タイトルの通りで、困り果ててしまった。
これは…これはどうしたものだろうか。
これは、誤った勇気と好奇心に負けた私の物語である。
私はイソフラボン。そう言うペンネームの女性だ。
まんまタイトルの通りなのだが、私はつい先程までア◯ニーに興じていた。そして、アダルトグッズのア◯ルプラグが抜けなくなった。
…挿れる時は、日頃は発揮する事のない勇気と好奇心に背中を押された。しかし、手淫も終わり興奮が冷めるとひたすら肛門の異物感を排除したくなる。
そこで持ち手を掴んで引き抜こうとしたが…痛い。堪らなく痛い。
もうすぐ1番直径の長い所に行く所で戻してしまう。後一歩の勇気が湧かない。
とりあえず水を飲んだり、トイレ行ったり、しばらくぼんやりしてネットで調べてみたりしていた。
『アダルトグッズで尻穴を弄ってたら抜けなくなりました』
言えるかぁーっ!!
…ア◯ニー。羞恥心や被虐心を伴う、何ともアブノーマルな自慰。それを敢えて行う事で興奮や快感を得る事ができる。…が、所詮は遊び!!社会的に死ぬ様なリスクは負わない範囲で行うのがマスト!
なのだが、やってしまった様だ。
もはや、自らの力でこの窮地を脱するのはほぼ不可能だ。助けがいる。
気は進まないが…恋人の美穂にお願いしようと思う。
私の名前は美穂。兄の親友、ペンネームはイソフラボンこと陽子の恋人だ。期末テストに向けて勉学に励んでいたが、陽子からのメッセージから届いた。
『進退窮まる状況に陥ってしまった。助けて』
恋人の事とあっては応えざるを得ない。私は陽子を招き入れた。
「何があったの?」
「…笑わないで聞いて欲しい」
「う、うん…。何?」
「……ア◯ルプラグが抜けなくなりました」
……………。
え?
しばらく何も言えず黙ってしまう。
えっと…ア◯ルプラグ?って??
しばらくすると、陽子は急に下着を脱ぎ出した。そして、おそるおそる後ろ姿を見せると…尻肉を手で掴み分ける。
排泄器官としてのみ機能するはずの穴に、栓がしてあった。
何も言えず口をパクパクさせてしまう。
振り向いた陽子は顔を真っ赤にして、両手を覆った。私はとにかく彼女を抱きしめ、背中をさすった。
「…良く話してくれたね」
先程まで平生を装っていたが、死ぬ程恥ずかしい筈なのだ。頼れるのが私しかいないから、私に話さざるを得なかったのだ。その勇気を蹴る訳にはいかない。
応えねば。恋人として…!
陽子にベッドで四つん這いになってもらう。
「じゃ、じゃあ…抜くよ?」
「うん…」
取っ手に指をかけ、ゆっくりと引く。
「んん…ぐっ、んぐっ…」
陽子が声を殺して苦しむ。
あわ、あわわわ…。人の尻穴ってこんなの入るものなの…?広がるものなの??
「いぎぎ…いだだだだ!」
思わず手を離してしまった。
しばらく小休止を置いた。
お互いに何とも言えない沈黙が訪れる。
この静けさが気まずくて私から口を開いた。
「えっと…、どうしてお尻にそんな物を?」
「その…。いつもと違う刺激が欲しくて、えと…」
「そんな所を弄っても気持ち良くはならないでしょ…」
「なるよ?」
私の方を向いて真顔で微笑むと、手をワキワキさせる。え、何その挙動怖いやめて。
…2時間奮闘した。
しかし、陽子の獣の様な苦悶の声に私はどうしても踏み切りがつかず引き抜いてあげる事が出来なかった。
「無理…。陽子、病院いこ?私もついていってあげるから」
「そ、それだけは…」
ガチャっ。
「美穂ちゃん、買い物に付き合って欲しいんだけど…」
現れたのは兄の恋人の沙織さん。
私達を見ると目を皿の様に開いて、何事もなかった様に帰ろうとする。何とかそれを引き留め、事情を話した。
「…分かったわ。私が何とかする!」
「さ、沙織さんが?」
「元カレがそう言うプレイ好きだったから…。大丈夫だと思う」
頼もしい…!
四つん這いになる陽子。ビニル手袋をして、真後ろでア◯ルプラグを掴む沙織さん。ゆっくり、ゆっくりと引き抜く。
「いい、力を抜いて…。リラックスするの。後は私がやるから」
「すみません、こんな事頼んじゃって…」
「貞夫の親友なんですもの」
グググ…っ、と力を少しずつ込める。顔を真っ赤にして堪える陽子の手を掴み応援する。
「いだだだだ…いだだだだだだ!!」
「頑張って、後少しだから!」
「ギブアップ、沙織さんギブアップ!戻して、戻して!」
「ひいっ!」
沙織さんが手を離した。慌てふためいている。
目をやると、肛門から血が出ている。
「無理…、ごめん私には無理…。血は嫌…」
啜り泣きが部屋から2つ。ごめん、私も泣いていい?
しかし、こうなってしまえば…頼れるのは彼だけだ。
私は立ち上がり、陽子の手を掴んだ。
「な、何?」
「陽子…。こうなったら、もうお兄ちゃんの力を借りるしかない」
「で、でも…」
「相棒なんでしょ?!…大丈夫、きっと何とかしてくれる!」
「!!…うん、わかった…」
私達は兄の部屋に向かった。
俺、ペンネームがジャンクこと檜木貞夫だ。覚えてる人、知ってる人はきっといないだろうが「御手洗ジャンクはハートフル小説を書きたい」で主人公を務めていた男性だ。
俺は棒アイスのあたり棒を眺めながら、これを店に持って行ってもう一本もらうべきか悩んでいた。こんなに美味しいアイス、例え当たりが出たからと言って無料でもらってもいいのだろうか。
労働には見合った対価が払われなければならない。これだけ美味しいものを提供してくれる方々の恩情に甘えても良いのだろうか。かれこれ十分ほど考えている。
…いや、やめておこう。また買い物に行ったら自分の金で払う。これはどこかに保存しておこう。
コンコン。
誰だ、口内に残るアイスの味の余韻に浸っている俺の部屋に無粋にも踏み込もうとする不届きものは。
「どうぞ」
ガチャリ。
開いたドアの先にいたのはイソフラボン、美穂、沙織だった。
え、ナニコレ。
「お兄ちゃん…もう陽子を助けられるのはお兄ちゃんしかいないの。だから、もう楽にしてあげて…!」
そう言って去って行った。いや、分からんよ?何の話??
「貞夫。私からもお願い。彼女を救ってあげて…!!」
そう言って沙織まで去って行った。救うって?イソフラボンを?何から?
「ジャンク、恥を忍んで頼みがある。もはや君にしかできない事なんだ…!」
真剣な声色、眼差し。一体頼みとは何なのだろうか。
とりあえず部屋に招き入れる。俺は椅子に座るが、彼女はいつものようにベッドに腰掛ける事さえしない。借金…?なんだ??そもそも俺にしかできない事ってなんなんだ??
「えっと…その、なんだ。…実は抜けないんだ。ア○ルプラグが」
「は??」
「…抜けないんだ。ア○プラグが」
…聞き間違いじゃなかった。俺は両手で顔を覆い、状況の把握に努める。
えっと…イソフラボンは何故かア○ルプラグが抜けなくなって、美穂と沙織と一緒にやって来て…。いや訳が分からん。
分かる様で分からん。いや、あるいは分かりたくないのかもしれない。
深呼吸をして面を上げると、顔を真っ赤にしたイソフラボンが震えていた。
「ア○ルプラグが抜けない…」
「い、いやごめん。ちゃんと聞こえてるよ。だからもう繰り返し言わなくていい。えっとそれで…俺にできる事は?病院を紹介するとか??」
「……抜いてくれないか」
…なるほど。
して、既に美穂も沙織も俺にそれを託した…そういう訳なのか。
………いや、普通に病院に行った方がよくね??
しかしまあ…その、うん。
わざわざ俺に頼みに来たと言う事は、まあそう言う事なんだろう。
「…分かったよ。やるよ、やればいいんだろ!!」
四つん這いになるイソフラボン。その後ろに中腰になって今にア○ルプラグを抜かんとする俺。…いや、冷静になればなるほど思うんだが何この状況。どういう状況なのこれ。どういう状況なの???
い、いや…。落ち着け。落ち着くんだ。考えれば考えるほど分からなくなるだけだ。
人間は考える生き物だ。が、しかしそれが故に理解できないものに対しては強く動揺してしまう。そうだ。そういう状況なのだととりあえず飲み込んでしまえばいいのだ。
イソフラボンはどういう訳があってかア○ルプラグを尻に挿していて、俺はそれを引き抜くべき状況になったという事なんだろう。
覚悟は決まった。となれば後は引き抜くのみ。
「それじゃ、行くぞ…」
「うん…」
取っ手に指をかける。
グッ…ググッ。
指にかける力を少しずつ強める。
「んぐっ…ぐぐぐ」
イソフラボンは堪える。ゆっくり、ゆっくりと引き抜く。
「ふぎっ…ふぎぎぎぎ…」
シーツを握る拳に力が入る。…今更、どうしてこれを尻穴に挿そうと思ったのか凄く気になったが…おそらく今はその時ではない。
プツッ…。血が出た。入れる時に無事で、出す時に割けたとは考え難いから最初から入った傷が開いたんだろう。あまりよくないが、本人に気取られれてしまえば動揺したり不安になったりするに違いない。
「いだだだ、いだだ…。ちょ、ちょっと待って!無理!」
「四の五を言うなイソフラボン!呼吸を整え、脱力するんだ!俺は同じ力を加え続ける。排泄する時の感覚を思い出し、外に出すイメージを強く持つんだ!」
「だ、だって…こんなに痛いんだもん…」
「ああ。だから俺がついてる。安心しろ、強い痛みは一瞬だ。すぐに終わる。最後の力を振り絞るんだ!」
俺はもう片方の手を差し出す。彼女はその手を握ってうなずいた。
来た…押し出す感覚!じれったいが、ここで焦ってはいけない。彼女の括約筋を…俺は信じる!!
スポン!!
満を持して、やっとア○ルプラグが抜けた。肛門がパクパクとうねり、そのままベッドに倒れた。俺はティッシュを数枚取って近くの棚の上に置くと、ウェットティッシュで手を拭いてからイソフラボンの横に座った。
「はぁ…はぁ…。ありがとう」
「気にするな。困った時はお互い様だからな」
彼女はどっと疲れたようで、そのまま眠ってしまった。
俺はその場を後にして、美穂達に無事に終わった事を告げた。
あれから数日後。イソフラボンは俺の部屋で小説を書いてるし、俺も自分の部屋で小説を書いている。
「なあ、何でアレを尻に入れようと思ったんだ?」
「何でって…いつもと違う刺激が欲しくて」
そういうもんなのか。
「…もしかしてジャンクは尻にア○ルプラグを入れた事あるの?」
「ないぞ。何でだ」
「いや、やけに指示が具体的だったから…」
そこでお互いに長い沈黙が訪れる。
いや、うん。あまり話題にしていい事じゃなかったな。
俺達は相棒なんであって恋人でも何でもない。
これ以上フィジカルな問題に踏み入っていい訳ないのだ。
「初心者向けのサイズを買ってきたから、美穂に試そうと思ったんだけど嫌がられて…」
「すまん、身内の性事情の話を聞くのはさすがにキツイ」
「ごめん」
俺は書き上げた小説の校正に入る。所々に誤字脱字がある。嫌になるなぁ…。
大きく背伸びをして背もたれに重心をかける。
それから立ち上がると、ベッドに向かう。
「ちょっと横になるからどいてくれ」
「ウェルカム!」
「美穂に言いつけるからな」
「てへっ」
俺はスマホで自分の書いてた小説の編集画面を開くと、イソフラボンに渡して読ませた。読むついでに誤字脱字も修正してくれるだろうという算段だ。代わりにイソフラボンの書いてるいつもの怪文章の校正を頼まれたが…。
いや、合ってても間違ってても怪文章ならいいんでは…。
お互いに眠気が勝っていたようで、結局お互いに読みかけのまま寝てしまった。
呼びかけても返事をしないもので、不思議に思った美穂と沙織に発見されてしまったようだ。起きた時には掛け布団がかけてあった。
俺達の関係と言うのも割と寛容的なのかもしれない。
今はその関係に甘んじ、眠気に身を任せたのだった。
具体的な数は知らないが、尻に何かを入れて病院に来る人は少なくないらしい。性癖も多種多様で、ソフトなものからハードなものまである。中には命の危険が伴う自慰も…。
エロ同人で身に着けた知識を元に行為を及ぶような、フィクションと現実の区別がついてない人はさすがにどうかと思うが…思うに大衆娯楽はどこまで行っても娯楽であるべきだと思う。
フィクションはフィクション、現実は現実だ。
肛門は非常にデリケートな場所だ。行為に及ぶにしても、極力正確な知識を得たうえで行わねばならない。事前にネットで調べるなりして複数のサイトを見比べ、その上で安全第一に楽しむ事を忘れないで欲しい。
…正直、大衆娯楽に道徳や倫理、参考書のような知識が求められるようになってつまらないリアリティばかり追求されるようになったフィクションがあふれる世の中になるのだけは嫌だ……。