ハルタの下には毎日、何度となくアンドロイドが訪れる。
「おはようございます。昨日はぐっすり眠れましたか?」
朝、必ず9Sが挨拶に訪れる。
護衛が彼の任務であるはずだが毎朝の体調チェックを担当しており、必ず行われるその行為の最中に談笑をするのが、もはや日課になっている。
日によってハルタの部屋に滞在しているアンドロイドは違う。
夜、彼に添い寝をしている、またはしたがっているアンドロイドは多い。
デボルとポポル、アネモネをはじめ、彼と過ごす時間を欲するアンドロイドばかりだ。しかしその中でも2Bがハルタと共に部屋から出てくる姿を見たことはない。どうやら彼女は必ず一度ハルタの部屋を出て、9Sに合流し、改めて部屋に入っているようだ。
朝食をはじめとして、料理を作るのは全てアンドロイドだ。
その日ハルタの部屋に居たアンドロイドであったり、9Sであったり、もしくは料理を作ることのみを喜びとしているアンドロイドも居る。その日に食べる料理だけでなく、後々にハルタに食べさせる料理や食材を作るなど、日々成長を続けているらしい。
「おはよう9S。よく眠れたよ。ありがとう」
「それはよかった。昨日は外に出ましたし、今日はゆっくりしましょうか」
「おはようハルタ。今日もいい天気だよ」
朝食を終える頃には一仕事終えたアネモネが部屋を訪れる。
キャンプに居るアンドロイドたちをまとめる彼女は、比較的ハルタに近い位置に居て、挨拶を交わすのはもちろん、話す機会は多い。
朝に限らず、時間があれば彼に会いに来る、という姿勢なのは伝わっていた。
キャンプを取り仕切る立場として、ハルタの望む通りの環境を作ろうと試行錯誤している。
朝だけでないせいなのか、アネモネがハルタとの接触を求めることは多い。それはたとえ些細なものであったとしてもいいのだ。
手を握る。ハグをする。キスをする。或いは、それ以上のことも。
目的はハルタを喜ばせることであり、ハルタを気持ちよくさせたいと願っている。
「ハルタ、おいで」
「あ、うん」
ぎゅうっと抱きしめる。アネモネは時間がない時は必ずそうした。
全ては人間であるハルタのため。環境改善のため自ら考え、行動するアンドロイドたちをまとめるリーダーとして、彼女は以前にも増して忙しない日々を送っている。あれもこれもと集まる意見を捌くのは大変だろうに、それでもアネモネがハルタの下へ訪れるのをやめないのは、彼に心配をかけさせまいとしているからなのだろう。
同時に、自らの欲求を満たすためであることは、彼女自身も理解している。
「大変だろうけど仕事頑張ってね」
「ああ、ありがとう。ハルタのためならいくらでも頑張れるよ」
「よお。ママが居なくて寂しいか?」
「私のこと、ママって呼んでもいいのよ」
デボルとポポルの双子が訪れることも珍しくない。
彼女たちはハルタによって変わったのだ。
キャンプでは諸々の事情があり、所在なさげに座っていた彼女たちだが、ハルタに必要とされたことで存在する理由を与えられ、明らかに笑顔を見せることが増えた。
彼の身の回りの世話をするため。それが大まかな理由。
料理を作る、部屋を掃除する、服を洗濯する、そしてハルタを満足させる。
やっていることはただの雑用だが、彼女たちは幸せを感じていた。
「こら、逃げるな」
「大丈夫よ。気持ちよくなるだけだから」
「おっ、うふぅ……!」
二人はともかくハルタと触れ合うのを好んだ。
部屋の中で他人の目がない時は特に、理由などなく彼に抱き着いて、そのまま過ごす時間がほとんどであり、そのまま性処理を始めることが少なくない。
デボルは強気に彼を誘い、ポポルは柔らかい物腰のまま彼を導いて断らせない。
裸にしたハルタを前後から挟んで、床に膝をつき、口淫を始めている。
デボルが右手でペニスを支え、亀頭をぺろぺろと舐め回していた。
ポポルが尻の間に顔を埋め、きゅっと閉じられた穴をべろべろと舐め回していた。
彼女たちは性的な奉仕を躊躇わない。自ら求めることが多い他、どんなプレイであろうと躊躇わずに嬉々として実践する。
ハルタに求められることを素直に喜び、体が一つになることに歓喜していた。
セックスは、人間と一つになることができる唯一の行為。だからこそ好きだった。
以前には自分たちからの発案でアナルセックスをしたこともある。
デボルは大胆かつねちっこいフェラチオをしていた。
舌先に力を入れてぐりぐりと裏筋を押し、カリに舌を巻きつかせて、強く刺激する。それが済むと亀頭をぱくりと口に含み、じゅぽじゅぽ音を響かせて吸い付く。
頭を振ると口の中にペニスが出入りして、面白いほどハルタが腰を震わせた。
その間、ポポルはアナルを執拗に舐め、尻穴の中に舌を挿入することを迷わない。ぐねぐね動いて奥へ奥へ入り込もうとし、柔らかくほぐそうとしている。
嫌がるどころか心底嬉しそうで、ポポルはそうしたアブノーマルを好んでいた。
「うぉ、おぉぉ……! あっ、それだめ……」
「んっ、むっ、むっ、ふっ……ぷあっ。だめじゃないだろ。逃げるな、ほら」
「んん~。れろ、むちゅ、ぷぷぷっ」
「あっ、あっ、あっ――!」
しばらく、ひたすらに同じ刺激を与え続けると、我慢できずにハルタが全身をくねらせた。
まるで逃げるかのような素振りなのだが許さない。
しっかりと体を掴んで逃がさず、強引にイカせようとする。
ずるるるるっと卑猥な音をさせて、デボルがペニスを吸って、ポポルがアナルを吸った。
「あぁっ、だ、めぇ……!」
勢いよく吐き出されたハルタの精液は、その全てがデボルの口内で受け止められる。驚きもせず平然としたまま喉にぶつかり、自ら飲み込んで腹の中へ収めた。
ポポルは満足そうにハルタの体の震えを感じ取り、彼の射精が終わったことを悟ると、ちゅぽんと尻の穴から舌を抜いて微笑む。
「んはぁ。またいっぱい出たな。昨日も抜いてやったのにさ」
「ふふ、いいじゃない。気持ちよかったってことよね」
「う、うん……すごかった」
ぐったりしたものの、頬を上気させるハルタを見て、二人は満足そうであった。
「もういいのか? 遠慮せずにもう一回くらいイッとけ。な?」
「そうね。まだ時間はあるし、二人で舐めましょう」
「あ、ちょっと待って、ほんのちょっと休憩……おほっ」
「ハルタ! ママが帰ってきたぞ!」
司令官が一度来訪してからはキャンプの様子が少し変わった。
ヨルハ部隊の文句などなんのその、強制的に帰らされたはずだがすぐ戻ってきた。9Sなどは予想していたから驚かなかったものの、キャンプ内には本当に嫌そうな顔をするアンドロイドも居る。
それもこれも司令官がハルタにべったりで離れないからだ。
「ママが居なくて寂しかっただろう? もう大丈夫。これからはいつもハルタと一緒に居るから」
「司令官。オペレーター21Oから通信が来ています。今すぐ、バンカーに戻ってほしいと」
「それはできない。ハルタと居るから」
「抜け出してきたんですか? そんなことしてると本当に信用を失いますよ」
「私にはハルタが居るからいいんだ」
やはり司令官の様子がおかしい。
すでにウイルスか何かで狂ってしまっているのではないか、と疑問を抱いてしまうほどだ。
9Sは、人間と同じように深々と嘆息する。
「ですから、ハルタの身の安全を守るために、司令官のお仕事が大切なのであって」
「何を言う。私はママだぞ。ハルタの傍に居ずしてどうする」
「ハルタは働くママがかっこいいって言ってましたよ」
「そうなのか?」
「あ、うん。ママが仕事頑張ってるのすごいと思うな」
役目を放棄しつつある司令官に仕事をさせるための方便だったのだろう。9Sの声掛けで察したハルタはすぐに彼に助力するべく発言した。
彼が言い出すと効果覿面。司令官は苦悩する様子を見せる。
ハルタと離れたくない。だがハルタがそう言うのであれば仕事を頑張らなければと思うのだ。
「よし。ハルタもバンカーに――」
「ダメです。人間が耐えられる乗り物はありませんし、キャンプから不満の声が爆発しますよ」
「くぅ……! なぜ私は司令官なんだっ」
耐えられずにハルタをぎゅうっと抱きしめ、悲しげな顔で司令官が不満を訴える。
ハルタは苦笑してされるがままだった。
「わかった。私とハルタが一緒に暮らせる環境を作ればいいんだな。必ずや叶えよう」
「頑張ってねママ。応援してるよ」
「もちろんだ! ハルタは私が幸せにする」
そう言って司令官は少女のようにハルタの唇にキスをした。
「ママがなんとかしてあげるから。ハルタは安心して待っていなさい」
「うん。わかった」
「前から思ってましたけど、母親は息子とマウストゥマウスでキスしないと思います」
「ハルタ……今日、いい?」
普段とは違ってどこか少し不安そうに、2Bがそう言ってくるのがいつしか合図になっていた。
彼女は他人にそうした素顔を見せたがらない。
普段行動を共にしている9Sは気付いているだろうが、敢えて指摘することはなく、わざと視線を外すようにして気付かないふりをしている。
2Bがハルタと二人きりで過ごす時間は、少なくとも表向きには秘密だった。
夜、二人きりの時、二人は必ず体を重ねる。
2Bは秘密の時間を大切にしている。ハルタと過ごすことは一時の幸福だったのだ。
彼女は多くを語らない。それどころか、それをする間、何をどうすればいいかわからないという態度を隠せないでいた。
裸になってベッドで抱き合う。そうしている時もどこか所在なさげで、何度経験しようともハルタに触れることを躊躇い、傷つけるのを恐れているようだった。
2Bは逆らわない。ハルタに言われるまま動く。
「2B……いい?」
「平気」
2Bは自ら愛撫することがなく、ほとんどが受け身であった。
ハルタが指示すればその通りに動くとはいえ、ハルタが彼女を満足させようと動く限り、ただ彼の行動を受け入れる時間が多くなっている。
知識がないわけではない。戸惑いが消せないだけだ。
ハルタの手が2Bの体を撫でる。
優しく、するすると肌に触れられて、彼を受け入れるために機能を追加したとはいえ、何を感じるというわけでもないのだが、不思議と落ち着くのは間違いない。
ぎしっとベッドが軋む。
ハルタに組み敷かれた状態を、2Bは当然のものと考えていた。
ハルタに触れられる。
顔も、髪も、頬も、唇も。胸も、脇も、腹も、腰も。足も、脚も、股も、尻も。
優しく触れられて不思議と安堵する。
この時間が“いつも”になっていることに、ふと感謝を覚えた。
自分で自分の感情がわからなくなっていたようだ。その時2Bは自身が感情を持っていることを否定することをせず、気付きもしなかった。
勃起したペニスがぴたりと性器に押し当てられる。
その動作にすら優しさを感じて、それが当たり前になっている事実。
2Bは何も言わずに、もう少し脚を開いて迎え入れた。
「んっ……うっ、くっ」
ハルタが入ってくる。
そう認知していても2Bの表情は動かなかった。
セックスは、心と体が一つになる、という話を聞いた。その真意はいまだわからないまま。ただハルタが気持ちよさそうな顔をするのだけは理解している。
2Bの裸を見て、体に触れて、その後で彼女の中に入ると、我慢できないといった様子で呼吸が乱れてハルタの顔が歪む。
2Bは人知れず、自覚もできていないまま、その瞬間が好きだった。
「ふっ、ふっ、ふっ……はっ、はぁっ」
腰を振るハルタの様子をじっと見つめる。
気持ちいいのだろうと思う。
求められていて、喜んでいて、その様子を見ているだけで満足している。2Bは反応こそ皆無であるものの、この時間が長く続けばいいとさえ思っていた。
「ハルタ。気持ちいい?」
「うん……うんっ。気持ち、いぃ」
「そう。よかった」
ずっ、ずっ、と自分の中で硬いペニスが動くのがわかる。
息を乱して時折休むタイミングがある。その間ハルタは2Bの体を触った。優しく腰の辺りを撫でて腹へ移動し、上へ向かって胸を揉んで、顔を寄せてキスをする。
繋がったままの安堵。体内が異様に熱を持つ感覚。
ボディに異常はないため、そんなはずはないのだが、なぜかそうなっていると認識してしまう。
唇を合わせて、舌を合わせる。
ハルタの熱が伝わってくる。
2Bはそっと腕を伸ばして、わずかな躊躇いが見える動作で彼を抱きしめた。
「あっ……い、イクッ……」
どくどくと吐き出される体液を感じた。
はぁ、と一息。
2Bは沈黙していたものの、ハルタを抱きしめる腕に力を込める。痛みは感じず、少し身じろぎすれば簡単に抜け出せる程度とはいえ、そうした状況に満足感を覚えた。
「ハァ、フゥ……2B、ありがとう」
「いい。これは……その、命令だから」
2Bは咄嗟にそう答えた。