暗い部屋に月の光が射し込み、若い男女のまぐわいの風景が浮かびあがる。
女の名は大庭樹里。彼女は自分より一回りから二回り程度歳の離れた男にまたがり、激しく息を切らし、声を上げている。
男は同じように息を切らしながら樹里を下から突き上げ、身体をまさぐる。
「樹里……ははっ…、そろそろいいかぁ?」
「ああ…、たっぷりぶちまけてくれ……親父…っ!!」
飢えた身体を充たすように貪りあう二匹の獣は、血の繋がった父と娘であった。
親父とこういう関係になったのは結構前のこと。
当時キュゥべえと契約していなかった私は、自分の中で燻り続ける「炎」をもてあまし、学校で度々問題を起こしていた。
抑えようと思っても身体が言うことを聞かない。
そんな私の尻拭いをするのはいつも親父だった。
自分の厄介な性質のせいで若い親父にまで苦労を掛けたくない…だがそう思えば思うほど自分を抑えきれなくなり、暴走し、あろうことかその矛先は自分が守りたかった親父にまで向かうようになった。
些細なことがきっかけで言い合いになり、掴み合いへと発展する毎日。
親父も私に似て血の気の多い人間、多少加減はしていても私に遠慮することはなかった。
そんな日々が続いたある時、私の衝動に変化が現れた。
いつものように親父と取っ組み合いの喧嘩の最中。親父のボクサーとして鍛え上げられた屈強な腕に胸ぐらを強く掴まれ、至近距離でその首筋に流れる汗の匂いを感じた時、私は頭の奥がぐらぐらと揺れるような感覚に襲われた。
これまで感じたことのない新たな衝動。
それに戸惑いながらも吸い寄せられるようにその首筋に吸い付き、衝動のままに舌で汗を舐め取ると、親父は一瞬たじろいだ後、私の髪を掴み一層強く自らの首筋に押し付け、もう片方の腕で私の横腹を曲線に沿ってなぞりだした。
取っ組み合いは互いの身体のまさぐり合いに変化し、燻り続ける炎は新たな色を灯す。
父親への暴力衝動が性欲へと変わった瞬間だった。
「なに考えてんだ?」
私の首筋から唇を離した親父に声を掛けられ、意識が現在へと舞い戻る。
「あー……昔のこと思い出してた」
あの出来事があってから、親父との喧嘩が減った。
ムカツクことがあると親父とセックスで発散しあい、心を落ち着かせる。
魔法少女になってストレスを耐えられるようになってからは敢えてする必要もなかったが、既に習慣化していた親父とのセックスをやめるのも勿体無く思い、関係は今もズルズルと続いている。
「そういや親父、よく私とデキたよな。自分の娘なのに」
「あ?……んまぁ、娘とヤるのはさすがにヤバいと思ったけど、こんなイイオンナがヤりたがってたらそりゃヤるだろ」
「いや、普通ヤらねーよ…頭おかしいんじゃねえの?」
「それはお前もだろ」
「まっ、そうかもな。ニヒッ」
身も蓋もない話で親父と笑い合う。
こういう建前無しの明け透けな態度が心地良いと思ってしまうのは、私達が似た者同士だからだろうか。
「じゅっ、じゅる……れろっ」
親父のいきり勃った棒を口に含み、舌を這わせる。
口をすぼめ頭を前後に動かし、時折裏筋を舌でなぞる。
親父も指で私の耳を形に沿ってなぞり、お互いの欲望を静かに高めあう……
瞬間、親父の肉棒から白濁とした精液が放たれ、私は少したじろぎながら口内で受け止める。
肉棒を咥えながら、こく…こく…と音を立ててゆっくり飲み干す。
それから親父の肉棒を咥えるのをやめ、口の中、そして頭の中が白に侵食されていくのを感じながら、ぼーっと親父を見つめる。
その様子に触発されたのか、親父は耳に触れていた手を頭の後ろに回し、私の顔を引き寄せて唇を重ねる。
「んぁ…、ぁ…んん……」
大口を開け唇同士を限界まで密着させ、ゆっくりと、ねぶるように舌を絡ませる。
歯列をなぞり、歯茎をなぞり、荒い鼻息と唾液の跳ねる音が互いの鼓膜を支配する。
秘部から愛液が溢れるのを身体で感じながら親父の舌に身を委ねる。
長い長い口づけが終わり、名残惜しそうに唇を離す。
しばらく互いの唇に掛かった唾液の糸を眺めた後、親父がいたずらっぽく呟いた。
「……不味ぃ」
「そうか?馴れると案外イケるぞ」
「…精子飲んで喜ぶとか頭おかしいんじゃねえの?ニヒッ」
私の口の端に付着していた精液を親指で拭いながら、先程の意趣返しをする親父。
そのしてやったりな顔にこちらも悪戯心を煽られ、精液の付いた親父の指をちろりと見せつけるように舐め、言葉を返す。
「親父に似てな。ニヒッ」
小さく笑いあった後に触れるだけのキスを交わし、私は再び親父に組み敷かれた。
「ピル飲んでるから今日もナマでいいぞ」
「俺は別にゴム使ってもいいんだけどな」
「遠慮すんなって、私もナマのほうが気持ちいいし」
少し呆れた顔を見せながら親父は私の膣内に自分の肉棒を入れていく。
自分のナカがゆっくり押し拡げられていくのを感じる。
肉棒が奥まで達した後、少し時間をおいてゆっくりと動き出す。
その動きは徐々にスピードを増し、肉と肉がぶつかり愛液が跳ねる音が部屋に響き渡る。
「あっあっ、んあっ…はぁっ」
波のように押し寄せる快感をその身で感じる。
だが私はこんなものじゃ満足できない。
「親父…はぁっ…、交代…っ」
「ん?…うぉっ」
不意を突いて親父と体勢を入れ換え、私が親父の上に馬乗りになる。
「お前…っ、力強くなったな…」
「成長期だからな……んふっ…」
興奮しすぎてすっぽ抜けないように手を握り合いながら親父の上で夢中で腰を振る私。親父も負けじと下から突き上げる。
「樹里……ははっ…、そろそろいいかぁ?」
「ああ…、たっぷりぶちまけてくれ……親父…っ!!」
限界が来るのを感じ、私は親父にぎゅっと抱き付き、親父もそれを受け入れる。
「あぁ…んぁっ…あっ…あぁっ…」
固く抱きしめ合いながらピストンを繰り返す私達。目はとうの昔に快感で白み、身体の感覚だけを頼りに親父を感じる。
「はぁっ、あっ…くぅぅっ…ぅぅっ…!」
肉棒から放たれる精液。身体も、頭の中も、真っ白に染まる。
静寂なる夜。月の光に包まれながら、私達は絶頂した。
「少しは発散できたか?」
「ああ…サンキュ」
親父の腕の中で息を切らしながら答える。
「なあ、俺たち前よりマシになったよな」
「ん?」
赤いメッシュの入った私の黒髪を撫でながら親父が呟く。その声には少し不安の色が見てとれる。
「喧嘩ばっかしてた時よりもさ、まあ…今もメチャクチャなことしてるけど、前よりは…いいよな?」
「はあ?」
何が言いたいんだコイツは…「前よりも」って…
「あっ、親父もしかして私とセックスしてること本気で気にしてんのか?」
「いや、気にしてるっつーか……そりゃ、まあ…」
「はぁ~、あのな、私だってもう高校生なんだ。今やってることがどういうことなのかぐらい判断付いてるし、親父に誑かされてその気になった…なんてクソみてーな言い訳するつもりもない」
「それに…親父だって本当は私のビョーキを止めるために始めたことなんだろ?」
「……」
「なら尚更親父だけのせいじゃない。自分を抑えられなかった私にも責任はある」
「樹里…」
誰に強制されたことでもない。これは私、大庭樹里が自分の意志で始めたことだ。
「まあ、どっちにしろ死んだら私達二人とも地獄行きだけどな。ニヒッ」
「……はは…、地獄、地獄かぁ…」
親父が参ったように空を見つめる。でもその横顔は、さっきより少し晴れたような気がした。
「ま、樹里と行く地獄旅行も悪くないかもな、ニヒッ」
「だろ?」
おちゃらけたように笑いあう私と親父。
そうだ。私はいずれ地獄に落ちる。
慕ってくれた人間を殺し、同じ魔法少女を殺し、実の父親と許されない過ちを犯した。
でもそれはすべて大庭樹里が自分で選んだ選択の果てにあったものだ。だから後悔はしない。
いつか来る最期の時まで、樹里サマは樹里サマらしく暴れ続けてやるよ。
徐々に白んでいく空を窓の隙間から見上げながら、私はどこか遠くの世界にいる何者かに決意表明をするように心の中で呟き、やがて眠りに落ちた。