り払う。
口腔へ、雄茎が再度ねじ込まれる。もちろん、同意などなしにだ。夫が嫁を使うのに、何の問題がある? と言わんばかりだった。
「ぢゅるるぅッ、ぐぽッ、がぽッ、ごぇッ、ぉごッ」
ごすごすと、喉奥に男根が叩きつけられる。食道を破壊してやると言わんばかりだった。凌辱に応えるべく、懸命に喉奥奉仕を繰り出していく。
「オッ、お、お、お、出るぅううッ――!」
「んぐぅうううッ……!」
やがて、濃厚極まる汚濁液が勢いよく解き放たれる。胎内で、どッ、どッと肉棒が脈動する。
狸かと思うほど膨れ上がった睾丸が、ギュウウウッ……、と窄まっていく。溜めに溜め込んだ濃厚精液を、次から次に解き放っていく。
おびただしい精子が、彼女の喉や食道を真っ白に染めていく。外から見ても、胃袋のあたりがぽっこり膨れていくのが分かる。誰もが顔をしかめ避ける気狂いの精虫が、胃液に焼かれ、消化されていく。最低最悪のスペルマが、アリス・マーガトロイドの一部を構成するのだ。
「ぐふふッ、ほれ、ご褒美だぁ」
両脚を掴まれ、脚をVの字に開かれる。恥丘をおっぴろげた、なんとも無様な姿だった。惨めなイラマチオ人形と化した今のアリスには、まさしくぴったりだった。先ほどガシガシとほじくられた肉穴は、汚れに黒ずむ愛蜜をどろどろと滴らせている。
「かーッ……! ペッ!」
喉に絡みつく痰を、男はあろうことか、淫猥なる裂け目へ吐きかける。べちゃりと、雑菌塗れの汚物がぶちまけられる。
「ぐふッ、マーキングだぁ。嫁のマンコは旦那のモノだからなぁ。ちゃんと印つけとかないとなぁ」
さらには、指先で塗り広げていく。なるほど、占有を主張するには、ある意味で有効な手段だった。こうして汚らしく汚された穴など、他に誰も使いたがるまい。
「んぉッ……! おッ、ぉおんっ……!」
膣口に塗りたくるだけでは不十分とばかりに、指を差し込んでくる。内部にまで、痰を塗り込んでくる。
先ほどの乱暴な手淫がなんだったのかというほど、丁寧で執拗だった。襞一枚一枚の裏側にいたるまで汚していく指使いには、病的な執着を感じさせる。ぞわぞわとこみ上げる官能に、アリスの柳腰もへこへことくねっていた。
「ぐふッ、ぐふふ。あー、きもちよかったァ~……」
「んぉ……ご、んぽぉっ」
腰が引かれる。置き土産とばかりに粘膜を抉りながら、赤子の握り拳ほどもある亀頭が引き抜かれていく。唇から抜ける瞬間、コルク栓を抜くような音が響いた。
「かひッ、……かはっ」
「おお? こんな不細工だったか、おめえ。おれの嫁なんだからもうちょっと可愛くしてろよなぁ」
今のアリスの姿は、とても見られたものではない。半ば白目をむいた顔面は、得体の知れないネバついた汁にまみれている。虚に開いた口から汚濁と粘膜の残骸を滴らせる。全身薄汚れて、えげつない臭気を放っている。特に膣などは、無残では済まない有様になっていた。
誰がそうさせたか省みもせず、男は呆れかえる。まっ、いいかと呟いた。
「ほれ、何寝てんだぁ? 夫のチンポがボッキしてんのに寝てる嫁があるかよぉ」
「ッぐぅッ!」
アリスは意識を手放していた。
肉体的にも精神的にも、拷問同然の行為を受けていたのだ。
無理もない。
けれども、男は許さない。腹に足裏を乗せ、ぐりぐりと圧迫する。内臓へかけられる負荷に、跳ね起きる。起きねば、何をされるか分かったものではなかった。
「おれは疲れたから、おめえがマンコにハメろぉ。できんだろ、おめえは変態嫁なんだからなぁ」
面倒臭いと言わんばかりに、男はズデンと寝転ぶ。腐りかけの床板がぎちぎち軋むが、気にも留めなかった。
まさに今しがた、とんでもない量の精を放ったばかりだというのに、陰茎はまるで萎えていない。ぎらぎらといきり勃ち、天井を指している。
「……かしこまりました、旦那様」
もはや、拒否の言葉を吐くこともしない。彼女が本来備えており、暴き立てられたマゾ性が、反抗を許さなかった。
それどころか、恭しい恭順の言葉を吐きながら、男に自ら跨がった。怪物じみた醜男に、貞操を捧げんとしている。
不思議と、嫌悪は薄かった。当初は涙すら浮かんでいた鼻の曲がるほどの悪臭を、あまり感じなくなったというのが大きい。おぞましきアニリングスの時間が、彼女の嗅覚細胞を殺し尽くしていた。
雄棒を指先で摘まみ、膣口まで導く。相変わらず、呆れるほどのサイズだった。野太く力強く反り返る様は、女を貫きよがらせ殺すために存在しているかのようだ。病による、膿を滲ませるできものさえなければ、一目見て惚れてしまっていただろうほどだ。
「はッ……は、あっ、あ」
腰を緩やかに前後させる。ヌッチヌッチと、膣口に先端を擦りつける。粘つく蜜がこねられ、猥褻音が鳴り響いた。
「何してんだ、出来の悪ぃ女だなぁ。おれがハメろって言ってんだから、さっさとハメんだよぉ」
「あぉッ!」
ピシャッ! と、本日何度目かも分からぬ平手がヒップに叩き込まれる。叩かれすぎて真っ赤に染まった尻肉は、もはや痛覚神経が麻痺している。甘やかな官能ばかりを伝えてきた。今の彼女にとっては、何よりの原動力となる刺激をだ。
「あぉッ、ぉッ、あはッ、あ――ぉおおおおおおんッ!」
求められるまま、腰を落とす。おぞましい肉竿が、めりめりと膣肉を割り開いていく。女の象徴にしてもっとも重要な器官である淫穴を、思い切り拡張していく。
上がる声はけたたましく、みっともなく、聞き苦しかった。あんあん気持ちいいとお上品に喘ぐ余裕など、どこにもなかった。
雄棒はあまりにも野太く、熱かった。絶妙なる暴力的反り返りで膣壁をゴリゴリと擦られれば、どんな女だろうと体面など保っていられない。まして今のアリスは、虐待にも近い扱いによって色情狂いと成り果てたマゾヒストだ。品位のかけらも、あろうはずがなかった。
「んぉおッ! ぉんッ、あはぁッ、あぉッ! ぉッ、おッ、ぉおおッ!」
腰がうねる。上下に前後に左右にと、自由自在にくねくねと踊る。Cカップバストやムチムチのヒップが、ぷるんぷるんと弾んでいる。
ぐっちゅぐっちゅと、結合部から音が鳴り響く。粘っこく悪臭放つ愛蜜をまき散らしていく。
日頃、人形劇のお姉さんとして里の子供達と交流する姿からは想像もつかぬ、下卑きった低俗なる姿だった。まるで娼婦――と喩えるのすら不適切だ。色街における最低最悪の売春婦でも、もうちょっとマトモだ。
一方で、男のセックスの相手としては似つかわしかった。最悪の気狂いへあてがわれるのにちょうどよいレベルまで、堕ちきっていた。
「おっひぃッ、はひッ、あぉゥッ、ひっ、ぉぅッ、おっおっ、あぉんッ!」
嬉しくて仕方ありませんとばかりに、淫らな声を溢れさせる。口が壊れた蛇口になったかのようだ。上から声を、下から蜜を垂れ流しにしながら、セックスに没頭していく。
ぢゅっぽぢゅっぽと雄杭を下半身でしゃぶりたてるたび、やけくそじみた快感が駆け抜ける。どうしようもなくなりつつある頭を、いよいよ腐り果てさせていく。
「ほれ、もっと腰振れ、腰ぃ」
「ぉッ! ひッ、あぉおんッ、おッ! おッ!」
パシィッ! パシィッ! と、断続的に破裂音が響く。洋梨型の安産ヒップへ、平手が何度も叩き込まれている。鞭打たれた馬のごとく、しゃかりきになって腰を振り始める。えげつない肉棒を、己のもっとも大切なところでもって扱き上げていく。
「ほれほれぇ、もっと気張れぇ」
「ぉおンッ! くっひッ、あぉッ、ぉおおッ!」
男が下から突き上げてくる。乙女の膣穴へ、どちゅッ、どちゅッと醜棒をねじ入れてくる。
最奥部がゴツゴツと小突き上げられる。子を成すための聖域の入口、子宮口が。下卑た雄によって汚染されてゆく感覚は、脳味噌が灼ききれるような性感をもたらした。どうしようもない声をあげながら、求められるまま腰を振りたくるほかにない。
一生消えないトラウマを刻みつけられながら、彼女は幸福に満ち満ちていた。これほどの快楽を与えられたのだから、幸せになるのは当然だった。そして、幸せにしてもらったお礼をするのもまた、当然だった。
上体を倒す。男の顔へ、顔を近づけていく。見れば見るほど醜い、どうしようもない顔立ちだ。顔と称するのすら憚られるくらいだ。
が、どうでもよかった。どれほど顔がグチャグチャで汚らしかろうが、夫である以上は尽くすのが世の常識だからだ。
「むちゅぅッ、ンちゅぅっ、レロレロレロッ、んちゅぅッ、れろッ、ぢゅるぅッ、んっっちゅうぅッ……!」
「んグフッ、ぢゅるるッ、レロレロレロ、ぢゅるるぅッ、むぢゅる、ぐふっ、んぢゅるぅうううううううう」
自ら唇を重ねる。濃厚極まるディープキスの時間だ。ぐっちゃぐっちゃと、えげつない音をあげながら、唾液をやりとりしていく。ときおり、唇の隙間から覗く舌の絡み合う様は、蛞蝓の交尾を思わせた。
「んぐふぅうッ」
「ぉ、んぅうッ、んぅッ、ぉっおっぉッ、んぅううッ……!」
肉棒が、体内で膨れ上がっていく。アリスの繰り出す腰使いは、さながら獲物を捕食する蜘蛛を思わせる。一方で、媚びに媚びきった、猥褻なる卑しい雌奴隷の動きでもあった。
男からのピストンも、いっそう激しくなっていく。肉穴が擦り切れそうなほどだ。ごつごつごつと、対応から音が聞こえてくる。子を成すための器官が押し潰され、ぐちゃぐちゃのミンチにされている。勢いが最高潮に達したころ、欲望が解き放たれた。
「んぐうぅうううううううう――ッ!」
細腰が、野太い指に掴まれる。ぐい、と引き寄せられるとともに、腰が突き出された。相反するベクトルが衝突し、どぢゅんッ! と、子宮が思い切り押し潰される。と同時に、雄棒が炸裂した。
濃厚極まる無数の精虫が、注ぎ込まれていく。腹が膨れ上がる勢いで、劣悪DNAがぶちまけられていく。常軌を逸した量だった。とても、人間の射精とは思えないほどだ。
子宮には収まらず、肉洞にまで逆流する。ぶぴぃ、ぶびぃっと下品音をあげて、ぐずぐずに崩れた膣口から溢れだした。
それほど力強い雄の衝動を受け止めたのだ。アクメに至って当然だ。比類無き快感が全身を駆け抜けていく。今までどんなセックスによっても得られなかった、何もかもを真っ白に染める快感が。
危険な病の発作のごとく全身が痙攣し、のたうち回る。くぐもった絶叫ののち、むせび泣くような声が響く。雷に打たれたかのような反応だった。
「んぉお……出た出たァ。ふぅ」
ひとしきり彼女の奥に精を放ち、男は満足げな声をあげる。肥満体をゆすり、上でぐったりと放心するアリスを振り落とした。
汚れきった元・美体が、べちゃりと床に崩れる。ぐったりと脱力しきっていた。結合部から、どろりと白濁がこぼれ落ちている。おぞましき劣等遺伝子に種付けを受けた、何よりの証拠だった。
「は……あ、あへっ、はへ、はへぇあ……」
「おいおい。旦那がまだ元気なのに、何バテてんだぁ? こんなもんで終わると思ってんのか」
強烈では済まない絶頂に、アリスはまたも意識を手放していた。虚な笑みをえへえへと浮かべながら、踏んづけられた蛙のような格好で、ヒクヒクと無様に痙攣している。
対する男は、まだまだ余裕があった。牢屋の中で溜めに溜めてきた性欲は収まることを知らず、びんびんといきり立っている。底なしとは、まさにこのことだ。
「まだまだハメ倒してやるからなぁ? 嫁の分際ってもんを、教え込んでやる」
「はひッ、あッ、あぁああああ~……ッ!」
仰向けに転がされ、のしかかられる。強引に、肉棒をねじ込まれる。牢内に、嗄れた嬌声が響き渡った。
***
「お~う、久しぶりだなぁ、ちったあ反省したかよ? 淫乱変態露出狂のアリスちゃんよぉ」
「優しいお兄さん達が犯しにきてやったぜぇ、イヒヒヒッ!」
「おい静かにしろや。あの気グルが寝てる間に連れ出さねぇと、めんどくせぇことになんぞ」
小屋の内に光が差し込む。現れたのは、アリスを実に三日間、この地獄に放り込んでおいた張本人たるごろつき。そして、その取り巻きどもだった。
「腹ァ減ったか? 喉渇いたか? 辛かったろォ、あの気グルと三日間同じ牢ってのはよぉ!」
「反省してんなら、レイプしてくださいって言ってみろや。そのとおりにしてやるからよ。ギャハハハ!」
哄笑しながら、牢の扉を開く。目はギラギラと血走り、股座にテントを浮かべている。誰もが憧れる美少女を、性処理便所として使おうとしているのだ。……が、彼らの目論見は盛大に外れる。
「あ? ……なんだこりゃァ、ォエッ」
アリスは床に転がされていた。その姿は、男達が三日前見ていたものとは、まるで異なっていた。
絹糸のごとき金髪は、得体の知れない汚れでがびがびに固まりきっている。理知を湛えた人形のごとき顔からは理性が消え、曖昧な笑みを浮かべている。垂涎の白い肌にはあちこち歯形や痣が残り、黒ずんで台無しになっている。乾いて張り付いた精液や唾液、その他諸々の汁が、えげつない臭気をまき散らしている。
三日間さんざん繰り返された「夫婦の睦み事」が、どれほど激しかったか物語っている。実際、ほぼ不眠不休だった。ちょうど今は小休止のタイミングだったが、ほんの十分前までまさに交尾していたくらいだ。無尽蔵かというほどの体力を誇った気狂い男も、流石にぐうぐうと部屋の隅で寝こけていた。
「ひっでぇ……誰だよ、こんなん抱こうって言ったの?」
「牢に放り込む前はキレーだったんだよ。あの気狂いヤローに一発二発ハメられりゃ大人しくなると思ったんだが……」
「あのパープリンが一発二発で済ますわけねぇだろ。人っぽい形したサルだぞありゃ」
貧民窟のごろつきですら、触りたいとは思わない姿だ。男達の興奮が、一気に醒めていく。眉は不快だとばかりにひそめられていた。下服に浮かんでいた膨らみが、萎んでいく。
そんな空気感を、今のアリスは感じられない。股を開き、淫らな言葉で彼らを誘う。肉穴を、自ら指で割り開く。
「アハッ、貴方たちも私とおまんこしにきたの……? ほら、アリスの淫乱変態穴、たっぷりほじくっていいわよ……」
かつての彼女からこんな風に誘われたなら、男達は湧きに湧いただろう。が、今はまったく逆効果だった。
無防備に差し出された肉穴は、緩みきって崩れていた。花弁はぐぱっ、ぐぱっと、グロテスクな収縮を繰り返している。奥の方から、腐臭のするスペルマがごぽごぽと垂れ流しになっている。むわぁと漂うのは、胸がむかむかする悪臭だ。
いくら積まれたって、突っ込みたいとは思わない。まして「いいわよ」などと高慢に言われたら、かんに障って当然だった。
「アァ!? テメェふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ、きったねぇ穴見せてんじゃねぇよ気色悪ぃ!」
「自分の格好鏡で見てから言えやボケ女が! ぶち殺すぞカス!」
彼らが勝手に期待して勝手に幻滅したに過ぎないのだが、裏切られたがゆえに、怒りも大きかった。一斉に、罵声を浴びせていく。
「え? あ……あはっ」
何が起きているか、最初アリスには分からなかった。もともと聡明だった頭は、やがて事態を理解する。浮かんだのは、笑みだった。
かつては男達から欲望の目で見られ、性欲の対象にされていた。なのに、今ではすっかり汚れきり、まるで見向きもしてもらえない。その事実に、屈辱と、マゾヒスティックな快感を見出していた。
「おう何笑ってんだクソ女が。チッ……しょうがねぇ、売りモンになりそうなもんだけ回収すっか」
「つっても、どうすんだよ。コイツ何も持ってねぇだろ?」
「あ? バカだな。髪は使えるだろ。金髪だから需要はあんまねぇし、値段もつかねぇが。つくづく使えねえ女だ……」
ぼやきながら、男の一人が取り出したのはナイフだった。アリスほどの魔法使いを害するには、いささかどころでなく心許ない。別に構いはしない。ただ、金目のものをいただくだけなら、十分すぎた。
「きったねぇアタマだな。触りたくねぇんだが……まあ、洗えば売れるだろ、多分」
「あぁんッ」
がちがちに固まった髪を鷲づかみにされる。頭皮が引っ張られ、痛みを訴える。嫌がるどころか、笑みを浮かべてみせた。強烈極まる七十二時間を経て、苦痛は性感へと生まれ変わっていた。
ナイフの刃が金髪へ当てられる。ざくざくと、切り裂かれていく。床屋と違う、乱雑極まる刃捌き。麗しの髪型が、見るも無残に崩れていく。
何度も何度も、刃が通される。解放されたころには、ほとんど丸坊主にされていた。それも、ろくに整えられてもいない、ぐちゃぐちゃの形にだ。
「あはぁあッ……!」
悲しむでもなく、怒るでもなく、感じていた。髪は女の命だとよくいう。ならばこれは、命を踏み躙られているに等しい。マゾヒストとしては、至高の悦びだった。
「あはぁッ、アッアッ、あぁあんッ」
思わず、オナニーを初めてしまうのも無理はない。部屋の隅から、お気に入りの――三日間でお気に入りになった道具を取り寄せる。
張型やローターではない。そんな上等なものは、世界の吹きだまりたる牢屋にはない。使うのは、薄汚れたトイレブラシの柄だ。
柄を肉穴にねじ込み、ずぼずぼとほじくっていく。汚いなどとは思わない。自分のほうがよほど薄汚れているのだから。
「うわッ、気色悪ぃ。テメェにハメようとしてた俺がバカだったよ、おらッ。これでもくらえや気狂い女がッ」
最初はあまりの汚さに引いていた男達も、アリスの楽しみ方を理解しつつあった。陰茎を差し向ける。ただし、しゃぶらせたり、まして突っ込んだりするためではない。彼女へ向け、排泄を始める。
「あっは、ッ、あぁあッ」
黄金水にまみれていく官能に、ぞくぞくと震えている。生暖かく生臭い汁を浴びせられる屈辱に、肉穴をほじる動きが止まらない。
「じゃあな、クソバカ女! そのままそのくっせぇ牢屋で一生過ごしてろカス!」
「アハッ、あぁッ、あああ、あぁあん……」
やるだけやって、男達は牢を後にする。見せびらかすように、彼女から切り取った金髪を高く掲げて。
扉が閉められる。残されたのは、狂ったセルフ・プレジャーに浸る変態女ばかりだ。
「んご……んごッ、ふわぁ。おう、便所嫁。なに旦那に黙ってマンズリなんてしてんだぁ?」
「あはっ、ごめんなさい旦那様、淫乱アリスにいっぱいお仕置きしてぇ……」
彼らと入れ違いに、気狂いがのっそりと起き上がる。目覚めるなり、一物をおっ立てていた。セックスのこと以外頭にないのだ。
アリスにも、拒むつもりなどかけらもなかった。自慰用のトイレブラシを放り捨て、腐りかけの床板に自ら寝転び、彼を誘う。
「あはッ、あぉッ、ぉおおおおんッ!」
覆い被さられ、肉棒をねじ込まれる。何十、何百回繰り返したかも分からぬ夫婦の営みが、また始まった。